148 / 276
148
しおりを挟む
しばらくしてやっとマックスが落ち着いて来たので、私は聞き取りを続けることにした。
「それからマックスはどうしてたの?」
「ママが帰って来るのを待ってた...」
「何日くらい?」
「分かんない...」
「そう...大変だったわね...」
まだ三歳の幼子だ。どれだけ心細かったことだろう。想像するに難くない。トラウマになってしまうレベルかも知れないな...
「お腹減って泣いてたらパパが来てくれた...」
「良かったわね。それからはパパとずっと一緒に居たの?」
「うん。パパのお家に連れて行って貰った...」
「そう。パパと一緒で楽しかった?」
「う~ん...そうでもなかった...」
「どうして?」
「パパのお家に行った次の日にね、なんか知らない男の人達が沢山訪ねて来てね、パパとお話してたんだ。そしてね、お話が終わったらパパが出掛けるから用意しなさいって言ったんだ...」
なるほど。それでウチに来たってことか。しかしなんだろう!? 知らない男の人達が沢山来るってことは、なにかトラブルに巻き込まれたってことだろうか!?
「そうなんだ。ちなみにその男の人達ってどんな格好してた?」
「みんな同じ服着てた...」
「同じ服?」
「うん。黒っぽいの。あと帽子被ってた...」
制服か。帽子を被ってたってことは兵隊っぽいな。やっぱりなにかトラブルか!? パトリック、一体なにを仕出かした!?
「パパはその他になんか言ってなかった?」
「う~んとね...」
マックスは思い出すように首を捻りながら、
『もうこの家には住めなくなった』
「だったかな...」
なんだそれは!? なんでいきなりそんなことになったんだ!? 謎は深まるばかりだが、これ以上マックスに聞いても分かるはずもないだろう。
「そうなのね...マックス、色々とありがとう」
「ねぇ、パパは? パパはどこ行ったの?」
マックスがまた涙目になって不安そうにしがみ付いて来た。無理もない。母親に続いて父親までもが行方不明になったんだ。さぞかし不安なことだろう。可哀想に...
「大丈夫よ。すぐに帰って来るから。良い子で待っていてね?」
なんの根拠もなかったが、取り敢えず私は、マックスを安心させるためにそういうウソを吐くしかなかった。
「うん、分かった...」
少し安心したようなマックスの顔を眺めながら、私はちょっとした罪悪感を感じていたりもした。
恐らくだが、雲隠れしたと思われるパトリックを見付け出すことは難しいだろう。なんとなくだがそう感じていたからだ。
「それからマックスはどうしてたの?」
「ママが帰って来るのを待ってた...」
「何日くらい?」
「分かんない...」
「そう...大変だったわね...」
まだ三歳の幼子だ。どれだけ心細かったことだろう。想像するに難くない。トラウマになってしまうレベルかも知れないな...
「お腹減って泣いてたらパパが来てくれた...」
「良かったわね。それからはパパとずっと一緒に居たの?」
「うん。パパのお家に連れて行って貰った...」
「そう。パパと一緒で楽しかった?」
「う~ん...そうでもなかった...」
「どうして?」
「パパのお家に行った次の日にね、なんか知らない男の人達が沢山訪ねて来てね、パパとお話してたんだ。そしてね、お話が終わったらパパが出掛けるから用意しなさいって言ったんだ...」
なるほど。それでウチに来たってことか。しかしなんだろう!? 知らない男の人達が沢山来るってことは、なにかトラブルに巻き込まれたってことだろうか!?
「そうなんだ。ちなみにその男の人達ってどんな格好してた?」
「みんな同じ服着てた...」
「同じ服?」
「うん。黒っぽいの。あと帽子被ってた...」
制服か。帽子を被ってたってことは兵隊っぽいな。やっぱりなにかトラブルか!? パトリック、一体なにを仕出かした!?
