絶死の森で絶滅寸前の人外お姉さんと自由な異世界繁殖生活 転移後は自分のために生きるよ~【R18版】

萩原繁殖

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さいにゅーこく

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「なるほど、変装ですか」

「そう、何か心当たり無いかな?」

 カリンに紹介状を書いてもらって、そろそろ行くかって時にこの後の予定訊かれたんだよね。
 それで、亜人たちと街に入りたいことを言ったんだ。ベステルタの冒険部はうまく誤魔化しつつ。流石に言いづらいよ。何か夢壊しそうだし。

「それであれば、全身を防具で固めたら如何でしょうか? 革鎧で覆えば概ね問題ないかと」

 ふーん、そんなもんかな? 手足とかどうしても体毛が見えると思うんだけどな。

「手足程度なら怪しまれません。この街には獣人も多く暮らしているので」

 あっ、でも角はどうしよう。さすがに怪しまれるんじゃないかな。

『角? ああ、これ曲がるわよ? ほら』

 契約者チャンネルで聞いていたベステルタは角をぐんにゃりと曲げて見せた。ええ……まるで溶けたカラーコーンだよ。知らなかった……。

『普段は魔力込めてるから固くなってるけど、弱めれば問題ないわ。これ角っていうか髪の一部なのよ』

 角は髪……? さらっと衝撃の事実を言われた。あー、でもサイの角って毛に近いって聞いたことあるな。それと同じかな?

 なんかベステルタから角無くなると一気に普通のお姉さん感が増すな。まあ、紫なんだけど。

「おお! ベステルタ様は御角を自由に動かせるのでございますね! 流石でございます!」

「ございます!」
「ございますー」
「ござー、ひん」

 カリンさん、そのテンション教育上よろしくないよ。子供たち真似してるし。
 因みにベステルタたちの名前は伝えてある。テンション上がって大変だった。

『ふふん』

 ベステルタもよいしょされて機嫌がよさそうだ。ならいいよ。

 まあでも、これなら全身覆えるかな? 頭も被り物すればいけるだろう。

「幸いにも、知り合いというか、ジオス教徒に鍛冶屋がおります。そちらにも紹介状を書くので注文してみては如何でしょうか?」

 おー、これは有り難い。
 口の固い職人は何かと重宝しそうだ。

「熊人ゴドーの鍛冶屋です。武器や防具を取り扱っています。孤児院の経営は苦しかったのですが、ゴドーさんや他の隠れジオス教徒の寄付によって何とか存続できていたのですよ」

 ほー、熊人ね。獣人だ。結構色んな種族がいるんだね。

 隠れ教徒と言えば、日本にも昔そんな歴史あったよなあ。僕は世界史取ってたからあんまり知らないんだけどさ。踏み絵とか無くてよかったね。

「それじゃそろそろ行くよ。ベステルタはどうする? 拠点に送り返そうか?」

「いや、もう少しここにいるわ。何だか居心地が良くて。ジオス様のお膝元だからかしら」
 
 そういうもんか。

 因みに亜人召喚は元いたところに送還することもできる。めちゃくちゃ便利だよね。戦力持ち込み放題、撤退し放題だ。

「ベステルタ様はなんと?」

「ここに残るってさ。ジオス神の気配を感じるから居心地がいいんだって」

「ああっ、何と嬉しいお言葉! このカリン、生涯この幸せな日を忘れることはないでしょう!」

「カリンは表情ころころ変わって面白いわねー」

 ベステルタがつんつんぷにぷにとカリンの頬を摘まむ。

「ふぉっ! べ、ベステルタ様は何と?」

「カリンは面白いねって」

「べ、ベステルタ様ぁー!」

「あはは」

 カリンが感激してベステルタをモフモフしてる。全然物怖じしないなこの子。ベステルタも受け止めて撫で撫でしている。狂信者と崇拝対象のハートフルシーン。見た目だけなら眼福だ。

「ケイ、そろそろ行こう」

 プテュエラが少し疲れたように言った。子供と遊び疲れたのかな? 意外だ。ま、ベステルタは体力無尽蔵って感じだしね。子供は言わずもがな。

「使徒様、差し出がましいようですが、そのお召し物だと目立つかもしれません。父が使っていた服がございますので、着替えていかれてはどうでしょうか?」

 あ、それは助かる。衛兵にも変な目で見られたしね。
 ご好意に甘えて、服を着替えさせてもらった。思えば、ずっとフォーマルなワイシャツだったんだよね。浄化したから汚れは無いんだけど、流石に擦りきれたりしているから、ちょうどよかった。大事に魔法の鞄にしまっておこう。

 異世界の服は普通に半ズボンとシャツだった。これで少しは馴染んだかな?

「じゃ、行ってきます。また連絡するよ」

「行ってらっしゃい」

「行ってらっしゃいませ! 使徒様、我が敬愛なる主様!」

「ませー!」
「ませ……」
「ひんー!」

 色んな言葉で送られる。カリンはスルーだけど、悪い気分じゃないよ。はは。

…………


……

「ん? お前また来たのか。身分証がないと入れないぞ。用意できたのか?」

 僕はドヤ顔で紹介状を出した。

「ありますよ。リッカリンデン孤児院の紹介状です」

「リッカリンデン孤児院……? ああ、あのボロい孤児院か。お前が関係者なのか? まあ悪さはするなよ。行ってよし。ようこそ、デイライトへ」

 やったぜ! これで後ろ暗い思いをしなくて済むよ。一つ、課題もクリアだな。クエストとでも呼ぶか?

