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23話
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「……ここが、奴らの総本山か。吐き気がするほど淀んだ魔力だね」
聖都の北方に位置する、断崖絶壁に囲まれた古城。
かつて聖者たちが祈りを捧げたというその場所は、今や組織『銀の目』の手によって、邪悪な魔力が渦巻く「負の聖域」へと変貌していた。
シリウスが杖の先から放つ探知の魔法が、重苦しい闇を切り裂く。
レオは三人の男たちに囲まれるようにして、その中心で震える手を握りしめていた。
左右をガウルとカイトが固め、背後からはシリウスの冷涼な魔力が守護の膜となってレオを包み込んでいる。
「レオ、顔を上げろ。……俺たちがついている。あんな奴らに、二度は指一本触れさせん」
ガウルがレオの肩を抱き寄せ、その大きな掌に力を込めた。
鎧越しに伝わるガウルの激しい鼓動。
それはレオへの愛しさと、敵への底知れない怒りが混ざり合った、猛烈な「熱」だった。
「そうっすよ! レオさんは、自分たちが絶対に守るっす! あいつら、まとめて吹き飛ばしてやるっす!」
カイトがレオの前に立ち、腰の剣を引き抜いた。
騎士の家柄を捨て、一人の「レオの盾」として生きることを決めた少年の背中は、出会った頃よりもずっと大きく、頼もしく見えた。
古城の奥へと進むにつれ、空気はさらに重く、どろりとした感触に変わっていく。
最深部にある大講堂の扉を開けた瞬間、レオたちの前に一人の老人が立ちはだかった。
白髪を振り乱し、狂気に満ちた瞳を輝かせるその男こそ、組織『銀の目』の教祖、バルドルだった。
「……来たか。至純の『器』と、それに魅入られた愚かな守護者どもよ」
バルドルが両手を広げると、背後の祭壇から禍々しい闇の霧が噴き出した。
その中心に浮かんでいるのは、不気味に脈打つ巨大な黒い結晶。
「お前たちの持つ『愛』など、この偉大なる邪神の前では無に等しい。……さあ、レオよ。君の中に眠る光を解き放て。その光こそが、邪神を覚醒させる最後の鍵なのだ」
「……ふざけるな。レオの光は、お前のような屑のためにあるんじゃない」
シリウスが冷酷に言い放ち、杖を構えた。
シリウスの全身から青白い火花が飛び散り、魔導師としての限界を超えた魔力が大講堂の空気を震わせる。
「レオは、僕たちが愛でるために存在しているんだ。……君が彼から一滴でも光を奪おうというのなら、その魂ごと次元の隙間に閉じ込めてあげよう」
シリウスの言葉は、愛の告白というにはあまりに傲慢で、けれど誰よりもレオに深く執着していることを示していた。
レオは三人の背中を見つめながら、自分の中に眠る『加護』の力が、彼らの感情に呼応して激しく波打つのを感じていた。
「……みんな。僕、やるよ。……僕の力、みんなに使ってほしい」
レオが黄金色に輝く瞳で、三人の男たちを見つめた。
その無垢な献身が、男たちの理性を、そして力を極限まで引き上げる。
「ああ。……あんたのその力、一滴も残さず俺が受け止めてやる」
ガウルが咆哮を上げ、大剣を振り上げた。
「自分、レオさんのためなら、神様にだって喧嘩を売るっす!」
カイトが地面を蹴り、光速の突撃を開始する。
「……ふふ、最高の舞台だね。レオ、君のその美しい輝きを、僕たちの勝利で彩ってあげるよ」
シリウスの魔法が、夜空を埋め尽くす流星のように降り注ぐ。
決戦の火蓋は、切って落とされた。
邪神を奉ずる狂信者たちと、一人の少年を愛し抜く最強の男たち。
聖域を舞台にした最後の戦いが、レオの純粋な祈りと三人の烈しい執情を乗せて、加速していく。
「(……僕がみんなを支える。みんなが僕を守ってくれる。……これが、僕たちの……愛の形なんだ)」
レオは光の翼を広げ、三人の獣たちに『加護』を注ぎ込んだ。
