絶死の森で絶滅寸前の人外お姉さんと自由な異世界繁殖生活 転移後は自分のために生きるよ~【R18版】

萩原繁殖

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(コロシテ)

(使徒様! お気を確かに!)

 アヒ……アヒ……。

 白目を剥きそうな僕をカリンが懸命に励ましてくれる。でもこの空気は致命傷だよ。

「んんっ、私から説明します」

「……うむ」

 何事もなかったかのように会話が続けられる。まるでさっきのシーンなど存在しなかったかのように。そうしてくれ、なかったことにしてくれ。

「コスモジオ霊草が自生している場所は『絶死の森』です」

「なんですって!」

「…………」

 ラークさんは興奮したように立ち上がり、アーサー氏は何も言わず目を瞑ってじっとしている。

「絶死の森がどんな場所か、お二人はご存じのはずですね?」

「当然です。人類未踏の領域。厄災級の魔獣が跳梁跋扈し、世界に脅威を振りまく魔境です。そんな場所にコスモジオ霊草が自生していると?」

「ええ。おっしゃる通り彼の地に人類は何度か開拓に向かい、その都度追い払われてきました。フレイムベアやタンプボアが昼夜問わずに襲いかかってくる地獄。さらには人を嫌う亜人様もいらっしゃいます。結果は『S級冒険者や精強な軍隊を長期間拘束してもなお、征服叶わず』と記録にはある通りです」

「そんな場所に生えている霊草を十分な量取ってくるなど……亜人様?」

 シルビアの言い方にラークさんが首を傾げる。

「はい。通常なら不可能です。しかし、ここにいらっしゃる協力者はでありません」

 そう言うとまたみんなが僕を見る。ウッ、視線がツライ。でも今度は大丈夫だ。
 
「僕は複数の亜人と契約しているんです。彼女たちの力を借りて、霊草を取りに行くことができます」

「ふ、複数の……亜人?」

 ラークさんはものすごく困惑している。情報量が多くて整理できていない様子だ。

「この御方はジオス神より特別の加護を頂いた至尊の使徒様でいらっしゃいます。厄災級の魔獣を容易に屠る亜人様のお力を借り、霊草を採取可能です」

 うっ、シルビアの口から至尊だなんて、サブイボはえてくるぜ。

「我が商会は使徒様にご協力頂き、独占的に霊草を確保できます。当方と使徒様の関係は大変深く、定期的に採取してくださると確約頂いております」

 済ました顔で言ってるが、確約も何も『お願いお願いお願ぁい!』とゴリ押しされただけだ。まあ別に最初からそのつもりだったからいいけどね。

「し、しかし。そんな大層なものを製造するなどよほど身元のしっかりしたものでなければ任せられません。ブラス商会にはそのような人材を大量に確保できるツテがあるのでしょうか?」

「もちろんございます。その件についてはカリン・リッカリンデン司祭よりご説明いただきます」

 やっとここでカリンの登場だ。けっこう待っていたのにまったく疲れた様子も見せない。僕にDENBUを触られせてくれる余裕さえあったからね。

「ご紹介に預かりました、カリン・リッカリンデンと申します。皆様の貴重なお時間を無駄にしてしまうのが心苦しいので、手短にお伝えします。リッカリンデン教会は使徒様がその御業で治癒したスラム住民を受け入れ、ジオス教徒に改宗いたしました。この者らはジオス様の元に平等であり、皆敬虔な信徒。信頼は言うに及ばず、確かな身元という意味ではこれ以上無い方々だとお伝えいたします」

「そ、そうでしたか」

 ラークさんが広いおでこの汗を拭う。

「ということで、当商会に隙はありません。非常に優秀な協力者と敬虔で働き者の従業員たち。乗り遅れているのは商業ギルドだけですよ。製造方法をお譲りしますので、伯爵閣下への面会を取り付けていただきたく。まさかギルドマスターとあろう方が、口約束とは言え、おっしゃったことを反故にはしませんよね?」

 うわぁ、シルビアがアーサー氏をプチ煽りしている。観ているこっちがヒヤヒヤするよ。

「な、る、ほ、ど」

 アーサー氏はゆっくりと噛みしめるように頷き、顔を上げた。思わずゾクリとしてしまうような笑みを浮かべている。
 
「なるほど、なるほど。そういうことか……」

 机をトントンと叩く彼からあの気迫は感じられず、むしろ穏やかで目元も柔らかい印象になっている。

「シルビア嬢、面会の取り付け以外に商業ギルドへの見返りは何を考えている?」

「この市場に革命を起こす、コスモディアポーションの『独占購入権』を」

「フッ……そうか。いいだろう。ラーク、契約書を持ってこい」

「はっ」

 お、おお?

