我が家の乗っ取りを企む婚約者とその幼馴染みに鉄槌を下します!

真理亜

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 私とアランの長い口付けは、控え目に病室のドアがノックされるまで続いた。

 ふと我に返った私は、側に置いてあった洗面器に火照った顔を突っ込み、熱を冷ましてからタオルでゴシゴシと顔を拭いて、

「どどと、どうじょ...」

 と、かなりドモリながら返事を返した。ちなみにアランはシーツを頭から覆って赤くなっている顔を隠している。

「失礼します、お嬢様」

 シェイラが入って来た。替えのタオルやらシーツやらを抱えている。

「あ、あら!? し、シェイラ!? ど、どうしたの!? ず、随分早いわね!? ま、まだ夜が明け始めたところよ!?」

 多少ドモリは改善されはしたが、やはりまだ端から見たら挙動不審に映ることだろうな。私はそんな風に自分を客観視していた。

「アランさんが目を覚まされたとお聞きしまして。こりゃ寝てる場合じゃないなと思って気合い入れて起きて来ました!」

 シェイラは腕捲りしながらそう言った。私はその勢いに若干引きながら、

「そ、そう...ご、ご苦労様...で、でも...た、タオルやシーツとかの交換は看護師の方の領分なんじゃなくて?」

「こんな状況ですのでね! 見ず知らずの方に任せてなんかいられませんよ! アランさんのお世話は私が請け負います!」

「そ、そう...あ、ありがとう...」

 シェイラのやる気が凄まじい。

「さぁさぁ! では失礼しますよ! おや? アランさん? なんでシーツを頭から被ってんですか? 取り替えたいんでシーツから手を...」

「ぐぬぬぬっ!」

「ちょっ!? ちょっとちょっと!? なんでシーツを力一杯握り締めてんですか!? 放しなさい! 手を放しなさいってば! シーツが交換できないでしょう~!」

「は、放すもんかぁ~!」

 その後しばらく、絶対にシーツを交換したいシェイラと絶対に真っ赤な顔を見られたくないアランとの間に熾烈な攻防戦が繰り広げられたのだった。

 私はその間、どうしたら良いのか分からずただオロオロしていた。


◇◇◇


「フゥ...全くもう...手間ぁ掛けさせないでくださいよね...ホントにもう...ブツブツ...」

 永遠に続くかと思われた戦いは呆気なくシェイラの勝利で片が付いた。

「うぅぅ...」

 ブツブツと文句を言いながらも手際良くシーツや枕カバーを交換していくシェイラを尻目に、両手で顔を隠しているアランの姿はどこか不憫に感じてしまった。
 
 っていうか...私のせいだよね...なんかその...色々ゴメン...

「良し! 終了~! 失礼しました~! 次からは手間掛けさせないでくださいね~!」

 そんなアランの様子には一切気付くことなく、仕事を終えたシェイラは颯爽と去って行った。

 残された私達はなんとも気不味かった。
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