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第三試合、開始
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しばしの休息の後、次の試合が始まった──直後、相手は大盾を構えてシールドバッシュを仕掛けてきた。自分は何とか左に飛びのけて回避した。これで背後が取れると思った直後、なんと相手は180度ターンして再びこちらに向かって突撃してくる。
(あの重量が、完全に慣性を無視してターンするだってぇ!?)
前方に突撃すれば、それ相応の慣性が働く。しかも鎧を着こんだ状態だからなおさら重量があるのだ。にもかかわらず、こちらが回避した直後にそういった慣性などを完全に無視してその場で向きを変えて再び突撃してきたのだ。こんなことを可能にするのはアーツなのだろうが、完全初見故に自分は面食らった。
(しまった、回避が間に合わない!)
驚いたが故に行動が遅れた。仕方なく盾を使って受け流すようにして防御したが軽微なダメージを受けてしまった。普段なら気にも止めないが、今回に限っては試合開始直後からHPが残り四割ぐらいしかないのだ。この微々たるダメージでも結構辛い。更に相手はこちらが回避できなかった事を好機と見たのか、再び慣性を無視したターンを行ってまたしても突撃してくる。
次も、その次も回避が間に合わず盾による受け流しを行ってダメージを抑えるが確実に削られてしまっている。しかも相手と自分では重量の差がありすぎて、受け流しているのに軽く吹き飛ばされるような感じで体の軸を何度も揺さぶられる。更に相手はターンの間隔を速めて、ひたすらシールドバッシュによる突撃タイミングを速めてきていた。
(跳躍で上に逃げる事も許さないつもりか)
自分をひたすら地上で吹き飛ばし続け、すり潰す心づもりなのだろうな。だが、それを可能とするだけの技を相手は持っている。このままでは、相手の狙い通りに何もできないままピンボールの弾の様に弾き飛ばされ続けてボロ雑巾になったところを押しつぶされかねない。
しかし、抜け出すチャンスがない。いきなり最初から相手に主導権を握られてしまったな、今は盾による受け流しで耐えるのが精一杯だ。だが、呼吸は落ち着いてきた。明鏡止水も解除されることなく持続できている。後は何かしらのきっかけがあればこのシールドバッシュの嵐から逃れられる。
(まあ、それを容易く許してくれる相手ではない、か。大盾という重量のある装備をここまで繊細に使って見せるとは……そのうえ重量があるから、どうしてもぶつかればこちらが押される。受け流しているというのにHPも削られ続けて残り三割を切っている。一方でこちらは相手に何も有効打を与えられていない。だが)
こういう動きをしてくるという事は間違いなく、先の戦いで見せたハイドシザーズによる首を斬り落とした事に対する対抗手段であることは間違いない。下手に距離を取れば首を斬られるという事が分かったのなら、盾を構えて刃を通さない様にしながら下手に間合いを保たず激しい出入りを繰り返して間合いを常に変化させればいい、と。
でも、こちらにも相手を一気に押し返せる手段はある。欲を言えば最終戦まで温存しておきたかったが──ここで負けたら意味が無い。だから、使う事を決めた。相手のシールドチャージの嵐に押されながらも、タイミングを計る。タックルしてターン、タックルしてターン。慣性を無視できるターンと重量級が繰り出すシールドバッシュという組み合わせの凶悪さは十分に理解できた。理解したならば、次に行こう。
(彼の動きにはリズムがある。もちろん常に一本調子ではないが、それでもある程度のリズムは常に維持している。それが、弱点となりうる要素だ)
アーツの制限なのかもしれないな。一定のリズムを刻まないと、このターンを生かしたシールドバッシュの嵐が維持できないのだろう。それに気が付かれる前に不意を突いて相手を混乱させて押しつぶすつもりだったのだろうが……こっちにだって今までの旅で得てきた経験がある。最初は確かに面食らったが、いつまでもそうなり続けないだけの芯はある。
