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1章 大切な人
4.一目惚れなんです
しおりを挟む俺と伊吹さんの出会いは高級デートクラブと言う、好きなキャストさんを客が選び、予約を入れてお金を払いデートをしてもらうと言うちょっと不思議な世界だ。
同性の事しか恋愛対象として見れないゲイである俺は、この歳になるまで誰かと付き合った事がない。それどころか自分はおかしいと思い込み、自分の気持ちを隠して、良いなと思う人がいてもなかなか踏み出せずにいた。
ただでさえ引っ込み思案な性格だから、子供の頃からいつも一人で過ごしていた俺のやる事と言えば日常の一部になっている勉強だ。
勉強は一人でも出来るし、勉強をしている時は夢中になれて時間もあっという間だった。
何より新しい事を覚えるのが楽しかった。
初めはゲイの友達が欲しいと思ってネットを調べていたんだ。世の中は広い事は分かっていたけど、俺にはその世界に足を踏み入れる事がとても大きな壁であってただ見るだけの日々が過ぎていた。
そんな時に高級デートクラブという存在を知った。初めは女の子がお金持ちのおじさんと会ってお金を貰う。ちょっと危ないサイトだと思っていたけど、いろんなサイトを見ている内に女の子だけじゃなくて、男の子も同じような事をしているのを発見した。
そこにいる男の子達はみんな芸能人のような容姿をしていて、とても魅力的に見えた。ゲイ専門のもあったけど、俺はその中でも一般用のデートクラブで手を止めた。
そう、それが伊吹さんの所属している高級デートクラブだった。
男性キャストでは人気No. 1の「伊吹」と言う男性のページを食い入るように見た。まずは写真。もうこの時点で一目惚れしていたのかも知れない。
明るいライトブラウンの髪に、お人形のような綺麗な顔、数冊の本を握り締めてこちらを見ている伊吹さんは清楚で大人しそうなイメージだった。
凄い!この人に会いたい!会ってお話ししてみたい!そう思って夢中になった。
それからプロフィールも隅々まで読んだ。年齢は25歳。趣味は一人飲み。特技はどんな人とでも仲良くなれるコミュ力。そして何より嬉しかったのは、このお店では、対象性別と言う物があり、伊吹さんは女性だけじゃなくて、男性ともデートをしてくれる事だった。
そしてキャストからの一言で、「割り切って楽しい時間を過ごしましょう」とコメントしていた。
全てを鵜呑みにした訳じゃないけれど、プロフィールを読んで伊吹さんへの勝手なイメージが膨らみ、俺はそのまま会員登録をして予約もした。
まず初めに会員登録にお金が掛かる。そして予約をしてからもお金が必要だった。
俺の父が会社を経営していて、お金には不自由は無かったけど、だからと言って俺のお金じゃないしいつもは必要な分だけを使って過ごしていた。
ここで俺は父さんから預かっているクレジットカードを使った。学生の俺からしたら大金だったけど、何が何でも伊吹さんに会いたいと思って自然と使っていた。
「何かあった時に使いなさい」
そう言われて渡されていたカードがここで役に立つとは。そして予約を入れた後伊吹さんに少しでも良く思われたいと思って喜ぶようなデートを調べ尽くした。
ネットで効果的だと書いてあったのは、相手の好きな場所を選ぶ、相手の好きな会話をする、そしてプレゼントだ。
プレゼントはいくつか候補があったけど、プレゼントされて喜ぶ物ランキングで上位にあった腕時計にする事にした。
ふと自分がしている時計を見てイメージして、これなら腕に付けるだけで邪魔にならないし、すぐに時間も分かる。そしてブランド物ならば不要になった時に売れる。そう書いてあったからそれにした。
予約をした事で次々と浮かぶ伊吹さんへの想いや気持ちや期待に、俺は毎日が楽しくなった。
普段は何も変わらないけど、土曜日に伊吹さんに会えると思ったらワクワクして、勉強も捗った。
一目会えるだけでもいい。
少し話が出来るだけでもいい。
俺は良いなと思う相手に初めて前向きになれた。
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