我が家の乗っ取りを企む婚約者とその幼馴染みに鉄槌を下します!

真理亜

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「あ~...エリザベート嬢...その...今回の話はなかったことにして貰えると助かります...」

 ランドルフ侯爵は観念したかのように項垂れてそう呟いた。

「あらそう? それは残念ね。こちらとしては別に構わないけど、お騒がせした分のお詫びはしっかりと払って頂けるんでしょうね?」

 エリザベートは凄みのある口調でそう言った。

「そ、それはもちろん...お、お詫びは後日改めて....じゃ、じゃあ我々はこれにて失礼させて頂きます...」

 ランドルフ侯爵は早口でそう言うと、アナスタシア嬢を引っ張るようにしてあたふたと部屋を出て行った。

「お見事...」

 私は思わず拍手してエリザベートを讃えた。

「軽いもんよ」

 エリザベートは鼻高々と言った感じだ。

「まさか詫び料までせしめられるとは思わなかったわ...」

「そりゃ当然じゃない。こっちは迷惑掛けられたんだから」

「そうだけど...私一人じゃとてもそこまで言えなかったわよ...」

「ふふふん、私とロバートんとの仲を邪魔しようとしたんだから当然の報いってもんよ♪ ざまあ見さらせ♪」

「ロバートんって...」

 兄のアイデンティティーが着々と崩壊しつつある...

「じゃあロバちゃんとか♪」

「それは違う生物になっちゃうから...」

 私は頭を抱えた。

「さて、もうこれで障害はなにもなくなったわね。私はロバちゃんの所に戻るわ♪」

「ロバちゃん呼びは確定なんだ...」

「アンリエット、あなたもそろそろ腹を括りなさいよ?」

「分かってるわよ...」

 いきなり踏み込まれた私は呟くようにそう応えるしかなかった。確かにそろそろ結論を出さないとな...


◇◇◇


「お嬢、お疲れ。どうなった?」

 自室に戻った私にアランがお茶を入れてくれた。

「ありがと。うん、エリザベートが完膚なきまでに叩きのめしたわ」

「それはそれは...」

 アランは降参とばかりに両手を広げた。

「という訳で兄の問題は片付いたんで、後は私達なんだけど...」

 私はモジモジしながらそう言った。

「あうぅ...」

 途端にアランが真っ赤になってしまったので、私も釣られて顔が熱くなってしまった。

 気不味い沈黙が流れる。

「お嬢様、お手紙が来ております」

 そこへセバスチャンが私宛の手紙を持って来た。

「そう。誰から?」

 私はなんとなく救われたような気になって、仕事モードに気持ちを切り替えた。

「ハンスからでございます」

「ハンスから? なにかしら?」

 私が伯爵家に戻る際、ハンスにはまた家令に戻って貰って領地の管理をして貰っている。本人は嬉々として『若い者にはまだまだ負けん』とばかりに承諾してくれたが、私としては申し訳ない気持ちで一杯だった。手紙に目を通すと、

「...アラン、パトリック達はもうウチの領地に戻った?」

「いや、確か明日出発するって言ってた。それがどうかした?」

 私は黙って手紙をアランに渡した。

 
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