25 / 34
25話
しおりを挟む
聖域での激戦から数日が経ち、レオたちは聖都の静かな別荘で休息の時を過ごしていた。
窓の外には穏やかな庭園が広がり、小鳥のさえずりが聞こえる。
しかし、レオの心には、古傷のような小さな痛みが疼き続けていた。
「……ねえ、みんな。本当に僕でいいのかな」
ふと漏れた呟きに、部屋にいた三人の視線が一斉に突き刺さった。
レオは天蓋付きの大きなベッドの上で、自分の細い指先を見つめながら言葉を続ける。
「村にいた頃、僕はいつも『お節介で無能』だって言われていたんだ。何をやっても中途半端で、誰の役にも立てなくて……。だから、こんなにすごいみんなが、どうして僕なんかのために命を懸けてくれるのか、時々分からなくなるんだよ」
レオの琥珀色の瞳が、過去の影に曇る。
自分には価値がない。
そう刷り込まれてきた二十年間の時間は、最強の男たちに愛されてなお、レオの心を縛り付けていた。
「……誰がそんな寝言を言った。その村の連中を、今から根こそぎ叩き斬ってきてもいいんだぞ」
地響きのような低音とともに、ガウルがベッドの縁に腰を下ろした。
ガウルの大きな掌がレオの頬を包み込み、強引に自分の方を向かせる。
至近距離で見つめ合う視線。
ガウルの瞳には、烈しい怒りと、それを上回る深い慈しみが宿っていた。
「レオ、よく聞け。あんたがいなければ、俺はあの森で朽ち果てていた。俺に生きる意味を与えたのは、あんたのその『お節介』だ。……俺にとっては、あんたこそが唯一の救いなんだよ」
ガウルはレオの額に自分の額を押し当てた。
混ざり合う熱い吐息。
ガウルの硬い胸板から伝わる激しい鼓動が、レオの「無価値観」を力ずくで書き換えていく。
「やれやれ。野蛮な戦士の言葉だけでは、まだ不安なようだね」
シリウスが優雅な足取りで近づき、レオの反対側に座った。
彼はレオの手を取り、指先にそっと唇を寄せる。
ひんやりとした、けれど情熱を秘めた瞳がレオを射抜いた。
「レオ、君のその資質――至純の光は、君の心が美しくなければ決して目覚めなかったものだ。君を無能だと笑った連中は、太陽の眩しさを理解できない土竜(もぐら)と同じだよ。……君は僕の知的好奇心を満たし、冷え切った魔力を熱くさせてくれる。僕にとって、君以上の価値を持つ存在はこの世に存在しない」
シリウスの細長い指が、レオの首筋を優しくなぞる。
わずかな体温の変化に敏感に反応し、レオの身体が甘く震えた。
シリウスはレオの耳朶を軽く噛み、熱い言葉を流し込む。
「君を否定する過去があるなら、僕たちがそのすべてを塗りつぶしてあげる。……いいね、レオ?」
「……自分も、自分も言いたいっす!」
カイトがレオの足元から這い上がり、レオの腰にがっしりと抱きついた。
若さ溢れる太陽のような笑顔が、レオの視界を明るく染める。
「自分、名門の重圧に負けそうだった時、レオさんに声をかけてもらって救われたんす!『一緒に来ない?』って言ってくれたあの瞬間、自分、生まれて初めて自由になれた気がしたっす!……レオさんは、最高のリーダーで、最高に可愛い自分のお姫様っす!」
「お、お姫様なんて……っ」
「自分にとってはそうっす! レオさんの笑顔一つで、自分はどこまででも強くなれるんす。価値がないなんて、二度と言わないでほしいっす!」
カイトがレオの胸元に顔を埋め、大型犬のように頬をすり寄せる。
三方向から注がれる、圧倒的な全肯定。
三つの異なる「熱」が、レオの冷えていた心の空洞を、愛という名の蜜で満たしていく。
レオの目から、一筋の涙がこぼれ落ちた。
それは悲しみの涙ではなく、ようやく「ここにいてもいいんだ」と自分を許せた、解放の涙だった。
「……ありがとう。……僕、もう迷わないよ。みんなが僕を必要だって言ってくれるなら、僕は僕のために……みんなの傍にいたい」
レオが泣き笑いの表情で告げると、男たちの理性が一気に弾けた。
「……ああ。一生離さん。あんたのすべてを、俺が守り抜く」
