お人好しな新米冒険者は最強パーティに愛で尽くされる~行き倒れ戦士と毒舌魔導師、そして大型犬な後継者に囲まれて~

たら昆布

文字の大きさ
23 / 34

23話

しおりを挟む
「……ここが、奴らの総本山か。吐き気がするほど淀んだ魔力だね」

聖都の北方に位置する、断崖絶壁に囲まれた古城。
かつて聖者たちが祈りを捧げたというその場所は、今や組織『銀の目』の手によって、邪悪な魔力が渦巻く「負の聖域」へと変貌していた。

シリウスが杖の先から放つ探知の魔法が、重苦しい闇を切り裂く。
レオは三人の男たちに囲まれるようにして、その中心で震える手を握りしめていた。
左右をガウルとカイトが固め、背後からはシリウスの冷涼な魔力が守護の膜となってレオを包み込んでいる。

「レオ、顔を上げろ。……俺たちがついている。あんな奴らに、二度は指一本触れさせん」

ガウルがレオの肩を抱き寄せ、その大きな掌に力を込めた。
鎧越しに伝わるガウルの激しい鼓動。
それはレオへの愛しさと、敵への底知れない怒りが混ざり合った、猛烈な「熱」だった。

「そうっすよ! レオさんは、自分たちが絶対に守るっす! あいつら、まとめて吹き飛ばしてやるっす!」

カイトがレオの前に立ち、腰の剣を引き抜いた。
騎士の家柄を捨て、一人の「レオの盾」として生きることを決めた少年の背中は、出会った頃よりもずっと大きく、頼もしく見えた。

古城の奥へと進むにつれ、空気はさらに重く、どろりとした感触に変わっていく。
最深部にある大講堂の扉を開けた瞬間、レオたちの前に一人の老人が立ちはだかった。
白髪を振り乱し、狂気に満ちた瞳を輝かせるその男こそ、組織『銀の目』の教祖、バルドルだった。

「……来たか。至純の『器』と、それに魅入られた愚かな守護者どもよ」

バルドルが両手を広げると、背後の祭壇から禍々しい闇の霧が噴き出した。
その中心に浮かんでいるのは、不気味に脈打つ巨大な黒い結晶。

「お前たちの持つ『愛』など、この偉大なる邪神の前では無に等しい。……さあ、レオよ。君の中に眠る光を解き放て。その光こそが、邪神を覚醒させる最後の鍵なのだ」

「……ふざけるな。レオの光は、お前のような屑のためにあるんじゃない」

シリウスが冷酷に言い放ち、杖を構えた。
シリウスの全身から青白い火花が飛び散り、魔導師としての限界を超えた魔力が大講堂の空気を震わせる。

「レオは、僕たちが愛でるために存在しているんだ。……君が彼から一滴でも光を奪おうというのなら、その魂ごと次元の隙間に閉じ込めてあげよう」

シリウスの言葉は、愛の告白というにはあまりに傲慢で、けれど誰よりもレオに深く執着していることを示していた。
レオは三人の背中を見つめながら、自分の中に眠る『加護』の力が、彼らの感情に呼応して激しく波打つのを感じていた。

「……みんな。僕、やるよ。……僕の力、みんなに使ってほしい」

レオが黄金色に輝く瞳で、三人の男たちを見つめた。
その無垢な献身が、男たちの理性を、そして力を極限まで引き上げる。

「ああ。……あんたのその力、一滴も残さず俺が受け止めてやる」

ガウルが咆哮を上げ、大剣を振り上げた。

「自分、レオさんのためなら、神様にだって喧嘩を売るっす!」

カイトが地面を蹴り、光速の突撃を開始する。

「……ふふ、最高の舞台だね。レオ、君のその美しい輝きを、僕たちの勝利で彩ってあげるよ」

シリウスの魔法が、夜空を埋め尽くす流星のように降り注ぐ。

決戦の火蓋は、切って落とされた。
邪神を奉ずる狂信者たちと、一人の少年を愛し抜く最強の男たち。
聖域を舞台にした最後の戦いが、レオの純粋な祈りと三人の烈しい執情を乗せて、加速していく。

「(……僕がみんなを支える。みんなが僕を守ってくれる。……これが、僕たちの……愛の形なんだ)」

レオは光の翼を広げ、三人の獣たちに『加護』を注ぎ込んだ。
その輝きは、絶望の闇を焼き払い、運命の歯車を狂おしく回し始めるのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

龍は精霊の愛し子を愛でる

林 業
BL
竜人族の騎士団団長サンムーンは人の子を嫁にしている。 その子は精霊に愛されているが、人族からは嫌われた子供だった。 王族の養子として、騎士団長の嫁として今日も楽しく自由に生きていく。

運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…

こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』  ある日、教室中に響いた声だ。  ……この言い方には語弊があった。  正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。  テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。  問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。 *当作品はカクヨム様でも掲載しております。

無愛想な氷の貴公子は臆病な僕だけを逃さない~十年の片想いが溶かされるまで~

たら昆布
BL
執着ヤンデレ攻め×一途受け

姉の代わりに舞踏会に行ったら呪われた第三王子の初恋を奪ってしまった

近井とお
BL
幼少期、ユーリは姉によく似ていることから彼女の代わりに社交の場に出席することが多々あった。ある舞踏会の夜、中庭に姿を眩ませたユーリに誰かがぶつかってくる。その正体は呪われていると噂の第三王子であったが、ぶつかられたことに腹を立てたユーリは強気に接し、ダンスを踊った後、彼を捜している気配を感じてからかいながら立ち去る。 それから数年後、第三王子は初恋の令嬢を探し始めたが、それはユーリに違いなく……。 初恋の相手を捜す第三王子×軽口令息

悪役会計様に転生した俺は、生徒会長に媚び売って生き残る

桜城 寧
BL
処刑された記憶とともに、BLゲームに登場する悪役会計に転生したことに気付く。処刑されないために、チャラ男としての仮面を被り、生徒会長に媚び売ったり、どうにか能力を駆使したりして生きてたら、色々な人に構われる話。

【完結】僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました

楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。 ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。 喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。   「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」 契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。 エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。 ⭐︎表紙イラストは針山糸様に描いていただきました

処理中です...