7 / 15
恋がしたい
しおりを挟む
「え、うん。もちろん」
私はジェイドの質問に、できるだけ丁寧に答えていった。概要を読み込んだだけでストーリーの流れなどは知らないこと、登場人物たち五人の情報はある程度わかること、ヒロインの選択によって、結末はハッピーエンドにもバッドエンドにもなること。
「その物語は、ヒロインが魔法学園に行くことによって始まるんだよね? それなら、なんとか魔法学園に行かずに済む方法を考えた方がいいんじゃないかな。そうすれば、少なくともバッドエンドにはならずに済むよ」
「うーん。私は光魔法を使えることで男爵家の養女になったから、学園に行かないっていうのは難しいんじゃないかな。……それに、不安ではあるけど、少し楽しみでもあるの。前世では病弱で、恋なんてしたこともなかったけど、もし私がヒロインなら……登場人物の誰かと、素敵な恋愛ができるかもしれないじゃない?」
「……」
恋をしてみたいなんて言うのは少し照れくさくてうつむいていたら、ジェイドはまた黙り込んでしまったようで、返事がない。呆れられてしまったのかな。
「な、なーんて……」
「アリスは」
言葉がかぶってしまい、ふと視線を合わせる。
思いがけず真剣な表情のジェイドと目が合った。
「アリスは、その登場人物の誰かと、恋がしたいってこと? 相手はその中の誰かじゃないと、絶対に駄目なの?」
射抜くようなジェイドの眼差しに、少しひるんでしまう。彼のこんな顔は、初めて見た気がする。
「そ、そういうわけじゃないけど……登場人物たちは、事前情報ではみんな素敵な人ばかりだったし、彼らならみんな男爵が認める高位貴族だもの。それにストーリー上の関わりがあるはずだから、仲良くなれる機会も多いんじゃないかなって」
ジェイドを連れてきてもらう条件として、私は必ず男爵が望むような高位貴族と結婚しなければならないのだ。攻略対象の誰かとハッピーエンドを迎えることができれば問題ないはずだと思っていたけれど、もし私がヒロインでなかったら、大変なことになってしまうかもしれない。
私だって、一度くらいは恋をしてみたい。前世では、一度も経験しないまま死んでしまった。
漫画ゲームのように、ときめきに溢れた恋じゃなくてもいい。攻略対象たちのように素敵な人じゃなくてもいい。でも、お互いを想い合える人と恋をして、結婚したい。
それなのに、もし学園で高位貴族の誰かと恋人になれなかったら、きっと将来は、男爵が選んだ人と結婚することになるだろう。もしかしたら、乱暴な人や、男爵みたいな嫌な人と結婚させられてしまうかもしれない。そんなのは嫌だ。
「……そっか。でも、本当にここがアリスの言う物語の世界なのかはまだ確証がないんだよね? 悩むのは、それがはっきりしてからでもいいんじゃないかな」
「そうだけど……どうやって確かめるの?」
ジェイドはにっこりと、綺麗な笑みを浮かべた。
「僕が確かめてきてあげる。アリスが言う登場人物たちが、実際に存在するのかを」
……そっか! まだ学園に入学していないとはいえ、ここが本当に物語の世界なら、私と歳の近い攻略対象たちは、すでに存在しているはずよね。私だけじゃなくて攻略対象たちもこの世界に存在するなら、ここが「恋する魔法学園のアリス」の世界だと、もっとはっきり認識できる。
「でも、そんなことできるの? 登場人物たちは公爵子息や、王子様までいるのよ。嗅ぎまわったりしたら、怪しまれるんじゃ……」
「大丈夫。多少時間はかかるかもしれないけど、上手くやるよ。そういう伝手もあるし」
……どういう伝手!? ジェイドってば、いつの間に私の知らない人脈を作っていたのかしら。
でも、自信満々の彼の様子からして、きっと心配はいらないのだろう。
「ありがとう、ジェイド! じゃあ、お願いしてもいい?」
「もちろん。じゃあ、それぞれの登場人物の情報を、知っている限り詳細に教えて? アリスが知っている情報と、状況や境遇が異なる場合もあるかもしれないから、調べておくよ」
私はジェイドの質問に、できるだけ丁寧に答えていった。概要を読み込んだだけでストーリーの流れなどは知らないこと、登場人物たち五人の情報はある程度わかること、ヒロインの選択によって、結末はハッピーエンドにもバッドエンドにもなること。
