【完結】取り柄は真面目な事だけです

pino

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3章 恋人失格

26.ダメな自分のまま

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 次の日の朝、俺は大我くんを起こす為に昨日も来たアパートに足を運ぶ。
 まず驚いたのは、今日は鍵が掛かって無いどころか部屋のドアが開き放しになっていた事。
 こんな朝から人んちのドアが全開に開いている事と言う事でショックを受けた。

 大我くんは予想できないような事や発言をするけど、まだ慣れないな。いつかはこんな事にも驚かない日が来るのだろうか。


「大我くん?おはよう」


 開いていたドアから中に向かって声を掛けてみる。すると部屋の奥から大我くんが現れた。起きていた事にも驚いた。
 廊下には中身がパンパンに詰まったゴミ袋達が並んでいた。


「ナオキングじゃねぇか♪もうそんな時間か?ちっと待ってろ~。あと少しで終わるからよ」

「うん」


 元気そうな大我くんはテーブルを部屋の真ん中に置いて、ベランダの窓をしっかり締めて出て来た。
 ここまでくれば大我くんが何をしていたのかは分かる。朝から掃除をしていたようだ。


「お待た~♪朝から良い事したから気分がいいわ~♪」

「うん。凄く良いと思うよ。スッキリしたんじゃない?」

「ちょースッキリ~♪」


 話しながら廊下に置いてあったゴミ袋を二つ程手渡されて受け取ると、大我くんは四つ持って外に出て来た。鍵はきちんと閉めていた。


「でも何で急に始めたの?」

「だってさ、伊吹が来るかもだろ?綺麗にしとかなきゃあいつうるさそうだからよ」

「…………」


 伊吹さんの為。理由には納得出来た。
 だけど多分伊吹さんが大我くんの家に遊びに来る事はないと思う。
 俺は言わなきゃと少し暗い気持ちになった。

 伊吹さんは俺と付き合っているから、伊吹さんに向けられる大我くんの好きが俺と同じ好きならちゃんと言って諦めてもらわなきゃいけない。
 そんな事を言ったら大我くんは怒ると思う。だけど、言わないままでいたら伊吹さんに迷惑が掛かるし、恋人失格のままだ。

 アパートの近くにあったゴミステーションに持っていたゴミ袋を置いて、改めて大我くんに向き直る。
 一仕事終えて嬉しそうな顔をしている大我くんに俺は冷や汗が止まらない。

 
「どうした?顔色良くねぇぞ?」

「……う、うん」


 ずっと見ていた俺に気付いて顔を覗き込んで来る大我くん。
 俺の体調を気にしてくれるなんて、今そんな風に優しくされたらますます言えなくなるよ。

 いや、言わなきゃ!伊吹さんの為だ!


「あのね、大我くん。同盟の話だけど、やっぱり間違っていると思うんだ」

「どういう事だぁ?」

「伊吹さんの事を好きな気持ちは俺も大我くんも一緒なのは分かるよ。でも、伊吹さんと付き合ってるのは……俺、だから……もしも大我くんが伊吹さんの事を俺と同じ好きでいるのなら、俺は大我くんを伊吹さんに会わせたくないと思うんだ」

「ナオキング……マジで言ってんの?」


 何て言えばいいのか上手く言葉にならなかったけど、大我くんは真面目な顔で大人しく聞いていてくれた。
 そして思ったよりも驚いた様子はなく、ただ真剣な表情で俺を見て確認して来た。


「本気だよ。俺がハッキリしないせいですぐに言えなくてごめん」

「ん、分かった」


 それだけ言って大我くんはクルッと後ろを向いて歩き出した。
 俺も後を追うと、大我くんはピタッと止まって振り向かずに言った。


「付いて来んな。今からお前は俺のダチでも何でもねぇ」

「えっ、待って。大我くん、ちゃんと話し合おう?」

「話し合いなんていらねぇだろ。今のでお前の気持ちよーく分かったよ。じゃあな尚輝」

「…………」


 その後も一人で歩いて行ってしまう大我くんに、俺は頭の中が真っ白になり、立ち尽くすしか出来なかった。

 大我くんに嫌われた。
 俺の言い方が悪かったのか、虫の居どころが悪かったのかは分からない。とにかく今は何も考えられなかった。

 恐れていた事が起こってしまい、俺は大切な友達の後ろ姿が消えるまでそこに立っていた。

 一人になり思う。
 俺ってどうしていつもこうなんだろう。
 やっと出来た友達の事も怒らせてしまうなんて、やっと出来た愛する人も不安にさせたり迷惑掛けてしまったりするなんて……

 俺は何をやってもダメな男だ。

 周りと上手くやれない自分が改めて嫌になり、頬を涙が伝った。
 
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