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第三部 エルフと龍族の里へ 第一章 よもやま旅路
5.スライムを倒そう!!/または自我戦力分析の話
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僕らの前方2メートルくらい先の地面。
草原をウニャウニャとうごめくゼリー状の物体――いや、生物。
それをみて、僕は呟くように言う。
「これが、スライムですか」
うん、想像していたのと違う。
僕の頭の中にあったスライムっていうのは、なんつーか、ほら、頭がとんがっていて、ちょっと愛嬌があって、戦闘に勝つと仲間になってくれたりもしそうなザコモンスターだったんだけど。
これはむしろ頭に『バブル』ってつく方のスライムっぽい。
臭いもなんか、卵が腐ったような気持ち悪さだし。
周囲の草花を自らの粘液で溶かしながら吸収している。
しかも、その直径約50メートル。厚さは50センチほど。
以下、順にリラ、ダルトさん、アル王女、レイクさん、キラーリアさん、リリィのセリフ。
「気持ち悪ぅ」
「ふむ、確かに村の人々が困るのもうなずけますね」
「中々大物だな。運がいいぞ」
「いや、さすがに運がいいというのは同意しかねますがね」
「確かに中々にやっかいそうだ」
「どうでもいいわ。早く斬りましょう。ワクワク」
いや、リリィ、目を輝かせて抜き身のショート・ソードを舌でなめるのはやめて。
ガチで殺人鬼みたいで恐いから。
「では、誰から行く?」
アル王女の問いに、リリィが「はいはいはーい、私がやります、アルお姉様」と元気にスライムに飛び込んでいったのであった。
---------------
さて。
なんでいきなり僕らがスライム退治なんてしているのかと疑問に思った方々もいると思うのでここまでの経緯を簡単に説明しておこう。
時はすでにお師匠様の小屋を旅立ってから10日、テルグスをでてから3日経過している。
で、昨日。
とある村の宿で昼食を摂っていた僕ら。
ちなみに、ラクルス村では1日2食だったけど、旅立ってからは1日3食である。お師匠様の元でもそうだった。旅や修行は体力使うしね。
それをいうなら、農村だって体力勝負なんだけど、経済的な問題はいかんともしがたい。
で、食事中の僕らに、村長さんがやってきて、最近草原を荒らすスライムがいるので退治してくれないかと持ちかけてきた。
実際には王女様一行だけど、いかにも戦士っぽいアル様やキラーリアさん、リリィ、それに魔法使いにも見えるレイクさんやダルトさん。
僕とリラはともかく、パーティメンバーをみれば、旅の冒険者とやらに見えてもおかしくないわけで。
当然、そんな依頼はアル様が断るだろうと思っていたら、なんと引き受けたのだ。
驚く僕に、アル様は理由を説明する。
それによれば、依頼料がほしかったわけでも、水戸黄門的な弱者救済をしたかったわけでもなく、『僕らそれぞれの戦闘力をお互いに認識するためにちょうどいいから』らしい。
確かに、僕はリリィやダルトさんの力なんてほとんど知らない。
ダルトさん達も、神託の話は聞いているにしろ、僕らの力なんてよく分からないだろう。
いざという時のために、自分たちがお互い何ができて何ができないのか、実際の戦闘の中で知るのは悪いことではない。
---------------
そんなわけで、スライム退治なわけだけど。
「いやぁぁぁ、ちょっと、そんなところに入り込まないで、いやぁぁぁぁぁ」
スライムにまとわりつかれ泣き声を上げるリリィ。
剣を片手にツッコんでいき、一応斬ったまではいいが、アメーバみたいな性質のスライムにとって、切り傷というのは痛くもかゆくもないらしく。
あっさり捕まってゼリー責めとでも言うべき状況。
さすがに下着姿でこそないものの、アル様なみの軽装なのもあわせて、ある意味で非常にイケナイ絵面になっている。
「これはいかんな」
キラーリアさんが剣を抜き、スライムにツッコむ。
……って、いや、ちょっと待ってっ!!
確かにキラーリアさんは強い。
剣士として、リリィの10倍か20倍くらい強いかもしれない。
リリィも弱くはないが、キラーリアさんの力は素人目にも常人の域ではない。
――が。
「ぬぉ、ぬを、うぉ、こ、こいつら……」
だから、斬るんじゃダメなんだってばっ!!
所詮、どんなに天才剣士でも、斬るという攻撃が通用しないスライム相手。
しかも四方八方からまとわりつかれ、キラーリアさんもリリィの二の舞に。
――なに? なんなの!?
――馬鹿なの?
――数秒前の出来事をちゃんと見ていなかったの!?
