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第二章
護衛騎士
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ふと横を見ると、たくさんの騎士たちの中に、見知った人たちの姿を見つけた。
「あっ、ルーシャス! ミリーシャ!」
「キアラ様~!」
「キアラ様、飛び降りるなんて危ないですよ。キアラ様なら、平気だろうとは思いますが……」
ミリーシャが明るく手を振って笑顔を見せたのに対し、ルーシャスは先ほどのわたしの行動に対してのお小言を始めた。
「ノアルード殿下に、お仕事を取られちゃったわね、ルーシャス?」
「本当だよ。まぁでも、ノアルード殿の魔法の方が安全だし、彼もキアラ様の護衛騎士みたいなものだからね」
ルーシャスとミリーシャは、どちらもわたしの護衛騎士をしてくれている。ルーシャスはわたしをここへ連れてきてくれた恩人なので、安心して護衛を任せられるし、わたしの護衛騎士になってくれた時は、とても嬉しかった。
ちなみに、ミリーシャはルーシャスのつがいである。気が強いところもあるけれど、いつも元気で明るい、ポニーテールが似合う美人の竜人族だ。
本当は常に護衛騎士をつけるものらしいのだけれど、窮屈なので、外出したり人に会う時だけ、護衛任務についてもらっているのだ。
「ルーシャス、ミリーシャ。建国祭の準備はどう? わたし、すごく楽しみにしてるのよ!」
ーー建国祭は、四日間に渡って行われる。
初日にはパレードと開催宣言、聖火の点灯などがある。実は、これに帝国認定聖女であるセラが代表で出演するので、とても楽しみなのだ。
そして二日目と三日目に行われるメインイベントは、コロシアムでの武闘大会だ。
わたしはこれを、皇族席で見ることになっている。本当はわたしも出場したかったんだけど、残念ながら皇族は主催側のため、出場できないらしい。残念。
……でも、なんとこれには、ミリーシャが参戦することになっているのよね! ミリーシャはすっごく強いから、とても楽しみなの!
ちなみにミリーシャが出るのは、剣のみで戦う、二日目にある剣の部だ。三日目は魔法ありで戦う、魔法の部になる。事前に予選が行われていて、出場者はすでに確定している。
また、小さなものでは、街中で大食い対決や腕相撲大会などもあるらしい。チケットの枚数は限られているため、コロシアムに入れなかったという人たちも、きっと楽しめると思う。
その他にも、街中では各地の英雄譚や恋物語を歌う吟遊詩人たちが帝都へ一同に集い、街は歌で溢れるそうだ。歌劇場では魔法使いを雇い、いつもより幻想的で煌びやかな演出を加えた公演を行うらしい。
市場では、珍しい薬や魔道具、発明品などがいつもたくさん集まるらしく、トーアが全て見て回りたいと、目を輝かせていた。
そして最終日には、大聖堂で竜人族が信仰する竜神へ感謝の祈りを奉納する。
その際、竜騎士たちが空を舞い、魔道具を用いた色つきの煙で様々な模様を描くという、大人気の華麗な演出が行われる。
……なんとこれに、ルーシャスがイオと一緒に出演するの! 絶対に、特等席でしっかりと見なくちゃ!