 なんか良い感じに話がまとまりかけてるぞ。ラークさんが契約書を用意し、アーサー氏は手慣れた手つきでサインをした。

「いいだろう、シルビア嬢……いやシルビア殿。貴女の提案に乗ろう」

「あ、ありがとうございます……!」

 シルビアは、緊張の糸が切れたのだろう、汗がどっと吹き出して足が震え始めた。仕方ないので支えてあげた。うーん、いい匂い。 

「ただ、最後に。よもやここまで来て嘘だとは思わないが、貴商会の要である亜人……殿とお会いすることは可能でしょうか?」

「……あ、ああ! 僕っすか。あ、はい可能ですよ。すぐ呼べます。呼びましょうか?」

「お願い申し上げる」

 突然話を振られるとは思っていなかったのですぐ反応できなかった。アーサー氏の敬語って妙に迫力あってビビるんだよね。ライオンが親しげに低く唸ってきても怖いのと一緒っす。

『プテュエラ、商業ギルドのマスターが会いたいって言ってるんだけど大丈夫?』

『む、構わんぞ』

『じゃ、お願い』

 では召喚しますね、と一声かけてプっさんを部屋に喚ぶ。

 すると無風であるはずの室内がにわかにざわめいて、風が起こる。

 それは僕を中心に渦を帯びて、紛れもない暴風が吹き荒ぶ。

 ラークさんとシルビアが悲鳴を上げて、机などに捕まる。

(部屋の中でなにやってんの!?)

 と内心叫んだが、風が影響を及ぼしているのは人だけだ。それ以外の物は微動だにしていない。紙は飛ばず、ほこり一つ立たない。その異常性の中、アーサー氏はしっかりとゲンドウ座りして成り行きを見守っていた。どこに力入れて踏ん張ってんだろう。

「我が契約者の声に応え、殲鷲プテュエラ、推参」

 流し目、睥睨、冷たい声色。

 降臨する天使のように羽をはためかせ、キュピーンとめちゃくちゃカッコイイポーズ。

 ああああっ! 久しぶりでダークアクションのこと忘れてた!

 なんかちょっと異名みたいなの変わってるし。

「……こ、これが、亜人。なんと、美しく、畏ろしいのか……」

 ラークさんが一般人代表のようなリアクションをとってくれており、プテュエラも満足そうだ。ただ髪が多いに乱れており、直すのに苦心している。

「……タネズ様、これほどの存在の方々と、他にも契約していらっしゃると?」

「あ、はい。呼びます?」

「いえけっこう。不躾な要望に応えてくださり感謝いたします」

「いえいえ」

「貴方がたの提示する計画がハッタリではなく、実現可能性のあるものであることは、よく分かった。では、シルビア殿。子細を詰めようか」

 アーサー氏は契約書片手に、不敵に笑った。
 

 交渉のヤマは越えてシルビアとアーサー氏は比較的和やかな雰囲気で契約を詰めた。

・向こう三年間、ブラタネリ商会は商業ギルドに対し、コスモディアポーションを独占的に卸す。ただしギルドが認めた組織や個人的はその限りではない。

・製造方法は商業ギルドに移譲される。

・コスモディア製造はブラタネリ商会に一任され、従業員の選定にその責任の一切を負う。

・両組織はコスモディアポーションの製造、普及に対し一切の協力を惜しまない。

・コスモジオ霊草の採取については、種巣啓に一任される。商業ギルドはこの活動を可能な限り支援する。

 おおよそはそんなところだ。いやー、ここまで長かった。一時間も経ってない気がするんだけどどうだろう。疲れたよ。

「それでは今後とも宜しくお願いいたします」

「ああ」

 二人はガッチリと握手をしてブラタネリ商会と商業ギルド、オルスフィン商会との、業界を揺るがすであろうビジネスパートナー契約がここに締結された。

「伯爵閣下の面会はしばし待て。説明はあったがこちらでも薬効を検証したい。各所と調整し新たな部門を開設する必要もある」

「新たな部門、というとギルドですか?」

 ……ギルドってそんなに簡単に起こせるもんなのか?
 しかも実質傀儡宣言。
 商業ギルドこえぇ。

「そうなるだろうが、実質は商業ギルドの下部組織だな。いわばポーションギルドは現在アセンブラ教会が担っているが、ご覧の通り腐敗している。やつらのように腐りきった上に大地まで穢すような組織にしてはならん。しっかりと手綱を握る必要がある」

