絶死の森で絶滅寸前の人外お姉さんと自由な異世界繁殖生活 転移後は自分のために生きるよ~【R18版】

萩原繁殖

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茶ンス!

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「それで、前回よりもマシなプランは考えていたのか?」

 前回っていうと、ほぼパワハラ面接みたいな圧迫感でアーサー氏がシルビアにした時のやつか。シルビアも頑張ってたけど、ギルマスの方が何枚も上手だったんだよね。隣で聞いていて社会人時代のトラウマが蘇ったよ。

「はい。コスモディアポーションの有用性については、ご確認頂いたとおりです」

「ああ。あらゆる怪我、疾病、呪いに対応可能で若返り効果まであるとなればな。一考に値する。が、依然としてアセンブラの脅威はある。貴女はその障害をどう乗り越えるつもりだ?」

 おっ、心なしかギルマスの言い方が前回よりも柔らかくなってる。前は『貴様』呼ばわりだったからね。僕が面と向かって貴様なんて言われたら泣いちゃうよ。

「デイライト伯爵閣下にお力添えを願います」

「ほお?」

「ふむ」

 ギルマスの目が鋭くなり、ラークさんも目を細める。やばい、冗談では済まされない領域に足を踏み入れた感がある。

 この世界の権力者がどれだけの影響力持ってるかわからんけど、この金と欲望が渦巻くデイライトを支配している人物だ。アーサー氏以下ってことはないだろう。

 まあいざとなればベスえもんに頼んでベステルパンチとベステルキックでどうにかしてもらって、みんなを連れてトンズラするしかねえ。

「具体的にどうするつもりだ?」

「デイライト伯爵閣下の一人娘であるディクレシア姫は、かねてより目のご病気で体調が思わしくないと聞き及んでいます」

 おお、ディクレシア姫。マジで姫とかいるんだなこの世界。そりゃいるか。伯爵だもんな。

「それで?」

「単刀直入に申し上げますが、それは病気ではなく『呪い』なのではないでしょうか……っ!」

 ミシリ、と空気が重くなる。

 それはアーサー氏の放つ不可視の威圧感によるものだった。それがここに来て最大級の危険信号を発している。

 シルビアは今、ボーダーラインを越えて虎穴に入ったのだ。

「シルビア嬢……この国は貴族制を敷いている。上位者の、特に伯爵以上の爵位を持つ方々の健康問題は案件だ。ましてや跡継ぎに関わることとなると、平民の命など木っ端のごとく消し飛ぶ」

 あんたがその上位者ちゃうんか、と思わず突っ込んでしまうほどの圧力。なんだか空気が硬くて吐いた息が戻ってきそうだ。そんな中でも隣で飄々としているラークさんもヤバい。やっぱこの人も見た目以上にエグそうだな。もしかしたらあの散っていった髪の毛たちは、長年ギルマスの圧力に曝されてせいかもしれない。

「命が惜しいと思うなら、それ以上入るのは止めておけ。そのポーションはどこか川に流してすべてを忘れ、伴侶を作って平和に暮らすがいい」

 そこでチラリとこっちを見てくる。僕は伴侶ではなく短慮ですよ?

「命は惜しいです。しかし、それでもやらなければなりません。これはね、ギルマス。ブラス家の宿命なんですよ。リディア・ブラスが始め、描いて、壊し。テッド・ブラスとアイリーン・ブラスが繋ぎ、苦しみ、託し。シルビア・ブラスが受け取って、成して、終わらせるんです」

 その時の彼女の瞳は、月並みな表現だけど、輝いていた。びっくりするほど綺麗でまっすぐだった。透徹とした眼差しはギルマスを超えて、その先を見据えていた。
 
(意志だ)

 直感的にそう思った。シルビアは今、連綿と続くブラス家の運命に立ち向かい、彼女の持つ意志を鋭く掲げ、切り開こうとしているんだ。

「……フン、忌々しい瞳だ」

 誰に似たんだか、とアーサー氏は急に年相応の老人のようにぼやいて席に座った。マジマジと見ると、アーサーさん割と年いってんな。ただ、溢れ出る生気が年齢を感じさせないのよね。

 とにかく空気が弛緩し、温度が戻っていく。よかった、なんとか山場は乗り越えたかもしれない。

「仮に『呪い』だとして、どうするつもりだ?」

「コスモディアポーション、最高ランクである『朱』で解呪いたします。その功績を持って我が商会の後ろ盾となって頂きます」

「で、あろうな。利益と見返り。この世で最も単純かつ強力な相互作用だ。目の付け所は悪くない。アセンブラ教会となると、商業ギルドのみでは手に余る。国の権力者に取り入るのは至極当然のやり方だ……。取り入れたら、の話だがな」