相手の動きとこちらが感じているリズムを照らし合わせて、ついに重なる一瞬が来た。相手のシールドバッシュに合わせて、左腕に隠してあるパイルバンカーを目覚めさせた。最小限の変形で日本の悔いを打ち出す準備が整う。そして後は真っ向からぶち込むだけ。
「パイル……バンカァー!」
叫ぶ必要は全くないのだが、押され気味の状況が長く続いたので少しだけ臆病になってしまっている心を奮い立たせるためにもあえて叫んだ。相手の大盾に対して食い込む二本の杭。更に杭が打ち出された衝撃によって、相手のシールドバッシュの勢いを跳ね返す。相手の動きが止まった──すぐさま自分は右後ろにバックステップをしてからパイルバンカーの次弾を装填する。
直後、打ち出した二本の杭が大盾に突き刺さった状態で爆発した。その爆炎が引き起こした煙の向こうから相手の悲鳴が聞こえた。盾の上からでも、爆発は相手にしっかりとしたダメージを与えてくれたようだ。やはりパイルバンカーは当てさえすれば、最高の仕事をしてくれる。趣味武器だとかロマンとか言われるが、当たった時の一撃こそがパイルの華である。
「パイルバンカー!?」「おいおいおいおい! それってありなのかよ!?」「パイルバンカー作っちゃったの!? しかも盾の裏に仕込めるサイズにまで落とし込んでるとか」「凶悪過ぎるだろ!?」
マッスル側から、そんな悲鳴交じりの驚愕の声が聞こえてくる。一方でブルーカラー側からは──
「ついに火を噴いたか、パイルバンカー!」「流石の威力だな、大盾の上から食い破っていた」「なんにせよ、これで押し返せたという事でしょう」
自分がパイルバンカーを開発したことを知っていたので、驚きの声はなくついに使ったかという感じの声が聞こえてくる。さて、爆炎によって生まれた煙が薄れてきた。しっかり相手に突き刺さればこんな爆炎による煙は起きないんだが、今回は仕方ないな。相手の盾はパイルバンカーによって貫かれた場所には穴が開いており、そこを中心に盾には亀裂が走っていた。
さらに、相手の一部に出血が見られる事も確認。大盾のせいで相手の体全体はあまり見えないが、それでも足元だとか、頭部の上部などは見る事が出来る。その見えるごく一部分にすら血に染まった所が確認できるのだ、相手の全身はもっとひどい出血をしているとみていいだろう。だが、相手は震えていた。恐怖によってではない、怒りによってだ。
「パイルバンカーだと? 大盾のシールドバッシュを真っ向正面から受け止めるどころかぶち抜く威力だと? ふ、ふ、ふざけるなあっ!」
相手が怒りの感情を自分に向けてぶちまける。そして再びシールドバッシュを仕掛けてくるが、勢いこそあるが速度が下がっている。これならば回避が間に合うので、サイドステップで回避した後に相手にレガリオンで反撃を行う。だが、この反撃は大したダメージにはなっていないな。手ごたえで分かる、ほぼ無効化されたような感じだ。
が、大事なのは回避できる事とほんの僅かでも反撃が出来るようになった事だ。一方的にやられる状態から、こちらもやり返せるようになったという展開の変化こそが一番大きい。それに相手が硬くても、親方やパイルバンカーを作るために手を取り合った同士が作ってくれたこのパイルバンカーなら、相手の鎧を必ずぶち抜いてくれると信じられる。
(何とか流れを引き戻せた。大事なのはここからだ。流れを引き戻したと言っても、自分の残り体力は三割あるかないかぐらいだ。ワンミスで全てが終わる状況は何も変わっていない。まあいつも通りという奴だな)
自分の旅はこんなのばっかりだなと、ワンモアの冒険を軽く振り返りながらつい苦笑してしまう自分。でも、その苦笑のおかげで無意識に力を入れていた肩の力が少し抜けた感じがする。無用な力みはかえって弱くなりかねないから、これは良い事だ。盾を構えつつ首をしっかりと守りながら様子を見る形に移った相手を見据えながら、こちらも武器を構えなおした。さて、今度はこちらが仕掛けようか。
(あの重量が、完全に慣性を無視してターンするだってぇ!?)
