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08 一途に想う幼馴染みを救うため、『那月』は自ら異能の兵士となる。
救済の聲【前編】
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『やめて!その手を離してよ!』
少年は同級生から奪われそうになった絵本を力任せに引き寄せようとした。
次の瞬間、“ビリッ”と嫌な音が教室に響く。絵本は、背表紙から真っ二つに裂けた。
『あ……』
同級生は小さな声を漏らし、手元に残った片割れを呆然と見つめる。
一方、少年はもう半分を胸に掻き抱いた。
さすがに、後ろめたさを覚えたのか、同級生の顔に一瞬だけ影が差す。
だが取り巻き達の視線が刺さる。 ここで謝ることは、かっこ悪い。
『おれのせいじゃない!! お前が引っ張ったからだろ!』
同級生は叫び、手にしていた絵本の片割れを床へ叩きつけた。
『…お前ら、行こうぜ』
取り巻き達を引き連れ、教室の外に出ようとする。
『…待ってよ』
少年は床に落ちた絵本を拾い上げ、二つを胸に抱いたまま、ゆっくりと立ち上がった。
深く俯いているため、その表情は見えない。
だが発せられた声音は、到底、九歳と思えないほど、低く、冷え切っていた。
その気迫に、同級生は思わず足を止める。それでも、虚勢を張る。
『な、なんだよ!』
『これ“元”に戻してよ』
『は? そんなの無理に決まってるだろ』
同級生は鼻で笑う。
『バカじゃねぇの? 一度、破けた物が元に戻るわけ――』
不意に、少年が同級生の腕を掴んだ。
『!?』
次の瞬間。少年の指先から、橙色に揺らめく炎が噴き出した。
炎は瞬く間に燃え上がり、同級生の身体を包み込む。
『うわっあああ!!』
火だるまとなった同級生は悲鳴を上げ、床を転げ回った。
焦げる匂いが、教室に広がる。少年は、感情の欠片もない瞳で、その光景をただ見つめている。
取り巻き達も、傍観していたクラスメイトも、一様に青ざめさせ、後退った。
『なんの騒ぎなの!?』
担任教師が、慌てた様子で教室へ飛び込んでくる。
『なっ……!』
絶句した。
床には、火に包まれた男子生徒がうつ伏せに倒れている。
教師は教室の隅に駆け寄り、消火器を掴むと、安全ピンを抜き、必死の形相で消火剤を噴射させた。
──── ────
「…あの時は頭が真っ白になって、何も覚えてないんだ」
南雲 暁人はそう言って、にこりと微笑んだ。
あまりにも、ちぐはぐな表情。
本城 那月は、ガラス越しに向かい合う彼を見つめながら、そう思う。
「あの時のこと、悪いことをしたって……今も本当に思わないの?」
普通の人間なら、自分の犯した罪に少なからず責任を感じるはずだ。
それなのに、なぜ彼はヘラヘラと笑っていられるのか。
那月には、理解できなかった。
「しょうがないじゃないか。あの時の僕は“無自覚”だったんだから」
非難の視線を受けても、暁人は肩を竦めるだけだった。
「だって、自分にこんな【特異体質】があるなんて思わないじゃん」
「それは…」
那月は返す言葉が出てこなかった。
【特異体質】
それは、政府および軍本部が秘匿している国家機密だ。
特異体質を持つ人間は、昔からごく稀に存在していた。
遠くを見通す千里眼、他者の思考を読む精神感応、物体や人を瞬時に移動させる力。
五感のいずれかが異常なまでに発達した者、第六感を有する者、あるいは常人の枠を超えた才能を持つ者。
それらを総称して、『特異体質』と呼ぶ。
だが、彼らが表舞台に立つことは、ほとんどなかった。
科学の発展とともに、超常は否定され、嘲笑され、排除された。
多くの特異体質者は、己の力を隠し、社会に溶け込むように生きてきたのだ。
しかし、その力に目をつけた研究者が現れた。
“特殊な波長で脳を刺激し、潜在能力を人為的に覚醒させる”
その実験は成功した。
政府は、その事実を認めざるを得なかった。
やがて軍は、それを兵器として利用する道を選ぶ。
『特異体質者の量産』
だがそれは、非人道的実験の果てに生まれた成果でもあった。
真実を知るのは、ごく一部の政府高官や軍幹部、そして関係研究者のみ。
