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1章 出会い
10.その手には乗りません
しおりを挟む大我くんのオススメのお店はどこにでもあるような大衆居酒屋だった。まだ少し早い時間だからか、すぐに席に通してもらう事が出来た。
この時点で残りの時間は後30分。
普通に食べていれば嫌でもタイムアップだ♪
実は居酒屋が好きな俺。
ビールでも飲んじゃおうかな~とワクワクしてると、大我くんがニッコリ笑った。
「伊吹機嫌良くなったー♪」
「そりゃ……ね?なぁビール飲んでいい?」
「飲も飲も♪俺も飲む~♪」
「てか居酒屋とか久々~、あ、焼き鳥食おう。適当に頼んでいい?」
「いいですよー♪」
なんかもう、素で楽しもうとしていた。
さっきまでの地獄のような緊張感から解放されて、軽く清々しい気分だった。
大我くんとはこれで最後だし、ここは俺が歳上っぽく奢ってお互い気持ち良くサヨナラ出来たらなとか考えていた。
ビールで乾杯して、焼き鳥に食らいつく。
くぅー!うんめぇ♪
なんか周りからの勝手なイメージで、俺にビールは似合わないらしい。
だから小綺麗にしてる女性からは評判良くないから、ご飯とか行く店は居酒屋は避けてたんだ。
でもこうして堂々と来れたから俺はとても気分が良かった♪
「伊吹って酒強いの?もう空じゃん」
「強くはない。普通だよ、大我くんは?」
「ザル♡」
「マジ?そんな人本当にいるんだー!」
「いるいる♪今度俺の行きつけ連れてってあげるよ。バーなんだけど、飯も美味いんだ♪」
「わー楽しみ~♪ご飯が美味しいバーっていいよな~。でも俺居酒屋とかのが好き」
「そうなの?それならいろんなとこ連れてってあげる♪だから連絡先教えてよ♡」
「いいよ~……ん?連絡先?」
俺は気分良くスマホを取り出してハッと気付く。
あっぶねぇ!
まんまと騙されるとこだったわ!
まだビール1杯目で良かったわ!
酔ってたら完全教えちゃってたわ!
「ってそれはダメだって~、デートする時はお店通してちょーだい♪」
「えー、だってあのサイト高いんだもん。入会金を払って更に予約して払うんだろ?今回は初回限定お試しってのでやったからなんとか払えたけど、俺学生だから金無いもん」
「学生?もしかして大学生とか?」
「そうよ♪バイトしてっけど、そんなシフト入ってないからキツいんだよねぇ」
まさかの大学生2人目!
まぁノリ軽いし、普通に働いてそうな見た目じゃないし、改めて学生だって聞いても違和感はないけど。
そうか、それなら本当にもう会う事はないだろうな。
だって、何てったってうちは高級デートクラブだ。たった1時間だけでも一万五千円は飛んで行くだろう。それだけじゃない、更にデートにかかる費用も殆どが客が負担するようになっている。リピとか、お互いの関係性でデート費用は割り勘とかあるとは思うけど。
さっき大我くんが言っていた初回限定お試しってのは、その名の通り興味あるけどお金が無い!って人向けのイベントで、たまーに開催してるキャンペーンの一つだ。
本来、会員登録をしないと俺らキャストをデートに誘えないんだけど、キャンペーンをやっている時は、入会金無しで仮会員になれて予約が出来るんだ。ただし、初めの一回まで。それと、身分証などはしっかり必要になるから、仮会員とは言え余程変な人はスタッフが弾くだろう。
つまり、大我くんは入会金が払えずに仮会員のまま辞める事になるだろう。
こういうキャンペーンの時はたまに見るよ。
すげぇ楽しそうにしてて、絶対会員になってまた予約するね♪とか言って、それっきりの奴とか普通にいるもん。
きっと大我くんもその1人になるだろう。
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