「その物語は、ヒロインが魔法学園に行くことによって始まるんだよね? それなら、なんとか魔法学園に行かずに済む方法を考えた方がいいんじゃないかな。そうすれば、少なくともバッドエンドにはならずに済むよ」
「うーん。私は光魔法を使えることで男爵家の養女になったから、学園に行かないっていうのは難しいんじゃないかな。……それに、不安ではあるけど、少し楽しみでもあるの。前世では病弱で、恋なんてしたこともなかったけど、もし私がヒロインなら……登場人物の誰かと、素敵な恋愛ができるかもしれないじゃない?」
「……」
恋をしてみたいなんて言うのは少し照れくさくてうつむいていたら、ジェイドはまた黙り込んでしまったようで、返事がない。呆れられてしまったのかな。
「な、なーんて……」
「アリスは」
言葉がかぶってしまい、ふと視線を合わせる。
思いがけず真剣な表情のジェイドと目が合った。
「アリスは、その登場人物の誰かと、恋がしたいってこと? 相手はその中の誰かじゃないと、絶対に駄目なの?」
射抜くようなジェイドの眼差しに、少しひるんでしまう。彼のこんな顔は、初めて見た気がする。
「そ、そういうわけじゃないけど……登場人物たちは、事前情報ではみんな素敵な人ばかりだったし、彼らならみんな男爵が認める高位貴族だもの。それにストーリー上の関わりがあるはずだから、仲良くなれる機会も多いんじゃないかなって」
ジェイドを連れてきてもらう条件として、私は必ず男爵が望むような高位貴族と結婚しなければならないのだ。攻略対象の誰かとハッピーエンドを迎えることができれば問題ないはずだと思っていたけれど、もし私がヒロインでなかったら、大変なことになってしまうかもしれない。
私だって、一度くらいは恋をしてみたい。前世では、一度も経験しないまま死んでしまった。
漫画ゲームのように、ときめきに溢れた恋じゃなくてもいい。攻略対象たちのように素敵な人じゃなくてもいい。でも、お互いを想い合える人と恋をして、結婚したい。
それなのに、もし学園で高位貴族の誰かと恋人になれなかったら、きっと将来は、男爵が選んだ人と結婚することになるだろう。もしかしたら、乱暴な人や、男爵みたいな嫌な人と結婚させられてしまうかもしれない。そんなのは嫌だ。
「……そっか。でも、本当にここがアリスの言う物語の世界なのかはまだ確証がないんだよね? 悩むのは、それがはっきりしてからでもいいんじゃないかな」
「そうだけど……どうやって確かめるの?」
ジェイドはにっこりと、綺麗な笑みを浮かべた。
「僕が確かめてきてあげる。アリスが言う登場人物たちが、実際に存在するのかを」
……そっか! まだ学園に入学していないとはいえ、ここが本当に物語の世界なら、私と歳の近い攻略対象たちは、すでに存在しているはずよね。私だけじゃなくて攻略対象たちもこの世界に存在するなら、ここが「恋する魔法学園のアリス」の世界だと、もっとはっきり認識できる。
「でも、そんなことできるの? 登場人物たちは公爵子息や、王子様までいるのよ。嗅ぎまわったりしたら、怪しまれるんじゃ……」
「大丈夫。多少時間はかかるかもしれないけど、上手くやるよ。そういう伝手もあるし」
……どういう伝手!? ジェイドってば、いつの間に私の知らない人脈を作っていたのかしら。
でも、自信満々の彼の様子からして、きっと心配はいらないのだろう。
「ありがとう、ジェイド! じゃあ、お願いしてもいい?」
「もちろん。じゃあ、それぞれの登場人物の情報を、知っている限り詳細に教えて? アリスが知っている情報と、状況や境遇が異なる場合もあるかもしれないから、調べておくよ」
39
あなたにおすすめの小説
【完結】モブ令嬢としてひっそり生きたいのに、腹黒公爵に気に入られました
22時完結
恋愛
貴族の家に生まれたものの、特別な才能もなく、家の中でも空気のような存在だったセシリア。
華やかな社交界には興味もないし、政略結婚の道具にされるのも嫌。だからこそ、目立たず、慎ましく生きるのが一番——。
そう思っていたのに、なぜか冷酷無比と名高いディートハルト公爵に目をつけられてしまった!?
「……なぜ私なんですか?」
「君は実に興味深い。そんなふうにおとなしくしていると、余計に手を伸ばしたくなる」
ーーそんなこと言われても困ります!
目立たずモブとして生きたいのに、公爵様はなぜか私を執拗に追いかけてくる。
しかも、いつの間にか甘やかされ、独占欲丸出しで迫られる日々……!?
