乙女ゲームのヒロインに転生したのに、ストーリーが始まる前になぜかウチの従者が全部終わらせてたんですが

侑子

文字の大きさ
8 / 15

いざ、入学

しおりを挟む
――そうしてジェイドは、数ヶ月かけて、攻略対象たちが実在したこと、また実際の彼らと私が知る情報との差異を調べてくれた。

 第一王子が、厳しい教育と気性の激しい婚約者に辟易していること。
 ある事件以降、隠すように育てられている、美しい公爵家三男の存在と、その警護状況。
 宰相の息子が病弱であること。また、その病状。
 今は平民として暮らしている、騎士団長の将来の養子の存在。
 それらを、ジェイドは次々と報告してくれた。

 ジェイドの情報収集能力がすごすぎて、ちょっぴり引いた。一体どうしたら、一介の男爵家の従者が、王子の心境まで知ることができるのだろうか。公爵子息だって、美しすぎてメイドが誘拐事件を起こしてからというもの、姿を見るのも難しいはずなのに、どうして警護情報まで確認できたの? 宰相子息も、貴族は体が弱いことが瑕疵になり得るので公には隠しているはずだし、平民は数が多いから、人探しは簡単ではないのに。

 ジェイドに訊いても、秘密だよと言って答えてくれない。危ないことはしていないから心配いらないと言われて、私は仕方なく、深く追求しないことにしたのだった。

「ただ、隠しキャラ、だっけ? 悪役令嬢である公爵令嬢の従者だけは確認できなかった。もしかしたら、まだ雇っていないのかもしれないね」

 隠しキャラについては、外見の情報がそもそもない。公表されていたのはシルエットのみで、髪や目の色も不明だった。悪役令嬢の従者をしていて、彼女の指示で様々な後ろ暗いことを軽々とやってのける、ちょっとダークなキャラクターだということしかわからない。もちろん、いつから、なぜ悪役令嬢の従者になったのかなんて情報も載っていなかった。攻略対象の中でも曲者っぽかったし、こんな情報だけでは、存在を確認するのも難しいと思う。

 ……従者といえば、ジェイドも従者なのよね。

 優しいし、見た目もすごく素敵だし、仕事もできるし、もしかしてって思ったこともあるけれど、隠しキャラはあくまで悪役令嬢の従者のはずだ。ジェイドがヒロインである私の従者をしているのは、私が呼んでもらったからだけど、ジェイドが悪役令嬢の従者になるなんて後にも先にも考えられないので、やっぱり隠しキャラはジェイドではないはずだ。

「そうなのね……。でも、他の四人は実在したんだもの。やっぱり、ここは『魔法学園のアリス』の世界なのよ!」

 ジェイドのおかげで、ほとんど確信が持てた。あとは、私が頑張るだけだ。上手くできるかわからないけれど、これでも数々の乙女ゲームをプレイしてきたのだ。きっと誰か一人くらいは、ハッピーエンドを迎えられるくらいの好感度を稼げるはず!

「ありがとう、ジェイド。私、ハッピーエンドを迎えられるよう頑張るね!」

 ――私は、そう意気込むことで、胸の中の小さなモヤモヤに、気づかないふりをしていた。
 ジェイドはそんな私を、ただ綺麗な笑みを浮かべて見ていたのだった。



 そうして、十五歳になった私はついに、ジェイドと共に魔法学園に入学する日を迎えたのである。

「いつどんなイベントがあるのかわからないけれど、これまで真面目に勉強を頑張ってきたもの。きっと上手くやれるわ、私!」

 そうして、私は意気込んで魔法学園の門をくぐったのだった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

【完結】モブ令嬢としてひっそり生きたいのに、腹黒公爵に気に入られました

22時完結
恋愛
貴族の家に生まれたものの、特別な才能もなく、家の中でも空気のような存在だったセシリア。 華やかな社交界には興味もないし、政略結婚の道具にされるのも嫌。だからこそ、目立たず、慎ましく生きるのが一番——。 そう思っていたのに、なぜか冷酷無比と名高いディートハルト公爵に目をつけられてしまった!? 「……なぜ私なんですか?」 「君は実に興味深い。そんなふうにおとなしくしていると、余計に手を伸ばしたくなる」 ーーそんなこと言われても困ります! 目立たずモブとして生きたいのに、公爵様はなぜか私を執拗に追いかけてくる。 しかも、いつの間にか甘やかされ、独占欲丸出しで迫られる日々……!? 「君は俺のものだ。他の誰にも渡すつもりはない」 逃げても逃げても追いかけてくる腹黒公爵様から、私は無事にモブ人生を送れるのでしょうか……!?

悪役令嬢のはずですが、年上王子が幼い頃から私を甘やかす気でいました

ria_alphapolis
恋愛
私は、悪役令嬢なのかもしれない。 王子の婚約者としては少し我儘で、周囲からは気が強いと思われている―― そんな自分に気づいた日から、私は“断罪される未来”を恐れるようになった。 婚約者である年上の王子は、今日も変わらず優しい。 けれどその優しさが、義務なのか、同情なのか、私にはわからない。 距離を取ろうとする私と、何も言わずに見守る王子。 両思いなのに、想いはすれ違っていく。 けれど彼は知っている。 五歳下の婚約者が「我儘だ」と言われていた幼い頃から、 そのすべてが可愛くて仕方なかったことを。 ――我儘でいい。 そう決めたのは、ずっと昔のことだった。 悪役令嬢だと勘違いしている少女と、 溺愛を隠し続ける年上王子の、すれ違い恋愛ファンタジー。 ※溺愛保証/王子視点あり/幼少期エピソードあり

枯れ専モブ令嬢のはずが…どうしてこうなった!

宵森みなと
恋愛
気づけば異世界。しかもモブ美少女な伯爵令嬢に転生していたわたくし。 静かに余生——いえ、学園生活を送る予定でしたのに、魔法暴発事件で隠していた全属性持ちがバレてしまい、なぜか王子に目をつけられ、魔法師団から訓練指導、さらには騎士団長にも出会ってしまうという急展開。 ……団長様方、どうしてそんなに推せるお顔をしていらっしゃるのですか? 枯れ専なわたくしの理性がもちません——と思いつつ、学園生活を謳歌しつつ魔法の訓練や騎士団での治療の手助けと 忙しい日々。残念ながらお子様には興味がありませんとヒロイン(自称)の取り巻きへの塩対応に、怒らせると意外に強烈パンチの言葉を話すモブ令嬢(自称) これは、恋と使命のはざまで悩む“ちんまり美少女令嬢”が、騎士団と王都を巻き込みながら心を育てていく、 ――枯れ専ヒロインのほんわか異世界成長ラブファンタジーです。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

<完結>溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。 本編完結済み。 続きのお話を、掲載中です。 続きのお話も、完結しました。

契約結婚の相手が優しすぎて困ります

みみぢあん
恋愛
ペルサル伯爵の婚外子リアンナは、学園に通い淑女の教育を受けているが、帰宅すれば使用人のような生活をおくっていた。 学園の卒業が近くなったある日、リアンナは父親と変わらない年齢の男爵との婚約が決まる。 そんなリアンナにフラッドリー公爵家の後継者アルベールと契約結婚をしないかと持ちかけられた。

処理中です...