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どうやってあんなに強くなったの?
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「大丈夫? おっぱい揉む?」
「おねしゃす」
「うふふ。はい、どうぞ」
慈愛に満ちた雌の顔。その腕に抱かれ、甘やかされている。
「顔埋めてもいい?」
「もちろん、全部ケイのものだからね。遠慮しないで……ほら、ポーションちゃんと飲んで」
「ばぶぅ!」
「慌てて飲んではだめよ」
「んばばぶぶぅ!」
ごくごく。
あぁ……まるでベスミルクを飲んでいるかのようだ……。未来の赤ちゃんが羨ましい。
この前シルビアから渡されていたコスポを哺乳瓶のように持ってゆっくり飲ませてくれる。これ、スポドリみたいな味がするな。それプラス、少しハーブ混ぜた感じ。後味がちょっと苦いけど、汗汁ことアセンブラポーションに比べたら雲泥の差だわ。
ポーションの効果もあって、傷や出血が治まり、具合はみるみるうちに回復していった。まだ試供品だけど、正式販売されたらやばそうだ。
「はー、ベステルタの腕の中、暖かいナリィ……」
「そう? いつまでもこうしていてもいいのよ」
「……まあ、そういう訳にもいかないよね」
気合を入れて立ち上がる。先程目を覚ましたあと、シグリッドさんと言葉を少し交わし、話し合いの場を設けることにしたのだ。
向こうさんは僕とやり合ってた時までは殺気立っていたけど、ベステルタがいろいろとぐっちゃぐちゃにしたおかげで今は落ち着いている。落ち込んでいるともいえる。僕はおちんこでている。
そろそろ向こうの準備も整ったようだ。僕の不注意が発端だし誠意を持って対応しよう……誠意を持って対応ってどうすればいいんだろう。
「改めまして、初めまして。『亜人の星』のタネズ・ケイです」
「……E級パーティ黄金の矢、副リーダーのシグリッドだ」
存じ上げております。
「ええと、リーダーのアストアさん? はまだ具合が?」
「ああ、申し訳ないが今はまだ無理だ」
完全無表情のシグリッドさん。何を考えてるのか不明だ。この短い間にいろんなことが起きたからね。立場は明らかにしておこう。
「いやー、すんませんねうちのベステルタが。でも、僕を庇ってやったことなので。ぜんぶ僕が悪いっす。なんか不用意に近づいちゃってごめんなさい。貴方がたに敵意はないです」
深々と頭を下げるとシグリッドさんは明らかにたじろいで、チラチラとベステルタの方を見た。
「あっ、ベステルタがおっかないか。申し訳ないです気が利かなくて。でもおっかないところも可愛いんですけどね、ウヘヘ」
「……そうか」
『べすたーん、ごめんよ。相手さんが怖がってる? みたいだからちょっと離れておいてくれる?』
『ええ。どうせ話聞いても分からないしね』
するとベステルタは『ギンッ!』と野獣の眼光をシグリッドさんに飛ばす。彼女の顔色がさらに白くなって、豊満な胸を抑え、はあはあと息を荒げ始めた。はあはあする美女は興奮するな。
「大丈夫ですか? ポーション飲みます?」
「い、いや。それには及ばない。お連れの冒険者殿の魔力が強くて酔ってしまったんだ」
「え、魔力は抑えてると思うんですけど」
「ある程度研鑽を積んだ魔法使いには分かるんだ。というか、あれで抑えているのか……」
深呼吸をして呼吸を整えるシグリッドさん。落ち着いたかな?
「それじゃ話を戻しますね。僕たちの間には不幸な行き違いがあったようで。経緯をご説明します……」
僕は今回のあらましを話していった。
六層で変なアイテムを見つけたこと。十層の冒険者に訊いたら魔法触媒かもしれないこと。近くに魔法使いを擁するパーティがいるから訊いたらどうか、と提案されたこと。
「その冒険者から聞かなかったか? 黄金の矢は男嫌いだと」
「聞きました聞きました。ただまあ、実際話すまでよく分からないし、噂が先行しているだけかなって。えへへ」
「……何を考えている?」
「え、いや、その」
マジで何も考えていません。
「フン、まあいい。言う訳もないか」
「なんかすんませんね」
「時に貴殿は……アレか?」
「……アレとは?」
「……フン」
アレってなんやろ。『あなたは紳士的ですね』って意味かな。だとしたら嬉しいなあ。
「まあ、そこまでは分かった。問題なのはどうやって近付いたか、だ。我々は人避けの結界を張っていた。貴殿はどうやってそれを潜り抜けてきたのか」
「ええっと、それは」
「秘術ゆえ話したくないのも分かる。しかし概要だけでも話して欲しい。こちらとしても」
「あ、ぜんぜん話しますよ。あれはまあ特殊な霧魔法みたいなもんです。難易度が高くて練習してたんですよね。そしたらうまいこと発動しちゃったようで、偶然黄金の矢さんたちの結界を抜けちゃったようです」
「……ということは偶然だと? そんな話信じると思うか?」
「えっ、えっ。事実なんですけども……。どうすりゃいいんすか」
「ふむ……。では再度発動することは可能か?」
「いやあ、ちょっとキツイっす。やってみて分かったんすけど、あれ精神力をけっこう消耗するんですよね。やったあとすんごい気分が落ち込むんすよ」
「魔道具の認識阻害を貫通するほどの魔法だ。当然だな。であれば、貴殿の霧魔法を見せてもらえないか。なに、基礎的なものでいい」
「あ、それならいいですよ。『濃霧』」
もうすっかり発動することに慣れた濃霧を発動する。
「……これが『濃霧』か」
シグリッドさんは濃霧のもわもわをガン見して何やらブツブツ呟いていた。その間僕は、彼女の寄せられた谷間をガン見して気を紛らわせていた。はあ、ちょっと前のことなのにもう懐かしいよ。しばらくはオカズに困らないな。もともと困ってないけど。
「……独特な魔法だ。霧魔法でありながら、ところどころ異なる点がある。それに破詠唱でこの精度、強度か……」
「あのー、破詠唱って?」
「貴殿、それも知らずに使っていたのか?」
呆れたようにシグリッドさんが言った。あー、その冷たい目、善きです。シュレアを彷彿とさせるな。あーシュレアに会いたくなってきた。
「うん、まあ、そうです、えへへ」
「その気持ち悪い顔はやめてくれないか。不快な気分になる」
「せめて気持ち悪い笑い方って言ってくれませんか?」
「……訂正しよう。その気持ち悪い笑い方をやめてほしい」
「はい」
「……破詠唱というのは詠唱を用いない魔法のことだ。一般的に魔法とは詠唱を用い、術式を安定させる。ここまでは知っているだろう?」
「いいえ?」
「……お前はいったいどこから来たんだ?」
わァ……ァ。二人称が貴殿からお前呼びになった。これってつまり、仲良くなった……ってコト!?
「ちょっと諸事情あって話せませんが、とぉーいところから来ました。そういえばシグリッドさんが呪文を唱える前に言っていたユラユラー? みたいななのも呪文なんです?」
「あれは起動始句だ。呪文を安定させるための呪文で、全員が使えるわけじゃない」
「すごい! 僕にも教えてください!」
「断る」
すげない態度だ。君の胃がタプタプしているのは僕由来だというのに。
「うへえ、じゃあこのアイテムだけでも見てくれません? そもそもこれが発端だったわけだし」
僕は鞄からキモいキョンのキモい瞳を取り出してシグリッドさんに見せた。
「ふーむ、これは。なるほど……」
彼女は手袋をはめてそれを受け取り、杖でチョンチョンつついたりしながら観察する。
「分かった。これは《グレートキョンの白瞳》だな」
グレート……キョン……だと?
「それはいったいどういう」
「グレートキョンはこの先にいる十層のボスだ。やつが稀に落とす魔法触媒だな。ほとんどドロップすることはないため、稀少な素材として価値が高い。触媒としての効果も悪くない。低級素材ながら、中級素材に匹敵する品質だ」
「へー、どうやって使うんですか?」
「一概には言えんが、特殊な加工を施し、杖に塗布したり体内に取り入れたりする」
体内に! じゃあ僕の種巣汁が触媒になればワンチャン合法的に世の中のお姉様方にごっくんしてもらえるってことか。竿が熱くなるな。ハメルク、サオルク、伸びやかに。
「手に入れた時、何か変わったことをしなかったか? おそらくこの素材であれば通常ドロップはすまい」
「あー……なんか冒険者が死にまくっていたデストラップを踏み抜いて、最後まで出てきた魔獣倒してたら宝箱出たんですよね」
「それだな。迷宮にはたまにそういった『ギミックトレジャー』がある。条件は不明だが、満たすとレアな素材や魔道具を手に入れられる。低階層も例外じゃない」
ほお! それはいいこと聞いたな。やっぱり探索は大事だな。うーん、十一層からはもっとくまなく調べてみようかな。
「ありございます。じゃあそれはお礼にあげますね。僕は使いませんので」
「いいのか? 中位の魔力触媒は稀少だぞ? 魔法を使うんだろう?」
「いいっすよ。お近づきの印ということで」
「……お近づきにはなりたくないのでいらん」
徹底してるなあ。しゃーないか。
「あー、じゃいいっすよ。僕が勝手にあげたってことで」
「であれば、受け取っておこう」
シグリッドさんはちょっと嬉しそうな顔で白瞳を懐にしまった。
「ちなみに黄金の矢はこれからどうするんですか?」
「タネズ・ケイ、お前に関係あるか?」
「いやー、またどっかでばったり良くない出会い方しないようにしたいなーって思うんだけど、どうです?」
「……我々はE級の壁を突破するべく、三十層に挑戦するつもりだ」
三十層! そりゃすごい。
「おおー、それはまた。頑張ってくださいね」
「しかし、それにも暗雲が立ちこめている。十層程度でずいぶん体力と資源を消耗してしまったしな」
ジロリと睨んでくるシグリッドさん。それはまあ、ほんとにすんません。
「まあ我々も冒険者だ。迷宮で起きたことは全て自己責任だと受け入れている。しかしヴェクスが破損したのは厳しい」
「ヴェクスっていうと……」
「別に隠しているわけではないが、我々のパーティメンバーであり、魔導人形でもある」
あー、やっぱそうなのね。魔導人形かあ。パンツ履いているのかな。
「修理はできないんですか?」
「修理は必要ない。時間さえ経てば自動修復機能で勝手に直るからな」
すっげえ、リジェネ搭載のタンクか。黄金の矢みたいな後方支援特化のパーティには無くてはならない存在だね。
「おお、それはよかった」
「ただ修復には質の高い魔石が必要だ。少なくともF級以上の魔石がな。我々も余分に持ってきてはいるが、点検したところ破損箇所も多かった。手持ちで足りるか不安なところだ」
あ……これ、せびられてますわ。なんかジト目で要求してくる感じがシュレアと似てる。僕が野菜料理の知識をほのめかした時に『はよ教えんかい』と無言の圧を放たれた時と同じだ。
しょうがないにゃあ。
フレイムベア先輩のは……さすがにやばいよな。ダンプボアもだめだ。となるともっと下のダイオーク……ダークエイプあたりでいっか。
「じゃあこの魔石をどうぞ使ってくださいな」
「……は? なんだ、この魔石は」
ゴロゴロと取り出したいくつかの魔石を見て彼女は目を丸く見開いた。
「ダークエイプの魔石ですよ。品質は悪くないかと」
「だ、ダークエイプ、か。品質は問題なさそうだな」
「あ、ついでに素材もあげましょうか? 余ってるんで」
「……そ、素材丸ごとだと!? ダークエイプの素体を丸ごと撮れる場所など、S級でも手を焼く人外魔鏡しかないんだぞ! 魔法触媒に使える部位も多いし、なかなか手に入らないんだ! というかお前、どこから出した?」
ここで初めてシグリッドさんは声を荒げた。頬も紅潮していてエロい。
「まあ、いろいろ伝手とか手段がありまして。で、どうしますか? いります?」
「……無論、頂こうか」
「おおっと、ちょいまち」
「おい! なぜ素材を引っ込める!」
おほほ、ちょいオコのシグリッドさん可愛いな。けっこうからかい甲斐がある。
「さすがにダークエイプの素体丸ごとを無料であげるわけにはいかないんで、条件があります」
ほんとはいくらでもあげてもいいんだけど、そしたらATM扱いされちゃうしね。いや、美女二人のATMなら役得か?
「……ふぅ、なんだ。言ってみろ。金なら出す」
「いや、お金はイイんで、今日のことは水に流してくれませんか? できれば黄金の矢さんとは仲良くしていきたいんですよね~」
あの認識阻害の背徳的悦楽を味わってしまった以上、彼女たちとの縁は何が何でも繋いでおきたかった。あと単純に有望な冒険者の伝手は持っておきたいし。
「……私の一存では決めかねるな」
「いえ、構わないわシグリッド」
するとそこへ着替えたアストアさんがやってきた。
ベステルタから聞いたのだが、なんとアストアさんはベステル覇気によっておしっこ漏らして泣いて土下座し、ベステル頬舐め脅しによって白目剥いてうんち漏らして気絶したらしい。なにそれ、めっちゃ見たかった。
でも今はそんなことはなかったように取り澄まして凛とした表情をたたえている。うーん、叡智です。
「アストア、もういいのか?」
「ええ、大丈夫。見苦しいところを見せたわね」
颯爽とした雰囲気と白い歯に豊かな金髪、快活な表情と凛々しい立ち姿。
黄金の矢のリーダー、アストア。
うわー、こうしてこっちを認識された上で相対してみると、人として格が違うことを思い知らされるな。カリスマっていうか、付き従いたくなるオーラがある。そんな人の胃の中タプタプにして、下の風を直嗅ぎしてしまったかと思うと、興奮でふっくらしてくる。
ただやっぱり、心の傷と男嫌いのせいか僕を見る目は厳しい。内心隠しきれないであろう嫌悪感も見て取れる。それでもまあ、こうして話し合いの場に出てきたんだし、よしとしよう。
「亜人の星のタネズ・ケイ。私たちの間には不幸な行き違いがあったようです。貴方からの歩み寄りは願ってもないものです」
そう言って手を差し出してくる。お、もっとつっけんどんにされるかと思ったけど、さすがにリーダーだけあって、そこら辺は抑え込めるようだ。
でも、手袋をしているな。やっぱ男肌とは直に触れ合いたくないのかな。これはあれか、弓掛ってやつかな。お手々をペロペロしたかったが仕方あるまい。
「いえ、こちらこそ。そう言ってもらえてありがたいです。どうぞよろしく」
「……っ。ええ、よろしく」
その手をなるべくねっちょりと握り返す。一瞬顔が引きつってビクっとしたがすぐに元の顔に戻る。
ちなみに隠しているつもりなのかもしれないが、終始嫌そうな感じが顔に出ており、『生理的に無理!』と言われているようで興奮する。そういうプレイだね。
「いえいえ。じゃあこれが素材です。どうぞ」
「……どうもありがとう」
「まだ在庫あるんですけどいります?」
「……いいのか?」
「いいっすよ。ヴェクスさんに役立ててください」
「ありがとう。遠慮なく頂きます……って、その鞄もしかして」
「魔法の鞄っすよ。たくさん入って便利なんですよね~」
「べ、便利って……」
なんか絶句してる二人をよそにダークエイプを丸ごと三体出してあげた。久しぶりに見たけどほんまこいつら腹立つ顔してるわ。
「ほかにも何か入り用なら出しておきましょうか。替えの下着とか足りてます?」
「……結構よ」
気を利かせたつもりだったんだけど、ものすごく睨みつけられた。おふ、ゾクゾクする。シグリッドさんも極寒の眼差しだ。二人ともそのまま嫌そうな顔してパンツ見せてもらえないかな。
「ね、ねえタネズさん?」
話の行く末を見守っていたルカがおずおずと話しかけてきた。
「うん? なんだい、ルカさん?」
「あ、あのさぁ、タネズさんはどうやってあんなに強くなったの? 魔法も使えて、近距離戦もできて…フツーじゃないよ」
「わっ、私も知りたいッス!」
ミントも便乗してきた。この子、仕草が小動物っぽいんだよな。二人とも微妙にビビってるのが可愛い。
「たまたまだよ、ほんとに。僕自身は別にちっとも強くないんだよね。でもあえて言うなら性癖かなあ」
「「はぁ?」」
「え、性癖?」
「性癖っスか?」
「うん。人に理解されない性癖を手放さない。そして、それを受け入れて信じること。これが僕を強くしてくれた」
何いってんだこいつ、という目でアスシグペアは白けた目で見ている。
でも実際これなんだよね、僕の場合。この世界では到底受け入れられない亜人たちとの繁殖ックスをしまくって強くなったんだから。正確に言えば亜人魔法っていう強さを借りられたんだから。
「つ、つまりどういうことっスか?」
「簡単に言うとね、自分の短所は個性であり、それは大きな強みになり得るってことだよ。そのために、自分を信じるのが大事なんだ」
「……そっか、そうだよね。ブレたら、だめだよね」
「な、なるほど! 分かった気がするッス!」
なにやら少し神妙な様子のルカと大袈裟に驚くミント。
「……うん! タネズさん、ありがとう。 ルカ、頑張るよ!」
「お役に立てたならよかったよ、ルカさん」
「ううん、私のことはルカって呼んでいーよ!」
にぱ。きゅん。
「私も、やってみるッス。あ、あの、タネズさんのこと、先輩って呼んでもいいっスか?」
「え、あぁ、いいよ。もちろん」
「あざッス! 私のこともミントって呼んでくださいッス!」
にへらー。きゅん。
「か、かわいい」
なんだこいつら、人懐っこ過ぎんか?
アスペコミュ障ワープア陰キャである僕の耐性を無視してダイレクトアタックしてきやがる。
「えっ、ルカ、かわいい? ほんと?」
「そ、そんな。ミントなんてちんちくりんなんで……照れるッス」
嬉しそうにぴょんぴょん跳ねるルカと、もじもじ俯いてチラチラ見てくるミント。
ああああぁぁぁぁっ!
こんな高校時代を送りたかったぁっ!
「うちの有望株をたぶらかさないでくれるか?」
冷たい瞳のシグリッド。ボルドかよ。
「いやあ、すんませんね。おたくの有望株が僕のすさんだ心には眩しくてね……。ほら、二人とも、鶏飯食べる? できたてホヤホヤだよ」
「えっ、でも迷宮のお弁当なんて……わっ! ほんとだ! いいにおーい!」
「うわぁ! うまそうッス!」
「コラ、二人とも簡単に餌付けされないの」
「えー、でもおいしそうだよ? たくさん動いておなかすいちゃったし……ダメ?」
「うぅ……鶏飯…」
「人からもらった食べ物を簡単に食べてはダメよ。毒が入ってることもあるんだから」
正論ティーーーーー!
ちょっと傷つくけど、しゃーないか。ここらが潮時かな。
「毒なんて入れてないですよ。でも気持ちは分かるんで、鑑定でも毒見でもしてください。僕はもう行くんでその後食べてもらってもいいし、不安なら捨てちゃってください。
この度はご迷惑おかけしました。また何かあったらよろしくお願いします。黄金の矢の益々のご活躍をお祈り申し上げます」
「あ、あぁ」
「あなたそんな言葉遣いもできるのね。まあ仕事上の関係だけど、よろしくね」
ドライなアスシグペア。ま、E級突破頑張ってくれや。
「ケイさん! また会おうね!」
「先輩の言葉胸に刻むっス~!」
「うん、二人とも元気でね。風邪引かないようにね。怪我には気を付けるんだよ」
元気いっぱい素直な娘っ子たち。お小遣いたくさんあげたくなるわあ。
さ、色々あったけどサクッとボス倒して帰ろ帰ろ。
……そう言えばアストアさんの汚パンツそこら辺に落ちてないかな。洗えばまだ使えると思うんだよな。
にしても、この短期間にアストアさんにはアブノーマルな性癖を開発させられてしまったもんだ。
彼女の美貌と、尊厳破壊が相性良すぎるんだよな。
僕一人では決してたどり着かなかった境地だ。圧倒的感謝しなきゃ。嫌われてそうだけど、今後もなるべく黄金の矢のことは気にしておこう。
「おねしゃす」
「うふふ。はい、どうぞ」
慈愛に満ちた雌の顔。その腕に抱かれ、甘やかされている。
「顔埋めてもいい?」
「もちろん、全部ケイのものだからね。遠慮しないで……ほら、ポーションちゃんと飲んで」
「ばぶぅ!」
「慌てて飲んではだめよ」
「んばばぶぶぅ!」
ごくごく。
あぁ……まるでベスミルクを飲んでいるかのようだ……。未来の赤ちゃんが羨ましい。
この前シルビアから渡されていたコスポを哺乳瓶のように持ってゆっくり飲ませてくれる。これ、スポドリみたいな味がするな。それプラス、少しハーブ混ぜた感じ。後味がちょっと苦いけど、汗汁ことアセンブラポーションに比べたら雲泥の差だわ。
ポーションの効果もあって、傷や出血が治まり、具合はみるみるうちに回復していった。まだ試供品だけど、正式販売されたらやばそうだ。
「はー、ベステルタの腕の中、暖かいナリィ……」
「そう? いつまでもこうしていてもいいのよ」
「……まあ、そういう訳にもいかないよね」
気合を入れて立ち上がる。先程目を覚ましたあと、シグリッドさんと言葉を少し交わし、話し合いの場を設けることにしたのだ。
向こうさんは僕とやり合ってた時までは殺気立っていたけど、ベステルタがいろいろとぐっちゃぐちゃにしたおかげで今は落ち着いている。落ち込んでいるともいえる。僕はおちんこでている。
そろそろ向こうの準備も整ったようだ。僕の不注意が発端だし誠意を持って対応しよう……誠意を持って対応ってどうすればいいんだろう。
「改めまして、初めまして。『亜人の星』のタネズ・ケイです」
「……E級パーティ黄金の矢、副リーダーのシグリッドだ」
存じ上げております。
「ええと、リーダーのアストアさん? はまだ具合が?」
「ああ、申し訳ないが今はまだ無理だ」
完全無表情のシグリッドさん。何を考えてるのか不明だ。この短い間にいろんなことが起きたからね。立場は明らかにしておこう。
「いやー、すんませんねうちのベステルタが。でも、僕を庇ってやったことなので。ぜんぶ僕が悪いっす。なんか不用意に近づいちゃってごめんなさい。貴方がたに敵意はないです」
深々と頭を下げるとシグリッドさんは明らかにたじろいで、チラチラとベステルタの方を見た。
「あっ、ベステルタがおっかないか。申し訳ないです気が利かなくて。でもおっかないところも可愛いんですけどね、ウヘヘ」
「……そうか」
『べすたーん、ごめんよ。相手さんが怖がってる? みたいだからちょっと離れておいてくれる?』
『ええ。どうせ話聞いても分からないしね』
するとベステルタは『ギンッ!』と野獣の眼光をシグリッドさんに飛ばす。彼女の顔色がさらに白くなって、豊満な胸を抑え、はあはあと息を荒げ始めた。はあはあする美女は興奮するな。
「大丈夫ですか? ポーション飲みます?」
「い、いや。それには及ばない。お連れの冒険者殿の魔力が強くて酔ってしまったんだ」
「え、魔力は抑えてると思うんですけど」
「ある程度研鑽を積んだ魔法使いには分かるんだ。というか、あれで抑えているのか……」
深呼吸をして呼吸を整えるシグリッドさん。落ち着いたかな?
「それじゃ話を戻しますね。僕たちの間には不幸な行き違いがあったようで。経緯をご説明します……」
僕は今回のあらましを話していった。
六層で変なアイテムを見つけたこと。十層の冒険者に訊いたら魔法触媒かもしれないこと。近くに魔法使いを擁するパーティがいるから訊いたらどうか、と提案されたこと。
「その冒険者から聞かなかったか? 黄金の矢は男嫌いだと」
「聞きました聞きました。ただまあ、実際話すまでよく分からないし、噂が先行しているだけかなって。えへへ」
「……何を考えている?」
「え、いや、その」
マジで何も考えていません。
「フン、まあいい。言う訳もないか」
「なんかすんませんね」
「時に貴殿は……アレか?」
「……アレとは?」
「……フン」
アレってなんやろ。『あなたは紳士的ですね』って意味かな。だとしたら嬉しいなあ。
「まあ、そこまでは分かった。問題なのはどうやって近付いたか、だ。我々は人避けの結界を張っていた。貴殿はどうやってそれを潜り抜けてきたのか」
「ええっと、それは」
「秘術ゆえ話したくないのも分かる。しかし概要だけでも話して欲しい。こちらとしても」
「あ、ぜんぜん話しますよ。あれはまあ特殊な霧魔法みたいなもんです。難易度が高くて練習してたんですよね。そしたらうまいこと発動しちゃったようで、偶然黄金の矢さんたちの結界を抜けちゃったようです」
「……ということは偶然だと? そんな話信じると思うか?」
「えっ、えっ。事実なんですけども……。どうすりゃいいんすか」
「ふむ……。では再度発動することは可能か?」
「いやあ、ちょっとキツイっす。やってみて分かったんすけど、あれ精神力をけっこう消耗するんですよね。やったあとすんごい気分が落ち込むんすよ」
「魔道具の認識阻害を貫通するほどの魔法だ。当然だな。であれば、貴殿の霧魔法を見せてもらえないか。なに、基礎的なものでいい」
「あ、それならいいですよ。『濃霧』」
もうすっかり発動することに慣れた濃霧を発動する。
「……これが『濃霧』か」
シグリッドさんは濃霧のもわもわをガン見して何やらブツブツ呟いていた。その間僕は、彼女の寄せられた谷間をガン見して気を紛らわせていた。はあ、ちょっと前のことなのにもう懐かしいよ。しばらくはオカズに困らないな。もともと困ってないけど。
「……独特な魔法だ。霧魔法でありながら、ところどころ異なる点がある。それに破詠唱でこの精度、強度か……」
「あのー、破詠唱って?」
「貴殿、それも知らずに使っていたのか?」
呆れたようにシグリッドさんが言った。あー、その冷たい目、善きです。シュレアを彷彿とさせるな。あーシュレアに会いたくなってきた。
「うん、まあ、そうです、えへへ」
「その気持ち悪い顔はやめてくれないか。不快な気分になる」
「せめて気持ち悪い笑い方って言ってくれませんか?」
「……訂正しよう。その気持ち悪い笑い方をやめてほしい」
「はい」
「……破詠唱というのは詠唱を用いない魔法のことだ。一般的に魔法とは詠唱を用い、術式を安定させる。ここまでは知っているだろう?」
「いいえ?」
「……お前はいったいどこから来たんだ?」
わァ……ァ。二人称が貴殿からお前呼びになった。これってつまり、仲良くなった……ってコト!?
「ちょっと諸事情あって話せませんが、とぉーいところから来ました。そういえばシグリッドさんが呪文を唱える前に言っていたユラユラー? みたいななのも呪文なんです?」
「あれは起動始句だ。呪文を安定させるための呪文で、全員が使えるわけじゃない」
「すごい! 僕にも教えてください!」
「断る」
すげない態度だ。君の胃がタプタプしているのは僕由来だというのに。
「うへえ、じゃあこのアイテムだけでも見てくれません? そもそもこれが発端だったわけだし」
僕は鞄からキモいキョンのキモい瞳を取り出してシグリッドさんに見せた。
「ふーむ、これは。なるほど……」
彼女は手袋をはめてそれを受け取り、杖でチョンチョンつついたりしながら観察する。
「分かった。これは《グレートキョンの白瞳》だな」
グレート……キョン……だと?
「それはいったいどういう」
「グレートキョンはこの先にいる十層のボスだ。やつが稀に落とす魔法触媒だな。ほとんどドロップすることはないため、稀少な素材として価値が高い。触媒としての効果も悪くない。低級素材ながら、中級素材に匹敵する品質だ」
「へー、どうやって使うんですか?」
「一概には言えんが、特殊な加工を施し、杖に塗布したり体内に取り入れたりする」
体内に! じゃあ僕の種巣汁が触媒になればワンチャン合法的に世の中のお姉様方にごっくんしてもらえるってことか。竿が熱くなるな。ハメルク、サオルク、伸びやかに。
「手に入れた時、何か変わったことをしなかったか? おそらくこの素材であれば通常ドロップはすまい」
「あー……なんか冒険者が死にまくっていたデストラップを踏み抜いて、最後まで出てきた魔獣倒してたら宝箱出たんですよね」
「それだな。迷宮にはたまにそういった『ギミックトレジャー』がある。条件は不明だが、満たすとレアな素材や魔道具を手に入れられる。低階層も例外じゃない」
ほお! それはいいこと聞いたな。やっぱり探索は大事だな。うーん、十一層からはもっとくまなく調べてみようかな。
「ありございます。じゃあそれはお礼にあげますね。僕は使いませんので」
「いいのか? 中位の魔力触媒は稀少だぞ? 魔法を使うんだろう?」
「いいっすよ。お近づきの印ということで」
「……お近づきにはなりたくないのでいらん」
徹底してるなあ。しゃーないか。
「あー、じゃいいっすよ。僕が勝手にあげたってことで」
「であれば、受け取っておこう」
シグリッドさんはちょっと嬉しそうな顔で白瞳を懐にしまった。
「ちなみに黄金の矢はこれからどうするんですか?」
「タネズ・ケイ、お前に関係あるか?」
「いやー、またどっかでばったり良くない出会い方しないようにしたいなーって思うんだけど、どうです?」
「……我々はE級の壁を突破するべく、三十層に挑戦するつもりだ」
三十層! そりゃすごい。
「おおー、それはまた。頑張ってくださいね」
「しかし、それにも暗雲が立ちこめている。十層程度でずいぶん体力と資源を消耗してしまったしな」
ジロリと睨んでくるシグリッドさん。それはまあ、ほんとにすんません。
「まあ我々も冒険者だ。迷宮で起きたことは全て自己責任だと受け入れている。しかしヴェクスが破損したのは厳しい」
「ヴェクスっていうと……」
「別に隠しているわけではないが、我々のパーティメンバーであり、魔導人形でもある」
あー、やっぱそうなのね。魔導人形かあ。パンツ履いているのかな。
「修理はできないんですか?」
「修理は必要ない。時間さえ経てば自動修復機能で勝手に直るからな」
すっげえ、リジェネ搭載のタンクか。黄金の矢みたいな後方支援特化のパーティには無くてはならない存在だね。
「おお、それはよかった」
「ただ修復には質の高い魔石が必要だ。少なくともF級以上の魔石がな。我々も余分に持ってきてはいるが、点検したところ破損箇所も多かった。手持ちで足りるか不安なところだ」
あ……これ、せびられてますわ。なんかジト目で要求してくる感じがシュレアと似てる。僕が野菜料理の知識をほのめかした時に『はよ教えんかい』と無言の圧を放たれた時と同じだ。
しょうがないにゃあ。
フレイムベア先輩のは……さすがにやばいよな。ダンプボアもだめだ。となるともっと下のダイオーク……ダークエイプあたりでいっか。
「じゃあこの魔石をどうぞ使ってくださいな」
「……は? なんだ、この魔石は」
ゴロゴロと取り出したいくつかの魔石を見て彼女は目を丸く見開いた。
「ダークエイプの魔石ですよ。品質は悪くないかと」
「だ、ダークエイプ、か。品質は問題なさそうだな」
「あ、ついでに素材もあげましょうか? 余ってるんで」
「……そ、素材丸ごとだと!? ダークエイプの素体を丸ごと撮れる場所など、S級でも手を焼く人外魔鏡しかないんだぞ! 魔法触媒に使える部位も多いし、なかなか手に入らないんだ! というかお前、どこから出した?」
ここで初めてシグリッドさんは声を荒げた。頬も紅潮していてエロい。
「まあ、いろいろ伝手とか手段がありまして。で、どうしますか? いります?」
「……無論、頂こうか」
「おおっと、ちょいまち」
「おい! なぜ素材を引っ込める!」
おほほ、ちょいオコのシグリッドさん可愛いな。けっこうからかい甲斐がある。
「さすがにダークエイプの素体丸ごとを無料であげるわけにはいかないんで、条件があります」
ほんとはいくらでもあげてもいいんだけど、そしたらATM扱いされちゃうしね。いや、美女二人のATMなら役得か?
「……ふぅ、なんだ。言ってみろ。金なら出す」
「いや、お金はイイんで、今日のことは水に流してくれませんか? できれば黄金の矢さんとは仲良くしていきたいんですよね~」
あの認識阻害の背徳的悦楽を味わってしまった以上、彼女たちとの縁は何が何でも繋いでおきたかった。あと単純に有望な冒険者の伝手は持っておきたいし。
「……私の一存では決めかねるな」
「いえ、構わないわシグリッド」
するとそこへ着替えたアストアさんがやってきた。
ベステルタから聞いたのだが、なんとアストアさんはベステル覇気によっておしっこ漏らして泣いて土下座し、ベステル頬舐め脅しによって白目剥いてうんち漏らして気絶したらしい。なにそれ、めっちゃ見たかった。
でも今はそんなことはなかったように取り澄まして凛とした表情をたたえている。うーん、叡智です。
「アストア、もういいのか?」
「ええ、大丈夫。見苦しいところを見せたわね」
颯爽とした雰囲気と白い歯に豊かな金髪、快活な表情と凛々しい立ち姿。
黄金の矢のリーダー、アストア。
うわー、こうしてこっちを認識された上で相対してみると、人として格が違うことを思い知らされるな。カリスマっていうか、付き従いたくなるオーラがある。そんな人の胃の中タプタプにして、下の風を直嗅ぎしてしまったかと思うと、興奮でふっくらしてくる。
ただやっぱり、心の傷と男嫌いのせいか僕を見る目は厳しい。内心隠しきれないであろう嫌悪感も見て取れる。それでもまあ、こうして話し合いの場に出てきたんだし、よしとしよう。
「亜人の星のタネズ・ケイ。私たちの間には不幸な行き違いがあったようです。貴方からの歩み寄りは願ってもないものです」
そう言って手を差し出してくる。お、もっとつっけんどんにされるかと思ったけど、さすがにリーダーだけあって、そこら辺は抑え込めるようだ。
でも、手袋をしているな。やっぱ男肌とは直に触れ合いたくないのかな。これはあれか、弓掛ってやつかな。お手々をペロペロしたかったが仕方あるまい。
「いえ、こちらこそ。そう言ってもらえてありがたいです。どうぞよろしく」
「……っ。ええ、よろしく」
その手をなるべくねっちょりと握り返す。一瞬顔が引きつってビクっとしたがすぐに元の顔に戻る。
ちなみに隠しているつもりなのかもしれないが、終始嫌そうな感じが顔に出ており、『生理的に無理!』と言われているようで興奮する。そういうプレイだね。
「いえいえ。じゃあこれが素材です。どうぞ」
「……どうもありがとう」
「まだ在庫あるんですけどいります?」
「……いいのか?」
「いいっすよ。ヴェクスさんに役立ててください」
「ありがとう。遠慮なく頂きます……って、その鞄もしかして」
「魔法の鞄っすよ。たくさん入って便利なんですよね~」
「べ、便利って……」
なんか絶句してる二人をよそにダークエイプを丸ごと三体出してあげた。久しぶりに見たけどほんまこいつら腹立つ顔してるわ。
「ほかにも何か入り用なら出しておきましょうか。替えの下着とか足りてます?」
「……結構よ」
気を利かせたつもりだったんだけど、ものすごく睨みつけられた。おふ、ゾクゾクする。シグリッドさんも極寒の眼差しだ。二人ともそのまま嫌そうな顔してパンツ見せてもらえないかな。
「ね、ねえタネズさん?」
話の行く末を見守っていたルカがおずおずと話しかけてきた。
「うん? なんだい、ルカさん?」
「あ、あのさぁ、タネズさんはどうやってあんなに強くなったの? 魔法も使えて、近距離戦もできて…フツーじゃないよ」
「わっ、私も知りたいッス!」
ミントも便乗してきた。この子、仕草が小動物っぽいんだよな。二人とも微妙にビビってるのが可愛い。
「たまたまだよ、ほんとに。僕自身は別にちっとも強くないんだよね。でもあえて言うなら性癖かなあ」
「「はぁ?」」
「え、性癖?」
「性癖っスか?」
「うん。人に理解されない性癖を手放さない。そして、それを受け入れて信じること。これが僕を強くしてくれた」
何いってんだこいつ、という目でアスシグペアは白けた目で見ている。
でも実際これなんだよね、僕の場合。この世界では到底受け入れられない亜人たちとの繁殖ックスをしまくって強くなったんだから。正確に言えば亜人魔法っていう強さを借りられたんだから。
「つ、つまりどういうことっスか?」
「簡単に言うとね、自分の短所は個性であり、それは大きな強みになり得るってことだよ。そのために、自分を信じるのが大事なんだ」
「……そっか、そうだよね。ブレたら、だめだよね」
「な、なるほど! 分かった気がするッス!」
なにやら少し神妙な様子のルカと大袈裟に驚くミント。
「……うん! タネズさん、ありがとう。 ルカ、頑張るよ!」
「お役に立てたならよかったよ、ルカさん」
「ううん、私のことはルカって呼んでいーよ!」
にぱ。きゅん。
「私も、やってみるッス。あ、あの、タネズさんのこと、先輩って呼んでもいいっスか?」
「え、あぁ、いいよ。もちろん」
「あざッス! 私のこともミントって呼んでくださいッス!」
にへらー。きゅん。
「か、かわいい」
なんだこいつら、人懐っこ過ぎんか?
アスペコミュ障ワープア陰キャである僕の耐性を無視してダイレクトアタックしてきやがる。
「えっ、ルカ、かわいい? ほんと?」
「そ、そんな。ミントなんてちんちくりんなんで……照れるッス」
嬉しそうにぴょんぴょん跳ねるルカと、もじもじ俯いてチラチラ見てくるミント。
ああああぁぁぁぁっ!
こんな高校時代を送りたかったぁっ!
「うちの有望株をたぶらかさないでくれるか?」
冷たい瞳のシグリッド。ボルドかよ。
「いやあ、すんませんね。おたくの有望株が僕のすさんだ心には眩しくてね……。ほら、二人とも、鶏飯食べる? できたてホヤホヤだよ」
「えっ、でも迷宮のお弁当なんて……わっ! ほんとだ! いいにおーい!」
「うわぁ! うまそうッス!」
「コラ、二人とも簡単に餌付けされないの」
「えー、でもおいしそうだよ? たくさん動いておなかすいちゃったし……ダメ?」
「うぅ……鶏飯…」
「人からもらった食べ物を簡単に食べてはダメよ。毒が入ってることもあるんだから」
正論ティーーーーー!
ちょっと傷つくけど、しゃーないか。ここらが潮時かな。
「毒なんて入れてないですよ。でも気持ちは分かるんで、鑑定でも毒見でもしてください。僕はもう行くんでその後食べてもらってもいいし、不安なら捨てちゃってください。
この度はご迷惑おかけしました。また何かあったらよろしくお願いします。黄金の矢の益々のご活躍をお祈り申し上げます」
「あ、あぁ」
「あなたそんな言葉遣いもできるのね。まあ仕事上の関係だけど、よろしくね」
ドライなアスシグペア。ま、E級突破頑張ってくれや。
「ケイさん! また会おうね!」
「先輩の言葉胸に刻むっス~!」
「うん、二人とも元気でね。風邪引かないようにね。怪我には気を付けるんだよ」
元気いっぱい素直な娘っ子たち。お小遣いたくさんあげたくなるわあ。
さ、色々あったけどサクッとボス倒して帰ろ帰ろ。
……そう言えばアストアさんの汚パンツそこら辺に落ちてないかな。洗えばまだ使えると思うんだよな。
にしても、この短期間にアストアさんにはアブノーマルな性癖を開発させられてしまったもんだ。
彼女の美貌と、尊厳破壊が相性良すぎるんだよな。
僕一人では決してたどり着かなかった境地だ。圧倒的感謝しなきゃ。嫌われてそうだけど、今後もなるべく黄金の矢のことは気にしておこう。
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