あきれる僕に、アル様とレイクさんがボソっという。
「キラーリアは確かに天才なんだがな」
「ええ、あれで私の1/10でもいいから頭脳を働かせてくだされば非常にありがたいんですが」
そういえば、キラーリアさんって『闇』との戦いでも状況分析とかお構いなしにツッコんでいって、いきなり自爆していたよーな。
あの時は、『闇』があまりにも規格外だったからだと思ったけど、スライム相手でも同じなのか……
「で、次はどうする?」
アル様が尋ねる。
どうやらアル様自身は最後まで動かないつもりらしい。
「じゃあ、私が行くわ」
おお、リラさん。
戦闘要員として数えていなかったけど、何か作戦があるんだろうか。
「ふふん。私も密かに訓練していたのよ。斬ってダメなら燃やせばいいの」
自信満々にそう言ってスライムに近づき、大きく息を吸い込んだ。
数秒後、リラの口から光が漏れる。
おおっ!! これは。
どうやら、リラは例の浄化の炎を自在にはけるようになったらしい。
浄化の炎がスライムを包む!!
そして。
炎が治まったときスライムは……
……まったく問題なくそこに存在していました。
――って、おい。
スライムはリラを敵と認識したのか、一気に雪崩のように襲いかかる。
「え、いやぁぁぁぁぁ!!」
スライムに飲み込まれていくリラ。
僕の横で、レイクさんとアル様がそれぞれ言う。
「まあ、熱量をほとんど持たない浄化の炎がスライムに効くわけありませんし」
「しかも、原始的な視覚しか持たないスライム相手では目くらましにもならないな」
かくして、リリィ、キラーリアさん、リラの女子が3人がねちょねちょ責めに会うという、なんつーか、見ていて非常にコメントがしづらい上に、意外とピンチな状況に陥ったのだった。
「リラっ!!」
僕は叫び、地面を蹴ってスライムの中心に跳ぶ。
剣で斬れないなら、僕の拳圧で吹き飛ばす!!
「うぉぉぉぉ」
僕の狙いは成功し、スライムの体は四方に飛び散る。
草原にも大きな穴が開いて、僕はその中におっこったけど、スライムを倒せたんだからいいよね。
――と思ったのだが。
穴の上からねちょねちょした物体が次々に落ちてくる。
それはスライムの死体――ではなく、生きているスライム。
リリィ、キラーリアさん、リラも穴の中に引きずり込まれ、僕ら4人は穴の中、スライムのプールに落ちたように無茶苦茶になったのだった。
た、たすけてぇぇぇぇ!!
---------------
以下補足。
その後スライムはダルトさんの炎の魔法であっさり焼き払われた。
僕ら4人はスライムの粘液と炎の魔法のせいですこし火傷っぽくなったが、レイクさんとダルトさんの回復魔法で元通り。
ただし、服はかなり溶けました。
なお、アル王女の感想。
「お前ら4人が強いのは分かったが、同時に馬鹿なのもよく分かった」
返す言葉もございません。
うん、自分たち戦力分析も大切だけど、それ以上に相手の戦力分析も大切だよね……
草原をウニャウニャとうごめくゼリー状の物体――いや、生物。
それをみて、僕は呟くように言う。
「これが、スライムですか」
うん、想像していたのと違う。
僕の頭の中にあったスライムっていうのは、なんつーか、ほら、頭がとんがっていて、ちょっと愛嬌があって、戦闘に勝つと仲間になってくれたりもしそうなザコモンスターだったんだけど。
これはむしろ頭に『バブル』ってつく方のスライムっぽい。
臭いもなんか、卵が腐ったような気持ち悪さだし。
周囲の草花を自らの粘液で溶かしながら吸収している。
しかも、その直径約50メートル。厚さは50センチほど。
以下、順にリラ、ダルトさん、アル王女、レイクさん、キラーリアさん、リリィのセリフ。
「気持ち悪ぅ」
「ふむ、確かに村の人々が困るのもうなずけますね」
「中々大物だな。運がいいぞ」
「いや、さすがに運がいいというのは同意しかねますがね」
「確かに中々にやっかいそうだ」
「どうでもいいわ。早く斬りましょう。ワクワク」
いや、リリィ、目を輝かせて抜き身のショート・ソードを舌でなめるのはやめて。
ガチで殺人鬼みたいで恐いから。
「では、誰から行く?」
アル王女の問いに、リリィが「はいはいはーい、私がやります、アルお姉様」と元気にスライムに飛び込んでいったのであった。
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さて。
なんでいきなり僕らがスライム退治なんてしているのかと疑問に思った方々もいると思うのでここまでの経緯を簡単に説明しておこう。
時はすでにお師匠様の小屋を旅立ってから10日、テルグスをでてから3日経過している。
で、昨日。
とある村の宿で昼食を摂っていた僕ら。
ちなみに、ラクルス村では1日2食だったけど、旅立ってからは1日3食である。お師匠様の元でもそうだった。旅や修行は体力使うしね。
それをいうなら、農村だって体力勝負なんだけど、経済的な問題はいかんともしがたい。
で、食事中の僕らに、村長さんがやってきて、最近草原を荒らすスライムがいるので退治してくれないかと持ちかけてきた。
実際には王女様一行だけど、いかにも戦士っぽいアル様やキラーリアさん、リリィ、それに魔法使いにも見えるレイクさんやダルトさん。
僕とリラはともかく、パーティメンバーをみれば、旅の冒険者とやらに見えてもおかしくないわけで。
当然、そんな依頼はアル様が断るだろうと思っていたら、なんと引き受けたのだ。
驚く僕に、アル様は理由を説明する。
それによれば、依頼料がほしかったわけでも、水戸黄門的な弱者救済をしたかったわけでもなく、『僕らそれぞれの戦闘力をお互いに認識するためにちょうどいいから』らしい。
確かに、僕はリリィやダルトさんの力なんてほとんど知らない。
ダルトさん達も、神託の話は聞いているにしろ、僕らの力なんてよく分からないだろう。
いざという時のために、自分たちがお互い何ができて何ができないのか、実際の戦闘の中で知るのは悪いことではない。
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そんなわけで、スライム退治なわけだけど。
「いやぁぁぁ、ちょっと、そんなところに入り込まないで、いやぁぁぁぁぁ」
スライムにまとわりつかれ泣き声を上げるリリィ。
剣を片手にツッコんでいき、一応斬ったまではいいが、アメーバみたいな性質のスライムにとって、切り傷というのは痛くもかゆくもないらしく。
あっさり捕まってゼリー責めとでも言うべき状況。
さすがに下着姿でこそないものの、アル様なみの軽装なのもあわせて、ある意味で非常にイケナイ絵面になっている。
「これはいかんな」
キラーリアさんが剣を抜き、スライムにツッコむ。
……って、いや、ちょっと待ってっ!!
