お人好しな新米冒険者は最強パーティに愛で尽くされる~行き倒れ戦士と毒舌魔導師、そして大型犬な後継者に囲まれて~

たら昆布

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24話

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「――これでおしまいだ! ガウル、シリウスさん、カイトくん! 僕の全部を、受け取って!」


レオの絶叫が、不浄な大講堂に木霊した。
黄金色に燃え上がるレオの瞳から、涙とともに溢れ出したのは、世界の理さえも書き換えるような至純の光。
背後に展開された光の翼が、古城を包む闇を物理的に削り取り、浄化の炎となって吹き荒れる。


その光を一身に浴びた三人の男たちの身体が、神々しいまでの輝きを放った。


「おおおおおおおっ!」


ガウルが咆哮し、巨大化した聖剣を振り下ろす。
邪神の核である黒い結晶に、一文字の亀裂が走った。


「墜ちなさい、泥にまみれた偶像。――『極光の裁き(ルミナス・ジャッジメント)』」


シリウスの杖から放たれたのは、絶対零度の光線。
亀裂に潜り込んだ魔法が、結晶を内側から凍結させ、砕き、無へと還していく。


「これで……トドメっす! レオさんの光を汚す奴は、自分が許さないっす!」


カイトが光の弾丸と化して突撃し、砕け散る寸前の結晶に、魂を込めた一撃を叩き込んだ。


パリン、と。
世界の終わりを告げるような、けれどどこか美しい音が響き、巨大な黒い結晶は数千の破片となって霧散した。
同時に、古城を支えていた魔力が消失し、天井が轟音を立てて崩れ始める。


「……っ、あ……」


すべての力を出し切ったレオの身体から、急速に光が失われていく。
光の翼が消え、糸の切れた人形のように崩れ落ちるレオ。
その細い身体を、地面に触れる前に受け止めたのは、三つの異なる「熱」だった。


「レオ! しっかりしろ、レオ!」


ガウルがレオを正面から抱きかかえ、自分の太い首筋にレオの顔を押し当てた。
戦いの余韻で激しく波打つガウルの胸板。
その熱い鼓動が、冷え切ったレオの頬に命の脈動を伝えてくる。


「……ふぅ。……無事だね。魔力回路に損傷はない。ただの消耗だよ……よかった」


シリウスが膝をつき、震える指先でレオの額に触れた。
冷静さを装っているが、シリウスの端正な顔は青ざめ、その瞳には愛する者を失いかけたことへの、底知れない恐怖が貼り付いていた。
彼はレオの首筋に鼻を寄せ、生きている証である甘い香りを、肺の奥まで深く吸い込んだ。


「レオさん……レオさんっ! よかったっす、本当によかったっす……!」


カイトがレオの腰に抱きつき、子供のように泣きじゃくった。
レオの身体に回されたカイトの腕は、もう二度と離さないと言わんばかりに、強く、執拗に力を込めている。


「……ん、……みんな……」


レオがゆっくりと琥珀色の瞳を開けた。
視界が潤んでよく見えないが、自分を囲む三人の男たちの、必死で、狂おしいほどに情愛に満ちた顔だけははっきりと分かった。


「よかった。……みんな、怪我してない……?」


「馬鹿野郎。自分の心配をしろと言っているだろう」


ガウルがレオの頬を大きな掌で包み込み、そのまま深い口付けを落とした。
唇から伝わる、ガウルの渇望。
お互いの吐息が混ざり合い、レオの脳が甘い痺れに包まれる。


「……レオ。君はもう、僕たちの命そのものだ。君が消えれば、僕たちもこの世界を焼き払って後を追うだろうね」


シリウスがレオの手を取り、指の一本一本に、跡を残すような執拗なキスを刻んでいく。
シリウスの青い瞳が、レオを完全に閉じ込める檻のように熱く、鋭く光った。


「自分、一生レオさんの足元で生きていくっす。……レオさんのためだけに、この剣を振るうっす!」


カイトがレオの胸元に顔を埋め、服の上からレオの肌に熱い吐息を吹きかける。


崩れゆく古城の中で、四人の体温は一つに溶け合っていた。
死線を越えたことで、彼らの独占欲はもはや、誰にも止められない領域へと達していた。


「(……ああ。僕、この人たちのために、自分の力を使いたい。……この人たちの熱に、ずっと触れていたい)」


レオは、自分を抱きしめる三人の腕に、力を振り絞って手を回した。
これが自分たちの選んだ道だ。
誰に理解されずとも、この歪で、けれどあまりにも濃密な愛の中で、レオは生きていく。


「……帰ろう。俺たちの……レオの家に」


ガウルがレオを横抱きにし、崩落する瓦礫を大剣で薙ぎ払いながら、出口へと歩き出した。
その背中を、シリウスとカイトが守るように、そしてレオを見つめながら続いていく。


聖域の闇は晴れ、東の空から、新しい世界の夜明けを告げる光が差し込んでいた。
けれど、レオを巡る愛の嵐は、ここからさらにその激しさを増していくことを、四人はまだ知らなかった。
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