神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう

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【番外編】もふもふ女神

【番外編17】神界/堕ちた女神

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 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇

(カルディ視点 一人称)

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「ルンルンルンルンルン♪」

 鼻歌を奏でながらお化粧をする私。
 ふぅみゅ、鏡に映る私の顔は今日もうつくしいっ!!
 あー、でも、ちょっとマスカラのノリがイマイチかなぁ。
 うーんと、ここをもうちょっと……あーでも、これじゃあ、左右のバランスが……

 え?
 私は誰かって?

 ふふふふ、聞いて驚くな、私は神様なのだ。
 ピチピチ美人神様カルディちゃんとは私のことよ、えっへん。
 今日も今日とて、私は自分の美を磨いている。

 やっぱねぇ、神様たるもの見た目の美しさには常に気を使いたいわけよ。
 だって、地上の皆だってどっかの係長みたいないつもしかめっ面のオヤジ神様よりも、私みたいな若くてピチピチした神様の方がお祈りしがいがあるってもんじゃない。

 もちろん、仮にも神様だからお化粧なんてしなくても姿は変幻自在よ。
 でもね、こうやって地上の人間と同じようにお化粧を使って美を極めることは、神様にとっても意味があると私は思うわけよ。
 自由自在に変身できることに慣れた神様は、人間が一生懸命美を極める行動の価値を理解できなくなっちゃうわっ!!

「うーん、さすがにガングロファッションは飽きたなぁ。今日からはカラフルファッションにしようかしら。髪も七色に染めて……」

 鏡をのぞき込みながら私がそんなことを考えていると、突然キニトが鳴った。
 キニトっていうのは、神様が色々なことをするための情報端末みたいなモノ。
 まあ、地上のスマホとかタブレットみたいなもんだと思えばいいんじゃない?

「あら、バスさんだ」

 私の直属の上司、係長バスさんからの通話だった。

「なぁーに、バスさん? 私、まだお化粧中なんだけど……」

 ふくれっつらを浮かべながら私は言う。まあ、向こうには見えないケド。

「私はバスティーニだっ!! 上司の名前を省略するなっ!! 化粧中って、お前は1日の半分以上を化粧の時間に充てているじゃないかっ!!」
「やぁーねー、さすがに化粧で1日の半分以上はないわよぉ。洋服を選ぶとか、肌の保湿とか、お昼寝とかの時間もあるし……」
「仕事の時間を増やせと言っているんだっ!!」
「そんな無理を言われてもっ!!」
「なにが無理だぁぁぁぁ」
「バスさん、オコっちゃダメ、もういい年なんだから血圧上がるわよ」
「神に血圧があってたまるかぁぁぁぁぁぁっ!!」

 うーん、バスさんってば、いっつも怒っているなぁ。
 もう少し楽しく暮らした方が精神衛生上いいと思うんだけどなぁ。

「ええええぃ。今はそんなことはどうでもいいっ!!」
「どうでもいいなら一々どならないでよぉ」

 私の言葉に、キニトの向こうが少し沈黙した。
 いや、バスさんの『くぅぅぅ』といいう言葉にならない唸り声は聞こえるけど。
 うーん、本当に大丈夫かなぁ。いくら神様でも、こういつもいつもイライラしているのはあんまり良くないと思うんだけどなぁ。

「……とにかく、今すぐ私のところへ来い。上からの呼び出しだ」
「えー、セクハラ部長? やーよ。アイツが私を呼び出すなんて、嫌な予感しかしないもん。この間だって、廊下ですれ違いざまに腰をなで回してきたのよっ!!」
「部長ではない。もっと上だ」
「ほへ? もっと上って……だれ?」
大神デオス様だ」
「……でおす? それ、誰だっけ?」

 今度こそ本当にバスさんは沈黙した。

「あれ? どーしたの、バスさぁ~ん? キニト壊れちゃったかな?」
「壊れているのはお前の頭だぁぁぁぁぁぁぁ。よりにもよって大神デオス様のお名前を知らない!? お前の脳みそはどうなっている!?」
「ノーミソって言われても、ほら、神様は魂だけの存在だし、脳みそなんてないわねぇ」
「揚げ足取りの時だけもっともらしいことをいうなぁぁぁぁぁ」

 バスさん、本当に叫びすぎ。
 でも、そういうところがちょっとカワイイなって思っちゃう私の乙女心♪

「それで、でお……なんとかって誰?」
大神デオス様だっ!! 全ての神々を創造された我らが父にて母、全ての神と世界を治める方だっ!!」
「おおっ!! なんかカッコイイけど中二病っぽいねっ!!」
「……ある意味、お前のその性格はうらやましくすら感じるぞ」
「やだなぁ、そんなに褒めないでよ」
「とにかくっ!! 大神デオス様をお待たせするわけにはいかん。今すぐ私の部屋に来い!!」

 それだけいうと、キニトの通信が切れた。

 あー、うるさかった。
 でも大神デオス様かぁ。
 一体何のようなんだろうね?
 偉い人っぽいけど……

 あっ!! もしかしたら『カルディちゃんキミはカワイイからもっとお給料を上げるよ』とかそういう話かな?
 それとも、出世とか……一気に部長まで昇進したりして。

 あーでも、『その代わり、キミの体を私に捧げなさい』とか言われちゃったらどうしよう!?
 きゃあぁぁぁ、カルディちゃんの純潔の危機!?

 私は思わず顔をポッと赤く染めていた。

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇

大神デオス視点 三人称)

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「でっかぁぁぁぁ」

 そのやたら派手な姿をした若き女神は大神デオスを一目見るなり言った。
 彼女の横には2人の神。こちらはひたすら畏まっている。

「ねぇねぇ、バスさん、スゴイよ、あの人でっかいよ、ありえないよっ!!」

 確かに今の大神デオスは他の神と比べて5倍程度の大きさがある。
 別にどんな姿にでもなれるが、一応他の神への威圧感などを考えてそうしているのだが……

「ば、ばか、いいから座って頭を下げとけっ!!」

 バスさんと呼ばれた神が慌てて言う。

「……この3人が今回の問題の原因だったな」

 大神デオスは傍らに控えた腹心のバライに尋ねる。

「はい」
「念のために聞くが、あの3人、私が作った天使が進化した神……だな?」
「はい。左からカルディ、バスティーニ、ルペースです」

 大神デオスは改めて3人を見る。

 ルペース……一見殊勝に畏まってはいるが、その実こちらを伺う目には嫌らしい光がある。まるで人間達の商人が客に揉み手をする時のようだ。
 バスティーニ……3人の中では一番まともそうだが、単なる苦労人にしかみえない。
 カルディ……七色に染まった髪だけでも論外。

「私の創造能力も落ちたものだな……」
「いえ、決してそのようなことは!!」
「いい、慰めはいらん」

 そんなことをバライと囁きあった後、大神デオスは3人の弾劾を始めた。

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇

(ルペース視点 一人称)

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「そ、そんなバカな……」

 俺は大神デオス様の説明を聞き終え、目を見開いた。

1.地上時間で7年と少し前、カルディが独断で11歳の子どもを転生させた。
2.その時パラメータの設定をミスし、200倍の力と魔力を与えてしまった。
3.カルディとバスティーニは共謀してその事実を隠蔽した。
4.さらにデネブがその少年――パドに接触し、何事かを企んでいるらしい。

「以上だ。何か申し開きはあるか?」

 俺――ルペースは全身の震えを抑えることに必死だった。

 大神デオス様から直接呼び出しをいただいたとき、俺はついに部長から世界長に昇進できるのかと喜んだ。
 だが、これはそんな話ではない。
 俺たちは『弾劾』をされているのだ。