「パパはその他になんか言ってなかった?」
「う~んとね...」
マックスは思い出すように首を捻りながら、
『もうこの家には住めなくなった』
「だったかな...」
なんだそれは!? なんでいきなりそんなことになったんだ!? 謎は深まるばかりだが、これ以上マックスに聞いても分かるはずもないだろう。
「そうなのね...マックス、色々とありがとう」
「ねぇ、パパは? パパはどこ行ったの?」
マックスがまた涙目になって不安そうにしがみ付いて来た。無理もない。母親に続いて父親までもが行方不明になったんだ。さぞかし不安なことだろう。可哀想に...
「大丈夫よ。すぐに帰って来るから。良い子で待っていてね?」
なんの根拠もなかったが、取り敢えず私は、マックスを安心させるためにそういうウソを吐くしかなかった。
「うん、分かった...」
少し安心したようなマックスの顔を眺めながら、私はちょっとした罪悪感を感じていたりもした。
恐らくだが、雲隠れしたと思われるパトリックを見付け出すことは難しいだろう。なんとなくだがそう感じていたからだ。
28
あなたにおすすめの小説
婚約者様への逆襲です。
有栖川灯里
恋愛
王太子との婚約を、一方的な断罪と共に破棄された令嬢・アンネリーゼ=フォン=アイゼナッハ。
理由は“聖女を妬んだ悪役”という、ありふれた台本。
だが彼女は涙ひとつ見せずに微笑み、ただ静かに言い残した。
――「さようなら、婚約者様。二度と戻りませんわ」
すべてを捨て、王宮を去った“悪役令嬢”が辿り着いたのは、沈黙と再生の修道院。
そこで出会ったのは、聖女の奇跡に疑問を抱く神官、情報を操る傭兵、そしてかつて見逃された“真実”。
これは、少女が嘘を暴き、誇りを取り戻し、自らの手で未来を選び取る物語。
断罪は終わりではなく、始まりだった。
“信仰”に支配された王国を、静かに揺るがす――悪役令嬢の逆襲。
行動あるのみです!
棗
恋愛
※一部タイトル修正しました。
シェリ・オーンジュ公爵令嬢は、長年の婚約者レーヴが想いを寄せる名高い【聖女】と結ばれる為に身を引く決意をする。
自身の我儘のせいで好きでもない相手と婚約させられていたレーヴの為と思った行動。
これが実は勘違いだと、シェリは知らない。
死に戻りの悪役令嬢は、今世は復讐を完遂する。
乞食
恋愛
メディチ家の公爵令嬢プリシラは、かつて誰からも愛される少女だった。しかし、数年前のある事件をきっかけに周囲の人間に虐げられるようになってしまった。
唯一の心の支えは、プリシラを慕う義妹であるロザリーだけ。
だがある日、プリシラは異母妹を苛めていた罪で断罪されてしまう。
プリシラは処刑の日の前日、牢屋を訪れたロザリーに無実の証言を願い出るが、彼女は高らかに笑いながらこう言った。
「ぜーんぶ私が仕組んだことよ!!」
唯一信頼していた義妹に裏切られていたことを知り、プリシラは深い悲しみのまま処刑された。
──はずだった。
目が覚めるとプリシラは、三年前のロザリーがメディチ家に引き取られる前日に、なぜか時間が巻き戻っていて──。
逆行した世界で、プリシラは義妹と、自分を虐げていた人々に復讐することを誓う。
悪役令嬢ベアトリスの仁義なき恩返し~悪女の役目は終えましたのであとは好きにやらせていただきます~
糸烏 四季乃
恋愛
「ベアトリス・ガルブレイス公爵令嬢との婚約を破棄する!」
「殿下、その言葉、七年お待ちしておりました」
第二皇子の婚約者であるベアトリスは、皇子の本気の恋を邪魔する悪女として日々蔑ろにされている。しかし皇子の護衛であるナイジェルだけは、いつもベアトリスの味方をしてくれていた。
皇子との婚約が解消され自由を手に入れたベアトリスは、いつも救いの手を差し伸べてくれたナイジェルに恩返しを始める! ただ、長年悪女を演じてきたベアトリスの物事の判断基準は、一般の令嬢のそれとかなりズレている為になかなかナイジェルに恩返しを受け入れてもらえない。それでもどうしてもナイジェルに恩返しがしたい。このドッキンコドッキンコと高鳴る胸の鼓動を必死に抑え、ベアトリスは今日もナイジェルへの恩返しの為奮闘する!