ガウルがレオの腰を引き寄せ、深い口付けを交わす。
「ふふ、よく言えたね。……ご褒美に、今夜はたっぷりとかわいがってあげよう」
シリウスがレオのシャツのボタンを一つ、また一つと外していく。
「レオさん! 自分、世界一幸せにするっすよ!」
カイトがレオの首筋に、熱いキスマークを刻みつけた。
過去のトラウマは、三人の獣たちの烈しい愛によって、溶けるように消え去っていった。
レオは今、初めて自分の価値を自覚した。
それは、最強の男たちに愛でられ、求められ、独占されるという、甘美で残酷な宿命。
「(……ああ。僕、幸せすぎて、どうにかなっちゃいそうだよ……っ)」
琥珀色の瞳を潤ませ、レオは三人の熱の中に身を投じた。
一人の少年が、三人の男たちの『愛し子』として完成した、幸福な午後。
レオの新しい人生は、ここから本当の意味で始まろうとしていた。
窓の外には穏やかな庭園が広がり、小鳥のさえずりが聞こえる。
しかし、レオの心には、古傷のような小さな痛みが疼き続けていた。
「……ねえ、みんな。本当に僕でいいのかな」
ふと漏れた呟きに、部屋にいた三人の視線が一斉に突き刺さった。
レオは天蓋付きの大きなベッドの上で、自分の細い指先を見つめながら言葉を続ける。
「村にいた頃、僕はいつも『お節介で無能』だって言われていたんだ。何をやっても中途半端で、誰の役にも立てなくて……。だから、こんなにすごいみんなが、どうして僕なんかのために命を懸けてくれるのか、時々分からなくなるんだよ」
レオの琥珀色の瞳が、過去の影に曇る。
自分には価値がない。
そう刷り込まれてきた二十年間の時間は、最強の男たちに愛されてなお、レオの心を縛り付けていた。
「……誰がそんな寝言を言った。その村の連中を、今から根こそぎ叩き斬ってきてもいいんだぞ」
地響きのような低音とともに、ガウルがベッドの縁に腰を下ろした。
ガウルの大きな掌がレオの頬を包み込み、強引に自分の方を向かせる。
至近距離で見つめ合う視線。
ガウルの瞳には、烈しい怒りと、それを上回る深い慈しみが宿っていた。
「レオ、よく聞け。あんたがいなければ、俺はあの森で朽ち果てていた。俺に生きる意味を与えたのは、あんたのその『お節介』だ。……俺にとっては、あんたこそが唯一の救いなんだよ」
ガウルはレオの額に自分の額を押し当てた。
混ざり合う熱い吐息。
ガウルの硬い胸板から伝わる激しい鼓動が、レオの「無価値観」を力ずくで書き換えていく。
「やれやれ。野蛮な戦士の言葉だけでは、まだ不安なようだね」
シリウスが優雅な足取りで近づき、レオの反対側に座った。
彼はレオの手を取り、指先にそっと唇を寄せる。
ひんやりとした、けれど情熱を秘めた瞳がレオを射抜いた。
「レオ、君のその資質――至純の光は、君の心が美しくなければ決して目覚めなかったものだ。君を無能だと笑った連中は、太陽の眩しさを理解できない土竜(もぐら)と同じだよ。……君は僕の知的好奇心を満たし、冷え切った魔力を熱くさせてくれる。僕にとって、君以上の価値を持つ存在はこの世に存在しない」
シリウスの細長い指が、レオの首筋を優しくなぞる。
わずかな体温の変化に敏感に反応し、レオの身体が甘く震えた。
シリウスはレオの耳朶を軽く噛み、熱い言葉を流し込む。
「君を否定する過去があるなら、僕たちがそのすべてを塗りつぶしてあげる。……いいね、レオ?」
「……自分も、自分も言いたいっす!」
カイトがレオの足元から這い上がり、レオの腰にがっしりと抱きついた。
若さ溢れる太陽のような笑顔が、レオの視界を明るく染める。
「自分、名門の重圧に負けそうだった時、レオさんに声をかけてもらって救われたんす!『一緒に来ない?』って言ってくれたあの瞬間、自分、生まれて初めて自由になれた気がしたっす!……レオさんは、最高のリーダーで、最高に可愛い自分のお姫様っす!」
「お、お姫様なんて……っ」
「自分にとってはそうっす! レオさんの笑顔一つで、自分はどこまででも強くなれるんす。価値がないなんて、二度と言わないでほしいっす!」
