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1章 大切な人
11.強引な誘い
しおりを挟む店を出て伊吹さんを家まで送った。とても気分が良いのかやたら喋っていたけど、一人で歩いていたから良かった。
伊吹さんのマンションの下に到着して、伊吹さんが自動ドアの中に入って行くのを外で見ていると、振り向いて手招きした。
「何してんの?早くおいで~」
「え?」
「えじゃないよ。寄って行きなよ」
「えー!」
突然の部屋へのお誘いに、俺は驚いた。
今日はこのまま帰ろうと思っていた。てかまだ伊吹さんと居られるとは思っていなかった。それも伊吹さんの部屋に入っていいなんて……
俺が焦っていると、伊吹さんは目を細めて不機嫌そうに言った。
「あ?嫌なのかよ?」
「嫌じゃないです!でも、もう遅いですし迷惑じゃないですか?」
「あのさ、迷惑だったら誘ってねぇから。てか何なの?付き合ってる癖に何もしないで帰るとかマジで俺の事好きなのかよって感じ」
何かヤバい事になって来たぞ?
伊吹さん怒ってる?
俺が帰ろうとしたから?
伊吹さんが言う何もしないでってのは恋人同士がするアレだよな?
俺だって伊吹さんとはしたいよ。でも付き合って間もないのにそんな事してもいいのか?
俺はもっとデートとかの回数を重ねてからと思っていたのに、伊吹さんは大人だからそう言うの気にしないのかな……
それに何より伊吹さんはノンケだったんだ。俺といざそう言う事をするってなったら「やっぱり違った」とかならないか?それはそれで仕方ない事だけど、せっかく両想いになれたのにそんな事になったら悲しいよ。
「ごめんなさい。伊吹さんの事は本当に好きです。でも、酔ってる相手にそう言う事をするのは違うんじゃないかと……いえ、言い訳ですね。俺は自分に経験がないから伊吹さんが酔ってるのを理由に逃げようとしていたのかも知れません」
「俺、酔ってねぇけど?で、帰るの?寄ってくの?ここ入口で目立つから早く決めて~」
ブスッとしたままの伊吹さんはマンションの入口でカードキーをかざして、もう一枚の自動ドアを解除した。その時に、伊吹さんのキーケースに付いていたペンギンのキーホルダーがチラッと目に入り、俺は伊吹さんを抱えるように一緒に自動ドアの中へ入った。
前に水族館へ行った時にお揃いで買ったキーホルダーだ。今でも大事に付けていてくれてるんだな。
「伊吹さんが誘ったんですからね?後悔しても知りませんよ」
「はは♡そっちこそ後悔すんなよ~♡」
伊吹さんはとても楽しそうに笑っていた。
機嫌が直ったみたいで良かった。
お酒が入った伊吹さんは、いつもよりも大胆で強引だけど、笑顔は伊吹さんのままだった。
俺もお酒飲めるようになりたいな。
そうすれば伊吹さんともっと楽しめるのにな。
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