絶死の森で絶滅寸前の人外お姉さんと自由な異世界繁殖生活 転移後は自分のために生きるよ~【R18版】

萩原繁殖

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大明神

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「迷宮弁当いらんかねえ、出来立てホヤホヤ~おいしい~おいしい~迷宮弁当いらんかねえ!」

「……なあ、弁当買わないか?」

「そ、そうなんだな。起き抜けにゴブリンとコボルトたちに追い回されたせいで、朝ご飯食べられなかったんだな」

「決まりね。これから迷宮二層初攻略なんだもん。ちゃんと食べなきゃ」

「ああ、早く紅蓮隊たちに追いつかないと……」

「おいボウズども。迷宮で弁当を買うのはやめとけ。安いけど質が悪いのが多いからな」

「え、そ、そうなのか」

「おう。当たりもあるが基本的には外れだ。一層ならまだいいが、二、三層ともなると弁当なんて大体腐ってるぜ。ていうかこんなとこで出来立てホヤホヤなんておかしいだろ」

「た、たしかに」

「じ、じゃあなんで売ってるんだな」

「お前らみたいな初心者に売りつけて、あわよくば腹壊してるところをぶっ殺して所持品奪うからに決まってるだろ」

「まじかよ……」

「そうだ……おいっ! 屑売り! 人間の屑とはてめえのことだ、さっさと失せろ! 蹴り殺すぞ!」

「ひいっ」

「とまあ、こういうわけだ。ボウズ、迷宮はなんでもありな無法地帯だからな。気を付けろよ。仲間以外信じちゃいけねえぞ」

「ああ! ありがとうな、おっちゃん」

「助かったんだな!」

「おじさん、いい人ね」

「ははは。大したことねえよ。でもな嬢ちゃん、俺くらいの歳のクールガイにおじさんなんて言っちゃいけねえよ。繊細だからな。お兄さんって言いな」

「ご、ごめんなさい。お兄さん」

「おう、良いってことよ。そんなことよりこの唐揚げを食いな。腹減ってるんだろう?」

「え、いいのか?」

「うおお、おいしそうなんだな!」

「ありがとうございます。今朝食べ損ねてしまって」

「いいってことよ。ちっと冷めてるけどうめえぞ」

「おっちゃん、ありがとう……むぐ。な、なんか苦くねえか、これ」

「うぐぐ、本当なんだな。それに、なんか、舌が痺れて」

「おじさん、まさか……」

「クックック。馬鹿だなおめえら。迷宮では仲間以外信じるなと言っただろう?」

「な、なんだと! くそお!」

「ひどいんだな……」

「そんな、こんなところで」

「クックック……」

 ボゴォ!

「ぐはぁ!」

「アビディ! 新人相手に何やってんのよ、このバカ! ごめんね、うちのアホが迷惑かけて……。その唐揚げはこのバカが作ったやつで毒なんか入ってないから安心してね」

「ああ、そうだ。最近唐揚げにハマっちまってな。迷宮にどうしても唐揚げを持ち込みたくて試行錯誤して、薬草に浸けてみたんだ。おかげで日持ちはするようになったんだが、苦くてあんまうまくねえんだよな。ガハハ」

 パコォーン!

「いってぇ! シェリル! お前それ、弓の硬いとこで殴んなよ!」

「やかましい! 新人相手に何考えてんのよ! 謝りなさい!」

「わかった、わかった。すまんなボウズたち。お前たちが純粋すぎて不安でよぉ、からかいたくなっちまったんだ」

「いや、隙があった俺たちもで悪いよ。気づかせてくれてありがとう、アビディさん」

「今度は油断しないんだな」

「唐揚げ、そこまで悪くなかったですよ」

「うう、おめえら。素直でいいやつらだなあ……」

「ごめんね、君たち。うちのアビディが。ええっと」

「J級パーティ、ドラゴンソードのタークです。こっちは仲間のパメラとバッズ」

「よろしくなんだな」

「よろしくお願いします」

「あらら、お辞儀なんかして、礼儀正しい子たちね。ランクを隠さないのも偉いわ。私らはG級パーティの『骨喰い』ボーンコレクターよ。由来は時代にアビディが肉食べたいけどお金無くて、骨しゃぶってたから。
 君たちくらいの歳で落ち着いてるパーティって中々いないのよね。大事にしなさい」