あとは、聖火の消灯を行っておしまいだ。
ヴァルドゥーラの建国祭は、イベント盛りだくさんの、とても盛大なお祭りなのだ。
自分の護衛騎士が二人とも活躍してくれそうなので、ついワクワクしてしまう。
「はい。体調も悪くないですし、キアラ様のご期待に添える活躍をお見せできるよう、頑張りますね!」
ミリーシャはそう言って、グッと拳に力を込めた。
「当然、僕もバッチリですよ。イオも元気ですし、当日を楽しみにしていてくださいね」
「うん! ……ノアも、魔法の部に出たら、絶対活躍できると思うのにな」
いつの間にか隣に来ていたノアを見上げて、唇を尖らせた。予選が始まる前に、ノアには武闘会の魔法の部に出たらどうかと勧めてみたのだが、断られてしまったのだ。
「言っただろ。不本意だけどオレの所属は一応シェルディアだから、目立つことはしたくないんだ。父親や継母を刺激したくない」
彼らは昔、邪魔になったノアを消そうとした。ノアは庶子だし、王太子は別にいるけれど、力をつけたノアを見て、何を思うのかはわからない。シェルディアの王太子はあまり評判が良くないし、敗戦国に人質として捨てたも同然な庶子の王子が優秀だと知られると、何かしらの悪感情を抱かれることは想像に難くない。現状では仕方ないことかもしれないけれど、ひどい人たちのせいで、ノアが実力を発揮して活躍できないのは悔しい。
「大丈夫ですよ。一緒に訓練してる私たちは、ノアルード殿下の実力を充分に知っていますから!」
「そうですよ。魔法だけじゃなく剣術も、僕たちと渡り合う力があると、騎士たちは認めています。むしろキアラ様が知ってくれているなら、世の中に全く知られなくても、ノアルード殿は気にしないんじゃないですか?」
まさかそんなことはないだろうとノアを見上げると、彼は何を当然のことを、と言わんばかりに首をひねった。
「知らなかった? オレが認めて欲しいのは、キアラとその周囲の人たちだけだよ。オレが努力して力をつけるのは、キアラとずっと一緒にいるためだし、それを周囲に認めてもらうためだからな」
「……」
そんなことを言われたら、嬉しくて何も言えなくなってしまうじゃない。
「うん。わたしも、ノアがそばにいてくれればそれでいい。ありがとう、ノア」
「約束したからな。面倒事は避けるのが一番だろ」
ノアは、眷属になった時に誓ったことを守ろうとしてくれている。わたしも誓い通り、ノアをしっかり守らなくちゃ。
……シェルディアのことも、いずれちゃんと、決着をつけなくちゃね。
わたしは改めて、心に誓ったのだった。
「あっ、ルーシャス! ミリーシャ!」
「キアラ様~!」
「キアラ様、飛び降りるなんて危ないですよ。キアラ様なら、平気だろうとは思いますが……」
ミリーシャが明るく手を振って笑顔を見せたのに対し、ルーシャスは先ほどのわたしの行動に対してのお小言を始めた。
「ノアルード殿下に、お仕事を取られちゃったわね、ルーシャス?」
「本当だよ。まぁでも、ノアルード殿の魔法の方が安全だし、彼もキアラ様の護衛騎士みたいなものだからね」
ルーシャスとミリーシャは、どちらもわたしの護衛騎士をしてくれている。ルーシャスはわたしをここへ連れてきてくれた恩人なので、安心して護衛を任せられるし、わたしの護衛騎士になってくれた時は、とても嬉しかった。
ちなみに、ミリーシャはルーシャスのつがいである。気が強いところもあるけれど、いつも元気で明るい、ポニーテールが似合う美人の竜人族だ。
本当は常に護衛騎士をつけるものらしいのだけれど、窮屈なので、外出したり人に会う時だけ、護衛任務についてもらっているのだ。
「ルーシャス、ミリーシャ。建国祭の準備はどう? わたし、すごく楽しみにしてるのよ!」
ーー建国祭は、四日間に渡って行われる。
初日にはパレードと開催宣言、聖火の点灯などがある。実は、これに帝国認定聖女であるセラが代表で出演するので、とても楽しみなのだ。
そして二日目と三日目に行われるメインイベントは、コロシアムでの武闘大会だ。
わたしはこれを、皇族席で見ることになっている。本当はわたしも出場したかったんだけど、残念ながら皇族は主催側のため、出場できないらしい。残念。
……でも、なんとこれには、ミリーシャが参戦することになっているのよね! ミリーシャはすっごく強いから、とても楽しみなの!