そして覚醒の試験者は『軍人』に限られている。
軍の入隊試験には、特異体質の素質を測る試験が秘密裏に組み込まれている。
この時代、『徴兵制』が復活していた。
志願か否に関わらず、対象者は詳細を知らされぬまま試験を受ける。
覚醒すれば、誓約によって口を封じられる。
その代償として与えられるのは、“自分と家族の安全保証”だ。
「僕は“被害者”なんだよ?」
暁人は、指先で机を軽く叩いた。
「勝手に第一試験体にされてさ。大切にしてきた本も破られた」
薄く笑う。
「僕は彼と同じことをしただけ。壊したのが物と人――それだけの違いじゃないか」
「“力”については非難するつもりはないわ。あんたの言うとおりなんだから」
那月の視線が鋭くなる。
「でも問題は、あんたの、その思考の方よ」
「うーん。分からないな…何が問題なの?」
「人と物を同列に扱っているところよ。有機物と無機物を混同するのは、おかしいのよ」
「そこ?」
暁人は首を傾げた。
「普通はさ。『人は命があって、物は命がない』って話になるんじゃないの?」
「なんだ、分かっているじゃないの」
したり顔をする那月。
暁人は顔を顰めた。
彼女の術中にまんまとハマった。
「君のそういうところ、僕は大ッキライだ」
「あら奇遇ね。私も、分かっていて被害者面しているあんたが大ッキライよ」
那月はにこりと微笑んだ。
「……本城少尉、そろそろ時間だ」
背後の鉄扉が開き、軍服の男が声をかける。
「はい。すぐ行きます」
那月は立ち上がり、軍帽を脇に抱えた。
「じゃあ、私はもう行くわ」
「あ……うん」
途端に歯切れが悪くなった暁人。那月はそれを見て、わざと明るく笑った。
「暇な時にでも、また来てあげる」
暁人は、ほんのわずかに安堵したように頷いた。
──── ────
薄暗い廊下。
「あの男とは、どういう関係なんだ?」
前を歩いていた大佐が、不意に問うた。
「小学校時代の、ただの同級生です」
事実だけを告げる。
だが大佐は「ほう」と含み笑いを漏らした。
「……なんです? その含みのある相槌は」
那月は露骨に眉間へ皴を寄せる。
「言いたいことがあるなら、はっきり仰ってください。私は遠回しなのが嫌いです」
ぴしゃりと言い切ると、大佐は愉快そうに笑った。
「ならば言おう。なぜお前は軍人になった?」
足が、わずかに止まる。
女性に徴兵制度は義務ではない。
それでも那月は軍人になることを選んだ。
「――“彼”のためではないのか?」
図星だった。
那月は何に言えず、目を伏せる。
──── ────
それは『絵本の事件』から間もない頃のこと。
那月は、簡素な面会室で南雲 暁人と向き合っていた。
『はい。これ』
那月は暁人に包装した絵本を差し出す。
受け取った暁人は、礼も言わずに目を瞬かせた。
その反応に、那月はむっと頬を膨らませる。
『…誕生日プレゼント』
ぶっきらぼうに告げる。
『……なんで僕に、プレゼントなんてくれるの?』
心底不思議そうに首を傾げる暁人。
『“なんでくれるの?”って』
那月がそのまま言葉を返すと、暁人はこくっと小さく頷く。
『友達の誕生日にプレゼントあげるの、普通でしょ?』
『友達…』
暁人は深く俯いた。
『なぁに? 私と友達なのが嫌?』
唇を尖らせる。
『いや…だって…僕は…』
声が途切れる。
『あいつを……』
『いい。言わなくても』
那月は遮った。
『それより、開けてみて』
『……うん』
青いリボンをほどく。
包装紙を外した瞬間、暁人は勢いよく顔を上げた。
『これ…!』
『…ごめん。元通りは無理だった』
那月は頬を掻く。
それは、騒動の発端になった絵本だった。
事件の後、暁人は警察官に連れて行かれ、本は教室に置き去りになっていた。
那月は誰にも気づかれないよう、そっと回収していたのだ。
接着剤やテープで修復を試みたが、傷跡は隠せず見栄えは悪かった。
『新しいのより……これがいいんだよね』
那月は微笑む。
『うん。…もう、戻ってこないと思ってた』
暁人は絵本を強く抱きしめた。
『ありがとう…これだけが、本当のお母さんがくれたものだったから…』
一筋の涙が、胸元の絵本へ落ちた。
那月は黙って、その姿を見つめた。
