異世界で悪役令嬢として生きる事になったけど、前世の記憶を持ったまま、自分らしく過ごして良いらしい

千晶もーこ

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私が首をかしげると、ジッと見つめられる。

「覚えていないのか?」
「ごめんなさい。」
「馬車の中といえば、分かるか?」

馬車の中…?

『「口付けもしたいのだが。」
「それはできません…。」
「なぜ?」
「お化粧が、崩れてしまいます。」
「そうか…。」
「…帰りなら。」
「楽しみだ。」』

!!

昨夜の行きの馬車の中でのやり取りが頭に浮かび、私は一気に顔が熱くなる。

「思い出したようだな。」
「…はい。」
「では、約束を果たそうか…。」
「待ってください。」

私は近づいてくるジェイクを止める。

「?」
「着替えたい、です…。あ!お化粧も!」

私、スッピンだった!
起きてから今まで気付かなかった。
顔も洗ってないけれど、目やには?ヨダレの跡は?
うわぁーー!

今更なのだが、思わず顔を手で隠す。

「そのままで美しい。」

ジェイクは顔から手を剥がそうとする。

「せめて、顔は洗わせてください!」
「…用意させる。」

私はテーブルについたまま、用意してもらった洗面用具で顔を洗う。
その間、ジェイクもいたので、そちらに背を向けて行なった。

はぁ、さっぱりした。

洗顔が終わると、侍女がすぐに用具を下げに来た。

「ありがとうございます。お湯の温度も丁度良く、気持ち良かったです。」
「!…失礼致します。」

侍女が部屋から出ると、ジェイクは私の横に来た。

「リア、いいか?」
「お化粧していませんし、ドレスでもありません。…良いのですか?」
「昨夜のリアも見惚れるくらい綺麗だったが、今のリアも美しいと思うぞ。それに、ドレス姿でないリアを見れるのは、限られた者だけだろう?俺は嬉しい。」
「そ、そうですか。」

私は恥ずかしくなり、視線を反らす。

「…リア。」

ジェイクに頬を撫でられ視線を戻すと、ジェイクと目が合った。
私が目を閉じると、ジェイクの顔が近づいてくるのが分かる。

そして、私達の唇が重なった。

始めは軽いものだったが、段々と深くなる。

「ん、…ジェ、イク…ふぁ…」
「リア…」
「ふ…んっ…はぁ…」

どうしよう…。気持ちがいい。

「はぁ…やばいな。」

ジェイクが唇を離した。それが寂しく感じて、無意識に追ってしまう。

「もっと…」
「!」

ジェイクは、手で目元を覆い、深呼吸を始めた。

「ジェイク?」
「リア、これ以上は止まれなくなる。」

頭の中がポワンとしていたが、我に返った。

「…!?そ、そうですね!やめましょう!」
「それはそれで、寂しいのだが…。着替えを用意させる。」

そう言うと、ジェイクは部屋を出ていった。
少しすると、リカーナお母様と侍女数人がドレスを持ってやって来た。

「昨夜のドレスは手入れが終わっていないの。私の若い時の物なのだけど、こちらを着てくれるかしら?」
「はい。ありがとうございます。」

私はピンクベージュのドレスを受け取り、着替える。その後はヘアメイクもしてもらい、身支度が完成した。

「とても似合うわ。良かったら、それ貰ってくくれる?」
「良いのですか?」
「ええ、着てくれた方がドレスも喜ぶわ。」
「ありがとうございます。」
「さて、これはつける?それとも、仕舞っておく?」

リカーナお母様が昨夜していたネックレスとイヤリングを指す。

「…仕舞っておきます。」
「そうね。このドレスには合わないかもしれないわね。今度、形はこのままでアクセントを赤系の宝飾品にして作りましょう。」
「え?いえ、滅相もございません。」
「そう?残念。気が変わったら言って頂戴ね。」
「…はい。その時は宜しくお願い致します。」
「よし。きっとジェイクが廊下で待っているわ。私はこれで失礼するわね。」
「度々来て頂いてありがとうございます。」
「良いのよ。何かあったら、また言いなさい。」
「はい。」

リカーナお母様と入れ替わりで、ジェイクが入ってくる。

「俺は明日からまた学園だ。今日のうちにリアを家まで送るから、それまでゆっくり過ごそう。」
「はい。お言葉に甘えます。…それから、あの、ジェイクに言って良いのか分かりませんが、学園へ行ったらクレマの事も気にかけてくれませんか?今回の事もありますし、また狙われる可能性も…。」
「それは、親父との話でも出ていた。学園の見廻りや、護衛を増やす予定だ。」
「良かった。よろしくお願いします。」
「…今回、俺が異変にもっと早く気付いていたら、こんな怪我をさせずに済んだのにすまん。」
「何を言っているのですか。すぐに駆けつけてくれたから、この程度で済んでいるのです。」
「しかし…。」
「…確かに、外に出てすぐ気付いていたら、何か変わっていたかもしれません。」
「…ああ。」
「でも、どの時にどうなっていたのか、正確には分かりませんし…。気付いてすぐに動いてくれた。それが事実なのは変わりません。」
「…」
「ジェイク。私は貴方に感謝しています。」
「リア…。」
「何かあったら、また助けてくださいね。」
「…なにもない事を祈る。」
「ふふっ。それが一番ですね。」
「足が治ったら、結婚式のドレスの話し合いを始めよう。」
「それから、エメラルド家の伝統等、教えて下さいね。」
「そんなものないと思うが。」
「…今度、リカーナお母様に聞くことにします。」
「すまん。その方が確かだ。親父も当てにはならない。」
「そんな気がします…。」
「くくっ。」
「ふふふっ。」

私達は顔を見合わせ、笑い合う。

その日はゆっくり過ごし、夕方には家へ送ってもらった。
そして、ジェイクはその足で学園に向かった。




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