とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ

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四連戦第二試合決着

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 相手が生み出すナイフの渦や波をひたすら捌きつつ、ひたすら相手の大剣の攻撃を避ける。大剣の攻撃はぎりぎりで避けて、惜しい、あと一歩だったよという感じを演出する。何度も何度もあと一歩で届かない、でももうちょっとで届きそうだという状況は、相手をさらにじらすことに成功しているようだ。

 もはや頭に血が上りすぎて周囲が見えていないのか、もっと波や渦を使って連携すればいいのに当の本人がむしゃらに突撃してくるようになった。おかげで波も渦も置いてけぼり気味になっている。もちろん完全に届かないという訳ではないので注意は常に払っているが、この動きは彼の最終奥義の本来の形ではないはずだ。

(あと少し、かな)

 自分は、大剣を徐々に避けきれなくなってきて盾で受けるしかなくなってきたという感じに見せる動きをする形へと移行した。その感じを出すために盾のアーツを意図的に使っていない。大剣の勢いを小盾では受け切るのはおかしいので、受けた時に押される感じも見せる。不自然にならないように大げさにし過ぎないように動くのが結構難しい。

「いい加減に落ちろっ!」

 次から次へと大剣を振り回す相手。盾とはいえ、攻撃が当たる様になって調子に乗ってきたのか、次々と連撃を放ってくる。そこにさらに渦なども襲ってくるが、大剣を受けた時に合わせて大きく後ろに飛ぶことでその範囲からはちゃんと逃れている。そしてこちらが逃れると相手はますます勢いを増して突撃してくる、という流れを三回繰り返した。

 すると相手の大剣を振る勢いは衰えていないが、攻撃事態に雑さが混じるようになってきているのを感じていた。これはまさに『勝ちを急いでいる』という心理状況だ。相手は攻撃を受けるようになってきた、吹き飛ばされるようになってきた。ならばあと一押しで勝てる──という考えになってきたのが窺える。仕掛けるならば、ここだろう。

 もはや自分が大いに弱ったことを疑わない大剣によるごり押し。確かに大剣は小手先の技なんかその重量と威力で叩き潰せる強さがあるのは事実だ、事実なのだが──逆に言えば、そのパワーと重量故に攻撃の拙さが出ると隙を大いにさらす。それを相手はこの一瞬、忘れたのだろう。まあ、忘れるように仕向けたのは自分なのだが。

 相手が袈裟懸けに自分に大剣を振り下ろしてくる。明確にこれで決着をつけると言わんばかりの勢いだ──が、大剣はその一撃を自分に叩きつける事は叶わず空を切る。自分が回避したのだから当然だ。相手の表情が驚きに代わる、弱っていたはずなのになぜ回避できるとその顔は訴えていた。

 その瞬間、自分はハイドシザーズシールド・真打を起動。仕込まれていたハサミが相手の首へと飛びて──一瞬のうちに切り落とした。宙へとわずかに舞った後、彼の首は武舞台の上へボトリと落ちた。その間に仕込んであるハサミはすでに盾の中へ戻してある。なぜ切られたのか、どんなものが切ったのかを長々と見せて答えを相手に教える理由は無いからね。

『え? あ? ああ!? ぶ、ブルーカラーの勝利です!』

 首を落とされたことを進行役のプレイヤーが認識するまでにやや時間がかかった。彼の目には、大剣の一撃を避けられた相手が動かなくなったと思ったら首がいつの間にか落ちていたという感じに見えたんだろう。なので勝利宣言をこちらに出した、そんなところだろう。勝敗がついて呼吸を落ち着けると、周囲のざわめきが耳に入ってくる。

「え? 何でマッスルの選手の首が落ちた?」「バグ? 何が起きたのか良く分からなかったんだけど」「いやバグじゃない。ブルーカラーのあいつが何かで斬ったんだ。あの盾に何か仕込みがあるんだろう」「暗器の一種か、でも一瞬だったから何が何だか」「スネークソードじゃない事だけは確かだけど……あいつはまた変な武器を作ったのか?」

