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7章
そんじゃ寝かせてやろうぜ?
しおりを挟む雪兄は一回ふぅとため息を漏らしてから話を続けた。
「いきなりこんなヘビーな話してごめん。空にとって貴哉は本当に大事な存在なんだと思ったから知っていて欲しかったんだ。空は多分父さんの事を恨んでる。自分達を捨てて養育費なんかも一切払ってないと思ってると思うんだ。空ももう高校生だし本当の事話すべきだとは思ってたんだけど、どうにもタイミングがね」
「雪兄は、空が思ってるよりも兄貴やってたんだな」
「……まぁね!てか光ちゃんがいてくれたから俺も空の兄貴やってられるんだよ。ご飯も食べられない俺達を世話してくれてたのは光ちゃんと光ちゃんの家族だ。いきなり現れた小汚い格好した子供二人を嫌な顔一つせずに受け入れてくれた千歳家が俺にとっては本当の家族だよ」
「そっか」
空には空の思いがあるように、雪兄には雪兄の思いがある。どちらも共通するのは想い合ってるって事だった。空も雪兄に感謝してるし、雪兄も空を幸せにしようと一生懸命守ってる。
俺には兄弟がいないからどちらにつくこともなく、ただ自分にはない物を補い合えるそんな存在が羨ましく思った。
「そんな訳で可愛い弟の事を頼んだよ。この後父さんが来るけど、二人にちゃんと話し合いをしてもらいたいんだ。俺は店に戻らなくちゃならないから、今の貴哉になら俺の代わりが出来る。そうだろ?」
「任せとけ!さっきも言ったけど、今は俺の方が空の事好きなんだ。何が何でもあいつを幸せにしてやる」
「あはは、口だけじゃない事を祈ってるよ」
椅子から立ち上がって俺をを見る雪兄は空に良く似た笑顔だった。
雪兄が裏の方から出て行った後、俺は空がいるであろう病室に向かった。
にしても夜の病院は怖ぇな。一階は診察室とかだから今は人気がねぇし、俺の足音だけが響いていた。
確か上の階とか言ってたか?上って言ってもここ3階までありそうだけど、どっちの上だよ。まぁいいか、とりあえず上に行きゃ誰かしらいるだろうからそこで場所聞けば。
エレベーターを使って二階に行くと、真正面に受付みたいなとこがあったからそこにいた看護士に早川家がどこにいるのか聞いて見る事にした。さっき空が母ちゃんの名前言ってたけど、忘れちまった。
「あら、早川さんのお友達かしら?」
「そうだけど」
これは驚いた。俺が聞く前に、気付いた看護士が空の上の名前を出した。
あ、もしかして空が俺が後から来るって言っておいてくれたのか?
「早川さんの息子さんから聞いてるわ。案内するわね」
「どうも」
ニッコリ笑顔で受付の中から出て来た看護士は「こっちよ」と言って俺を案内した。
相変わらず静かな廊下だったけど、病室が並んでいて、人気がない一階とは違う雰囲気だった。
看護士が止まった病室の入口には「早川陽子」の名前があって、空が言っていた母ちゃんの名前を思い出す。そうだそうだ、陽子だ。
看護士に軽くお辞儀をしてから中に入ると、カーテンで仕切られているけど、なんとなくこの部屋にベッドが四つあるのが分かった。入って右奥の窓際の所に空が座っているのが見えて俺は近付いて行く。
「空、大丈夫か?」
「貴哉っ」
俺に気付くと顔を上げて笑顔を見せて来た。
でもその笑顔は無理矢理作ったような引き攣った物で、さっき見た雪兄とは似てるとは思えなかった。
「おかえり。母さん寝てるみたい」
「そんじゃ寝かせてやろうぜ?疲れてんだろ」
「うん」
空が見つめる先のベッドを見ると、中年の女の人が仰向けで寝ていた。顔色はあまり良いとは言えねぇな。でも思ったよりも普通に見えるのは雪兄が言ってた点滴のおかげか?布団の上に出てた腕に何か線が繋がっていて、何かの液体が送られているみたいだった。
前に空んちに行った事があって、そん時は頭しか見えなかったけど今は顔がハッキリ分かる。目は閉じてるけど、空の面影が少しある優しい顔だった。若い時は綺麗だったんじゃね?って思わせるような雰囲気。髪は前見た時と同じ茶髪で、あの時よりも痛んで見えて、根元が黒くなっていた。
「空の母ちゃん、目開けたらビックリするんじゃね?息子がいてさ」
「するかもな。でもすぐにガッカリするんじゃない?母さんがここにいて欲しいのは俺じゃないから」
「お前またそんな事言ってんのかよ」
「……本当の事だから」
悲しそうに目を伏せてそんな事を言う空。
今までの話聞いたら気持ちは分からなくはねぇけど、息子が心配して来てんのにガッカリはねぇだろ。
うーん、空の母ちゃんが目ぇ覚ませばどう思ってるのか聞けるんだけどなぁ。
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