我が家の乗っ取りを企む婚約者とその幼馴染みに鉄槌を下します!

真理亜

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「お嬢様、エリザベート様はお帰りになられたのですか?」

 ややあってセバスチャンがお茶のお代わりを持って現れた。そして部屋を見渡してそう言った。

「えぇ、たった今ね。お茶ありがとう。ちょうど喉が渇いてたから助かるわ」

「どういたしまして...あの...お嬢様、こちらの方は!?」

 セバスチャンが戸惑いがちにカイルの方に視線を送った。

「あぁ、セバスチャンは初めてだったわよね。紹介するわ。こちらはカイル。エリザベートん家お抱えの隠密衆の一人よ」

 カイルは軽く頭を下げて挨拶した。

「えぇっ!? お、隠密衆でございますか!?」

 セバスチャンが面食らったようだ。そりゃ無理もないわな。いきなり隠密衆とか言われてもね。

「あぁ、実はね...」

 私は事の経緯をセバスチャンに説明した。

「なるほど...そういうことでしたか...」

「このカイルには領地に居た頃世話になってね。公爵家のお抱え隠密衆だけあって腕は確かよ。しばらく私の護衛を勤めてくれることになったから、あなたもそのつもりで居てね?」

「畏まりました」

「あ、そうだ。カイル」

「はい」

「アランもこっちに来てるのよ」

「えぇ、そう聞いてます」

「今は仕事中だから会えないけど、後で会っておきなさいな。会うの久し振りでしょ?」

「お心遣い痛み入ります。そうさせて頂きます」

 カイルの紹介をし終えた所で、私は溜まった仕事を片付けに戻った。


◇◇◇


「お、お嬢様、も、もしかしてフラワーアレンジメントをお頼みになられましたか?」

 午後になって、珍しく慌てた様子でセバスチャンが私の部屋にやって来た。

「えぇ、頼んだわよ? あ、来てくれたのね?」

「えぇまぁ...いらっしゃってますが...」

「早速、客間に案内してちょうだいな」

「畏まりましたが...本当によろしいのでしょうか...」

「なにがよ?」

「その...大量の菊の花を持って来てますが...それも全て白い菊の花を...」

「頼んだ通りよ。間違いないわ。カスパート家をお迎えするにはちょうどいいでしょ?」

「確かに白い菊の花は縁起が悪いと言われていますが...」

「だから選んだのよ。ピッタリでしょ?」

「それにしたってあんなに大量に飾ったりしたら...部屋全体がまるで祭壇のようになってしまいませんか...」

「でしょうね。それが狙いだから」

 私はハッキリと言い切った。

「そんな居心地の悪い部屋に通されたら、誰だって一刻も早く帰りたくなるでしょ?」

「ハァ...確かにそうかも知れませんが...我が家の評判が下がったりしまいませんでしょうか...」

「まぁそこはアレよ。身を切らせて骨を断つってヤツね」

 使い方間違ってるかも知んないけど。要は形振り構っちゃいられないってことで。
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