その日、那月は静かに誓いを立てた。
どれだけ周囲が否定しても、自分だけは彼の味方であり続ける。
そして彼を守れる存在になる、と。
少年は同級生から奪われそうになった絵本を力任せに引き寄せようとした。
次の瞬間、“ビリッ”と嫌な音が教室に響く。絵本は、背表紙から真っ二つに裂けた。
『あ……』
同級生は小さな声を漏らし、手元に残った片割れを呆然と見つめる。
一方、少年はもう半分を胸に掻き抱いた。
さすがに、後ろめたさを覚えたのか、同級生の顔に一瞬だけ影が差す。
だが取り巻き達の視線が刺さる。 ここで謝ることは、かっこ悪い。
『おれのせいじゃない!! お前が引っ張ったからだろ!』
同級生は叫び、手にしていた絵本の片割れを床へ叩きつけた。
『…お前ら、行こうぜ』
取り巻き達を引き連れ、教室の外に出ようとする。
『…待ってよ』
少年は床に落ちた絵本を拾い上げ、二つを胸に抱いたまま、ゆっくりと立ち上がった。
深く俯いているため、その表情は見えない。
だが発せられた声音は、到底、九歳と思えないほど、低く、冷え切っていた。
その気迫に、同級生は思わず足を止める。それでも、虚勢を張る。
『な、なんだよ!』
『これ“元”に戻してよ』
『は? そんなの無理に決まってるだろ』
同級生は鼻で笑う。
『バカじゃねぇの? 一度、破けた物が元に戻るわけ――』
不意に、少年が同級生の腕を掴んだ。
『!?』
次の瞬間。少年の指先から、橙色に揺らめく炎が噴き出した。
炎は瞬く間に燃え上がり、同級生の身体を包み込む。
『うわっあああ!!』
火だるまとなった同級生は悲鳴を上げ、床を転げ回った。
焦げる匂いが、教室に広がる。少年は、感情の欠片もない瞳で、その光景をただ見つめている。
取り巻き達も、傍観していたクラスメイトも、一様に青ざめさせ、後退った。
『なんの騒ぎなの!?』
担任教師が、慌てた様子で教室へ飛び込んでくる。
『なっ……!』
絶句した。
床には、火に包まれた男子生徒がうつ伏せに倒れている。
教師は教室の隅に駆け寄り、消火器を掴むと、安全ピンを抜き、必死の形相で消火剤を噴射させた。
──── ────
「…あの時は頭が真っ白になって、何も覚えてないんだ」
南雲 暁人はそう言って、にこりと微笑んだ。
あまりにも、ちぐはぐな表情。
本城 那月は、ガラス越しに向かい合う彼を見つめながら、そう思う。
「あの時のこと、悪いことをしたって……今も本当に思わないの?」
普通の人間なら、自分の犯した罪に少なからず責任を感じるはずだ。
それなのに、なぜ彼はヘラヘラと笑っていられるのか。
那月には、理解できなかった。
「しょうがないじゃないか。あの時の僕は“無自覚”だったんだから」
非難の視線を受けても、暁人は肩を竦めるだけだった。
「だって、自分にこんな【特異体質】があるなんて思わないじゃん」
「それは…」
那月は返す言葉が出てこなかった。
【特異体質】
それは、政府および軍本部が秘匿している国家機密だ。
特異体質を持つ人間は、昔からごく稀に存在していた。
遠くを見通す千里眼、他者の思考を読む精神感応、物体や人を瞬時に移動させる力。
五感のいずれかが異常なまでに発達した者、第六感を有する者、あるいは常人の枠を超えた才能を持つ者。
それらを総称して、『特異体質』と呼ぶ。
だが、彼らが表舞台に立つことは、ほとんどなかった。
科学の発展とともに、超常は否定され、嘲笑され、排除された。
多くの特異体質者は、己の力を隠し、社会に溶け込むように生きてきたのだ。
しかし、その力に目をつけた研究者が現れた。
“特殊な波長で脳を刺激し、潜在能力を人為的に覚醒させる”
その実験は成功した。
政府は、その事実を認めざるを得なかった。
やがて軍は、それを兵器として利用する道を選ぶ。
『特異体質者の量産』
だがそれは、非人道的実験の果てに生まれた成果でもあった。
真実を知るのは、ごく一部の政府高官や軍幹部、そして関係研究者のみ。
そして覚醒の試験者は『軍人』に限られている。
軍の入隊試験には、特異体質の素質を測る試験が秘密裏に組み込まれている。
この時代、『徴兵制』が復活していた。
志願か否に関わらず、対象者は詳細を知らされぬまま試験を受ける。
