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いざ、入学
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――そうしてジェイドは、数ヶ月かけて、攻略対象たちが実在したこと、また実際の彼らと私が知る情報との差異を調べてくれた。
第一王子が、厳しい教育と気性の激しい婚約者に辟易していること。
ある事件以降、隠すように育てられている、美しい公爵家三男の存在と、その警護状況。
宰相の息子が病弱であること。また、その病状。
今は平民として暮らしている、騎士団長の将来の養子の存在。
それらを、ジェイドは次々と報告してくれた。
ジェイドの情報収集能力がすごすぎて、ちょっぴり引いた。一体どうしたら、一介の男爵家の従者が、王子の心境まで知ることができるのだろうか。公爵子息だって、美しすぎてメイドが誘拐事件を起こしてからというもの、姿を見るのも難しいはずなのに、どうして警護情報まで確認できたの? 宰相子息も、貴族は体が弱いことが瑕疵になり得るので公には隠しているはずだし、平民は数が多いから、人探しは簡単ではないのに。
ジェイドに訊いても、秘密だよと言って答えてくれない。危ないことはしていないから心配いらないと言われて、私は仕方なく、深く追求しないことにしたのだった。
「ただ、隠しキャラ、だっけ? 悪役令嬢である公爵令嬢の従者だけは確認できなかった。もしかしたら、まだ雇っていないのかもしれないね」
隠しキャラについては、外見の情報がそもそもない。公表されていたのはシルエットのみで、髪や目の色も不明だった。悪役令嬢の従者をしていて、彼女の指示で様々な後ろ暗いことを軽々とやってのける、ちょっとダークなキャラクターだということしかわからない。もちろん、いつから、なぜ悪役令嬢の従者になったのかなんて情報も載っていなかった。攻略対象の中でも曲者っぽかったし、こんな情報だけでは、存在を確認するのも難しいと思う。
……従者といえば、ジェイドも従者なのよね。
優しいし、見た目もすごく素敵だし、仕事もできるし、もしかしてって思ったこともあるけれど、隠しキャラはあくまで悪役令嬢の従者のはずだ。ジェイドがヒロインである私の従者をしているのは、私が呼んでもらったからだけど、ジェイドが悪役令嬢の従者になるなんて後にも先にも考えられないので、やっぱり隠しキャラはジェイドではないはずだ。
「そうなのね……。でも、他の四人は実在したんだもの。やっぱり、ここは『魔法学園のアリス』の世界なのよ!」
ジェイドのおかげで、ほとんど確信が持てた。あとは、私が頑張るだけだ。上手くできるかわからないけれど、これでも数々の乙女ゲームをプレイしてきたのだ。きっと誰か一人くらいは、ハッピーエンドを迎えられるくらいの好感度を稼げるはず!
「ありがとう、ジェイド。私、ハッピーエンドを迎えられるよう頑張るね!」
――私は、そう意気込むことで、胸の中の小さなモヤモヤに、気づかないふりをしていた。
ジェイドはそんな私を、ただ綺麗な笑みを浮かべて見ていたのだった。
そうして、十五歳になった私はついに、ジェイドと共に魔法学園に入学する日を迎えたのである。
「いつどんなイベントがあるのかわからないけれど、これまで真面目に勉強を頑張ってきたもの。きっと上手くやれるわ、私!」
そうして、私は意気込んで魔法学園の門をくぐったのだった。
第一王子が、厳しい教育と気性の激しい婚約者に辟易していること。
ある事件以降、隠すように育てられている、美しい公爵家三男の存在と、その警護状況。
宰相の息子が病弱であること。また、その病状。
今は平民として暮らしている、騎士団長の将来の養子の存在。
それらを、ジェイドは次々と報告してくれた。
ジェイドの情報収集能力がすごすぎて、ちょっぴり引いた。一体どうしたら、一介の男爵家の従者が、王子の心境まで知ることができるのだろうか。公爵子息だって、美しすぎてメイドが誘拐事件を起こしてからというもの、姿を見るのも難しいはずなのに、どうして警護情報まで確認できたの? 宰相子息も、貴族は体が弱いことが瑕疵になり得るので公には隠しているはずだし、平民は数が多いから、人探しは簡単ではないのに。
ジェイドに訊いても、秘密だよと言って答えてくれない。危ないことはしていないから心配いらないと言われて、私は仕方なく、深く追求しないことにしたのだった。
「ただ、隠しキャラ、だっけ? 悪役令嬢である公爵令嬢の従者だけは確認できなかった。もしかしたら、まだ雇っていないのかもしれないね」
隠しキャラについては、外見の情報がそもそもない。公表されていたのはシルエットのみで、髪や目の色も不明だった。悪役令嬢の従者をしていて、彼女の指示で様々な後ろ暗いことを軽々とやってのける、ちょっとダークなキャラクターだということしかわからない。もちろん、いつから、なぜ悪役令嬢の従者になったのかなんて情報も載っていなかった。攻略対象の中でも曲者っぽかったし、こんな情報だけでは、存在を確認するのも難しいと思う。
……従者といえば、ジェイドも従者なのよね。
優しいし、見た目もすごく素敵だし、仕事もできるし、もしかしてって思ったこともあるけれど、隠しキャラはあくまで悪役令嬢の従者のはずだ。ジェイドがヒロインである私の従者をしているのは、私が呼んでもらったからだけど、ジェイドが悪役令嬢の従者になるなんて後にも先にも考えられないので、やっぱり隠しキャラはジェイドではないはずだ。
「そうなのね……。でも、他の四人は実在したんだもの。やっぱり、ここは『魔法学園のアリス』の世界なのよ!」
ジェイドのおかげで、ほとんど確信が持てた。あとは、私が頑張るだけだ。上手くできるかわからないけれど、これでも数々の乙女ゲームをプレイしてきたのだ。きっと誰か一人くらいは、ハッピーエンドを迎えられるくらいの好感度を稼げるはず!
「ありがとう、ジェイド。私、ハッピーエンドを迎えられるよう頑張るね!」
――私は、そう意気込むことで、胸の中の小さなモヤモヤに、気づかないふりをしていた。
ジェイドはそんな私を、ただ綺麗な笑みを浮かべて見ていたのだった。
そうして、十五歳になった私はついに、ジェイドと共に魔法学園に入学する日を迎えたのである。
「いつどんなイベントがあるのかわからないけれど、これまで真面目に勉強を頑張ってきたもの。きっと上手くやれるわ、私!」
そうして、私は意気込んで魔法学園の門をくぐったのだった。
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