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1章 出会い
11.久しぶりの事務所
しおりを挟む俺はブルータイガーとのデートの後、すぐに家に帰らずに一回このバイトの本拠地、事務所へ寄る事にした。
結局ブルータイガーとはあの後、ビールをもう一杯飲んで予約していた18時には解散した。
最後まで連絡先を聞きたがっていたけど、時間も過ぎてたし、少し冷たくしたらその後はすんなり駅に向かって歩いて行った。
まぁ居酒屋デートは楽しかったよ?もう少し飲みたいなぁとか思ったりもしたよ?
でも仕事だしな!
雑居ビルの2階にある事務所に着くと、スラっと背の高い綺麗なお姉さんが出迎えてくれた。
スタッフの1人の、ミカさんだ。
「あら、伊吹久しぶりね。随分儲かってるみたいじゃない?」
「ミカさんおつ~。昨日は久々デカいの来たわ♪」
「さすがうちの看板息子ね。その調子で頑張って♪今給料用意するわね」
給料は日払いで現金払いだ。希望すれば振込もしてくれるけど、俺はこうしてたまに来てまとめて受け取っている。
多分殆どの子が即日受け取ってるんじゃないかな?やっぱりこういう仕事するってお金に困ってる子多いからな~。
「うす!なぁ、今日って店長いないの?」
「今休憩行ったとこよ。待っていれば会えると思うけど、店長に用があるの?」
「うん。ちょっと聞きたい事があったんだよね~」
入口から事務所の中へミカさんと話しながら入って行くと、奥から物音がして、誰か待機してるのが分かった。
キャストの中にはストーカーや身バレなどを心配して事務所のスタッフに送迎を頼み、この事務所からデートへ向かう子もいるんだ。
俺は直行直帰派だからこの事務所には月1、2とかしか顔を出さないけど、たまにプロフィール写真を変えたりするので来る子もいたりする。
あとは仕事柄周りには出来ない相談とか、俺みたいにただ話したくて来る子もいるんじゃないかな?
ここのスタッフはみんな気さくでアットホームな感じだ。サイトを見ると黒をベースにさもうちは超高級ですから!みたいな雰囲気だけど、事務所ん中は全く高級感なんて無い。
入口入ってすぐに事務所があって、お洒落なテーブルにパソコンと電話が何台も並んでいて、そこにいつもは数人のスタッフがいる。今はみんな休憩行ってるのかミカさんしかいないけど、いつもこんな感じだ。
そして事務所の奥にある部屋はまるでお洒落な女子の部屋って感じで、大部屋の隅に個室が3ヶ所用意されていて、待機中のキャストはそこで各々過ごす事になる。
俺はそこへは行かずに、店長の机に座って少し待ってみる事にした。
ミカさんはパソコンをいじり始めて俺の貯まってる給料を計算し始めた。ここで俺達の仕事をサポートしてるんだよな~、キャストのプロフィール管理や、シフト管理、会員とのやり取りのメッセージチェックや電話対応。
まさに裏方って感じ?
俺はスマホを開いて自分の予約状況を確認する。
一応1ヶ月先まで空けてあるけど、昨日みたいに太客が付いた場合は数日休みを取る事もある。
だけど、こういう仕事は自分の好きなように稼ぐ事が出来ないから、なるべくは休まないようにしている。ど平日とか予約入らなくて結局休みでしたなんて場合も余裕であるからな。
俺の場合、客と直接やり取りしてる訳じゃないから、好きな時に来てもらうなんて出来ないんだ。
俺の次の予約は水曜日の昼過ぎに2時間と、土曜日にフルタイムか。土曜日のは勿論尚輝くんだ。
まだ予約入ってないし月火は休んじゃお~♪
「ミカさん、俺明日明後日休むねー」
「了解。リフレッシュしてちょうだい♪」
「わーい♪思い切り家でゴロゴロしよーっと♪夜は1人居酒屋して~♪夜更かししてゲーム三昧!」
「伊吹ったら相変わらずね~、そんな派手な顔してやる事が地味」
「オフは好きな事やるもんだろー?ミカさんは休みの日何してんの?」
「私は朝早くからジムに行くわ♪その後は友達とショッピングしたりお茶したり。近所をジョギングなんかもするわね~」
「かっこ良!ねー、ミカさんていくつなの?そろそろ教えてよ♪」
「伊吹もまだまだ青いわね。女性に年齢を聞くなんて野暮よ」
どんな事もクールに返すミカさんの見た目は三十代前半ってとこ?でも実際はもっと上らしい。
とにかく顔も姿勢も喋り方も全てが綺麗で、何でこの仕事してるんだろー?って思うぐらいだ。
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