【完結】取り柄は真面目な事だけです

pino

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1章 大切な人

1.好きな人

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 一度抜けた大学に戻るとすぐに寄って来た友達に茶化された。


「尚輝~!さっきのイケメン誰!?」

「オーラあり過ぎ!芸能人かと思ったわ!」


 茶化された内容はさっきまで一緒にいた俺の片想いの相手、伊吹いぶきさんの事だった。
 伊吹さんとはデートクラブで出会い、一目惚れしてから毎週土曜日に店を通してデートをさせてもらっている5歳年上の男性で、二人の友達の言う通りとても美人なんだ。
 綺麗な顔はもちろん、髪も傷みの無い輝くライトブラウンで、柔らかい笑顔ととても良く似合っているんだ。性格も優しい。たまに豪快な時もあるけど、そんな所も惹かれるぐらいに俺は惚れ込んでいた。

 
「もしかしてあの人が尚輝の好きな人か!?」


 目を輝かせて俺の周りをクルクル回って聞いてくるのは幸太郎こうたろう。金髪で、外はねの猫っ毛が特徴的で、珍しいオッドアイの持ち主。
 

「デートクラブってあんなに綺麗な人ばっかなの!?」


 俺が好きな人とは会員制のデートクラブで出会った事を知ってて、興味津々に聞いてくるのは美波みなみ。白に近い金髪で、ブルーのカラコンを入れているお洒落さん。

 二人は付き合っている。それも堂々としていていつも仲が良く俺の憧れの存在だ。


「うん、俺の好きな人だよ。伊吹さんしか指名した事ないから他の人は分からないよ」

「伊吹とか名前までかっこ良~!」

「なんか凄い仲良さそうだったけど、上手く行ってる感じ~?」


 美波にそう言われてニヤけてしまった。
 周りから見たら仲良さそうに見えたのか♪
 上手く行っていると言えば行っている。なんと、あの伊吹さんに「大好き」と言ってもらえたんだ♡思い出しただけでも嬉しくて脳みそが蕩けそうになる。


「うわー、あの尚輝がデレてる~!」

「尚輝が幸せそうで良かった♪」


 幸せ……なのかな。
 確かに伊吹さんからは嬉しい事をたくさん言ってもらえたんだ。土曜日も店を通さずに直接会ってくれる事になった。それも伊吹さんの提案で!
 俺は驚きと嬉しさの反面、他の客にもしているんじゃないかと不安になったんだ。
 伊吹さんの事は信じてるよ。でも、伊吹さんは俺と同じ客である男とプライベートで会っていたんだ。

 その男の名前は青山大我あおやまたいがくんって言って、大柄で青い髪が特徴的なとても明るい人の事。俺と大我くんは最近恋バナをし合う友達になった。
 昔から周りと打ち解けるのが苦手だった俺にとって、気さくに声を掛けて次々と話題を振って笑ってくれる大我くんは、俺にとってとても大切な友達になったんだ。今ではお昼は一緒に食べてるし、お互い時間があれば電話やメッセージのやり取りをしたり、大我くんの住むアパートへ遊びに行く事もあった。

 だけど、その大我くんとは好きな人が一緒だったんだ。
 それも大我くんは伊吹さんの事をかなり気に入っていて、恋バナをしている時はもう俺のものみたいな事も言っていたぐらいだ。

 それもあって俺は疑いたくないけど、伊吹さんは俺以外にも同じような事を言ったり、会ったりしてるんじゃないかって思ってしまうんだ。


「そういや大我も最近幸せだって言ってたな。尚輝仲良いからなんか聞いてね?」

「言ってたな。あいつの場合いつも同じような事言ってるけどな~」


 幸太郎と美波も大我くんとは友達なんだ。俺よりもずっと前から仲が良いらしく、三人が話してるのを度々見かけた。
 と言うか大我くんはかなり顔が広い。俺と二人でいても通りすがる人にひっきりなしに声を掛けられる日もあった。みんな揃って「大我」と名前を呼んで笑顔を見せていく。
 大我くんて凄いな。友達がたくさんいて羨ましいな。
 俺は自分とは正反対の明るくて楽しい大我くんに心底憧れていた。

 俺も大我くんのようになりたい。そしたら伊吹さんとももっと仲良くなれるのに。

 そんな憧れの大我くんとは今、少しだけ気まずい仲でいた。
 理由は勿論伊吹さんだった。


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