我が家の乗っ取りを企む婚約者とその幼馴染みに鉄槌を下します！

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「...嬢...お...嬢...」

「うぅん...」

　なんだろう?　誰かに呼ばれているような?　気のせいかな?　夢でも見てるのかな?

「...お嬢...」

　夢じゃない!　ハッキリと聞こえた!　私はハッとして目を開けた。どうやらアランの手を握り締めたまま寝落ちしていたらしい。もう夜明けが近いのか、窓の外が仄かに明るくなって来ていた。

　握り締めた手からはアランの温もりと、弱々しいながらも私の手を握り返して来る僅かな感触が確かに伝わって来た。

「アラン!」

　私はアランに呼び掛ける。するとアランは薄らと目を開けた。

「...あれ!?　お嬢!?　ここは!?　俺はなんで!?」

「あぁ、アラン!　アラン!　良かった...本当に良かっ...」

　その後は言葉にならなかった。私は、目覚めたばっかりで頭にクエスチョンマークを浮かべているアランに状況を説明することも忘れ、ただただ幼い子供のように泣きじゃくるばかりだった。


◇◇◇


　その後、私の泣き声に気付いたセバスチャンがお医者様を呼んでくれた。お医者様はまだ夜明け前だというのに、寝ぼけた様子もなく淡々とアランを診てくれている。さすがはプロだなと思った。

　私はお医者様が診断している間もずっと涙が止まらなかった。やがて診断を終えたお医者様が、

「もう大丈夫だと思います。記憶障害も残っていませんし。引き続き経過を観察する必要はありますが、今の所は後遺症も心配ないでしょう」

「あ、ありがとうございましゅ...」

　お医者様が出て行った後、気を利かせてくれたのかセバスチャンは席を外し、私とアランの二人っきりにしてくれた。

「...お嬢、なんか心配掛けたみたいでゴメン...」

「バカね...なんであんたが謝るのよ...」

「...だってお嬢が泣いてるから...」

「これは嬉し泣きよ...あんたが助かって本当に良かった...」

「...うん、俺も...お嬢が無事で本当に良かった...」

「アラン...助けてくれてありがとう...これはほんのお礼の気持ちよ?」

　私はアランにそっと口付けをした。

「...へ!?　お、お嬢!?　ちょっま!?　ちょっと待って待って!?　理解が追い付かない!?　ハッ!?　これは夢か!?　そうだ!　夢に違いない!」

「バカね...夢じゃないわよ...」

　私はもう一度、今度はかなり長めに口付けした。アランの顔は熟れたトマトみたいに真っ赤になっていたが、きっと私の顔もそれと同じくらい真っ赤になってるはずだ。

　だってこんなに体が火照っているんだから。