「しかし急な話ですし、人材が揃わないのでは」

「シルビア殿。貴女からこの話があった時、私は念のためすでに動いていたのだよ。どのように転んでもいいようにな」

「……はあ、かないませんね。さすがです」

「なに、年季が違うだけだ。貴女も自ずとできるようになる」

 シルビアは少しいじけたような表情をして、アーサー氏は苦笑する。なんか距離が縮まった感じあるな。まあ、これから一緒にやっていく仲だもんね。僕も積極的に仲良くしなきゃな。

「検証するならポーションをもっと作っておいた方がいいかもね。伯爵様の出方次第ではもっと多くの人の手に渡ることになるだろうし」

「ふむ、非常に助かりますが置き場所や保管方法はいかがする? ポーションは品質管理が大事で、繊細な取り扱いが要求されます。コスモディアポーションでさえその例外ではない……その認識であっているか、シルビア殿?」

「はい、その通りです。……ケイ、鞄のこと話すつもり?」

 シルビアが真剣な眼差しを送ってきた。僕はアーサー氏にこのやべえ鞄のことを話すつもりだ。たぶんフレイムベアや、コスモディアポーションよりもやばい代物かもしれない。

「そうだよ。これから商業ギルドとやっていくなら、ある程度秘密明かしたほうが動きやすいでしょ」

「分かった。ケイがそういうなら、こっちからは異論無いよ」

「ふむ。どうやら解決策がおありのようだ」

「ち、ちょっと待ってください。これまでで随分と驚かされてしまってので、深呼吸させてください」

 ラークさんが慌ててすーはーすーはーし始める。

「ラーク、無様を晒すな。この程度で動揺してどうする」

「ギルマスがおかしいんですよ! 貴方の尺度で周りを計らないでください! すみません、落ち着いたのでどうぞ話されてください」

 おお、ラークさんがアーサー氏にツッコむという貴重なシーンを見れたぞ。やっぱこのギルマス、肝据わりすぎてるよな。

「いやまあ、大したことじゃないかもしれないので。えっと、僕の持ってる鞄なんですけど、途方もない容量を持っていて、時間の流れも非常に緩やかなんですよ。だから大量にポーション作っても安全かつ品質を落とさずに持ち運べますよ」

「……ふむ」

「な、な、な」

 ギルマスはゆっくりとお茶を飲み、沈黙を飲み込んだ。ラークさんは口をパクパクさせて真っ青になっている。

「そ、そ、そ」

「落ち着けラーク。まったく、お前は肝がデカいのか小さいのか相変わらずよく分からんな。それにしても、容量無限で、時間停止のマジックバッグですか……神代の魔道具ですなあ」

 ギルマスはなんとも言えない笑顔でまたお茶を飲んだ。受け止めきっているように見えるが、ほんの少しだけ手が震えている。無理もないよ。シルビアなんてこれについて話した時『うええええ!?!?』って多いに取り乱したからね。

「もう何が起きても驚かんと思っていたがこれほどとは……。失礼、タネズ様。この件も最重要秘密事項として契約書に追加しても?」

「あ、はい。もちろん構いませんよ」

「それと私に対して敬語を使う必要はございません。どうぞ砕けた調子で話してください」

「う、うん。努力する」

 目上の威圧感あるおっちゃんに『タメで話せや、おれ敬語使うけど』なんて言われて、はーい! と快諾できる精神力は持ち合わせていないのでぼちぼち頑張ることにする。

「じゃあ、製造はぼちぼち進めていく感じでいい?」

「どうぞお願い申し上げる……。時にタネズ様、知識奴隷などそろそろご入用なのでは?」

 なんじゃそれ?
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