我が家の乗っ取りを企む婚約者とその幼馴染みに鉄槌を下します！

250

「お、お嬢様...ほ、本気ですか...こ、この部屋でお見合いなさるなんて...」

　きっとセバスチャンとしては『正気か!?』って本当は言いたかったんだろうなぁ...その気持ちは良くわかるよ...でもね、

「そうよ。なんか文句ある?」

　私としてもここで退く訳には行かないんだよ。もう開き直るしかないんだ。

「いえ、文句というか、正気を疑うというか...」

「そう!　セバスチャン!　まさにそれよ!」

「えっ!?　一体どれです!?」

　セバスチャンが首を捻った。

「頭のおかしなヤツだと思われたら、早々に引き上げてくれるんじゃないかしら?」

「...お嬢様...勘弁して下さい...例えそれでカスパート家を撃退できたとしても、我が家のライフは確実に0になるじゃありませんか...フィンレイ伯爵家は頭がおかしいなんて噂が社交界に流れたら、お嬢様はどう責任を取られるおつもりなんですか...身を削るにしても程がありますよ...」

　セバスチャンが可哀想な者を見るような目付きで私を見ている。

「その時はアレよ...」

「...今度はなんですか...」

　困った...なにも思い付かないぞ...

「...一層のこと、私が棺の中に入ってカスパート家を迎えるのよ。そしてこう言うの」

『...この呪われた屋敷にようこそおいで下さいましたな...ヒッヒッヒ...さぁさぁ、あなた方も浮き世のしがらみを捨てて、私と一緒に死者の仲間入りを果たしませぬか...歓迎致しますぞ...ヒッヒッヒ...』

　私は完全に自分を色物と化していた。

「いやいや、それ一体どこの遊園地のホラーアトラクションですか...」

　セバスチャンの突っ込みが冴え渡る。

「...やっぱりダメ?　ウルウル...」

　私は仕方なく、今度は涙目になって可愛らしさに訴えることにした。キャラがブレ捲りだが、もう自分でも迷走に歯止めが掛からなくなり、着地点を見出だすことが出来ないでいた。

「...ダメに決まってます」

「セバスチャンのいけず～!　ウルウルウルウル～!」

「...お嬢様、涙目にさえなっておりませんよ?　ウルウルどころか目が渇いてるいるくらいですよ?」

「あ、しまった...」

　自分がドライアイだってことを失念してたよ...

「...というか、お嬢様は結局の所どうなさりたいんですか?」

「だからこの部屋でお見合いするんだって最初っから言ってんじゃないのよ!」

　私はついにぶち切れた。しかし我ながら本当にキャラが安定しないな...と、つくづくそう思う...