規格外で少々常識外れの令嬢と、一途な騎士との溺愛ラブコメディ(!?)
第一王子は私(醜女姫)と婚姻解消したいらしい
麻竹
恋愛
第一王子は病に倒れた父王の命令で、隣国の第一王女と結婚させられることになっていた。
しかし第一王子には、幼馴染で将来を誓い合った恋人である侯爵令嬢がいた。
しかし父親である国王は、王子に「侯爵令嬢と、どうしても結婚したければ側妃にしろ」と突っぱねられてしまう。
第一王子は渋々この婚姻を承諾するのだが……しかし隣国から来た王女は、そんな王子の決断を後悔させるほどの人物だった。
【完結】私を捨てて駆け落ちしたあなたには、こちらからさようならを言いましょう。
やまぐちこはる
恋愛
パルティア・エンダライン侯爵令嬢はある日珍しく婿入り予定の婚約者から届いた手紙を読んで、彼が駆け落ちしたことを知った。相手は同じく侯爵令嬢で、そちらにも王家の血筋の婿入りする婚約者がいたが、貴族派閥を保つ政略結婚だったためにどうやっても婚約を解消できず、愛の逃避行と洒落こんだらしい。
落ち込むパルティアは、しばらく社交から離れたい療養地としても有名な別荘地へ避暑に向かう。静かな湖畔で傷を癒やしたいと、高級ホテルでひっそり寛いでいると同じ頃から同じように、人目を避けてぼんやり湖を眺める美しい青年に気がついた。
毎日涼しい湖畔で本を読みながら、チラリチラリと彼を盗み見ることが日課となったパルティアだが。
様子がおかしい青年に気づく。
ふらりと湖に近づくと、ポチャっと小さな水音を立てて入水し始めたのだ。
ドレスの裾をたくしあげ、パルティアも湖に駆け込んで彼を引き留めた。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
最終話まで予約投稿済です。
次はどんな話を書こうかなと思ったとき、駆け落ちした知人を思い出し、そんな話を書くことに致しました。
ある日突然、紙1枚で消えるのは本当にびっくりするのでやめてくださいという思いを込めて。
楽しんで頂けましたら、きっと彼らも喜ぶことと思います。
【完結】知らないですか、仏の顔も三度まででしてよ?
詩河とんぼ
恋愛
侯爵令嬢のレイラ・ローニャは、筆頭公爵家子息のブラント・ガルシアと婚約を結んだ関係で仲も良好であった。しかし、二人が学園に入学して一年たったころ突如としてその関係は終わりを告げる。
ティアラ・ナルフィン男爵令嬢はブラントだけでなく沢山の生徒•教師を味方にし、まるで学園の女王様のようになっていた。
レイラはそれを第二王子のルシウス・ハインリッヒと一緒に解決しようと試みる。
沢山のお気に入り登録、ありがとうございます╰(*´︶`*)╯♡
小説家になろう様でも投稿させていただいております。
婚約者に愛する人が出来たので、身を引く事にしました
Blue
恋愛
幼い頃から家族ぐるみで仲が良かったサーラとトンマーゾ。彼が学園に通うようになってしばらくして、彼から告白されて婚約者になった。サーラも彼を好きだと自覚してからは、穏やかに付き合いを続けていたのだが、そんな幸せは壊れてしまう事になる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる