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決勝戦第七試合
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武舞台に上ったカザミネを見た相手は、目を手で覆っていた。何かあったのだろうか?
「うわぁ、よりによってブルーカラーで個人的に一番対戦したくない人物がここで来るのかよ……あの大太刀によって首を刎ねられた連中の仲間入りはしたくないなぁ」
なんて言葉を口にしていた。どうやら相手にとっては、カザミネが一番当たりたくない対戦相手だったようだ。もちろんその言葉はブラフの可能性もあるのだが。それはさておき、相手はゆっくりと背中から武器を抜き、構えを取った。へえ、薙刀かぁ。ゲーム的には槍の分類に含まれているのだろうが。
「あら? 男性の方が薙刀とは珍しいですわね?」
相手を見て、エリザが感想を口にしたが──それはちょっと違うんだよな。
「エリザ、薙刀が女性の使う武器って感覚になったのは江戸時代辺りからだぞ、確か。もともとは男性の、僧兵とかが使う武器だ。有名な所では武蔵坊弁慶なんかが上げられるな。カナさんは道場の経験者だからわかるだろうけど、薙刀ってのは優秀な武器なんだよ。長い間合いで相手を切り伏せられる上に独特の技も多い。流派によっては薙刀専用の受け型を持っているとも聞いた事がある」
自分は知っている知識をエリザに向けて伝えた。実際薙刀の立ち回りは独特で、知っていないとその間合いの広さからバッサリとやられかねない。
「アースさんはご存じのようですね。薙刀はその間合いの広さに加えて、使い手によっては相手の攻撃を受け流す防御にも秀でている優秀な武器なのです。まさに攻防一体、使い手の技量にもよりますが攻撃も防御も行えます。だからこそ、この世界でもリーチの短い武器ではかなりの苦戦を強いられることになったでしょう。カザミネさんがここで出たことは運が向いているというべきでしょう」
カナさんからも説明が入った。ならば確認しておきたいことがある。
「カナさんの所では、薙刀対策は?」「むろん、学びますわ。薙刀の恐ろしさは身に染みておりますから……しかし、その使い手がここで現れるとは思いませんでしたが。その点でもこの組み合わせになったのは幸運だったかもしれません」
カザミネも薙刀についての特性は体に叩き込まれていると見ていいな。ならばあとは信じて応援するだけだ。カザミネも大太刀を構え、相手を見据える。そして試合開始の宣言が行われた。
立ち上がりは実に静かなものとなった。ゆっくりとお互いが間合いを詰めつつ、武器をたまに動かして牽制やフェイントを仕掛ける。まだ両者の間合いは少し遠いが、どちらかが大きく前に出て突き攻撃をすれば相手に届くという距離でもある。もう油断など一切できない状況なのである。
(それに、カザミネの大太刀に負けず劣らずの鋭さを向こうの薙刀も鋭い刃を持っているように見受けられる。向こうも向こうで、一瞬の機会でカザミネの首を刎ねる事は十分に可能だろう。勝負が一瞬で決まる可能性が常にある緊張感のある試合だな)
そもそも薙刀を女性が持つようになった最大の理由は、腕力が劣っていても十分な殺傷力を持っている事であった。時代劇などで興味を持った事でちょっと調べたことがあるのだが、最初は城を守る女性が抵抗するために持つようになったことから始まり、江戸時代ごろには女性の護身用武器として定着したようなのだ。
そんな武器を男性の腕力で振るったら? それは恐ろしい一撃を放つことになる武器になる事は言うまでもない。だからこそ武蔵坊弁慶などを始めとした寺を守っている僧兵が使っていたのだ。しかし、そんな薙刀の使い手がマッスルにいるとは思ってもみなかった。十分に鍛えられた肉体から繰り出される薙刀の一撃は、相手の武器ごと体を一刀両断してもおかしくない。
一方でカザミネの大太刀も今までの実績がある。その刃の錆になったものの数は無数に上るだろう。長い刃が持つ恐るべき殺傷力など、いまさら説明するまでもない。だからこそ、カザミネも相手も慎重だ。互いの武器の威力には常に一撃必殺の言葉が付いて回るのだから。
だからと言ってずっと見合っていられるわけもなく、更に互いが距離を詰めた。直後──カザミネも相手もほぼ同時に突きを放った。その突きの切っ先は互いにぶつかり、相殺が発生する。その相殺がきっかけとなったのか、次々とお互いがお互いに向けて突きを何度も放つ。その突きが一回一回行われるたびにぶつかり合って相殺が何度も発生する事となる。
「お互い、突きの精度が高いな」「あそこまで相殺が連続で発生することはなかなかないんだが……意図的に相殺を発生させて観客を沸かせることを目的としたPvPは除いて、だが」「今のところお互いの双方から放たれるその一撃には差がないようですが、ここからどうなるのかが分かりませんね」
レイジ、ツヴァイ、カナさんが次々とその光景を見て感想を漏らす。確かにここまで連続で相殺が発生するPvPはなかなかない。もっともやっている武舞台の二人にとってはまだまだ小手調べの範疇なんだろうが……この均衡がいつ崩れるか、そこが肝心だ。突きの押し合いに負けて片方が手傷を追ったりしたら、そこから大きく戦いが動くのだろうが。
しかし、双方全く譲らず。そしてお互いが示し合わせたかのように後ろに飛んで間合いを広げた。お互いが無言で息を整えながら相手を見据えつつ武器を構えなおす。またもゆっくりと間合いを詰め──突如カザミネが大きく前へと踏み込んだ。振るわれる大太刀。しかし薙刀使いの相手はそのカザミネの一撃を受け流した。
が、カザミネもそれは予想の範疇としていたのか、受け流されたのにもかかわらず体勢を大きく崩すことは無かった。おそらく大太刀にそこまでの力を入れていなかったのだろう。だからこそ受け流されても体を持っていかれることはなかった。だが、今度は相手が薙刀の柄の部分、石突きによる攻撃が行われる。
これに対してカザミネはこちらも大太刀の柄の部分で対抗、はじき返した。多少カザミネが吹き飛ばされる形にはなったが、ダメージはないだろう。事実カザミネは危なげなく着地して、大太刀を構え直している。この二人の激突は、一回のミスで全てが決まる可能性が常にあるので緊張感がすごい。
その緊張感故か、お互いの顔に汗が浮かんでくる。無理もない、見ている側でも息を飲むのだ。実際に戦っている二人にとって、常に自分の首が相手の獲物で刎ね飛ばされるイメージがついて回るのだ。精神的な疲労、消耗は相当なものだと予想される。その精神状態の中で戦わねばならないのだ、現代日本ではまず要求されない心理状態だろう。
それに、互いの武器が得意とする動きは突きではない。斬撃だ。お互いそれをまだ一度も見せていない──なんてことは武舞台の上にいるお互いが一番良く分かっている事だろう。再びお互いが距離を詰め始めるが、一定の間合いで両者が共に止まった。そして殺気が漂い始める……お互い、相手を切り捨てるつもりで次の一撃を放つつもりだろうか?
突如訪れる静寂、そしてお互いの顔を流れる汗が一滴地面に落ちた──と同時に、両者が前に出て互いの武器を振るう。互いに首ではなく相手の胴体を一刀両断せんとばかりに全力で武器を振るったようだ。が、この一撃も互いの武器に阻まれ、派手な相殺のエフェクトが周囲を激しく照らし出した。
「くっ!?」「ぐうっ!?」
武器をぶつけあった両者は共に苦悶の声を上げながら弾き飛ばされる。だが、今度はすぐさま両者着地後に再び相手に向かって武器を振るい、再び相殺が発生。相殺のエフェクトがスパークを纏ってより派手に輝く。あの一撃がどちらかの体に届けば、間違いなく一撃必殺であるとでも言わんばかりの相殺のエフェクトが激しい。
そこから何度もお互いの体を狙った一撃が振るわれ、その都度相殺。お互いの体に武器が食い込むことなく戦いが継続している。が、プレイヤーたちはそうはいかない。お互いが一撃必殺をぶつけあっている以上精神的な消耗が隠せない。当然ぶつけ合っているとは言っても細かいフェイントも混ぜ込んでいるから単純なぶつかり合いでもない。
両者の呼吸は明確に荒くなっていった。無理もない話だが──普通ならここまで相殺が続かずどちらかの攻撃が決まっているのだから。だが今回は互いの技量が高いが故に均衡が破れない。このような状態で先に一撃を喰らえばもう精神集中を維持する事が出来ないだろうし、下手すればその一撃がそのまま決着の一撃となりうる。
しかし、決着がつくまで戦うほかないのだ。この戦いにダブルノックダウンとして両者負けは存在するが、引き分けは存在しないのだから。だから武舞台の上にいる二人は殺気を放ったまま向かい合っている。カザミネ、苦しいだろうが頑張ってくれ。あの薙刀使いが生き残ったら、相当マズい。
「うわぁ、よりによってブルーカラーで個人的に一番対戦したくない人物がここで来るのかよ……あの大太刀によって首を刎ねられた連中の仲間入りはしたくないなぁ」
なんて言葉を口にしていた。どうやら相手にとっては、カザミネが一番当たりたくない対戦相手だったようだ。もちろんその言葉はブラフの可能性もあるのだが。それはさておき、相手はゆっくりと背中から武器を抜き、構えを取った。へえ、薙刀かぁ。ゲーム的には槍の分類に含まれているのだろうが。
「あら? 男性の方が薙刀とは珍しいですわね?」
相手を見て、エリザが感想を口にしたが──それはちょっと違うんだよな。
「エリザ、薙刀が女性の使う武器って感覚になったのは江戸時代辺りからだぞ、確か。もともとは男性の、僧兵とかが使う武器だ。有名な所では武蔵坊弁慶なんかが上げられるな。カナさんは道場の経験者だからわかるだろうけど、薙刀ってのは優秀な武器なんだよ。長い間合いで相手を切り伏せられる上に独特の技も多い。流派によっては薙刀専用の受け型を持っているとも聞いた事がある」
自分は知っている知識をエリザに向けて伝えた。実際薙刀の立ち回りは独特で、知っていないとその間合いの広さからバッサリとやられかねない。
「アースさんはご存じのようですね。薙刀はその間合いの広さに加えて、使い手によっては相手の攻撃を受け流す防御にも秀でている優秀な武器なのです。まさに攻防一体、使い手の技量にもよりますが攻撃も防御も行えます。だからこそ、この世界でもリーチの短い武器ではかなりの苦戦を強いられることになったでしょう。カザミネさんがここで出たことは運が向いているというべきでしょう」
カナさんからも説明が入った。ならば確認しておきたいことがある。
「カナさんの所では、薙刀対策は?」「むろん、学びますわ。薙刀の恐ろしさは身に染みておりますから……しかし、その使い手がここで現れるとは思いませんでしたが。その点でもこの組み合わせになったのは幸運だったかもしれません」
カザミネも薙刀についての特性は体に叩き込まれていると見ていいな。ならばあとは信じて応援するだけだ。カザミネも大太刀を構え、相手を見据える。そして試合開始の宣言が行われた。
立ち上がりは実に静かなものとなった。ゆっくりとお互いが間合いを詰めつつ、武器をたまに動かして牽制やフェイントを仕掛ける。まだ両者の間合いは少し遠いが、どちらかが大きく前に出て突き攻撃をすれば相手に届くという距離でもある。もう油断など一切できない状況なのである。
(それに、カザミネの大太刀に負けず劣らずの鋭さを向こうの薙刀も鋭い刃を持っているように見受けられる。向こうも向こうで、一瞬の機会でカザミネの首を刎ねる事は十分に可能だろう。勝負が一瞬で決まる可能性が常にある緊張感のある試合だな)
そもそも薙刀を女性が持つようになった最大の理由は、腕力が劣っていても十分な殺傷力を持っている事であった。時代劇などで興味を持った事でちょっと調べたことがあるのだが、最初は城を守る女性が抵抗するために持つようになったことから始まり、江戸時代ごろには女性の護身用武器として定着したようなのだ。
そんな武器を男性の腕力で振るったら? それは恐ろしい一撃を放つことになる武器になる事は言うまでもない。だからこそ武蔵坊弁慶などを始めとした寺を守っている僧兵が使っていたのだ。しかし、そんな薙刀の使い手がマッスルにいるとは思ってもみなかった。十分に鍛えられた肉体から繰り出される薙刀の一撃は、相手の武器ごと体を一刀両断してもおかしくない。
一方でカザミネの大太刀も今までの実績がある。その刃の錆になったものの数は無数に上るだろう。長い刃が持つ恐るべき殺傷力など、いまさら説明するまでもない。だからこそ、カザミネも相手も慎重だ。互いの武器の威力には常に一撃必殺の言葉が付いて回るのだから。
だからと言ってずっと見合っていられるわけもなく、更に互いが距離を詰めた。直後──カザミネも相手もほぼ同時に突きを放った。その突きの切っ先は互いにぶつかり、相殺が発生する。その相殺がきっかけとなったのか、次々とお互いがお互いに向けて突きを何度も放つ。その突きが一回一回行われるたびにぶつかり合って相殺が何度も発生する事となる。
