お人好しな新米冒険者は最強パーティに愛で尽くされる~行き倒れ戦士と毒舌魔導師、そして大型犬な後継者に囲まれて~

たら昆布

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27話

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「……ん、……うう、重い……っ」


聖都の朝、レオは心地よい倦怠感とともに目を覚ました。
だが、体を起こそうとした瞬間に、逃げ場のない「重圧」に気づいて動きを止める。


右側からは、ガウルの太い腕がレオの腹部を横断するようにがっしりとホールドし、背中には岩のように硬い胸板が密着している。
左側からは、シリウスがレオの首筋に顔を埋め、長い足をレオの足に絡めるようにして密着していた。
そして足元には、カイトがレオのふくらはぎを抱きしめるようにして、大型犬のように丸まって眠っている。


「……みんな、朝だよ。起きて……っ」


レオがひそひそ声で呼びかけると、まず反応したのはガウルだった。
彼は眠りから覚めるのと同時に、無意識に腕の力を強め、レオを自分の方へと引き寄せる。


「……あと少しだ。あんたの体温が、一番心地いい時間なんだ……」


地響きのような低音が耳元で響き、レオのうなじをガウルの熱い吐息が掠めた。
続いて、シリウスが薄く目を開け、冷涼ながらも熱を帯びた瞳でレオを射抜く。


「ふふ、おはようレオ。朝から元気なケモノたちに囲まれて、君も幸せだろう?」


シリウスはレオの耳朶を甘く噛み、そのまま鎖骨のあたりを指先でなぞった。
その指先が通るたび、レオの肌は粟立ち、甘い戦慄が走る。


「自分も起きてるっす! レオさんの匂い、朝が一番濃くて最高っす!」


足元からカイトが這い上がり、レオの顔のすぐ横に潜り込んできた。
キラキラとした瞳に見つめられ、レオの顔は一瞬で真っ赤に染まる。


結局、三人の執拗なモーニングルーティン(という名の愛撫)を潜り抜けるのに一時間を要し、レオたちがギルドに到着したのは太陽が高く昇った頃だった。


今の彼らは、聖都のみならず王国中で知らぬ者のいない存在となっていた。
『聖なる加護』を持つ少年レオと、彼を絶対的に守護する三人の最強の男たち。
ギルドに入った瞬間、かつての嘲笑や蔑みの視線は消え失せ、代わりに畏怖と、そして「絶対にあの少年に近づいてはならない」という暗黙のルールが場を支配していた。


「あ、レオさん! おはようございますっ!」


受付のミリーが、引き攣った笑顔でレオを迎える。
彼女の視線の先では、ガウルが周囲の冒険者を威圧するように睨みを利かせ、シリウスが優雅に杖を回しながら不審な動きがないか探知魔法を走らせ、カイトがレオの腰に腕を回して「俺のものだ」と言わんばかりの圧を放っていた。


「ミリーさん、今日の依頼……あ、何か簡単な薬草採取とかありますか?」


レオがおずおずと尋ねた、その時。


「おいおい、そんな美少年が薬草摘みなんて、宝の持ち腐れだろう?」


ギルドの奥から、豪奢な装飾を施した鎧を纏った男が歩み寄ってきた。
Aランクパーティのリーダーを自称する男、バロン。
彼は最近この街に来たばかりで、レオたちの「本当の恐ろしさ」を知らなかった。


バロンはレオの前に立つと、品定めをするような下卑た視線でその肢体を舐めるように見た。


「お前が噂の『器』か。そんなひょろい連中より、俺のパーティに来い。夜の相手も含めて、たっぷりと可愛がってやるぜ」


バロンがレオの細い顎に手を伸ばそうとした。


その瞬間、ギルド内の気温が数度下がった。


「――その指、二度と使えなくしてやろうか」


シリウスの声は、絶対零度の殺気を孕んでいた。
バロンの指先がレオに触れる数ミリ前で、空間が凍りついたように静止する。


「なっ、なんだ……動けな……っ」


「あんた、死にたいのか。……レオに触れていいのは、俺たちだけだと言ったはずだ」


ガウルがバロンの背後に音もなく立ち、その巨大な掌でバロンの肩を掴んだ。
メキメキと、装飾鎧がひしゃげる不気味な音が響く。
ガウルの瞳は、もはや獲物を屠る前の獣そのものだった。


「自分も我慢の限界っす。レオさんをそんな汚い目で見る奴は、目玉ごと抉ってやるっす!」


カイトが剣の柄に手をかけ、抜剣の寸前で猛烈な闘気を放つ。
若さゆえの荒削りな殺意が、バロンの精神を容赦なく削り取っていく。


「あ、あの! 三人とも、やめて! ここはギルドなんだから!」


レオが慌てて三人の間に割って入った。
すると、あんなに獰猛な殺気を放っていた男たちが、嘘のように静まり返る。


「……レオがそう言うなら、今回は命だけは助けてやる。失せろ、ゴミが」


ガウルがバロンをゴミ袋のように放り投げると、バロンは腰を抜かし、失禁しながら逃げ出して行った。
周囲の冒険者たちは、「またか……」という顔で、遠巻きにその光景を眺めていた。


「(……本当、みんな過保護すぎるよ……っ)」


レオは溜息をつきながらも、自分を守るために牙を剥く三人の背中に、愛おしさを感じずにはいられなかった。
村で誰にも見向きもされなかった自分が、今はこうして、世界で一番強い男たちに独占されている。


依頼を受け、街の外へと向かう四人の足取りは軽やかだった。
レオを真ん中に挟み、左右と背後から向けられる、逃げ場のない熱い視線と執着。
それはもはや日常の一部となり、レオの身体の一部となっていた。


「レオ、今日は一段と可愛いな。……森に入ったら、誰の目も気にせず君を愛でられる」


シリウスがレオの耳元で妖しく囁く。


「……ああ。加護の訓練という名目で、たっぷりと俺の熱を刻んでやる」


ガウルがレオの手を強く握りしめる。


「自分、レオさんのことなら一生飽きないっす! 今日のご褒美、楽しみにしてるっすよ!」


カイトがレオの反対側の腕に抱きつき、幸せそうに頬をすり寄せた。


最強のパーティによる、史上最高に甘く過保護な冒険。
逆転した日常の中で、レオは三人の熱に浮かされながら、どこまでも続く幸福な旅路を歩んでいく。


「(……僕、やっぱり、この人たちと出会えてよかった)」


レオは琥珀色の瞳を細め、自分を愛でる三人の男たちに、最高に無防備な笑顔を向けた。
その笑顔がまた、三人の独占欲にさらなる火をつけることになるとも知らずに。
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