「あ、ありがとうございます」

「いいのよ。それだけ君たちが苦労したってことってことでしょう? もう半年か一年くらいは潜ってるの?」

「いえ、本格的に潜り始めたのはつい最近です。まだ数日です」

「数日!? それは……速いわね。えっと、もしかしてどっかのパーティのポーターとして来てるの?」

「ポーターではないんですけど、有名な冒険者さんに指導してもらっています」

「へえ、なるほど。有名なっていうとどこかしら」

「ディボルド兄弟とか?」

「あんたねえ……あんな斧狂いの変態兄弟が弟子なんて取るわけないでしょ」

「じゃあ『朱の明星』モーニンググローリーとか?」

「無くはないけど、今C級の壁にぶち当たってるから、弟子取ってる余裕なんてないんじゃないかしら。それに人格的にあんましねえ……」

「分かった! 『黄金の矢』ゴールデンアローだ!」

「あそこは男子禁制でしょ、このバカ。ねえ、どこのパーティが弟子にしてくれたの?」

「ええっと、ちょっと複雑なんですけど指導してもらってるのはラーズさんです」

「ええっ、ラーズってあの『孤爪のラーズ』!? そっちかぁ!」

「まじかよ、あの人引退したんじゃなかったのか……」

「ラーズさんがたまたま初心者講習を担当してくれて、そこでまあ、一悶着あったんです」

「身の程を知ったんだな」

「あの日からもう、果物をすりおろせなくなって……」

「よしよし、パメラ、大丈夫だからな……。それで、その時一緒だった同期をまとめてラーズさんが面倒見てくれることになったんです」

「はー……そりゃ奇跡だね。あんたら運がいいねえ。『孤爪のラーズ』って言えば、一昔前の冒険者にはなるけど、一流の冒険者だ。確かE級だよねえ。ソロでE級まで上り詰めるってのは、狂気の沙汰じゃないよ」

「引く手あまただってのに、なぜかソロを貫いたんだよなあ。どっかのパーティに入ってればもっと上を目指せたんだろうけど、あの人の生き様はカッコいいぜ。憧れるわ」

「私らは一層超えるのに半年はかかったよ。あれだけ雑魚雑魚言われてるゴブリンとかコボルトが、あんなにおっかないなんてねえ」

「初日で同期が三割死んだもんな。俺達はまあ、死に物狂いにやったから、なんとかまだ生きてるけどよ」

「いや、G級とかマジすごいっす。こっから十層くらい上の世界なんて想像つかないです。
 ラーズさんのことは、本当に運が良かったと思っています。いつも教えてもらっているわけじゃないんですけど、毎回すごくためになってます」

「含蓄と説得力がすごいんだな」

「戦闘以外にも情報収集のやり方とか、荒事を避けるための話し方とか、実戦的なことを教えてくれんです」

「おいおい、なんだよそれ。めっちゃいいじゃん。シェリル、頭下げてラーズさんとこいかねえか?」

「頭下げたくらいであの人が私らみたいなロートルを迎えてくれるかっての。はー、ヤダヤダ。若いってのはいいねえ……。ん? でも別に弟子ってわけじゃないのかい?」

「あ、そうなんです! 師匠は別にいらっしゃるんです!」

「ラーズさんはもちろんすごいんだけど、師匠はなんかこう、カリスマがすごいんだな!」

「怖いけど、惹かれる……ベステルタ……様……」

「へえ、そんなやつがいたのね。ランクは?」

「ええっと、確かまだI級だったかな?」

「I級ぅ? 君たちのたった一つ上じゃないの。詐欺師じゃないのかい?」

「そんなんじゃない! 師匠を悪く言わないでくれ!」

「たねず大明神」

「あ、すまないね。悪くいうつもりはなかったんだ」

「おい、今なんか通ったぞ」

「ああっ! あの人だ! 師匠、ししょおおお!」

………………

 一層をあっという間に駆け抜けて、二層に到達する。もはや一層の敵は相手にしていない。時折進路を遮りそうなやつだけ弾けていく。ベステルタの指弾だね。マジで大口径拳銃くらいの威力がある。

 ゴブリン、コボルト、ダンジョンウルフの素材が散乱するけど回収するのも面倒なのだそのままにしておく。すると見るからに食い詰めてそうな冒険者たちがワーッ群がった。目が血走っていてこわい。なるほどな。おこぼれ狙いか。こういう人たちもいるんだね。別に僕には害は無いし、素材も無駄にならなくていいんじゃないかな。

「ベステルタの指弾かっこいいなあ。もっとみたいなあ」

「え。そ、そう? よーし、じゃあもっと見せてあげるわ!」

 パチュン、パチュン、パチュン!

 わお、ゴブリン山コボルト河だ。断末魔の声がこだまする。みんなベステルタの機嫌の糧になってくれや。

「ん、あれって。ケイの知り合いじゃない?」

 二層に入ってすぐの広間で、ベステルタが僕に教えてくれた。

 あ、ほんとだ。ドラゴンソードの面々だね。ターク君が何か大声で言ってるな。二人組の冒険者に絡まれてる? 大丈夫かな。

「僕のってか、一応ベステルタの知り合いでもあるんだけどね。ほら、顔面すりおろした女の子いたでしょ」

「……ああっ。思い出したわ。懐かしいわね~」

 懐かしいというほど時間経ってないんだが、時間感覚どうなってんだ。それだけ毎日が濃いってことかな。

「絡まれてるかもしれないし、ちょっと様子見てくるよ」

 一応弟子として認めてしまってるしね。なんであんなことしちゃったかな。押し入れちゃったんだよなあ~。ザルドたちもいるし、どうすっかな。

 む、なんか口論っぽくなってるな。仕方ない。大明神様に力を借りるか。

「たねず大明神」

 練喚功のスピードを活かし、タークくんと近所のお姉さんtier1な見た目の冒険者の会話に割って入り、高速でボソっと言って立ち去る。

 完璧だ……。

 ガッ、ゴスッ。

 いたっ! よそ見してたら転んでしまった。いい度胸してんな~この地面風情がよぉ。地軸傾けてやろうか? くぬっくぬっ。

「ああっ! あの人だ! 師匠、ししょおおお!」

 地面に文句を言っていたらタークくんに見つかってしまった。冒険者の面々にもだ。やれやれ、仕方あるまい。

「やあ、タークくん。バッズくん、パメラちゃん。元気かい?」

「元気です! あと俺たちのことは呼び捨てで構いません!」

 三人共ニコニコとした純粋な笑顔を僕に向けてくる。パメラちゃんだけベステルタにややおびえてるけど。いやー、少年少女の無垢な視線って気持ち良いんだけどキツいな。ぼかぁヨゴレですよ。

「なんか言い争ってたけど大丈夫?」

「あ、いや。言い争ってた訳じゃないんです。ただ師匠のことを少し悪く言われて、カッとなっちゃったんです。シェリルさんたちは悪くないです」

 あらやだ、そうなの? いい子じゃない。正義感あふるる素直なタークきゅん。その視線はきっと世の中のお姉様方をじゅんッてさせるに違いない。

「あら、貴方がこの子たちの師匠? 私はG級パーティ『骨喰い』のシェリルよ」

「同じくアビディだ……あっ、あんたは」

「あっ」

 アビディさんの強面、どこかで見たことあると思ったらあれだ、唐揚げを差し入れしたら親身になって迷宮内のこと教えてくれた人だ。

「え、もしかして知り合い?」

「おう! この人があのうまい唐揚げ屋を教えてくれた人だ! 兄ちゃん、あんがとな。あれからあの店行きまくってるんだわ」

「おー、そうなんですね。お役に立てて良かった」

「よせよ、俺たちの仲じゃねえか。タメで話せよ」

「おっけ。んじゃ、遠慮なく」

 突然大明神したあと、いきなりアビディさんと親しげに話し始めたので、他の面々はついていけてないようだった。ごめんね。
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