確かにキラーリアさんは強い。
剣士として、リリィの10倍か20倍くらい強いかもしれない。
リリィも弱くはないが、キラーリアさんの力は素人目にも常人の域ではない。
――が。
「ぬぉ、ぬを、うぉ、こ、こいつら……」
だから、斬るんじゃダメなんだってばっ!!
所詮、どんなに天才剣士でも、斬るという攻撃が通用しないスライム相手。
しかも四方八方からまとわりつかれ、キラーリアさんもリリィの二の舞に。
――なに? なんなの!?
――馬鹿なの?
――数秒前の出来事をちゃんと見ていなかったの!?
あきれる僕に、アル様とレイクさんがボソっという。
「キラーリアは確かに天才なんだがな」
「ええ、あれで私の1/10でもいいから頭脳を働かせてくだされば非常にありがたいんですが」
そういえば、キラーリアさんって『闇』との戦いでも状況分析とかお構いなしにツッコんでいって、いきなり自爆していたよーな。
あの時は、『闇』があまりにも規格外だったからだと思ったけど、スライム相手でも同じなのか……
「で、次はどうする?」
アル様が尋ねる。
どうやらアル様自身は最後まで動かないつもりらしい。
「じゃあ、私が行くわ」
おお、リラさん。
戦闘要員として数えていなかったけど、何か作戦があるんだろうか。
「ふふん。私も密かに訓練していたのよ。斬ってダメなら燃やせばいいの」
自信満々にそう言ってスライムに近づき、大きく息を吸い込んだ。
数秒後、リラの口から光が漏れる。
おおっ!! これは。
どうやら、リラは例の浄化の炎を自在にはけるようになったらしい。
浄化の炎がスライムを包む!!
そして。
炎が治まったときスライムは……
……まったく問題なくそこに存在していました。
――って、おい。
スライムはリラを敵と認識したのか、一気に雪崩のように襲いかかる。
「え、いやぁぁぁぁぁ!!」
スライムに飲み込まれていくリラ。
僕の横で、レイクさんとアル様がそれぞれ言う。
「まあ、熱量をほとんど持たない浄化の炎がスライムに効くわけありませんし」
「しかも、原始的な視覚しか持たないスライム相手では目くらましにもならないな」
かくして、リリィ、キラーリアさん、リラの女子が3人がねちょねちょ責めに会うという、なんつーか、見ていて非常にコメントがしづらい上に、意外とピンチな状況に陥ったのだった。
「リラっ!!」
僕は叫び、地面を蹴ってスライムの中心に跳ぶ。
剣で斬れないなら、僕の拳圧で吹き飛ばす!!
「うぉぉぉぉ」
僕の狙いは成功し、スライムの体は四方に飛び散る。
草原にも大きな穴が開いて、僕はその中におっこったけど、スライムを倒せたんだからいいよね。
――と思ったのだが。
穴の上からねちょねちょした物体が次々に落ちてくる。
それはスライムの死体――ではなく、生きているスライム。
リリィ、キラーリアさん、リラも穴の中に引きずり込まれ、僕ら4人は穴の中、スライムのプールに落ちたように無茶苦茶になったのだった。
た、たすけてぇぇぇぇ!!
---------------
以下補足。
その後スライムはダルトさんの炎の魔法であっさり焼き払われた。
僕ら4人はスライムの粘液と炎の魔法のせいですこし火傷っぽくなったが、レイクさんとダルトさんの回復魔法で元通り。
ただし、服はかなり溶けました。
なお、アル王女の感想。
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---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
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