ちなみにミリーシャが出るのは、剣のみで戦う、二日目にある剣の部だ。三日目は魔法ありで戦う、魔法の部になる。事前に予選が行われていて、出場者はすでに確定している。
また、小さなものでは、街中で大食い対決や腕相撲大会などもあるらしい。チケットの枚数は限られているため、コロシアムに入れなかったという人たちも、きっと楽しめると思う。
その他にも、街中では各地の英雄譚や恋物語を歌う吟遊詩人たちが帝都へ一同に集い、街は歌で溢れるそうだ。歌劇場では魔法使いを雇い、いつもより幻想的で煌びやかな演出を加えた公演を行うらしい。
市場では、珍しい薬や魔道具、発明品などがいつもたくさん集まるらしく、トーアが全て見て回りたいと、目を輝かせていた。
そして最終日には、大聖堂で竜人族が信仰する竜神へ感謝の祈りを奉納する。
その際、竜騎士たちが空を舞い、魔道具を用いた色つきの煙で様々な模様を描くという、大人気の華麗な演出が行われる。
……なんとこれに、ルーシャスがイオと一緒に出演するの! 絶対に、特等席でしっかりと見なくちゃ!
あとは、聖火の消灯を行っておしまいだ。
ヴァルドゥーラの建国祭は、イベント盛りだくさんの、とても盛大なお祭りなのだ。
自分の護衛騎士が二人とも活躍してくれそうなので、ついワクワクしてしまう。
「はい。体調も悪くないですし、キアラ様のご期待に添える活躍をお見せできるよう、頑張りますね!」
ミリーシャはそう言って、グッと拳に力を込めた。
「当然、僕もバッチリですよ。イオも元気ですし、当日を楽しみにしていてくださいね」
「うん! ……ノアも、魔法の部に出たら、絶対活躍できると思うのにな」
いつの間にか隣に来ていたノアを見上げて、唇を尖らせた。予選が始まる前に、ノアには武闘会の魔法の部に出たらどうかと勧めてみたのだが、断られてしまったのだ。
「言っただろ。不本意だけどオレの所属は一応シェルディアだから、目立つことはしたくないんだ。父親や継母を刺激したくない」
彼らは昔、邪魔になったノアを消そうとした。ノアは庶子だし、王太子は別にいるけれど、力をつけたノアを見て、何を思うのかはわからない。シェルディアの王太子はあまり評判が良くないし、敗戦国に人質として捨てたも同然な庶子の王子が優秀だと知られると、何かしらの悪感情を抱かれることは想像に難くない。現状では仕方ないことかもしれないけれど、ひどい人たちのせいで、ノアが実力を発揮して活躍できないのは悔しい。
「大丈夫ですよ。一緒に訓練してる私たちは、ノアルード殿下の実力を充分に知っていますから!」
「そうですよ。魔法だけじゃなく剣術も、僕たちと渡り合う力があると、騎士たちは認めています。むしろキアラ様が知ってくれているなら、世の中に全く知られなくても、ノアルード殿は気にしないんじゃないですか?」
まさかそんなことはないだろうとノアを見上げると、彼は何を当然のことを、と言わんばかりに首をひねった。
「知らなかった? オレが認めて欲しいのは、キアラとその周囲の人たちだけだよ。オレが努力して力をつけるのは、キアラとずっと一緒にいるためだし、それを周囲に認めてもらうためだからな」
「……」
そんなことを言われたら、嬉しくて何も言えなくなってしまうじゃない。
「うん。わたしも、ノアがそばにいてくれればそれでいい。ありがとう、ノア」
「約束したからな。面倒事は避けるのが一番だろ」
ノアは、眷属になった時に誓ったことを守ろうとしてくれている。わたしも誓い通り、ノアをしっかり守らなくちゃ。
……シェルディアのことも、いずれちゃんと、決着をつけなくちゃね。
わたしは改めて、心に誓ったのだった。
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