お人好しな新米冒険者は最強パーティに愛で尽くされる~行き倒れ戦士と毒舌魔導師、そして大型犬な後継者に囲まれて~

たら昆布

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22話

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『銀の目』の拠点を、文字通り地図から消し去った後。
レオは三人の男たちによって、聖都でも最高級の宿にある、厳重な魔法障壁で守られた特別室へと運び込まれた。


「……っ、ふぅ、はぁ……」


レオは豪華な天蓋付きのベッドに横たわり、浅い呼吸を繰り返していた。
封印の鎖による魔力の乱れと、極度の緊張からの解放。
身体は火照り、指先一つ動かすのも億劫なほど疲弊しきっている。


「レオ、じっとしていろ。……今、その忌々しい痣を消してやる」


ガウルがベッドの脇に膝をつき、レオの細い手首をそっと持ち上げた。
鎖が食い込んでいた場所には、痛々しい紫色の痣が残っている。
ガウルは、戦場での猛々しさが嘘のように、壊れ物を扱う手付きでレオの肌に特効薬を塗り込んでいった。


「あ、ガウル……。そんなに、申し訳なさそうな顔をしないで……。僕は大丈夫だから……っ」


「大丈夫なわけがないだろう! 俺が……俺が傍にいながら、あんたをあんな目に遭わせた。……この屈辱、一生忘れん」


ガウルの瞳に、烈しい後悔と、それ以上に暗い独占欲が渦巻く。
彼はレオの手首を唇に寄せ、痣の上から何度も何度も、熱い口付けを落とした。
吸いつくような感触と、ガウルのざらついた舌が肌を掠めるたび、レオの身体はピクリと震える。


「……ふん。野蛮な癒やし方だね。レオ、僕の魔力トリートメントを受けなさい。内部の魔力回路を整えないと、また熱が出るよ」


シリウスがレオの反対側に座り、レオの項に冷たい指先を滑り込ませた。
ひんやりとした感触が脊髄を駆け抜け、レオは思わず吐息を漏らす。
シリウスはレオの首筋に顔を寄せ、深淵を覗くような青い瞳でレオを射抜いた。


「……レオ。君がいない間、僕は自分がこれほどまでに『欠落』に耐えられない人間だとは知らなかった。……君を奪おうとする者は、たとえ神であっても僕が屠ってあげる。だから……二度と僕の視界から消えないで」


シリウスの低い囁きが、耳朶を甘く噛む。
彼から流れ込んでくる涼やかな魔力が、レオの体内の熱をゆっくりと鎮めていく。
だが、その魔力には、レオを内側から塗りつぶそうとするような、粘りつく執着が混じっていた。


「レオさん……自分、もう死ぬかと思ったっす……っ」


足元からは、カイトがレオの足首を抱きしめるようにして縋り付いていた。
彼はレオの膝に顔を埋め、子供のように肩を震わせている。
若さゆえの、剥き出しの情熱。


「自分、騎士の誇りなんてどうでもいいっす。レオさんがいない世界なんて、真っ暗っす! ……お願いっす、自分をずっと傍に置いてほしいっす! 誰にも、絶対に渡さないっす!」


カイトが顔を上げると、その瞳は涙に濡れながらも、一人の男としての、逃げ場のない『欲』に満ちていた。
カイトはレオの足の甲に、熱い口付けを落とし、そのままふくらはぎを大きな掌でなぞり上げる。


「わ、わわっ……みんな、くっつきすぎだよ……っ」


レオは真っ赤になって身を捩ったが、三人の男たちはレオを放そうとしなかった。
右からはガウルの岩のような熱。
左からはシリウスの涼やかで重厚な愛。
足元からはカイトの若く、猛烈な執念。


三つの異なる体温がレオの肌を焼き、心をかき乱していく。
恐怖から救い出された安堵感と、彼らから向けられる、もはや隠しきれない情欲の嵐。
レオの心臓は、逃げ場のない甘い閉塞感に、激しく、切なく脈打っていた。


「……レオ、あんたはもう、俺たちのものだ。その身体も、その魔力も、その心も」


ガウルがレオの頬を両手で包み込み、至近距離でその琥珀色の瞳を見つめる。


「そうだよ。君を狙う影は、僕たちがすべて切り裂いてあげる。……だから君は、僕たちの愛の中で、無防備に鳴いていればいい」


シリウスがレオの唇を、親指の腹でゆっくりとなぞり、自らの唇を重ねようと顔を近づける。


「自分、レオさんのことなら、何だってするっす。……一生、自分たちに飼われてほしいっす……っ」


カイトがレオの腰に腕を回し、自分の身体に密着させた。


三方向から押し寄せる、逃げ場のない愛の告白。
レオは、自分がどれほど彼らを狂わせてしまったのかを、ようやく自覚し始めていた。
お人好しな少年だったレオは、最強の男たちに愛され、犯され、守られることで、
彼らなしでは呼吸さえままならない『愛し子』へと変貌させられていく。


「(……みんなの目が、すごく熱い……。でも……)」


レオは、自分を抱きしめる三人の腕に、そっと自分の手を重ねた。
彼らの熱に浮かされながら、レオは初めて、自分から彼らの深い愛に身を委ねることを決めたのだった。


「……僕も、みんなとずっと一緒にいたい……。……だから、もう、離さないで……」


レオの弱々しくも真っ直ぐな言葉が、三人の獣たちの理性を完全に吹き飛ばした。
聖都の夜は、彼らの愛欲と誓いを飲み込み、さらに濃厚に、甘く更けていく。
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