我が家の乗っ取りを企む婚約者とその幼馴染みに鉄槌を下します!

真理亜

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「ふうん、アナスタシアちゃんって言うんだ? 生まれはどこなの?」

 エリザベートの目が完全に獲物をターゲットロックオンした狩人のそれになった。ちゃん付けで呼ぶのは相手を見下している証拠でもある。

「え、え~と...そ、その...」

 アナスタシア嬢がその勢いに気圧されて口ごもる。

「コホン! この娘は我が家の遠縁に当たる家の出身でしてな。つい最近、養女にしたばっかりなんですよ」

 ランドルフ侯爵が脂汗をハンカチで拭いながら代わりに答える。

「あら、そうなのね。アナスタシアちゃん、元々の名字はなんて言うの?」

 エリザベートはランドルフ侯爵に構うことなく、ターゲットに絞ったアナスタシア嬢から目を離さない。

「え、え~と...」

 そんなことを聞かれると思っていなかったのか、アナスタシア嬢の目が完全に泳いでしまっている。どうやらそこら辺まで設定を作り込んではいなかったようだ。

「どうしたの? 答えられないの? ランドルフ侯爵家の遠縁に当たる家なら当然貴族なんだから家名はあるはずでしょ?」

 エリザベートは更に畳み掛ける。アナスタシア嬢は俯いてしまった。

「オホン! え~と...エリザベート嬢、それを聞いてどうするおつもりですかな?」

 ランドルフ侯爵の脂汗が止まらない。ハンカチがグッショリ濡れてとてもキモい。

「聞いて当然でしょう? どこの馬の骨か分からないような娘に伯爵夫人が務まるとでもお思い? 寄親として出自を調べるのは当たり前でしょうに」

「そ、それはその...」

 完全に正論である故、ランドルフ侯爵も反論のしようがないようだ。

「まさかランドルフ侯がどこぞで仕込んだ婚外子とか言わないわよね?」

 エリザベートは鋭い眼光でランドルフ侯爵を睨み付けた。

「あ~...う~...」

 ランドルフ侯爵の言語機能が麻痺したらしい。

「こ、侯爵様ぁ~! 無理です無理ぃ~! 私には荷が重過ぎますぅ~!」

 緊張に耐えられなくなったのか、アナスタシア嬢がついに泣き出してしまった。

「バ、バカ者! こ、こんな所で泣くヤツがおるか!」

 ランドルフ侯爵がアナスタシア嬢を叱り付けた。

「だってだってだってぇ~! わ、私はただ黙って座ってりゃいいって言われたから引き受けたんですよぉ~! 喋るとボロが出るからってぇ~!」

「バっ! だ、黙らんか、この愚か者!」

 ランドルフ侯爵は慌ててアナスタシア嬢の口を塞ぐがもう遅い。

「ほほう、ねぇお嬢ちゃん。その話詳しく聞かせ貰おうかしら?」

 エリザベートはとても良い笑顔を浮かべてそう言った。
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