249 / 276
249
しおりを挟む
私は仕事に一区切り付けてから客間の様子を見に行った。
「ご苦労様です」
フラワーアレンジメントを担当する人達は全員女性だった。その中で一番偉そうな人に私が声を掛けると、
「あ、お嬢様。こんな感じになります。如何でしょうか?」
振り向いて部屋の様子を見せた。
「え、え~と...」
初見の私の感想は一言...
『ちょっとやり過ぎたかも...』だった...
うん、これはもう誰が見ても紛うことなき祭壇だわな...
「お嬢様、ちなみにですが棺と言いますか、ご遺体はどの辺りに安置されるご予定なのでしょうか?」
もうこの女の人も、祭壇ありきで話を進めているな...
「あ、あ~...そ、そうですね...や、やっぱり部屋の北側でしょうかね...」
私はテキトーに答えるしかなかった。ほら、北枕は縁起が悪いって良く言うじゃん?
「あぁ、なるほど。北枕に準えていらっしゃっるんですね?」
うわぉ...図星突かれたんだけど...
「でも実はアレって迷信って言うか、根拠のあんまりない話なんだってことをご存知なかったですか?」
「へ、へ~...そ、そうなんですか?」
私はテキトーに相槌を打つしかなかった。
「えぇ、そうなんですよ。実際、風水の世界では北を向いて寝るのは、頭寒足熱の理に適った「運気の上がる寝方」とされてたりもするんです」
「へ、へ~...そ、そうなんですね~...」
私は曖昧に頷くしかなかった。
「また『頭寒足熱』説以外にも『地球の磁力線に身体が沿っていることによって血行が促される』とする説とかも存在したりしまして...」
その後「この女の人、フラワーアレンジメントが本業じゃなくて、実は風水師の方が本業だったりするんじゃないか?」ってなくらいに、延々と風水の蘊蓄を聞かされるハメになった私だった...
結局、棺の位置は部屋の中央ということに決まった。いや、棺は置かないけどね...
フラワーアレンジメントの担当者達が帰った後、
「うっ!?」
客間を訪れたセバスチャンが絶句したのも無理はない。実際、部屋を閉め切ると菊の花の香りが充満しちゃって噎せ返る程だからね...
「お、お嬢様...さ、さすがにこれはちょっと...」
「うん、分かってる...皆まで言わなくても分かってるから...」
『過ぎたるは及ばざるが如し』とは良く言ったもので、何事も程々にしておくのが重畳ってことだよね...身に染みて分かったような気がするよ...
私は見事な祭壇に仕上がった客間を見渡しながら頭を抱えていた...
「ご苦労様です」
フラワーアレンジメントを担当する人達は全員女性だった。その中で一番偉そうな人に私が声を掛けると、
「あ、お嬢様。こんな感じになります。如何でしょうか?」
振り向いて部屋の様子を見せた。
「え、え~と...」
初見の私の感想は一言...
『ちょっとやり過ぎたかも...』だった...
うん、これはもう誰が見ても紛うことなき祭壇だわな...
「お嬢様、ちなみにですが棺と言いますか、ご遺体はどの辺りに安置されるご予定なのでしょうか?」
もうこの女の人も、祭壇ありきで話を進めているな...
「あ、あ~...そ、そうですね...や、やっぱり部屋の北側でしょうかね...」
私はテキトーに答えるしかなかった。ほら、北枕は縁起が悪いって良く言うじゃん?
「あぁ、なるほど。北枕に準えていらっしゃっるんですね?」
うわぉ...図星突かれたんだけど...
「でも実はアレって迷信って言うか、根拠のあんまりない話なんだってことをご存知なかったですか?」
「へ、へ~...そ、そうなんですか?」
私はテキトーに相槌を打つしかなかった。
「えぇ、そうなんですよ。実際、風水の世界では北を向いて寝るのは、頭寒足熱の理に適った「運気の上がる寝方」とされてたりもするんです」
「へ、へ~...そ、そうなんですね~...」
私は曖昧に頷くしかなかった。
「また『頭寒足熱』説以外にも『地球の磁力線に身体が沿っていることによって血行が促される』とする説とかも存在したりしまして...」
その後「この女の人、フラワーアレンジメントが本業じゃなくて、実は風水師の方が本業だったりするんじゃないか?」ってなくらいに、延々と風水の蘊蓄を聞かされるハメになった私だった...
結局、棺の位置は部屋の中央ということに決まった。いや、棺は置かないけどね...
フラワーアレンジメントの担当者達が帰った後、
「うっ!?」
客間を訪れたセバスチャンが絶句したのも無理はない。実際、部屋を閉め切ると菊の花の香りが充満しちゃって噎せ返る程だからね...
「お、お嬢様...さ、さすがにこれはちょっと...」
「うん、分かってる...皆まで言わなくても分かってるから...」
『過ぎたるは及ばざるが如し』とは良く言ったもので、何事も程々にしておくのが重畳ってことだよね...身に染みて分かったような気がするよ...
私は見事な祭壇に仕上がった客間を見渡しながら頭を抱えていた...
25
あなたにおすすめの小説
婚約者様への逆襲です。
有栖川灯里
恋愛
王太子との婚約を、一方的な断罪と共に破棄された令嬢・アンネリーゼ=フォン=アイゼナッハ。
理由は“聖女を妬んだ悪役”という、ありふれた台本。
だが彼女は涙ひとつ見せずに微笑み、ただ静かに言い残した。
――「さようなら、婚約者様。二度と戻りませんわ」
すべてを捨て、王宮を去った“悪役令嬢”が辿り着いたのは、沈黙と再生の修道院。
そこで出会ったのは、聖女の奇跡に疑問を抱く神官、情報を操る傭兵、そしてかつて見逃された“真実”。
これは、少女が嘘を暴き、誇りを取り戻し、自らの手で未来を選び取る物語。
断罪は終わりではなく、始まりだった。
“信仰”に支配された王国を、静かに揺るがす――悪役令嬢の逆襲。
行動あるのみです!
棗
恋愛
※一部タイトル修正しました。
シェリ・オーンジュ公爵令嬢は、長年の婚約者レーヴが想いを寄せる名高い【聖女】と結ばれる為に身を引く決意をする。
自身の我儘のせいで好きでもない相手と婚約させられていたレーヴの為と思った行動。
これが実は勘違いだと、シェリは知らない。
〘完結〛婚約破棄?まあ!御冗談がお上手なんですね!
桜井ことり
恋愛
「何度言ったら分かるのだ!アテルイ・アークライト!貴様との婚約は、正式に、完全に、破棄されたのだ!」
「……今、婚約破棄と、確かにおっしゃいましたな?王太子殿下」
その声には、念を押すような強い響きがあった。
「そうだ!婚約破棄だ!何か文句でもあるのか、バルフォア侯爵!」
アルフォンスは、自分に反抗的な貴族の筆頭からの問いかけに、苛立ちを隠さずに答える。
しかし、侯爵が返した言葉は、アルフォンスの予想を遥かに超えるものだった。
「いいえ、文句などございません。むしろ、感謝したいくらいでございます。――では、アテルイ嬢と、この私が婚約しても良い、とのことですかな?」
「なっ……!?」
アルフォンスが言葉を失う。
それだけではなかった。バルフォア侯爵の言葉を皮切りに、堰を切ったように他の貴族たちが次々と声を上げたのだ。
「お待ちください、侯爵!アテルイ様ほどの淑女を、貴方のような年寄りに任せてはおけませんな!」
「その通り!アテルイ様の隣に立つべきは、我が騎士団の誉れ、このグレイフォード伯爵である!」
「財力で言えば、我がオズワルド子爵家が一番です!アテルイ様、どうか私に清き一票を!」
あっという間に、会場はアテルイへの公開プロポーズの場へと変貌していた。
【完結】私を捨てて駆け落ちしたあなたには、こちらからさようならを言いましょう。
やまぐちこはる
恋愛
