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次の日の朝になってもハンスは戻って来なかった。
アランは朝一から町に向かうと言う。私は出掛けようとするアランを呼び止めた。
「アラン、もう一つ頼まれてくれない?」
「なに?」
「パトリックが言ってた、ウィリアムをマグロの遠洋漁業船に乗せた件なんだけど、なんとかウィリアムと連絡を取ることは出来ないものかしら?」
「う~ん...それだけの情報じゃ厳しいと思うけど...」
「やっぱりそうよね...」
「まぁでも一応当たってみるよ」
「お願いね」
アランを送り出した後、私はマックスの元に向かった。
◇◇◇
マックスは少し落ち着いたのか、昨日よりは元気そうに見えた。私はベビーシッターさんに軽く会釈してから、
「マックス、おはよう」
「おはよ...」
「私のこと覚えてる? 昨日会ったんだけど?」
「うん...」
「私の名前はアンリエットって言うの。よろしくね?」
「あんいえった?」
「フフフ、まだマックスには難しいわね。アンリでいいわよ?」
「アンリ...」
「ねぇ、マックス。ちょっと教えて欲しいんだけど、ママがどこに行ったか分かる?」
「分かんない...」
「そっかぁ。ママはどっかに行くとか言ってなかった?」
「ううん...」
「ママが居なくなった日のこと覚えてる?」
「うん...あの日はね、ママが『今からお客さんが来るから部屋から出ないように』って僕に言ったんだ...」
「ふうん。そういうことは良くあったの?」
「しょっちゅうあったよ...」
「そうなんだぁ。そういう時っていつも部屋から出ないようにって言われてた?」
「うん...」
なるほど。どうやらマーガレットは自宅で客引きをしていたらしい。娼婦だった頃の客でも取っていたんだろうか? そして客とトラブルでも起こしたんだろうか?
「その日はなにか変わったことはなかった?」
「あったよ...なんかね、言い争うような声が聞こえたんだ...だから僕は怖くなって部屋の隅っこに隠れてたんだ...」
やっぱりなにかトラブルがあったのか。
「それからどうなったの?」
「ちょっと経ったら静かになったんで、僕は恐る恐る見に行ってみたんだ...そしたらママはどこにも居なくて...それっきり...ふえ...」
その時の不安な気持ちを思い出したのか、マックスは泣き出してしまった。私はマックスをそっと抱き締め、
「お~ 良し良し。辛かったね。思い出させちゃってゴメンね」
そう囁きながらあやした。
「ママぁ~! ママぁ~!」
マックスはしばらく泣き続けていた。
アランは朝一から町に向かうと言う。私は出掛けようとするアランを呼び止めた。
「アラン、もう一つ頼まれてくれない?」
「なに?」
「パトリックが言ってた、ウィリアムをマグロの遠洋漁業船に乗せた件なんだけど、なんとかウィリアムと連絡を取ることは出来ないものかしら?」
「う~ん...それだけの情報じゃ厳しいと思うけど...」
「やっぱりそうよね...」
「まぁでも一応当たってみるよ」
「お願いね」
アランを送り出した後、私はマックスの元に向かった。
◇◇◇
マックスは少し落ち着いたのか、昨日よりは元気そうに見えた。私はベビーシッターさんに軽く会釈してから、
「マックス、おはよう」
「おはよ...」
「私のこと覚えてる? 昨日会ったんだけど?」
「うん...」
「私の名前はアンリエットって言うの。よろしくね?」
「あんいえった?」
「フフフ、まだマックスには難しいわね。アンリでいいわよ?」
「アンリ...」
「ねぇ、マックス。ちょっと教えて欲しいんだけど、ママがどこに行ったか分かる?」
「分かんない...」
「そっかぁ。ママはどっかに行くとか言ってなかった?」
「ううん...」
「ママが居なくなった日のこと覚えてる?」
「うん...あの日はね、ママが『今からお客さんが来るから部屋から出ないように』って僕に言ったんだ...」
「ふうん。そういうことは良くあったの?」
「しょっちゅうあったよ...」
「そうなんだぁ。そういう時っていつも部屋から出ないようにって言われてた?」
「うん...」
なるほど。どうやらマーガレットは自宅で客引きをしていたらしい。娼婦だった頃の客でも取っていたんだろうか? そして客とトラブルでも起こしたんだろうか?
「その日はなにか変わったことはなかった?」
「あったよ...なんかね、言い争うような声が聞こえたんだ...だから僕は怖くなって部屋の隅っこに隠れてたんだ...」
やっぱりなにかトラブルがあったのか。
「それからどうなったの?」
「ちょっと経ったら静かになったんで、僕は恐る恐る見に行ってみたんだ...そしたらママはどこにも居なくて...それっきり...ふえ...」
その時の不安な気持ちを思い出したのか、マックスは泣き出してしまった。私はマックスをそっと抱き締め、
「お~ 良し良し。辛かったね。思い出させちゃってゴメンね」
そう囁きながらあやした。
「ママぁ~! ママぁ~!」
マックスはしばらく泣き続けていた。
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