 アーサー氏はずいっと身を乗り出してくる。この人、凄んだ顔が山賊の大将みたいだ。色んな側面持っていて面白いな。たいてい強面役だけど。

「シルビア嬢、どうやって伯爵閣下に話を持っていくつもりだ?」

「デイライト商業ギルドマスターである、アーサー・オルスフィン殿に仲介をお願いしたく」

「断る」

 すげなく速攻で断られる。

「もはやこれは商業ギルドの範疇ではない。確かに魅力的な提案ではあるが、リスクリワードに合っていないな」

「……では見返りが相応であれば応じて下さるということですね?」

「無論だ」

 あ、アーサー氏、一瞬目元を緩ませたぞ。すぐに厳しい表情になったけど。あれかな、シルビアの成長っていうか、彼女の才気を見れて思うところがあるのだろうか。なーんか、リディア・ブラスさんとも因縁ありそうな感じだし。

「だが並大抵の見返りでは動かないと言っておこう。コスモディアポーションの製造方法を譲り渡すくらいのメリットでなければな」

「お譲りいたします」

「……なに?」

 今度はシルビアが間髪入れずに答える。アーサー氏も意表を突かれた形だ。

「ですので、製造方法をお譲りいたします。その見返りにデイライト伯爵閣下への面会を仲介していただけますか?」

「……失望したぞシルビア嬢」

 アーサー氏は見るからに不機嫌そうにため息をついた。まるでゴミを見るかのような瞳でシルビアを眺めている。その奥には僅かながら落胆の色も見える。

「なるほど。確かに製造方法ならば、伯爵閣下との仲介をするに足る。しかしその先は? 製造方法を譲った商会に何が残る? 救世の新ポーションを世に広める礎となった、とカビ臭い歴史の一幕になる権利か? 利益度外視で人命優先か? くだらん、実にくだらん。それは利益を貶める行為だ。商人が利益を捨てることは、鳥が空を捨てるのと同義よ……。もういい、シルビア嬢。貴女には失望した」

 うわっ、言われたのは僕じゃないのに背筋と心臓と股間がヒュンとした。極寒の言い様だ。怒られるのもキツいけど、興味を無くされるのは、ほんと凹むんだよ。

「いやだなあ、ギルドマスター。利益、追求するに決まっているじゃないですか。私はね、お金が大好きなんですよ。なぜなら、ピカピカで持っていると幸せになるからです」

 シルビアはそんなタマヒュン肝ヒュンシーンにも屈さずにあっけらかんと笑っていなした。

 さて、そろそろ僕とカリンの出番かな。

「……何を言っている? 製造方法を譲り渡した弱小商会に何ができるというのだ。製造方法さえ手に入れれば、ブラス商会は用済みだ。あとは商業ギルドだけで製造できる」

「いいえ、誓ってもいいですができませんね。ギルマス、コスモディアポーションの原材料をご存知ですか?」

「……ラーク」

「鑑定時にはコスモジオ霊草から作られた、との記載がありました」

「コスモジオ霊草とはなんだ」

「申し訳ありません。私も数十年前に読んだ古い文献で見かけただけでして。詳細は存じ上げません」

 すげーなラークさんの鑑定。原材料まで分かるのか。あーでもあれか、きっと知らない材料は鑑定結果に出ないんだろうな。そうじゃないとチートだもん。しかしそうなると、ラークさんは大昔に読んだほんの端っこに書かれてたよくわからん草まで覚えてたってことになる。ラーク・インデックスに改名したほうがいいんじゃないか?

「うふふ。何でも知っている『博覧強記』のラーク・ジャックナイフでも知らないことがあるとは、珍しいものを見させてもらいました」

「はは。何でもは知りませんよ、知ってることだけです」

 いや、羽川ラークの方がいいかもしれない。髪の毛に翼は生えてるみたいだけど。

「さて、シルビアさん。そろそろ種明かしをお願いします。コスモジオ霊草とは一体なんですか?」

「それは、こちらのタネズ・ケイ様が答えてくださいます」

「うぇっ!?!?!?」

 日和見を決め込んでいた僕は、ゴール前でいきなりスルーパスを渡されて盛大に外す、でっかいベルギー人フォワードみたいに取り乱した。

「ほお、タネズ様と関わりが深いので?」

 ラークさんはニコニコと笑っているが、後ろのアーサーおじいちゃんがめっちゃ怖い。

 し、しごでき人間に、そ、そんなに睨まれると会社で詰められていた時のトラウマが出ちゃう!

 社長肝いりのプロジェクトにいきなり新人としてぶち込まれたのに、先輩も上司のフォローも無くて、訳もわからず泣きながら手当たり次第にパソコン操作して、客先のサーバーシャットダウンしちゃって、上司にガン詰めされた記憶がよみがえっちゃう! 出ちゃう! トラウマスペルマが、で、出るーッ!

「こ、コスモジオ霊草は、茶葉です。えっと、美味しいんですよ。今が茶ンス! なんつって!」

 あっ。

 ラークさんとシルビアは呆気にとられ、アーサー氏は完全無欠の無表情。

 出ちゃったよぉ……。

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