 なんて感じの会話が交わされている。が、首を斬られた理由が飛び出してくるハサミであると見抜いた人はいない様だ。さて、マッスル側はどうだ? 耳を澄ませてみると──

「馬鹿野郎! お前の最終奥義は無数のナイフと連携してじわじわと追い詰める物だろう? なのになんで本体のお前が一番前に出てるんだよ! あれじゃ台無しだろうが!」「じわじわと落ち着いて攻めれば勝つ事は十分可能だっただろうが、勝ち急いだな? 気持ちは分からんでもないが、あの大剣の最後の一撃は頂けない。誘われていたぞ、あれは」

 ふむ、やっぱり最初に言われているのはこのあたりか。本来の立ち回りではないことは自分から見ても分かるからなぁ。ま、その立ち回りをさせないように誘導したのもまた自分なのだが。相手優位に事を進めなければいけない理由はないからねー。これは戦術であって卑怯でも何でもない事だ。

「うう、その点に関してはその通りだが──教えてほしい事がある。俺は一体何を喰らって首を落とされたんだ?」

 やっぱりそれが気になるよな。ハサミが出ていた時間はごくわずかだが、見破った人はいるのか? 作った親方たちは危険すぎるから(暗殺とかに使われる可能性が高い)この性能での量産はしないと言っていたからなぁ。

「──光が奔ったのは見えた。が、あれは魔法ではないな」「ああ、魔法だったら何かしらの感覚があるがそれが一切なかった。あれは物理攻撃だ」「が、盾についている爪ではないな。あれでは絶対にあの間合いでは届かない」「そもそも振り回していないからな、剣とかじゃない」

 分析を行っているが、見抜かれはしなかったか? まあそれでもこの盾にそういう仕込みがあること自体はバレたから、同じ手は通用しにくくなっただろう。ま、今度はそれを利用して攻めるだけなんだけど。一瞬で首を落とされる危険性があるというだけで、盾をちらつかせれば相手は思い切った踏み込みをしづらくなるだろう。

「ランタン・シールドの亜種か?」「なんだその盾? シールドにランタン? 聞いた事が無いな」「リアルにそういう武器があった。まあ扱いづらいと注意書きもあったが。盾にランタンと剣を仕込んでな、盾を構えた時にランタンの光で目くらましを狙い、下部にある剣で突き刺すことを狙った? 様な盾だ」「つまり、その剣みたいに何かで突き刺した? という訳か」

 ランタンシールド? ふむ、そんな盾があったのか……後で調べてみよう。もっと早く知っていたら、いろいろな新しい盾の参考になったかもしれないが──そんな時間はもうないから調べてどういう盾だったのかを知ってこんなものもあったのか、と楽しむに留まるだろうけど。

「なんにせよ、大剣の間合いの外から首を刎ねられるというのは厄介だ……忘れるなよ」「ああ、これが最後の一人である俺の時に判明しなくてよかったぜ」「その点は感謝しないとな、相手に使わせて情報を引き出したというのは大きい」

 向こうからしてみれば、最後の一人が訳の分からん殺され方で負けたらそりゃ大変だから、情報を引き出した点を評価されるのは当然だな。もっとも、その情報もまた自分の仕込んだ『毒』なのだが。後はその毒が残り二人のマッスルにどこまで浸み込んでくれるか──そこが肝心だ。

「じゃ、行ってくる」「言うまでもないが、あいつは今までの対人戦で戦ってきた連中とは色が違いすぎる。警戒してしすぎるってことは無いぞ」「ああ、そこは痛いほど理解させられた。それに、それで向こうの隠してある手段が品切れになっているという保証はない。最大限の注意を払う事にする」

 上がってきたプレイヤーは、ツヴァイを倒した大盾持ちの相手。盾は予備のを出してきたようで、ツヴァイによって大きく損傷させられた事による防御力低下はない、か。それにここまでゆっくり休めたはずだからHPやMPはほぼ満タンまで回復している事だろう。それに比べてこちらはHPが残り四割あるかないか、MPも半分ぐらいだ。もちろんこれは、回復を受けた上での話だ。それでも、何とかしなきゃいけない。
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