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1章 大切な人
3.いつもの待ち合わせ場所
しおりを挟む待ちに待った土曜日が来た。
俺は約束した日から緊張して、日常の一部だった勉強にも身が入らないでいた。
約束の時間は朝の9時だった。いつもは伊吹さんの出勤開始時間である11時からだったから、こんなに早い時間から会えるのは初めてで、更に緊張が増した。
時間は8時半。今日も早めにいつものコンビニの前の待ち合わせ場所で待機する。遅刻なんて印象悪いからな。
ふと自分の格好が気になった。俺はファッションには無頓着だったけど、伊吹さんとデートをするようになって一応気にするようにはしている。
雑誌とか買ったりして、学校の勉強の合間にファッションの勉強もしているんだ。
伊吹さんはいつも大人っぽくてお洒落だから、少しでも釣り合うように頑張らないといけないんだ。おまけに良い匂いもする。あれは香水かな?大人の男性って感じがしてかっこいいんだ。
まだまだ俺には到底追い付けない伊吹さんだけど、いつか絶対に両想いになってやるんだ!
そう意気込んでいると、フラッと現れた愛しい人。
明るい笑顔を振り撒いて、俺だけじゃなくて道行く人々をも魅了していく。
きょ、今日も眩しい!
「おはよ♪30分前でもダメか~!尚輝くんてばどんなけ早く来てんの~」
綺麗な笑顔で言う伊吹さん。
あ、もしかして気を使って早く来てくれたのかな?
「おはようございます。約束は9時なので俺の事は気にしないで下さい♪」
「たまには俺が先に待ってたかったのにな~」
優しく笑いながら俺がそう言うと、「あーあ」と言って、満面の笑みでそんな可愛い事を伊吹さんは言った。
可愛いなぁ♡その顔でそのセリフは可愛い過ぎるよ♡
でも俺は少しホッとしていた。
今までのデートでも伊吹さんはこういう事を言ってくれていた。それは俺がお金を払って伊吹さんの時間を買っている客だからだと思っていた。いつかは好きになってもらいたい。そんな気持ちがあっても、店を通してる以上伊吹さんにとってはリップサービスに過ぎないんじゃないかと頭の片隅ではそう思っていた。
それでも嘘でも伊吹さんにそう言う事は言われるのは嬉しいんだけど……
しかし、今日の伊吹さんは完全にオフだ。プライベートの筈だ。筈と言うのは、これも仕事の内だとしたら分からないからだ。
俺は伊吹さんの職業について知識は少ないけど、店外と言うものが存在して、客とのやり取りを店を通さずに行いお金を稼ぐ事もあるらしい。それか更にお金を出してもらうよう次に繋ぐ為の行為。
それもあって喜び反面、不安もあったんだ。
「伊吹さん、朝早いですが体調は大丈夫ですか?」
「平気~♪俺って結構規則正しい生活してるから。普段も6時には起きてるし、この時間なら余裕~」
「良い事ですね♪俺も早くに目が覚めました」
「尚輝くんも?俺達健康的だな~」
こんな些細な日常の会話でさえ、伊吹さんと出来るのなら幸せだなと思ってしまう。
まさかこんな風に好きな人と過ごせる日が来るなんて、臆病な俺にとって本当に夢のようだった。
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