前方に突撃すれば、それ相応の慣性が働く。しかも鎧を着こんだ状態だからなおさら重量があるのだ。にもかかわらず、こちらが回避した直後にそういった慣性などを完全に無視してその場で向きを変えて再び突撃してきたのだ。こんなことを可能にするのはアーツなのだろうが、完全初見故に自分は面食らった。
(しまった、回避が間に合わない!)
驚いたが故に行動が遅れた。仕方なく盾を使って受け流すようにして防御したが軽微なダメージを受けてしまった。普段なら気にも止めないが、今回に限っては試合開始直後からHPが残り四割ぐらいしかないのだ。この微々たるダメージでも結構辛い。更に相手はこちらが回避できなかった事を好機と見たのか、再び慣性を無視したターンを行ってまたしても突撃してくる。
次も、その次も回避が間に合わず盾による受け流しを行ってダメージを抑えるが確実に削られてしまっている。しかも相手と自分では重量の差がありすぎて、受け流しているのに軽く吹き飛ばされるような感じで体の軸を何度も揺さぶられる。更に相手はターンの間隔を速めて、ひたすらシールドバッシュによる突撃タイミングを速めてきていた。
(跳躍で上に逃げる事も許さないつもりか)
自分をひたすら地上で吹き飛ばし続け、すり潰す心づもりなのだろうな。だが、それを可能とするだけの技を相手は持っている。このままでは、相手の狙い通りに何もできないままピンボールの弾の様に弾き飛ばされ続けてボロ雑巾になったところを押しつぶされかねない。
しかし、抜け出すチャンスがない。いきなり最初から相手に主導権を握られてしまったな、今は盾による受け流しで耐えるのが精一杯だ。だが、呼吸は落ち着いてきた。明鏡止水も解除されることなく持続できている。後は何かしらのきっかけがあればこのシールドバッシュの嵐から逃れられる。
(まあ、それを容易く許してくれる相手ではない、か。大盾という重量のある装備をここまで繊細に使って見せるとは……そのうえ重量があるから、どうしてもぶつかればこちらが押される。受け流しているというのにHPも削られ続けて残り三割を切っている。一方でこちらは相手に何も有効打を与えられていない。だが)
こういう動きをしてくるという事は間違いなく、先の戦いで見せたハイドシザーズによる首を斬り落とした事に対する対抗手段であることは間違いない。下手に距離を取れば首を斬られるという事が分かったのなら、盾を構えて刃を通さない様にしながら下手に間合いを保たず激しい出入りを繰り返して間合いを常に変化させればいい、と。
でも、こちらにも相手を一気に押し返せる手段はある。欲を言えば最終戦まで温存しておきたかったが──ここで負けたら意味が無い。だから、使う事を決めた。相手のシールドチャージの嵐に押されながらも、タイミングを計る。タックルしてターン、タックルしてターン。慣性を無視できるターンと重量級が繰り出すシールドバッシュという組み合わせの凶悪さは十分に理解できた。理解したならば、次に行こう。
(彼の動きにはリズムがある。もちろん常に一本調子ではないが、それでもある程度のリズムは常に維持している。それが、弱点となりうる要素だ)
アーツの制限なのかもしれないな。一定のリズムを刻まないと、このターンを生かしたシールドバッシュの嵐が維持できないのだろう。それに気が付かれる前に不意を突いて相手を混乱させて押しつぶすつもりだったのだろうが……こっちにだって今までの旅で得てきた経験がある。最初は確かに面食らったが、いつまでもそうなり続けないだけの芯はある。
相手の動きとこちらが感じているリズムを照らし合わせて、ついに重なる一瞬が来た。相手のシールドバッシュに合わせて、左腕に隠してあるパイルバンカーを目覚めさせた。最小限の変形で日本の悔いを打ち出す準備が整う。そして後は真っ向からぶち込むだけ。