 マズイ、これは非常にマズイ。
 このまま俺まで共犯と見なされれば、クビだ。

 とにかく、俺のあずかり知らないところの話だと示さなくては。
 俺は立ち上がりバスティーニに指を突きつけて叫んだ。

「バスティーニ!! これは事実なのか!?」
「……はい。事実です。全ては私の責任です」

 バスティーニは覚悟を決めたように言う。

「ふざけるなっ!! 俺は何も報告を受けておらんぞ!! 大神デオス様、私は何も知りません。この2人に厳罰を……」

 興奮しすぎて大神デオス様の前だというのに、前半の一人称が『俺』になってしまった。

「ちょっとっ!! 黙って聞いていれば勝手なことをっ!! そもそもアンタがきちんとパラメータ表示の変更について連絡をくれないから悪いんじゃないのっ!!」

 俺の言葉に、カルディが叫び返す。
 この娘はっ!!
 さんざん世話をしてやった恩を忘れて何を言うか。

「説明しようとしたらお前が俺を避けたんだろうがっ!!」
「毎度毎度お尻やら胸やらをベタベタ触ってくる上司なんて避けて当然でしょっ!!」
「うるさいっ!! 無駄にでかい乳と尻しか価値のない女がよくもそんなことをっ!!」

 俺がカルディにつかみかかろうとした、その瞬間だった。

「黙れ!!」

 まるで神の世界全体が震えるかのごとき声を大神デオス様が上げた。

「もういい。お前達3人同罪だ。そもそも、部長たるお前がきちんと記録を精査すれば判明したことなのだからな」

 大神デオス様はそう断罪した。

「そんな……」

 俺はワナワナと震える。
 何故、俺がこんなバカどもと一緒に裁かれなければならないんだ。
 理不尽にもほどがある。

「本来ならお前達3人は今すぐクビだ」

 俺の中を絶望が支配する。

大神デオス様、どうか、どうかお許しをっ!!」

 俺は大神デオス様に懇願する。

「まあ、私も鬼ではない。どうしてもというならばチャンスをやろう」
「ほ、本当ですか!?」

 一筋の光明を見つけ、俺は勢い込む。

「お前たち3人、神の能力を剥奪。地上の生物としてパドが転生した世界に行け。そして、パドを5年以内に抹殺しろ。それがかなったあかつきには、お前達の神への復帰を許そう。だが、それがかなわなかったとき、お前達は地上で短い生を果てるがいい」

 そういうと大神デオス様の瞳が光った。

 次の瞬間、俺の意識は反転した。
 遠のく俺の意識に『よいな、パドを抹殺するのだぞ』という大神デオス様の声が響き続けていた。

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇

(カルディ視点 一人称)

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 ここは……どこ……私は……

 そう、私はカルディ。
 若き神様。

 だけど……

 体が重い。
 酷い刺激が辺りに漂っている。
 しれに、やたらと疲労を感じる。

 いったいどうなって……

 私は起き上がろうとし――自分に手足が存在しないことに気がついた。

 ――なに? これ? どういうこと!?

 パニックになりつつも、自分の体を確認する。
 鏡がないから分からないけど、たぶん今の私は丸い。
 いや、本当に。
 ほとんど球体のような体に、目と口と鼻と羽がくっついている。

 地面は――土?
 神の世界には土なんて園芸場にしかないけど、これは土だ。
 周囲にはやたらと大きい木。

 そして、少し遠くを見てみると、2人の少年が倒れている。

 色々確かめたいが、足がないので歩けない。
 試みに羽を動かしてみる。

 お、ふわふわと飛べた。
 まるで、体が飛び方を知っていたかのようだ。

 おおー、結構楽しい。
 風を切るように飛べるっ!!

 うん?
 風?

 間違いない、ここには空気・・がある。
 さらに言うなら、体が重いのは重力・・のせいだろうし、先ほどから感じる刺激は自然の匂い・・・・・というヤツだろう。

 どれも神の世界には存在しないモノだ。

 そして大神デオスの最後の言葉を思い出す。

 間違いない。
 ここは地上だ。
 私はこの毛むくじゃらのまん丸生物にされて、地上に堕とされたのだ。
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