 衛兵が脇に退いて通してくれた。城門をくぐる。よく整備された石畳の大きな通りが真っ直ぐと奥に続いている。

 おおー、ここが異世界の街かあ。じーん、と感動してしまった。

 ちょんちょん。

『ケイ』

「のわっ」

 プテュエラが話しかけてきた。えっ、大丈夫なの? こんなすぐ側で。

『ああ、姿を消しているし、思った以上に気付かれないから大丈夫だ。お前のすぐ上を浮遊するよ。その方が安心だろう?』

 そりゃそうだ。近くに不可視の最強ボディガードがいれば安心して歩けるよ。

「イタッ」

 突然、僕の後ろを通った男が手をさすって去っていった。なんだ?

『今の男、お前の鞄を狙っていたからな。気を付けろよ』

 プテュエラが対処してくれたのか……。やっぱり治安なんてこんなもんだよね。日本にいた頃も外国行ったことなかったし、こりゃ護衛してもらって正解だね。

「ありがとう。助かるよ」

『まかせておけ』

 自信に満ちた声。やだイケメン。

 にしても、速攻でスリに遭うなんてよっぽど無防備に見えるんだろうね。気を付けないと。

 鍛冶屋に着くまでまだ時間があるな。
 そうだ、さっき言ってたジオス神の言う「愛娘」ってどういう意味なんだろう。プテュエラに訊いてみよう。

『ああ、それか』

 少し苦しげに辛そうな顔をする。

『そのままの意味だ。私たち亜人は、ジオス様によって創られたと伝わっている。この姿もジオス様を象ったものだと』

 羽を広げて見せるプテュエラ。誇らしげだ。
 なるほど。そういうことか。まさしく神なんだね。でもなんで苦しそうなんだろう。

『その娘たる私たちが、ジオス様の危機に対して何も出来ないのが悔しくてな』

 アセンブラ教による排斥と封じ込めだよね。ベステルタと初めて出会った時にも聞いたけど、少しくらい反抗してもいいと思うんだけどな。

『ベステルタから聞いていないか? まあ、普通は人に言うこともない話か。
 私たちはジオス様にみだりに人を殺めるな、と言われているんだよ。伝承の中でな』

 あー、ベステルタそんなこと言ってたな。その内話すって言ってたけど、話さずじまいになっていたんだね。

 なるほど。

 繁殖のためにオスが必要だから強くは出られない。
 ジオス神の言葉があるから武力にも訴えられない。

『八方塞がりだね』

『そうだ。だけど、ケイが来てくれた。私はお前がこの閉塞感を打ち破ってくれるんじゃないかと、とても期待しているんだよ』

 プテュエラが優しげに羽で撫で撫でしてくれた。プテュエラに、ぼ、母性を感じる。

 うーん、幸せ。

 ま、難しい話はいいや。僕はとにかく自分のために生きるよ。その結果、亜人たちが幸せになってくれたらいい。それだけブレないようにしよう。

 しばらく大通りを歩きながら、カリンに教えられた道を歩いていく。中くらいの道を右に曲がって、少し進むと厳つい顔のおっさんや防具を装備したグループが増えていく。いかにも冒険者って感じだ。うおお、すげー。本物の剣だ。あっ、槍だ。斧もある。かっこいい。やばい、きょろきょろしてしまう。抑えないと。

 ここら辺は武器防具通りなんだろうな。そんな雰囲気だ。
 その通りを小道に逸れてやや薄暗い路地にその店はあった。牙を剥く熊の顔とハンマーが描かれた木札が、からから風に揺れている。やべー、武器屋だ鍛冶屋だ。 はやる気持ちをグッとこらえて、中に入る。

「ごめんくださいー……」

 店内は暗いけど、手入れが行き届いていた。片手剣や小振りな盾、ナイフ等が中央に並べられ、壁には大きな両手剣やハルバード、槌やモーニングスターがかかっている。

 あー、テンション上がる! やっぱり武器はロマンだよね! 僕はこういうのけっこう好きなんだよ。

「アァ?」

「ひっ」

 カウンターの奥からのっそりと熊が顔を出した。頭にタオル巻いてジンベエみたいの羽織ってるけど。雰囲気はおっさんだ。
 ただ、でかい。太い。熊っていうか、ヒグマとかグリズリーの類いだ。めっちゃこわい。

「何だァ、てめえ。うちは獣人にしか売ってねえんだよ。人族はお帰り願おうか、商品に匂いが移らぁ」

 すんごい嫌悪感持たれてんじゃん。カリンどういうことだよ。知らなかったのか?

「す、すみません。カリンという方に紹介してもらったものでして」

「カリン嬢ちゃんに……? てめえ、あの娘に何をしやがった!」

 ガタン!

 熊のおっさんが軽やかな身のこなしでカウンターを飛び越え、いつの間にか担いでいた両手剣を片手で僕に突きつける。ひええええ。

「ファイナ、カギをかけろ」

「はい、父さん」

 えっ。いつの間にか後ろに少女がいた。こっちは熊耳の可愛らしい人の顔した女の子だ。親子で全然違うじゃん。

 じゃなくて。

 がちゃり。

 鍵をかけられてしまった。

「まさかアセンブラ教会か?」

 熊のおっさんは猛烈な怒りに全身の毛を逆立てている。ダイオークなんかよりよっぽど怖いんですけど。

「俺はアセンブラ教会に身内を害されてるからな……事と次第によっては只じゃ済まさねえぜ」


『ちょっと、プテュエラ! どうにかしてよ!』

『うん? この者らはジオス教徒だろう? 話せば分かるさ』

 にこにこして、微笑ましいものを見るようしている。
 やだ見解の相違。でもそれは別の機会にして欲しい。とにかく誤解を解かないと!
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