「お互い、突きの精度が高いな」「あそこまで相殺が連続で発生することはなかなかないんだが……意図的に相殺を発生させて観客を沸かせることを目的としたPvPは除いて、だが」「今のところお互いの双方から放たれるその一撃には差がないようですが、ここからどうなるのかが分かりませんね」
レイジ、ツヴァイ、カナさんが次々とその光景を見て感想を漏らす。確かにここまで連続で相殺が発生するPvPはなかなかない。もっともやっている武舞台の二人にとってはまだまだ小手調べの範疇なんだろうが……この均衡がいつ崩れるか、そこが肝心だ。突きの押し合いに負けて片方が手傷を追ったりしたら、そこから大きく戦いが動くのだろうが。
しかし、双方全く譲らず。そしてお互いが示し合わせたかのように後ろに飛んで間合いを広げた。お互いが無言で息を整えながら相手を見据えつつ武器を構えなおす。またもゆっくりと間合いを詰め──突如カザミネが大きく前へと踏み込んだ。振るわれる大太刀。しかし薙刀使いの相手はそのカザミネの一撃を受け流した。
が、カザミネもそれは予想の範疇としていたのか、受け流されたのにもかかわらず体勢を大きく崩すことは無かった。おそらく大太刀にそこまでの力を入れていなかったのだろう。だからこそ受け流されても体を持っていかれることはなかった。だが、今度は相手が薙刀の柄の部分、石突きによる攻撃が行われる。
これに対してカザミネはこちらも大太刀の柄の部分で対抗、はじき返した。多少カザミネが吹き飛ばされる形にはなったが、ダメージはないだろう。事実カザミネは危なげなく着地して、大太刀を構え直している。この二人の激突は、一回のミスで全てが決まる可能性が常にあるので緊張感がすごい。
その緊張感故か、お互いの顔に汗が浮かんでくる。無理もない、見ている側でも息を飲むのだ。実際に戦っている二人にとって、常に自分の首が相手の獲物で刎ね飛ばされるイメージがついて回るのだ。精神的な疲労、消耗は相当なものだと予想される。その精神状態の中で戦わねばならないのだ、現代日本ではまず要求されない心理状態だろう。
それに、互いの武器が得意とする動きは突きではない。斬撃だ。お互いそれをまだ一度も見せていない──なんてことは武舞台の上にいるお互いが一番良く分かっている事だろう。再びお互いが距離を詰め始めるが、一定の間合いで両者が共に止まった。そして殺気が漂い始める……お互い、相手を切り捨てるつもりで次の一撃を放つつもりだろうか?
突如訪れる静寂、そしてお互いの顔を流れる汗が一滴地面に落ちた──と同時に、両者が前に出て互いの武器を振るう。互いに首ではなく相手の胴体を一刀両断せんとばかりに全力で武器を振るったようだ。が、この一撃も互いの武器に阻まれ、派手な相殺のエフェクトが周囲を激しく照らし出した。
「くっ!?」「ぐうっ!?」
武器をぶつけあった両者は共に苦悶の声を上げながら弾き飛ばされる。だが、今度はすぐさま両者着地後に再び相手に向かって武器を振るい、再び相殺が発生。相殺のエフェクトがスパークを纏ってより派手に輝く。あの一撃がどちらかの体に届けば、間違いなく一撃必殺であるとでも言わんばかりの相殺のエフェクトが激しい。
そこから何度もお互いの体を狙った一撃が振るわれ、その都度相殺。お互いの体に武器が食い込むことなく戦いが継続している。が、プレイヤーたちはそうはいかない。お互いが一撃必殺をぶつけあっている以上精神的な消耗が隠せない。当然ぶつけ合っているとは言っても細かいフェイントも混ぜ込んでいるから単純なぶつかり合いでもない。
両者の呼吸は明確に荒くなっていった。無理もない話だが──普通ならここまで相殺が続かずどちらかの攻撃が決まっているのだから。だが今回は互いの技量が高いが故に均衡が破れない。このような状態で先に一撃を喰らえばもう精神集中を維持する事が出来ないだろうし、下手すればその一撃がそのまま決着の一撃となりうる。
しかし、決着がつくまで戦うほかないのだ。この戦いにダブルノックダウンとして両者負けは存在するが、引き分けは存在しないのだから。だから武舞台の上にいる二人は殺気を放ったまま向かい合っている。カザミネ、苦しいだろうが頑張ってくれ。あの薙刀使いが生き残ったら、相当マズい。
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