カイトがレオの胸元に顔を埋め、大型犬のように頬をすり寄せる。
三方向から注がれる、圧倒的な全肯定。
三つの異なる「熱」が、レオの冷えていた心の空洞を、愛という名の蜜で満たしていく。
レオの目から、一筋の涙がこぼれ落ちた。
それは悲しみの涙ではなく、ようやく「ここにいてもいいんだ」と自分を許せた、解放の涙だった。
「……ありがとう。……僕、もう迷わないよ。みんなが僕を必要だって言ってくれるなら、僕は僕のために……みんなの傍にいたい」
レオが泣き笑いの表情で告げると、男たちの理性が一気に弾けた。
「……ああ。一生離さん。あんたのすべてを、俺が守り抜く」
ガウルがレオの腰を引き寄せ、深い口付けを交わす。
「ふふ、よく言えたね。……ご褒美に、今夜はたっぷりとかわいがってあげよう」
シリウスがレオのシャツのボタンを一つ、また一つと外していく。
「レオさん! 自分、世界一幸せにするっすよ!」
カイトがレオの首筋に、熱いキスマークを刻みつけた。
過去のトラウマは、三人の獣たちの烈しい愛によって、溶けるように消え去っていった。
レオは今、初めて自分の価値を自覚した。
それは、最強の男たちに愛でられ、求められ、独占されるという、甘美で残酷な宿命。
「(……ああ。僕、幸せすぎて、どうにかなっちゃいそうだよ……っ)」
琥珀色の瞳を潤ませ、レオは三人の熱の中に身を投じた。
一人の少年が、三人の男たちの『愛し子』として完成した、幸福な午後。
レオの新しい人生は、ここから本当の意味で始まろうとしていた。
29
あなたにおすすめの小説
龍は精霊の愛し子を愛でる
林 業
BL
竜人族の騎士団団長サンムーンは人の子を嫁にしている。
その子は精霊に愛されているが、人族からは嫌われた子供だった。
王族の養子として、騎士団長の嫁として今日も楽しく自由に生きていく。
運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…
こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』
ある日、教室中に響いた声だ。
……この言い方には語弊があった。
正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。
テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。
問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。
*当作品はカクヨム様でも掲載しております。
姉の代わりに舞踏会に行ったら呪われた第三王子の初恋を奪ってしまった
近井とお
BL
幼少期、ユーリは姉によく似ていることから彼女の代わりに社交の場に出席することが多々あった。ある舞踏会の夜、中庭に姿を眩ませたユーリに誰かがぶつかってくる。その正体は呪われていると噂の第三王子であったが、ぶつかられたことに腹を立てたユーリは強気に接し、ダンスを踊った後、彼を捜している気配を感じてからかいながら立ち去る。
それから数年後、第三王子は初恋の令嬢を探し始めたが、それはユーリに違いなく……。
初恋の相手を捜す第三王子×軽口令息
悪役会計様に転生した俺は、生徒会長に媚び売って生き残る
桜城 寧
BL
処刑された記憶とともに、BLゲームに登場する悪役会計に転生したことに気付く。処刑されないために、チャラ男としての仮面を被り、生徒会長に媚び売ったり、どうにか能力を駆使したりして生きてたら、色々な人に構われる話。
【完結】僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。
⭐︎表紙イラストは針山糸様に描いていただきました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる