【完結】どいつもこいつもかかって来やがれ6th season

pino

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7章

てか今は俺の方が空の事好きなんじゃね?

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 病院に着いて俺と空は急足で受付に声を掛ける。
 病院内は人気は無く、静まり返っていた。時期的にもこの時間は緊急以外は受付はしていないと入口に書いてあったのがチラッと目に入った。


「すみませんっ、早川陽子の息子ですが、倒れて運ばれたのってこちらで間違いないですか?」

「空」


 空が受付で確認してると、横から空を呼ぶ声がして二人同時に振り向くと、無表情の雪兄が歩いて近付いて来ていた。白のワイシャツに黒いベスト。その上に上着を羽織っていて、エプロンは付けてなかったけど、仕事抜けて来たって分かるような格好だった。


「兄貴!」

「こっち。今一般に移されて点滴受けてる」

「うん」


 俺は病院の事は良く分からないけど、とにかく何かしらの処置をされて今は命は大丈夫って事だよな?
 雪兄の雰囲気がヤバそうな感じしてるから俺は黙って付いて行くしか出来なかった。

 空の母ちゃんがいる病室に向かう途中で雪兄が容体を話してくれた。


「医者が言うには睡眠不足と栄養失調で疲れも蓄積されて過労で倒れたって。このまま点滴を続ければ明日にでも退院は出来るみたい」

「そうなんだ……」

「明日退院出来るのか!良かったな!」

「良くないだろっ自分の体調管理も出来ない程の生活してるから俺達まで巻き込むんじゃないかっ!」


 普通の声量で強く言う雪兄の声は、誰もいない静かな病院の廊下に響き渡った。
 雪兄が怒ってる。空と違って母ちゃんの事嫌いなんだもんな。顔も不満そうで凄く嫌そうな顔をしていた。


「兄貴……」

「俺は店に戻るよ。父さんが向かってるから空は待ってなよ」

「え、父さんが来るの?」

「実は父さんとは数ヶ月に一度会ってるんだ。ずっと俺達の事を心配してる。だから空も顔見せて安心させてあげて」

「……知らなかった」


 雪兄と空の父ちゃんは仲良しって事か?でも空は母ちゃん?良く分からなくなって来たけど、俺はここにいてもいいんだよな?
 てか空の側にいてやりてぇ!


「雪兄!空の事は俺に任せろ!」

「何言ってるんだ。空の事泣かせてばかりの癖に」


 雪兄は俺を見て、表情を緩めて鼻で笑うように言った。うん。いつもの雪兄だ。
 確かに泣かせてばかりだけど、これからは違う。雪兄にも認めて貰えるようにならなきゃな。
 雪兄はジッと俺を見た後、空をチラッと見て言った。


「空、ちょっと貴哉借りる。あの人は上の病室にいるから。大部屋だから騒ぐんじゃないよ?」

「あ、うん。貴哉、先に行ってるな」

「おう。すぐ行くから」


 雪兄に指名されちゃったよ。一体何言われるんだろ?また説教かぁ?あ、雪兄にもまた空とちゃんと付き合い始めたって言わなきゃだな。

 俺は雪兄と、入って来た入口の方にある椅子がいっぱい並んでる所に少し離れて座った。


「貴哉はさ、どこまでうちの事聞いてるの?」

「んー、離婚してて、初めは母ちゃんと住んでたけど、雪兄が空の為にならないって引き取ったって感じかな?そんで母ちゃんは今一人。父ちゃんの事は聞いた事ねぇな」

「全部知ってんじゃん。まぁいいや。空がその話したって事は本当に貴哉の事信頼してるからだろうし」

「へへ♪何か嬉しいな♪あ!俺、空とまた付き合う事になったんだよ!今度は絶対に泣かせたりしねぇ!てか今は俺の方が空の事好きなんじゃね?」

「へー、そりゃ兄として喜んでいいんだか悲しんだ方がいいんだか分からないな」


 雪兄は笑っていた。でも、怒られないって事は反対されてる訳じゃねぇよな?初めて雪兄に会った時は怖かったもんな~!
 その後雪兄は真剣な顔付きで話し始めた。


「さっきも空に言った通り、俺は父さんと定期的に会ってるんだ。今でも父さんは空の分の養育費を出してくれていて、あの人の代わりに俺が受け取ってるんだ。ちなみにその金は空の為に貯金してる。絶対空には言うなよ?」

「父ちゃんいい人なんだなぁ~。言わねぇよ。約束する」

「父さんはもう新しい家庭を持っていて、俺達の事を心配しながらも全面的に援助出来ないのを気にしてるんだ。俺はもう社会人だし気にしてないけど、空には恨まれてるんじゃないかってね」

「それで空に会ってやれって言ったのか」

「それもあるけど、空の為にもなるかなって。離婚する時、俺と空って生き別れそうになったんだよ。俺は父さん、空はあの人。それぞれ別々で引き取られる筈だったんだ」

「…………」

「空は何も分かってないぐらい小さくて、俺はまだ小さかった空をあんな母親と二人きりにさせるなんて出来なかった。無理矢理俺も空と母親の所に行かせてもらったんだ。案の定母親は俺達の事なんかほったらかしで遊び回ってて、ご飯もろくに食べる事が出来なかったよ。その頃父さんは全く関与して来なかったんだけど、俺が中学上がる頃かな?進級祝いがしたいって突然連絡が来たんだ。俺は迷ったけど、会う事にした。そこで初めてずっと俺達の養育費を入れ続けてくれてた事、マメに母親に俺達の事を聞こうとしていた事をね、でも、あの人はその養育費を全部自分の為に使っていた。あの人からは二人なら大丈夫。いつもそればかりで他の事は教えてもらえなかったってね。俺は心底あの人を憎んだよ。だってさ、ちょっとでもいいからその養育費を俺達に回してくれればもう少しまともに生きられたんじゃないかな」


 俺は雪兄が話してくれてる話が衝撃的過ぎてただ聞いているだけしか出来なかった。
 空は何も知らないって事だろ?雪兄だけが本当の事を知っていて、でも母ちゃんの事が好きな空には話せないって判断した。
 やべ、思ってたより空んちが複雑過ぎて俺、次にどんな顔して空に会えばいいか分からねぇよ。


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