パルティア・エンダライン侯爵令嬢はある日珍しく婿入り予定の婚約者から届いた手紙を読んで、彼が駆け落ちしたことを知った。相手は同じく侯爵令嬢で、そちらにも王家の血筋の婿入りする婚約者がいたが、貴族派閥を保つ政略結婚だったためにどうやっても婚約を解消できず、愛の逃避行と洒落こんだらしい。
落ち込むパルティアは、しばらく社交から離れたい療養地としても有名な別荘地へ避暑に向かう。静かな湖畔で傷を癒やしたいと、高級ホテルでひっそり寛いでいると同じ頃から同じように、人目を避けてぼんやり湖を眺める美しい青年に気がついた。
毎日涼しい湖畔で本を読みながら、チラリチラリと彼を盗み見ることが日課となったパルティアだが。
様子がおかしい青年に気づく。
ふらりと湖に近づくと、ポチャっと小さな水音を立てて入水し始めたのだ。
ドレスの裾をたくしあげ、パルティアも湖に駆け込んで彼を引き留めた。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
最終話まで予約投稿済です。
次はどんな話を書こうかなと思ったとき、駆け落ちした知人を思い出し、そんな話を書くことに致しました。
ある日突然、紙1枚で消えるのは本当にびっくりするのでやめてくださいという思いを込めて。
楽しんで頂けましたら、きっと彼らも喜ぶことと思います。
第一王子は私(醜女姫)と婚姻解消したいらしい
麻竹
恋愛
第一王子は病に倒れた父王の命令で、隣国の第一王女と結婚させられることになっていた。
しかし第一王子には、幼馴染で将来を誓い合った恋人である侯爵令嬢がいた。
しかし父親である国王は、王子に「侯爵令嬢と、どうしても結婚したければ側妃にしろ」と突っぱねられてしまう。
第一王子は渋々この婚姻を承諾するのだが……しかし隣国から来た王女は、そんな王子の決断を後悔させるほどの人物だった。
タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒―
私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。
「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」
その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。
※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています
《完結》恋に落ちる瞬間〜私が婚約を解消するまで〜
本見りん
恋愛
───恋に落ちる瞬間を、見てしまった。
アルペンハイム公爵令嬢ツツェーリアは、目の前で婚約者であるアルベルト王子が恋に落ちた事に気付いてしまった。
ツツェーリアがそれに気付いたのは、彼女自身も人に言えない恋をしていたから───
「殿下。婚約解消いたしましょう!」
アルベルトにそう告げ動き出した2人だったが、王太子とその婚約者という立場ではそれは容易な事ではなくて……。
『平凡令嬢の婚活事情』の、公爵令嬢ツツェーリアのお話です。
途中、前作ヒロインのミランダも登場します。
『完結保証』『ハッピーエンド』です!
死に戻りの悪役令嬢は、今世は復讐を完遂する。
乞食
恋愛
メディチ家の公爵令嬢プリシラは、かつて誰からも愛される少女だった。しかし、数年前のある事件をきっかけに周囲の人間に虐げられるようになってしまった。
唯一の心の支えは、プリシラを慕う義妹であるロザリーだけ。
だがある日、プリシラは異母妹を苛めていた罪で断罪されてしまう。
プリシラは処刑の日の前日、牢屋を訪れたロザリーに無実の証言を願い出るが、彼女は高らかに笑いながらこう言った。
「ぜーんぶ私が仕組んだことよ!!」
唯一信頼していた義妹に裏切られていたことを知り、プリシラは深い悲しみのまま処刑された。
──はずだった。
目が覚めるとプリシラは、三年前のロザリーがメディチ家に引き取られる前日に、なぜか時間が巻き戻っていて──。
逆行した世界で、プリシラは義妹と、自分を虐げていた人々に復讐することを誓う。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる