我が家の乗っ取りを企む婚約者とその幼馴染みに鉄槌を下します!

真理亜

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「アランはまだ帰って来ないの?」

「うん、ちょっと領地に戻ってるから」

 次の日、またエリザベートが我が家にやって来た。

「ちなみに今日は兄さんも出掛けてるわよ?」

「あら、それは残念。どこに行ってるの?」

「出版社に」

「出版社!? 新作の打ち合わせとか!?」

 エリザベートが喜色を浮かべる。

「違うわよ。仕事の引き継ぎ。また私が取締役に復帰するってことを説明しに行ったの」

「あぁ、なるほど」

「そもそもの話、あんたと結婚なんかしたら、忙しくなって当分は執筆活動なんか出来ないでしょう?」

「大丈夫よ。子作りだけしっかりしてくれればいいの。後は私が面倒事を引き受けるから」

 そう言ってエリザベートは胸を張った。なんて生々しい...

「真っ昼間っから勘弁してよ...」

 私はため息を吐いた。

「そう言えばアンリエット、挨拶回りはいつ行くの? アランが戻ってから?」

「アランは関係無いわよ。私が行くだけでいいの」

「それなら今から行く?」

「いいけど、あんたは時間あるの?」

「うん、今日は泊まって行くから」

「あぁ、そう...」

 また兄が干からびそうだな...


◇◇◇


 挨拶に回った各家では、やはりこんな短時間で二度も後継者が代わることに戸惑う家もあったが、そこはやはり公爵家のエリザベートの威光が物を言って、特に文句を言われるようなことはなかった。

「残りは?」

「あと一つ。サンタンデル伯爵家だけ」

「あぁ、あの偏屈ジジイの所」

 エリザベートは容赦ない。

「失礼でしょ...」

「事実じゃない。私、あのジジイ苦手なのよね...」

「それはまぁ...私もだけど...」

「どうしても挨拶に行かなきゃダメなの?」

「結構昔から付き合いがあるから、無視するって訳にも行かないのよね...」

「そうなのね...ハァ...面倒だわぁ...」

「ちなみに一番最初に私が後継者になるって挨拶に行った時は『女如きに伯爵が務まるものか!』って、一喝された苦い思い出があるわね...」

「それはそれは...」

「その後、次に兄が挨拶に行った時は『そんなコロコロ後継者を代える者がおるか!』って、これまた一喝されたらしいわ...またまた後継者が代わるなんて言ったりしたら、今度はなにを言われるのやら...」

「...やっぱり行くの止めない?」

 珍しくエリザベートが弱気になっている。

「だからそういう訳にはいかないんだったら...ほら、行くわよ?」

「うへぇ...」

 私達は重い足取りでサンタンデル伯爵家の門を潜った。
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