その輝きは、絶望の闇を焼き払い、運命の歯車を狂おしく回し始めるのだった。
聖都の北方に位置する、断崖絶壁に囲まれた古城。
かつて聖者たちが祈りを捧げたというその場所は、今や組織『銀の目』の手によって、邪悪な魔力が渦巻く「負の聖域」へと変貌していた。
シリウスが杖の先から放つ探知の魔法が、重苦しい闇を切り裂く。
レオは三人の男たちに囲まれるようにして、その中心で震える手を握りしめていた。
左右をガウルとカイトが固め、背後からはシリウスの冷涼な魔力が守護の膜となってレオを包み込んでいる。
「レオ、顔を上げろ。……俺たちがついている。あんな奴らに、二度は指一本触れさせん」
ガウルがレオの肩を抱き寄せ、その大きな掌に力を込めた。
鎧越しに伝わるガウルの激しい鼓動。
それはレオへの愛しさと、敵への底知れない怒りが混ざり合った、猛烈な「熱」だった。
「そうっすよ! レオさんは、自分たちが絶対に守るっす! あいつら、まとめて吹き飛ばしてやるっす!」
カイトがレオの前に立ち、腰の剣を引き抜いた。
騎士の家柄を捨て、一人の「レオの盾」として生きることを決めた少年の背中は、出会った頃よりもずっと大きく、頼もしく見えた。
古城の奥へと進むにつれ、空気はさらに重く、どろりとした感触に変わっていく。
最深部にある大講堂の扉を開けた瞬間、レオたちの前に一人の老人が立ちはだかった。
白髪を振り乱し、狂気に満ちた瞳を輝かせるその男こそ、組織『銀の目』の教祖、バルドルだった。
「……来たか。至純の『器』と、それに魅入られた愚かな守護者どもよ」
バルドルが両手を広げると、背後の祭壇から禍々しい闇の霧が噴き出した。
その中心に浮かんでいるのは、不気味に脈打つ巨大な黒い結晶。
「お前たちの持つ『愛』など、この偉大なる邪神の前では無に等しい。……さあ、レオよ。君の中に眠る光を解き放て。その光こそが、邪神を覚醒させる最後の鍵なのだ」
「……ふざけるな。レオの光は、お前のような屑のためにあるんじゃない」
シリウスが冷酷に言い放ち、杖を構えた。
シリウスの全身から青白い火花が飛び散り、魔導師としての限界を超えた魔力が大講堂の空気を震わせる。
「レオは、僕たちが愛でるために存在しているんだ。……君が彼から一滴でも光を奪おうというのなら、その魂ごと次元の隙間に閉じ込めてあげよう」
シリウスの言葉は、愛の告白というにはあまりに傲慢で、けれど誰よりもレオに深く執着していることを示していた。
レオは三人の背中を見つめながら、自分の中に眠る『加護』の力が、彼らの感情に呼応して激しく波打つのを感じていた。
「……みんな。僕、やるよ。……僕の力、みんなに使ってほしい」
レオが黄金色に輝く瞳で、三人の男たちを見つめた。
その無垢な献身が、男たちの理性を、そして力を極限まで引き上げる。
「ああ。……あんたのその力、一滴も残さず俺が受け止めてやる」
ガウルが咆哮を上げ、大剣を振り上げた。
「自分、レオさんのためなら、神様にだって喧嘩を売るっす!」
カイトが地面を蹴り、光速の突撃を開始する。
「……ふふ、最高の舞台だね。レオ、君のその美しい輝きを、僕たちの勝利で彩ってあげるよ」
シリウスの魔法が、夜空を埋め尽くす流星のように降り注ぐ。
決戦の火蓋は、切って落とされた。
邪神を奉ずる狂信者たちと、一人の少年を愛し抜く最強の男たち。
聖域を舞台にした最後の戦いが、レオの純粋な祈りと三人の烈しい執情を乗せて、加速していく。
「(……僕がみんなを支える。みんなが僕を守ってくれる。……これが、僕たちの……愛の形なんだ)」
レオは光の翼を広げ、三人の獣たちに『加護』を注ぎ込んだ。
その輝きは、絶望の闇を焼き払い、運命の歯車を狂おしく回し始めるのだった。
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