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7章
お前がどこにいようが俺はお前と一緒だ♪
しおりを挟む病室で空と話してるのも他の人に悪いんで、廊下に出て待合室みたいな椅子がたくさんあるエリアで少し話す事にした。
とりあえず空は母ちゃんが目ぇ覚ますまではここにいるだろうからな。
「貴哉」
「ん?」
空が元気ない様子のまま俺の名前を呼んだ。
下を向いてずっと目を伏せたまま喋っていた。
「兄貴と何を話したの?」
「早川家の事。それとお前の事よろしくって言われた」
「……そっか。どう思った?」
「どうって、大変だったんだなとか?あ、お前ら兄弟が羨ましいって思ったわ」
「俺と兄貴が?」
ここで空は顔を上げて俺を見てきた。
俺が言ったのが意外な事だったのか?
それでもやっと見れた空の顔に俺はホッとしていた。
「おう。想い合う兄弟とか最高じゃねぇか♪俺も仲間に入れて欲しいぐらいだぜ」
「はは、貴哉がいたら兄貴が毎日怒ってそうだな」
「雪兄ってすぐ怒るもんな!あー、空も大人になったらああなるんかなぁ?」
「ならないだろ。俺は俺だし」
「確かにな。空が怒っても俺怖くねぇもん」
「……あのさ、俺一回実家に帰ろうと思うんだ」
やっと普通に話せるようになった所で空が言った。それは母ちゃんの為か、空が決めたんならと思って俺は頷いた。
「いいんじゃん。好きにしろよ」
「母さんは明日には元気になるだろうけど、しばらくは仕事も休むだろうし、また倒れられても困るからな」
苦笑いしながら言う空は決死の覚悟だと思う。空が母ちゃんの所から雪兄の所へ移り住むようになった経緯は前に聞いてたから、今空がどんな気持ちでそう決めたのか少し分かる気がした。
あの時とは全く気持ちが同じとは限らないけど、複雑なんじゃねぇかな。
一度、期待してた母ちゃんの事を諦めて、兄貴の所に行くって覚悟決めたんだ。空の性格なら、見捨てずに世話してくれてる兄貴を裏切るんじゃないかとか心配してるんじゃないか?
「空の好きにすればいい。空がどこに住んでても俺からしたら変わらねぇからな。お前がどこにいようが俺はお前と一緒だ♪」
「貴哉……本当に、ありがとう……」
俺から家族の問題には首突っ込むつもりはない。
だけど、空の気持ちには向き合うつもりだ。空がそうしたいって言うなら応援するし、間違ってると思ったら否定するつもり。
今の空はまた不安定になりかけてるから俺はこいつがどんな道を選ぼうが離れないでいようと心に決めた。
静かな廊下の向こうから誰かが歩いて来るのが見えて来た。スラっとしたおっさんで、メガネを掛けてる優しそうな男。セーター姿に、上着を羽織った普通にどこにでもいそうな人だった。
俺達に近寄って来て声を掛けて来た。
「君、空か?」
「……はい。そうですけど」
「やっぱりそうか。雪にそっくりだな。あ、私は君の父親の高宮です」
空の父ちゃんだ!
照れたように挨拶してる空の父ちゃんは、笑ったら空の笑顔に似ててかっこよく見えた。にしてもすげぇ優しそうな感じのおっさんだな。こんな人が空と雪兄を置いてっちまったってのか?
「え、あの……」
「空!父ちゃん来てくれて良かったな♪そんじゃ俺はちょっと散歩してっからゆっくり積もる話でもしろよ」
「君は空のお友達かな?付き添いしててくれたの?こんな時間なのにありがとう」
立ち上がる俺に空の父ちゃんはペコッと頭を下げて礼を言った。しっかりしてるじゃねぇか。空の真面目な所は父ちゃん似か?
「高校の友達の秋山貴哉……です。空とは一番の仲良しなんで気にしないで下さーい♪」
「貴哉、行かないでっ」
俺が気を使いながら挨拶してると、空も立ち上がって俺の服を引っ張った。
いきなり現れた父親にビビってんのか?雪兄が言ってた通りあまり良い印象がねぇのかもな。
でもここは俺抜きで話した方がいいと思う。見た所空の父ちゃんは落ち着いてるし、他に家族がいるのにも関わらずこうしてちゃんと来てくれてんだから、空と二人で話がしたいんじゃないかと思うんだ。
俺は空の手をギュッとして、ニコッと笑ってやった。
「大丈夫だ空。俺はすぐそこら辺にいるから。な?」
「でも、俺……」
「空、逃げるな。ちゃんと父ちゃんと話せ。言いたい事あるならぶつけていいし、無いなら無いで父ちゃんの話だけ聞いてろ。お前頭良いんだからそれぐらい出来るだろ?」
「秋山くん、ありがとう。空、少しだけ時間もらえないか?」
「……分かった」
空は俺から手を離して元気なく椅子に座った。
そんな空の頭をポンとしてやって俺は来た方へ向かって廊下を歩く。
あんなんでちゃんと話せるかは分からねぇけど、父ちゃんからしたら知らない俺がいたら話せる話も出来ねぇだろ。本当にその辺にいるつもりだし、後は空次第だよな~。
俺は行く当てもないので廊下をゆっくり歩いてようとフラフラしてると、前の方に壁を伝いながらヨロヨロと歩いてる入院患者が着る服を着た女がいるのが目に入った。
って、空の母ちゃんじゃね?今にも倒れそうなぐらいヒョロヒョロしてっけど、まだ歩いちゃマズいんじゃねぇの?点滴付けたままどこにいくきだ?
俺はすぐに駆け寄って声を掛ける事にした。
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