半竜皇女〜父は竜人族の皇帝でした!?〜

侑子

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第二章

プレゼント

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 やってきました、建国祭!

 ついに、十年に一度の建国祭が、明日から始まる。
 そして前日の今日は、帝国の各地からやってきた貴族や、各国からやって来た国の代表たちへの挨拶と交流のため、皇城で前夜祭として、パーティーが行われるのである。



「きゃあぁ~っ! キアラ様、本当に素敵です!」
「帝国の至宝もかくやという美しさですよ! 素晴らしいです!」
「そ、そうかな?」

 皇族として恥ずかしくない装いならそれでいいと思っていたけれど、針子たちはかなり張り切って衣装を製作してくれた。少し大人っぽいデザインなので心配していたけれど、きちんとメイクをして髪型を整えれば、なかなかわたしにも似合っている気がする。
 胸元をシンプルに覆う重厚でいて滑らかなクリーム色の生地には、繊細な金色の刺繍がびっしりと施されていて、上品な美しさを演出している。けれど、スカート部分には向こう側が透けるほど薄いレースが幾重にもふわりと重ねられていて、フリルのようで可愛らしい。
 最終調整を細かく行ったので、サイズもピッタリで着心地もいい。布をたっぷり使っているので動きにくいけれど、ドレスとはそういうものなので仕方ない。さすがに、この五年でかなり慣れたしね。

「あれ? でも、今日はアクセサリーをつけないの?」

 別にこのままでも問題ないほど綺麗だとは思うが、こういう正式な場では、いつも何かしらつけさせられていたので疑問に思う。

「あぁ、それでしたら……」

 リリアンがわたしの問いに答えようとした時、控え室の扉がノックされた。

「あっ、本日のパートナーが来たみたいですよ、キアラ様!」

 メリアンが楽しそうにそう言って、扉に向かう。すると、やって来たのはメリアンの言う通り、今日わたしをエスコートしてくれるパートナーである、ノアだった。

 細長い箱を持って部屋へ入ってきたノアは、わたしを見て目を見開くと、少しの間、固まったように足を止めた。

 一方で、わたしもノアの姿を見て、驚いて固まっていた。

 ……うわぁ。今日のノア、本当に素敵。

 正装に身を包んでいるからだろうか。それとも、髪型がいつもと少し違うからだろうか。ノアがどこか別人に見えた。とても魅力的な男性の姿をしてわたしを驚かせた彼は、フッと笑うと、やはりいつもの、わたしのよく知るノアだった。

「キアラ。……綺麗すぎて、ちょっと驚いた。よく似合ってる」
「えっ、あ、ありがとう。ノアもすごく素敵で、わたしも驚いたわ」

 いつもはこんな風に褒め合うことはないので、ちょっと照れくさいけれど、すごく嬉しい。

「キアラ。よかったら、これ。今日つけてもらえると、嬉しいんだけど」
「え? これって……」

 ノアが持っていた箱を渡され、開けてみると、そこには水色の宝石があしらわれたイヤリングとネックレスが入っていた。小ぶりながらセンスよくまとめられたデザインは、今日の衣装によく合いそうだ。

「わあ、すごく可愛い! でも、いいの? こんな素敵なもの……」

 パートナーの女性にドレスや装飾品を贈る風習があることは知っていたけれど、まさかノアからこんなプレゼントを貰えるなんて、思ってもみなかった。

「キアラのために用意したから、返された方が困る。よかったら、オレがつけてもいいか?」
「うん、ありがとう。じゃあ、お願いするね」

 彼に一度箱を返し、後ろを向いて髪を避けると、ノアがネックレスをつけてくれた。
 
「どう?」

 振り向いてみせると、ノアが嬉しそうに破顔した。

「すごく似合ってる。さらに魅力的になったな」
「えへへ。ありがとう」

 どうしてか、さっきらやたらと、胸の奥がムズムズする。
 続いてノアはイヤリングを手に取り、わたしの耳につけてくれる。いつもより一段と格好良い彼の顔があまりにも近くにあるせいか、なんだかドキドキしてしまった。

 ……う~、なにこれ!? なんか、すっごく恥ずかしい!

「うん。完璧」
「あっ、ありがとう、ノア!」

 満足げなノアからパッと離れ、平常心を取り戻すべく、心の中で四苦八苦してしまった。そんなわたしの様子を、なんだかみんながニコニコしながら見ている気がして、とても不思議だった。

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