27 / 45
3章 恋人失格
26.ダメな自分のまま
しおりを挟む次の日の朝、俺は大我くんを起こす為に昨日も来たアパートに足を運ぶ。
まず驚いたのは、今日は鍵が掛かって無いどころか部屋のドアが開き放しになっていた事。
こんな朝から人んちのドアが全開に開いている事と言う事でショックを受けた。
大我くんは予想できないような事や発言をするけど、まだ慣れないな。いつかはこんな事にも驚かない日が来るのだろうか。
「大我くん?おはよう」
開いていたドアから中に向かって声を掛けてみる。すると部屋の奥から大我くんが現れた。起きていた事にも驚いた。
廊下には中身がパンパンに詰まったゴミ袋達が並んでいた。
「ナオキングじゃねぇか♪もうそんな時間か?ちっと待ってろ~。あと少しで終わるからよ」
「うん」
元気そうな大我くんはテーブルを部屋の真ん中に置いて、ベランダの窓をしっかり締めて出て来た。
ここまでくれば大我くんが何をしていたのかは分かる。朝から掃除をしていたようだ。
「お待た~♪朝から良い事したから気分がいいわ~♪」
「うん。凄く良いと思うよ。スッキリしたんじゃない?」
「ちょースッキリ~♪」
話しながら廊下に置いてあったゴミ袋を二つ程手渡されて受け取ると、大我くんは四つ持って外に出て来た。鍵はきちんと閉めていた。
「でも何で急に始めたの?」
「だってさ、伊吹が来るかもだろ?綺麗にしとかなきゃあいつうるさそうだからよ」
「…………」
伊吹さんの為。理由には納得出来た。
だけど多分伊吹さんが大我くんの家に遊びに来る事はないと思う。
俺は言わなきゃと少し暗い気持ちになった。
伊吹さんは俺と付き合っているから、伊吹さんに向けられる大我くんの好きが俺と同じ好きならちゃんと言って諦めてもらわなきゃいけない。
そんな事を言ったら大我くんは怒ると思う。だけど、言わないままでいたら伊吹さんに迷惑が掛かるし、恋人失格のままだ。
アパートの近くにあったゴミステーションに持っていたゴミ袋を置いて、改めて大我くんに向き直る。
一仕事終えて嬉しそうな顔をしている大我くんに俺は冷や汗が止まらない。
「どうした?顔色良くねぇぞ?」
「……う、うん」
ずっと見ていた俺に気付いて顔を覗き込んで来る大我くん。
俺の体調を気にしてくれるなんて、今そんな風に優しくされたらますます言えなくなるよ。
いや、言わなきゃ!伊吹さんの為だ!
「あのね、大我くん。同盟の話だけど、やっぱり間違っていると思うんだ」
「どういう事だぁ?」
「伊吹さんの事を好きな気持ちは俺も大我くんも一緒なのは分かるよ。でも、伊吹さんと付き合ってるのは……俺、だから……もしも大我くんが伊吹さんの事を俺と同じ好きでいるのなら、俺は大我くんを伊吹さんに会わせたくないと思うんだ」
「ナオキング……マジで言ってんの?」
何て言えばいいのか上手く言葉にならなかったけど、大我くんは真面目な顔で大人しく聞いていてくれた。
そして思ったよりも驚いた様子はなく、ただ真剣な表情で俺を見て確認して来た。
「本気だよ。俺がハッキリしないせいですぐに言えなくてごめん」
「ん、分かった」
それだけ言って大我くんはクルッと後ろを向いて歩き出した。
俺も後を追うと、大我くんはピタッと止まって振り向かずに言った。
「付いて来んな。今からお前は俺のダチでも何でもねぇ」
「えっ、待って。大我くん、ちゃんと話し合おう?」
「話し合いなんていらねぇだろ。今のでお前の気持ちよーく分かったよ。じゃあな尚輝」
「…………」
その後も一人で歩いて行ってしまう大我くんに、俺は頭の中が真っ白になり、立ち尽くすしか出来なかった。
大我くんに嫌われた。
俺の言い方が悪かったのか、虫の居どころが悪かったのかは分からない。とにかく今は何も考えられなかった。
恐れていた事が起こってしまい、俺は大切な友達の後ろ姿が消えるまでそこに立っていた。
一人になり思う。
俺ってどうしていつもこうなんだろう。
やっと出来た友達の事も怒らせてしまうなんて、やっと出来た愛する人も不安にさせたり迷惑掛けてしまったりするなんて……
俺は何をやってもダメな男だ。
周りと上手くやれない自分が改めて嫌になり、頬を涙が伝った。
0
あなたにおすすめの小説
シスルの花束を
碧月 晶
BL
年下俺様モデル×年上訳あり青年
~人物紹介~
○氷室 三門(ひむろ みかど)
・攻め(主人公)
・23歳、身長178cm
・モデル
・俺様な性格、短気
・訳あって、雨月の所に転がり込んだ
○寒河江 雨月(さがえ うげつ)
・受け
・26歳、身長170cm
・常に無表情で、人形のように顔が整っている
・童顔
※作中に英会話が出てきますが、翻訳アプリで訳したため正しいとは限りません。
※濡れ場があるシーンはタイトルに*マークが付きます。
※基本、三門視点で進みます。
※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。
下っ端公務員の俺は派遣のαに恋してる【完結済】
tii
BL
市役所勤めの野々宮は、どこにでもいる平凡なβ。
仕事は無難、恋愛は停滞、毎夜の癒しはゲームとストゼロだけ。
そんな日々に現れたのは、派遣職員として配属された青年――朝比奈。
背が高く、音大卒で、いっけん冷たそうに見えるが、
話せば驚くほど穏やかで優しい。
ただひとつ、彼は自己紹介のときに言った。
「僕、αなんです。迷惑をかけるかもしれませんが……」
軽く流されたその言葉が、
野々宮の中でじわりと残り続ける。
残業続きの夜、偶然居酒屋でふたりきりになり――
その指先が触れた瞬間、世界が音を立てて軋んだ。
「……野々宮さんって、本当にβなんですか?」
揺らぎ始めた日常、
“立場”と“本能”の境界が、静かに崩れていく。
☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。
【第13回BL小説大賞】にエントリーさせて頂きました!
まこxゆず の応援 ぜひよろしくお願いします!
☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。
僕たち、結婚することになりました
リリーブルー
BL
俺は、なぜか知らないが、会社の後輩(♂)と結婚することになった!
後輩はモテモテな25歳。
俺は37歳。
笑えるBL。ラブコメディ💛
fujossyの結婚テーマコンテスト応募作です。
オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?
中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」
そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。
しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は――
ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。
(……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ)
ところが、初めての商談でその評価は一変する。
榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。
(仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな)
ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり――
なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。
そして気づく。
「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」
煙草をくゆらせる仕草。
ネクタイを緩める無防備な姿。
そのたびに、陽翔の理性は削られていく。
「俺、もう待てないんで……」
ついに陽翔は榊を追い詰めるが――
「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」
攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。
じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。
【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】
主任補佐として、ちゃんとせなあかん──
そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。
春のすこし手前、まだ肌寒い季節。
新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。
風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。
何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。
拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。
年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。
これはまだ、恋になる“少し前”の物語。
関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。
(5月14日より連載開始)
ヤンキーDKの献身
ナムラケイ
BL
スパダリ高校生×こじらせ公務員のBLです。
ケンカ上等、金髪ヤンキー高校生の三沢空乃は、築51年のオンボロアパートで一人暮らしを始めることに。隣人の近間行人は、お堅い公務員かと思いきや、夜な夜な違う男と寝ているビッチ系ネコで…。
性描写があるものには、タイトルに★をつけています。
行人の兄が主人公の「戦闘機乗りの劣情」(完結済み)も掲載しています。
夢の続きの話をしよう
木原あざみ
BL
歯止めのきかなくなる前に離れようと思った。
隣になんていたくないと思った。
**
サッカー選手×大学生。すれ違い過多の両方向片思いなお話です。他サイトにて完結済みの作品を転載しています。本編総文字数25万字強。
表紙は同人誌にした際に木久劇美和さまに描いていただいたものを使用しています(※こちらに載せている本文は同人誌用に改稿する前のものになります)。
【完結】王子様と一緒。
紫紺
BL
田中明夫は作家を目指して10年、全く目が出ない男だ。
ある日、書店の前で金髪青い目の青年が突然話しかけてきた。最初は胡散臭く思っていたのだが……。
南の国の第2王子アスラン、その護衛トーゴー、田中が住むアパートの大家や住人の奨励会員などなど。
様々な人間模様と恋模様が織りなすBL多めのラブコメ開幕です!
【第一部完結】カフェと雪の女王と、多分、恋の話
凍星
BL
親の店を継ぎ、運河沿いのカフェで見習店長をつとめる高槻泉水には、人に言えない悩みがあった。
誰かを好きになっても、踏み込んだ関係になれない。つまり、SEXが苦手で体の関係にまで進めないこと。
それは過去の手酷い失恋によるものなのだが、それをどうしたら解消できるのか分からなくて……
呪いのような心の傷と、二人の男性との出会い。自分を変えたい泉水の葛藤と、彼を好きになった年下ホスト蓮のもだもだした両片想いの物語。BLです。
「*」マーク付きの話は、性的描写ありです。閲覧にご注意ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる