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1章 出会い
9.チャラい20歳
しおりを挟む大我くんは嫌がる俺なんて気にしないかのように、距離を詰めて来て、軽く抱き締めて来た。
ゾワゾワする体に一生懸命「しっかりしろ!」と言い聞かせて、俺は両手で大我くんの胸元を押さえてこれ以上寄るなアピールをした。
「伊吹良い匂い~♪その嫌がる顔とかたまんね~♡」
「変態かよっ!こういうのダメなんだからな!」
「でも俺の友達でいるぜ?伊吹と同じようなバイトしてる子、パパ活~とか言って金の為に平気で股開いてる女の子」
「俺はお前の友達じゃないし、パパ活もしてないし、平気で股を開かないんだ!大我くんも本気なんだったらこんな事やめろよ!ヤリたいだけだって思われるぞ!」
俺が説得するように言うと、大我くんは考えるような顔をして少しだけ動きが止まった。
既に大我くんの手は俺の尻をさわさわしていて、鳥肌が止まらなかった。
よし!あと少しで逃げられる!
もう若い子の勉強とかどうでも良くなっていた。
歳を重ねる毎にただでさえ体力が落ちて来てる俺にはこの格闘は少々キツい。
何とか言いくるめてさっさと帰らせてもらおう!
「確かに~。それならさ、ちゃんとデートして告ったら付き合ってくれる?」
「分かった!分かったから離れてくれ!お前力強くてしんどい!」
「やったー♪」
「ふぅ……」
やっと体に自由が戻って、俺は横にズレて距離を置いて座り直し、落ち着こうと息を整える。
こんなに危険な思いをしたのは初めてだ。
そもそも高級デートクラブだからかそこまでガッツいてる客とかいない。下心はあってもお金に余裕のある人が多いから、一回断ればすんなり受け入れる人がほとんどだ。
年下とか慣れない分野に手を出したから痛い目に遭ったと言う事か……
これからはより慎重に客選びをしないとな。
とは言え、俺も歳を取る普通の人間だ。
いつまでも客を選んでいられない。
だとしてもこんな思いをするのは嫌だっ!
危うく俺の後ろの処女が持っていかれる所だったもんな!
「伊吹~、とりま連絡先教えて?」
「は?うちの店通してやり取り出来るじゃん」
「それだとややこしいんだもん、返信遅ぇし、この文章は送信出来ませんってすぐに出るし」
「スタッフがキャストに送っても害が無いかチェックしてんだよ。てかそんな文送ってくんなよ」
「だからぁ~、直接やり取りすりゃいいじゃん♪」
「悪いけど俺、客には連絡先教えてないんだ」
「マジ!?それで良く予約入るね!さすが美人は違うわ~」
トラブったりするのが面倒だからだよ。
あくまでも生活の為にやってるだけだし、恋愛感情抜きに仲良くなった客でも教えてない。
それなのにたかだか3時間予約入れただけの男に教える訳ないだろ。
さり気なく俺はスマホで時間を確認して、残り1時間もある事を知る。
チッ、こうなったらダラダラ時間稼ぎしてとんずらするしかねぇか。
とりあえずカラオケ屋から出るか。
「なぁ、腹減らね?ここ出てご飯食べ行こうぜ」
飲食店なら他に人もいるし、何かされても店員に訴えれば助かるだろ。
とにかくブルータイガーとの密室からいち早く抜け出したかった。
「飯か♪それなら俺のオススメ行こうぜ♪」
「……いいけど」
ニッコリ笑って立ち上がる大我くん。
公共の飲食店ならどこでも良かった。
もし個室っぽい店に入ろうとしたら時間まで駄々を捏ねよう。
そして大我くんは、財布を出そうとした俺に手を添えて首を横に振り、カラオケの代金を俺の分まで払ってくれた。
こ、こんなんで気を引こうったって騙されねぇからな!
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