「君は俺のものだ。他の誰にも渡すつもりはない」
逃げても逃げても追いかけてくる腹黒公爵様から、私は無事にモブ人生を送れるのでしょうか……!?
ヒロイン気質がゼロなので攻略はお断りします! ~塩対応しているのに何で好感度が上がるんですか?!~
浅海 景
恋愛
幼い頃に誘拐されたことがきっかけで、サーシャは自分の前世を思い出す。その知識によりこの世界が乙女ゲームの舞台で、自分がヒロイン役である可能性に思い至ってしまう。貴族のしきたりなんて面倒くさいし、侍女として働くほうがよっぽど楽しいと思うサーシャは平穏な未来を手にいれるため、攻略対象たちと距離を取ろうとするのだが、彼らは何故かサーシャに興味を持ち関わろうとしてくるのだ。
「これってゲームの強制力?!」
周囲の人間関係をハッピーエンドに収めつつ、普通の生活を手に入れようとするヒロイン気質ゼロのサーシャが奮闘する物語。
※2024.8.4 おまけ②とおまけ③を追加しました。
【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。
ラム猫
恋愛
異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。
『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。
しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。
彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。
※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
【完結】転生したら脳筋一家の令嬢でしたが、インテリ公爵令息と結ばれたので万事OKです。
櫻野くるみ
恋愛
ある日前世の記憶が戻ったら、この世界が乙女ゲームの舞台だと思い至った侯爵令嬢のルイーザ。
兄のテオドールが攻略対象になっていたことを思い出すと共に、大変なことに気付いてしまった。
ゲーム内でテオドールは「脳筋枠」キャラであり、家族もまとめて「脳筋一家」だったのである。
私も脳筋ってこと!?
それはイヤ!!
前世でリケジョだったルイーザが、脳筋令嬢からの脱却を目指し奮闘したら、推しの攻略対象のインテリ公爵令息と恋に落ちたお話です。
ゆるく軽いラブコメ目指しています。
最終話が長くなってしまいましたが、完結しました。
小説家になろう様でも投稿を始めました。少し修正したところがあります。
モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~
咲桜りおな
恋愛
前世で大好きだった乙女ゲームの世界にモブキャラとして転生した伯爵令嬢のアスチルゼフィラ・ピスケリー。
ヒロインでも悪役令嬢でもないモブキャラだからこそ、推しキャラ達の恋物語を遠くから鑑賞出来る! と楽しみにしていたら、関わりたくないのに何故か悪役令嬢の兄である騎士見習いがやたらと絡んでくる……。
いやいや、物語の当事者になんてなりたくないんです! お願いだから近付かないでぇ!
そんな思いも虚しく愛しの推しは全力でわたしを口説いてくる。おまけにキラキラ王子まで絡んで来て……逃げ場を塞がれてしまったようです。
結構、ところどころでイチャラブしております。
◆◇◇◇ ◇◇◇◇ ◇◇◇◆
前作「完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい」のスピンオフ作品。
この作品だけでもちゃんと楽しんで頂けます。
番外編集もUPしましたので、宜しければご覧下さい。
「小説家になろう」でも公開しています。
モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します
みゅー
恋愛
乙女ゲームに、転生してしまった瑛子は自分の前世を思い出し、前世で培った処世術をフル活用しながら過ごしているうちに何故か、全く興味のない攻略対象に好かれてしまい、全力で逃げようとするが……
余談ですが、小説家になろうの方で題名が既に国語力無さすぎて読むきにもなれない、教師相手だと淫行と言う意見あり。
皆さんも、作者の国語力のなさや教師と生徒カップル無理な人はプラウザバック宜しくです。
作者に国語力ないのは周知の事実ですので、指摘なくても大丈夫です✨
あと『追われてしまった』と言う言葉がおかしいとの指摘も既にいただいております。
やらかしちゃったと言うニュアンスで使用していますので、ご了承下さいませ。
この説明書いていて、海外の商品は訴えられるから、説明書が長くなるって話を思いだしました。
【完結】攻略を諦めたら騎士様に溺愛されました。悪役でも幸せになれますか?
うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
メイリーンは、大好きな乙女ゲームに転生をした。しかも、ヒロインだ。これは、推しの王子様との恋愛も夢じゃない! そう意気込んで学園に入学してみれば、王子様は悪役令嬢のローズリンゼットに夢中。しかも、悪役令嬢はおかめのお面をつけている。
これは、巷で流行りの悪役令嬢が主人公、ヒロインが悪役展開なのでは?
命一番なので、攻略を諦めたら騎士様の溺愛が待っていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる