絶死の森で絶滅寸前の人外お姉さんと自由な異世界繁殖生活 転移後は自分のために生きるよ~【R18版】

萩原繁殖

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バステンの提案と、シルビアとの約束

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「旦那、ちょっといいか?」

「ん、バステンどうしたの? 娼館代もう使っちゃったの?」

 ここは女っ気が強くてバステンは度々股間をもっこりさせていたから、以前娼館費用を手渡していたんだよね。

「ちげーよ……だけど、くれるってなら貰うぜ」

「ははは。ま、それは成果を出してからだね。で、どうしたの?」

「まさにその成果に関する話だ」

 バステンに座るよう勧めたが、この男は割と律儀なので立ったまま話し始めた。僕の前に肘をついた。

「オボロ傭兵団だが、そろそろ実戦を積ませたい。スラムの経験こそないがやる気があって、腕っ節も悪くない。そろそろ実戦を積ませる頃合いだ」

「へえ……それで?」

「デイライトから少し離れた集落で盗賊の被害が出てるらしい。村人が助けを求めてきて騒ぎになってる。まだ占拠はされてないみたいだが、時間の問題だ」
 
 あー、やっぱりそういうのあるんだね。どこの世界でも盗賊ってのは減らないな。

「そこで、だ。俺たち“オボロ傭兵団”の名前で、傭兵ギルドに登録して、この任務を請けたいと思ってな」

「傭兵ギルド、ね」

 そういうのもあったんだ。僕はまったく関わり合いがなかったから、行く機会もなかったけど。
 
 バステンは続ける。

「一端の傭兵としてはまだまだだが、実戦で鍛えなきゃ始まらない。才能のあるやつもいる。そういうやつらは一度の戦場で化けることもある。それに、傭兵ギルドに名前を置いておけば、周辺の仕事も拾いやすくなる」

「なるほどね」

 意外と計画的な提案に、内心ちょっとびっくりした。
 さすが元団長。股間をもっこりさせてるだけじゃなかったんや。

「ギルドにはついていかなくて平気?」

 身分証とか大丈夫なんだろうか。

 僕がそう言うと、バステンはニヤッと笑った。

「ああ、大丈夫だ。ジャンゴの旦那から、古巣のギルド登録証は持たせてもらってるし、“アップルキャッツ”はそれなりに知られてたからな。問題なく登録できるはずだ。
 奴隷に落ちたとはいえ、傭兵ギルドってのはな、そういうところ大雑把なんだよ」

 なるほど、確かに“力こそすべて”って世界なら、過去の看板も無駄じゃないんだね。

「わかった。任せるよ。でも、くれぐれも、勝手に死なないように」

「はっ。そりゃ、娼館代を取りっぱぐれるのは惜しいからな」

「……もし、奴隷っていう立場で馬鹿にされたら教えてくれ。ぶっ飛ばしに行くから」

「はーっはっは! 何言ってんだよ、旦那。ションベン臭いガキじゃないんだから、そのくらい手前でケツ拭けるさ」

 と、言いながらバステンは、ちょっとだけ真顔に戻った。

「……旦那。俺たちは今、“あんたの名前”で動いてんだ。
 見られるのは、首輪でも過去でもねえ。“誰に仕えてるか”だよ」

 そんな風に言われると、こっちも背筋が伸びるな。これほどの男が、僕に仕えてくれてるんだ。期待には応えないとな。

「……じゃあ、帰ってきたら、その成果に応じて娼館代、もうちょっと上乗せしようか」

「やっぱ旦那は話が早いな!」

 嬉々として拳を突き上げるバステン。こうやって褒美をちらつかせるとやる気も出るよね。

「それと、これも持っていって」

 僕は袋いっぱいの金貨を渡す。当面の資金だ。

 バステンはその重さに目を丸くする。

「こんなに? いいのか?」

「かまわないさ。いろいろと入り用だろう? 必要と思うものがあったら僕の判断を待たずに買って構わないよ」

「旦那……。奴隷の俺をそんなに信頼してくれるのか? 持ち逃げされるとか思わないのか?」

 持ち逃げ……? そんな事考えてもみなかった。まずジャンゴさんの信用に傷がつくだろうし、バステンはそんなやつじゃないって思い込んでた。

 ……まあ、そういう可能性もあるのか。

「そりゃそうだよ。君は僕よりも経験豊富だし、生活態度みていても信用に足る男だ。頼りにしてるよ」

 そう言うと、バステンは僕をじっと見つめたあと、後ろを向いて手を振った。

「旦那……ありがとうな。あんたの期待に、応えるぜ」

 バステンとの話はそれで終わった。とりあえずこのあとに、ルーナやニステルを連れて、傭兵ギルドに行くらしい。で、依頼を受けたら帰ってきたら団員たちに伝えて、軽いミーティングのあと明日に備えて早めに就寝。明朝出発するそうだ。

 彼らがきちんと強くなってくれれば、リッカリンデンの守りは強固になる。また本格的にコスポ製造には入っていないから、すぐに襲われるってことはないはずだけど、おそらくぶつかることになるのは時間の問題だ。
 デイライト伯爵の約束を取り付け、後ろ盾を得られるようになるまでは、自分たちの身は自分で守る必要がある。まあ、もしかしたら、危惧してるようなことにはならないかもしれないけどね。

ーー

 シルビアが呼んでいる、と生意気奴隷から知らせがあったので執務室に向かう。どうやらアルフィンは別件があるらしく、そのまま行ってしまった。どうやらいろんなところに外回りしてくるらしい。ちょっと心配だが(お尻も)、さすがに大丈夫だと信じたい。

 ただ去り際に口角を釣り上げて耳をはむはむしてくれたあとに、唇を強めに噛むようなキスをしてくれたので、とても満足だ。

 執務室に入り、シルビアの横に腰掛ける。ふわりといい匂いがした。

「あ、ケイ……」

 シルビアは机の上に何枚かの書類を広げながら、ちらちらと僕の顔を伺っていた。
 その仕草も、視線も、いつもよりどこかゆっくりしている気がする。
 ──まるで、余韻を、引きずってるみたいに。

 しかも今日は珍しく、服を着ている。

 普段はパンイチ姿で闊歩するのがデフォルトな彼女だけど、今日は薄手のトップスとあんまり見ないスカート姿。

 ……が、ちゃんと服を着ているのに、逆に目のやり場に困るというのはなんの冗談だろう。

 妙に艶めかしいというか、フェロモン出てない? いや、僕が意識してるからか?

 胸元は緩く、柔らかい谷間の奥にかすかに“ポッチ”が透けている。
 スカートの裾がふと動くたび、青の下着がチラチラと顔を覗かせる。――それも、濃紺の水玉だった。
 そして、つややかに光る唇。ぷるるん、とうっすらリップが塗られているのか、言葉を発するたびに、ひどく意識させられる。

 ……こんなの、“挑発”じゃないっすか。

 「……ねえ、ケイ」

 名前を呼ばれて我に返る。彼女の指が、どこか落ち着かない様子で書類の端をくるくる回していた。それが逆に可愛いと思ってしまった僕は、もう駄目かもしれない。

「昨日の件……じゃなくて。ポーション製造ラインの話。ちょっと、相談したくて」

「うん、どうぞ。昨日の件は……業務に支障が出ちゃうからね。いったん忘れるよ」

「そ、そう……。そうね。業務第一よね」

 顔がわずかに赤くなり、それを誤魔化すように身を乗り出してくる。
 机越しに差し出された手が、ふいに僕の指先に触れた。

「……っ」

 明らかに偶然、のふりをした何かだった。
 けれど、触れたままの時間が長い。目が合っても、離さない。
 僕の心臓が静かに暴れ出す。

「じ、人員の件、なんだけど」

 彼女は、わずかに息を整えて言った。

「スラムから、未亡人とか、孤児とか、生活力が著しく低い人たちを優先して雇い入れたいの。今、スラム側に打診していて、問題なければ明日軽く面接して宿舎に入ってもらうんだけど……問題は食事。私もカリンも、毎日付きっきりってわけにはいかない」

「うん、それはそうだよね。そう言えば製造施設は完成したの?」

 確かドゴンさんが宿舎と一緒に作っていてくれてたんだよね。

「うん。ちょうど昨日、彼から報告を受けたよ。ケイはいなかったけど。すごい設備にしてくれたから見に行ってみなよ。なんでも元締め? のドルガンさんがすごい家を建てるらしいから、そっちの手伝いをしにいくんだって」

 ああ……それは亜人ハウスのことだ。忙しくさせてしまって申し訳ないな。

「ちなみに何人くらい雇うつもり?」

「今のところ三十人かな。たぶん、徐々に増えていくはずよ」

 わお。それは大所帯になっていくな。 

「だから、料理できる人を雇いたいの。できれば数人雇えれば……って考えてるんだけど、どう思う?」

「ちなみにスラムで料理できる人はいないの?」

「それも考えたんだけど、難しいみたい。もちろん、簡単な調理はできるけれど何十人ものご飯を作った経験はないし、料理のレパートリーも少ないから、栄養的にも偏っちゃいそうなの」

「……ふむ」

 今度こそ、彼女の指がすっと引かれた。
 でも、そこに残ったリップの艶のようなぬくもりだけが、やけに長く心に張りついていた。

 僕は少し考えたあと、椅子の背にもたれて息を吐いた。

「……うん。じゃあ、そういう奴隷を探してくるよ。今後のことを考えたら数人欲しいしね。このあと、ジャンゴさんのところ行ってくるよ」

 なんかいっつもジャンゴさんのところ行ってるな僕は。

「ほんと? 助かるな」

 シルビアがふわっと笑った。その口元には、さっきと同じ、艶やかな光。
 ちろっと、舌がのぞいて唇を舐めた。
 シルビアのくせに、めちゃくちゃ女を感じさせてくるんだが。
 ……やっぱり、塗ってるよなあ。リップ。くっそ、意識してまう。

「……うー」

 彼女はそのあと、少し悩んだ様子で可愛らしくうなったあと、すっと身を乗り出してきた。

 手が自然に僕の膝へと伸び、書類を取るような動き――のついでに、わざと触れたかのように指が僕の腿に軽く滑る。

「ね、ねえ、ケイ」

「な、なに?」

「……やっぱり、昨日の件は、ちゃんと覚えてていいと思うの」

 言葉とは裏腹に、視線は書類に落ちていて、顔が少しだけ赤い。
 でも、指は離れない。むしろ、少し強くなっている気がする。じんわりとしっとりした熱が僕の腿に沈んでいく。

「そ、そうなの」

「うん、あのね……ううん、いい。やっぱ、なんでもない」

 顔を真っ赤にして引っ込めようとした手を、僕は握って引き留める。

「あうぅ」

「……言いかけてやめるのが一番ずるいと思うよ、シルビア」

 僕がそう言うと、彼女は一瞬目を伏せた。
 そして、小さく肩を揺らしながら、机の下からそっと足を伸ばしてきた。
 僕のすねに軽く触れる――ほんの、挨拶のような、でも意図を含んだ一蹴り。

「……っ、ばか」

 ぽつりと呟く声に、照れと苛立ちと、何かを押し殺した感情が混じっていた。

「……昨日私がアルフィンに言い負かされたときにさ、落ち込んでた私を励まして、ハッパかけてくれたでしょ? それにやり方はちょっと乱暴だったけど、実際にアルフィンへの苦手意識も無くしてくれた」

 あーうー、となんかシルビアは悶えながら話を続ける。

「ケイって、いつも、私を助けてくれるなって思ったの。そ、それが言いたかっただけ!」

 勢いよく言い切って、沈黙。

 そして、彼女はこっちが恥ずかしくなるくらい顔を紅潮させ、目を泳がせて言った。

「……その、もし、ね? ……わたし、基本的に、部屋にいると思うから。あっ、別に、用事があるわけじゃないの。ただ、いるだけで……」

 いるだけって、なんだよ。

 ちょっと笑いそうになったけど、ここで笑ったらダメだ。これはたぶん……フラグが立ちつつある。

 シルビアの口元がふるふると動いている。リップの艶が灯ったまま、言葉を探していた。

「──で、でも! もしケイが暇だったら、たまに顔、出してくれてもいいかな、なんて……。ちょっと話とか、あればね? いろいろ、ね?」

 視線は合わせない。書類の端をいじりながら、ひとつひとつの言葉を慎重に落としていく。
 だけど、どこか、焦ったように言い直す。

「いや、別に無理しろってことじゃないし……! そもそも仕事あるのは分かってるし、私も、そう、別に何か……その、したいわけじゃ──」

「したいわけじゃ?」

 そこで言葉が止まる。
 頬は真っ赤で、目だけがこちらを向いた。

「……はあ、うそ。したいわよ、昨日みたいなこと。また。よ、よかったんだもん……ダメ?」

 息が止まりそうになった。
 ビジネスパートナーが、フランクな付き合いの女友達が、ほんの少し、素直になった。
 それだけで、世界がぐらつく。

 立ち上がったシルビアのスカートが揺れ、青い水玉の下着が、意図したかのようにちらりと覗いた。
 肩越しに投げられた言葉は、さっきよりもずっと柔らかく、優しかった。

「……人員の件、よろしくね。あと、いろいろ話したくなったら、部屋に来て──もてなしてあげるから。ほんの少しだけ、期待してる」

 そう言って、シルビアは僕の横を通り過ぎるとき、わざとらしく書類を落とした。
 しゃがみ込み、拾い上げる――その一瞬、彼女の手が、僕の太ももにそっと触れた。
 さっきよりも内側に。より繊細な、熱が籠もるところに。
 柔らかく、ためらいがちに。でも、確かに“触れていた”。

 そして、何もなかったかのように立ち上がり、扉へと向かう。

「シルビア」

「ん、なあに?」

「いつごろ、部屋にいることが多いのかな。昼? 夜?」

「……よる」

 ぱたん、と閉まる音だけが残った。
 その手のぬくもりだけが、いつまでも消えずに、僕の皮膚に残っていた。

 はあ、ほんと、仕事にならないよ。
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