覚醒すれば、誓約によって口を封じられる。
その代償として与えられるのは、“自分と家族の安全保証”だ。
「僕は“被害者”なんだよ?」
暁人は、指先で机を軽く叩いた。
「勝手に第一試験体にされてさ。大切にしてきた本も破られた」
薄く笑う。
「僕は彼と同じことをしただけ。壊したのが物と人――それだけの違いじゃないか」
「“力”については非難するつもりはないわ。あんたの言うとおりなんだから」
那月の視線が鋭くなる。
「でも問題は、あんたの、その思考の方よ」
「うーん。分からないな…何が問題なの?」
「人と物を同列に扱っているところよ。有機物と無機物を混同するのは、おかしいのよ」
「そこ?」
暁人は首を傾げた。
「普通はさ。『人は命があって、物は命がない』って話になるんじゃないの?」
「なんだ、分かっているじゃないの」
したり顔をする那月。
暁人は顔を顰めた。
彼女の術中にまんまとハマった。
「君のそういうところ、僕は大ッキライだ」
「あら奇遇ね。私も、分かっていて被害者面しているあんたが大ッキライよ」
那月はにこりと微笑んだ。
「……本城少尉、そろそろ時間だ」
背後の鉄扉が開き、軍服の男が声をかける。
「はい。すぐ行きます」
那月は立ち上がり、軍帽を脇に抱えた。
「じゃあ、私はもう行くわ」
「あ……うん」
途端に歯切れが悪くなった暁人。那月はそれを見て、わざと明るく笑った。
「暇な時にでも、また来てあげる」
暁人は、ほんのわずかに安堵したように頷いた。
──── ────
薄暗い廊下。
「あの男とは、どういう関係なんだ?」
前を歩いていた大佐が、不意に問うた。
「小学校時代の、ただの同級生です」
事実だけを告げる。
だが大佐は「ほう」と含み笑いを漏らした。
「……なんです? その含みのある相槌は」
那月は露骨に眉間へ皴を寄せる。
「言いたいことがあるなら、はっきり仰ってください。私は遠回しなのが嫌いです」
ぴしゃりと言い切ると、大佐は愉快そうに笑った。
「ならば言おう。なぜお前は軍人になった?」
足が、わずかに止まる。
女性に徴兵制度は義務ではない。
それでも那月は軍人になることを選んだ。
「――“彼”のためではないのか?」
図星だった。
那月は何に言えず、目を伏せる。
──── ────
それは『絵本の事件』から間もない頃のこと。
那月は、簡素な面会室で南雲 暁人と向き合っていた。
『はい。これ』
那月は暁人に包装した絵本を差し出す。
受け取った暁人は、礼も言わずに目を瞬かせた。
その反応に、那月はむっと頬を膨らませる。
『…誕生日プレゼント』
ぶっきらぼうに告げる。
『……なんで僕に、プレゼントなんてくれるの?』
心底不思議そうに首を傾げる暁人。
『“なんでくれるの?”って』
那月がそのまま言葉を返すと、暁人はこくっと小さく頷く。
『友達の誕生日にプレゼントあげるの、普通でしょ?』
『友達…』
暁人は深く俯いた。
『なぁに? 私と友達なのが嫌?』
唇を尖らせる。
『いや…だって…僕は…』
声が途切れる。
『あいつを……』
『いい。言わなくても』
那月は遮った。
『それより、開けてみて』
『……うん』
青いリボンをほどく。
包装紙を外した瞬間、暁人は勢いよく顔を上げた。
『これ…!』
『…ごめん。元通りは無理だった』
那月は頬を掻く。
それは、騒動の発端になった絵本だった。
事件の後、暁人は警察官に連れて行かれ、本は教室に置き去りになっていた。
那月は誰にも気づかれないよう、そっと回収していたのだ。
接着剤やテープで修復を試みたが、傷跡は隠せず見栄えは悪かった。
『新しいのより……これがいいんだよね』
那月は微笑む。
『うん。…もう、戻ってこないと思ってた』
暁人は絵本を強く抱きしめた。
『ありがとう…これだけが、本当のお母さんがくれたものだったから…』
一筋の涙が、胸元の絵本へ落ちた。
那月は黙って、その姿を見つめた。
その日、那月は静かに誓いを立てた。
どれだけ周囲が否定しても、自分だけは彼の味方であり続ける。
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