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30話
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「……ねえ、ガウル。この子、やっぱり僕に似てるかな?」
聖都の喧騒を離れた丘の上の邸宅。
柔らかな午後の陽光が差し込むリビングで、レオは腕の中に抱いた「奇跡」を見つめて微笑んだ。
それは数ヶ月前、レオの強大すぎる『加護』の魔力が、聖域の精霊と共鳴して結晶化し、人の形を成して生まれた少年――ルカだった。
外見はレオにそっくりな栗色の髪と琥珀色の瞳。
けれど、その中には三人の男たちの魔力の断片も混ざり合っている。
「……ああ。あんたに似て、お人好しそうな顔をしている。だが、魔力の質はシリウスの狡猾さと、カイトの騒々しさを引き継いでいるな」
ガウルが背後からレオを包み込むように抱き寄せ、大きな掌でレオの頭と、小さなルカの頭を同時に撫でた。
ガウルの岩のような逞しい腕が、レオの細い肩を独占するように囲い込む。
数年経っても、ガウルのレオに対する「盾」としての、そして一人の男としての執着は増すばかりだった。
「失礼だね。僕の魔力が混ざっているからこそ、この子はこれほどまでに美しいんだ。……さあルカ、パパのところにおいで」
シリウスが優雅に歩み寄り、レオの腕からルカをひょいと抱き上げた。
シリウスはルカの額に自分の額を押し当て、魔力を通わせる。
冷涼で心地よい魔力の流れに、ルカは「パパ!」と嬉しそうに声を上げた。
「ずるいっすよ、シリウスさん! 次は自分の番っす! ルカ、今日は一緒に剣の素振りをするって約束したっすよね!」
カイトが訓練場から汗を滴らせて戻ってきた。
二十代に入り、騎士としての風格と逞しさが増したカイトだが、レオとルカの前では相変わらずの「大型犬」だ。
カイトはレオの腰に腕を回し、その首筋に顔を埋めて深く息を吸い込んだ。
「わわっ、カイトくん、汗が……っ。ルカもまだ小さいんだから、剣なんて早いよ」
「いいえ、レオさん! 自分、ルカにレオさんを守るための技術を叩き込むっす。自分たちがいなくても、レオさんを誰にも渡さないために!」
「……結局、独占欲の塊じゃないか」
シリウスが呆れたように鼻を鳴らすが、その瞳にはカイトと同じ、レオという「聖域」を守り抜こうとする烈しい光が宿っていた。
レオは三人の男たちに囲まれ、賑やかな笑い声の中で胸を熱くする。
かつて無能だと疎まれていた少年は、今や最強の三人に愛され、そして新しい命を共に育む幸福の中にいた。
けれど、レオは気づいていない。
ルカが生まれたことで、三人の男たちの「レオを誰にも渡したくない」という本能が、さらに危険な領域へと踏み出していることに。
「……レオ、今夜はルカを別室で寝かせる。……いいな?」
ガウルがレオの耳元で、地響きのような低音で囁いた。
大きな掌がレオのシャツの下に滑り込み、敏感な腰のラインを執執になぞり始める。
「えっ、でも、まだ一人じゃ寂しがるかも……」
「ふふ、心配いらないよ。僕が睡眠魔法をかけてあげたからね。……今夜は、僕たち三人の愛を、君の身体の隅々まで思い出させてあげる」
シリウスの冷たい指先が、レオの鎖骨を甘く這う。
「自分も、もう我慢の限界っす! 昼間はルカにレオさんを譲ってるっすから、夜は自分のものっす!」
カイトがレオの反対側の耳朶を、熱い唇で食んだ。
三方向から押し寄せる、逃げ場のない寵愛。
レオはルカを慈しむ「母性」のような穏やかさと、男たちに貪られる「愛し子」としての熱情の狭間で、甘く蕩けるような夜へと誘われていくのだった。
聖都の喧騒を離れた丘の上の邸宅。
柔らかな午後の陽光が差し込むリビングで、レオは腕の中に抱いた「奇跡」を見つめて微笑んだ。
それは数ヶ月前、レオの強大すぎる『加護』の魔力が、聖域の精霊と共鳴して結晶化し、人の形を成して生まれた少年――ルカだった。
外見はレオにそっくりな栗色の髪と琥珀色の瞳。
けれど、その中には三人の男たちの魔力の断片も混ざり合っている。
「……ああ。あんたに似て、お人好しそうな顔をしている。だが、魔力の質はシリウスの狡猾さと、カイトの騒々しさを引き継いでいるな」
ガウルが背後からレオを包み込むように抱き寄せ、大きな掌でレオの頭と、小さなルカの頭を同時に撫でた。
ガウルの岩のような逞しい腕が、レオの細い肩を独占するように囲い込む。
数年経っても、ガウルのレオに対する「盾」としての、そして一人の男としての執着は増すばかりだった。
「失礼だね。僕の魔力が混ざっているからこそ、この子はこれほどまでに美しいんだ。……さあルカ、パパのところにおいで」
シリウスが優雅に歩み寄り、レオの腕からルカをひょいと抱き上げた。
シリウスはルカの額に自分の額を押し当て、魔力を通わせる。
冷涼で心地よい魔力の流れに、ルカは「パパ!」と嬉しそうに声を上げた。
「ずるいっすよ、シリウスさん! 次は自分の番っす! ルカ、今日は一緒に剣の素振りをするって約束したっすよね!」
カイトが訓練場から汗を滴らせて戻ってきた。
二十代に入り、騎士としての風格と逞しさが増したカイトだが、レオとルカの前では相変わらずの「大型犬」だ。
カイトはレオの腰に腕を回し、その首筋に顔を埋めて深く息を吸い込んだ。
「わわっ、カイトくん、汗が……っ。ルカもまだ小さいんだから、剣なんて早いよ」
「いいえ、レオさん! 自分、ルカにレオさんを守るための技術を叩き込むっす。自分たちがいなくても、レオさんを誰にも渡さないために!」
「……結局、独占欲の塊じゃないか」
シリウスが呆れたように鼻を鳴らすが、その瞳にはカイトと同じ、レオという「聖域」を守り抜こうとする烈しい光が宿っていた。
レオは三人の男たちに囲まれ、賑やかな笑い声の中で胸を熱くする。
かつて無能だと疎まれていた少年は、今や最強の三人に愛され、そして新しい命を共に育む幸福の中にいた。
けれど、レオは気づいていない。
ルカが生まれたことで、三人の男たちの「レオを誰にも渡したくない」という本能が、さらに危険な領域へと踏み出していることに。
「……レオ、今夜はルカを別室で寝かせる。……いいな?」
ガウルがレオの耳元で、地響きのような低音で囁いた。
大きな掌がレオのシャツの下に滑り込み、敏感な腰のラインを執執になぞり始める。
「えっ、でも、まだ一人じゃ寂しがるかも……」
「ふふ、心配いらないよ。僕が睡眠魔法をかけてあげたからね。……今夜は、僕たち三人の愛を、君の身体の隅々まで思い出させてあげる」
シリウスの冷たい指先が、レオの鎖骨を甘く這う。
「自分も、もう我慢の限界っす! 昼間はルカにレオさんを譲ってるっすから、夜は自分のものっす!」
カイトがレオの反対側の耳朶を、熱い唇で食んだ。
三方向から押し寄せる、逃げ場のない寵愛。
レオはルカを慈しむ「母性」のような穏やかさと、男たちに貪られる「愛し子」としての熱情の狭間で、甘く蕩けるような夜へと誘われていくのだった。
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