「パイル……バンカァー!」
叫ぶ必要は全くないのだが、押され気味の状況が長く続いたので少しだけ臆病になってしまっている心を奮い立たせるためにもあえて叫んだ。相手の大盾に対して食い込む二本の杭。更に杭が打ち出された衝撃によって、相手のシールドバッシュの勢いを跳ね返す。相手の動きが止まった──すぐさま自分は右後ろにバックステップをしてからパイルバンカーの次弾を装填する。
直後、打ち出した二本の杭が大盾に突き刺さった状態で爆発した。その爆炎が引き起こした煙の向こうから相手の悲鳴が聞こえた。盾の上からでも、爆発は相手にしっかりとしたダメージを与えてくれたようだ。やはりパイルバンカーは当てさえすれば、最高の仕事をしてくれる。趣味武器だとかロマンとか言われるが、当たった時の一撃こそがパイルの華である。
「パイルバンカー!?」「おいおいおいおい! それってありなのかよ!?」「パイルバンカー作っちゃったの!? しかも盾の裏に仕込めるサイズにまで落とし込んでるとか」「凶悪過ぎるだろ!?」
マッスル側から、そんな悲鳴交じりの驚愕の声が聞こえてくる。一方でブルーカラー側からは──
「ついに火を噴いたか、パイルバンカー!」「流石の威力だな、大盾の上から食い破っていた」「なんにせよ、これで押し返せたという事でしょう」
自分がパイルバンカーを開発したことを知っていたので、驚きの声はなくついに使ったかという感じの声が聞こえてくる。さて、爆炎によって生まれた煙が薄れてきた。しっかり相手に突き刺さればこんな爆炎による煙は起きないんだが、今回は仕方ないな。相手の盾はパイルバンカーによって貫かれた場所には穴が開いており、そこを中心に盾には亀裂が走っていた。
さらに、相手の一部に出血が見られる事も確認。大盾のせいで相手の体全体はあまり見えないが、それでも足元だとか、頭部の上部などは見る事が出来る。その見えるごく一部分にすら血に染まった所が確認できるのだ、相手の全身はもっとひどい出血をしているとみていいだろう。だが、相手は震えていた。恐怖によってではない、怒りによってだ。
「パイルバンカーだと? 大盾のシールドバッシュを真っ向正面から受け止めるどころかぶち抜く威力だと? ふ、ふ、ふざけるなあっ!」
相手が怒りの感情を自分に向けてぶちまける。そして再びシールドバッシュを仕掛けてくるが、勢いこそあるが速度が下がっている。これならば回避が間に合うので、サイドステップで回避した後に相手にレガリオンで反撃を行う。だが、この反撃は大したダメージにはなっていないな。手ごたえで分かる、ほぼ無効化されたような感じだ。
が、大事なのは回避できる事とほんの僅かでも反撃が出来るようになった事だ。一方的にやられる状態から、こちらもやり返せるようになったという展開の変化こそが一番大きい。それに相手が硬くても、親方やパイルバンカーを作るために手を取り合った同士が作ってくれたこのパイルバンカーなら、相手の鎧を必ずぶち抜いてくれると信じられる。
(何とか流れを引き戻せた。大事なのはここからだ。流れを引き戻したと言っても、自分の残り体力は三割あるかないかぐらいだ。ワンミスで全てが終わる状況は何も変わっていない。まあいつも通りという奴だな)
自分の旅はこんなのばっかりだなと、ワンモアの冒険を軽く振り返りながらつい苦笑してしまう自分。でも、その苦笑のおかげで無意識に力を入れていた肩の力が少し抜けた感じがする。無用な力みはかえって弱くなりかねないから、これは良い事だ。盾を構えつつ首をしっかりと守りながら様子を見る形に移った相手を見据えながら、こちらも武器を構えなおした。さて、今度はこちらが仕掛けようか。
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