とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ

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先陣を切るツヴァイ

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 ややあって、運営役のプレイヤーに入場を促されたので武舞台の近くまで移動。そして最初の一戦目に出す面子を決めるのだが、ここはツヴァイが出ると口にした。

「最初は俺に行かせてくれ。相手のギルドがどれほどの物か、俺との戦いを見て判断してほしいからな」

 と、体を張るつもりのようだ。当然ツヴァイが出るとなればチームメンバーのレイジとノーラも武舞台傍に控える形となる。残りの面子は少し下がった所で見守る形で待機。相手ギルドも最初の一人が武舞台の上に上がってきた。運営役のプレイヤーに最後の意思確認を行われてカウントダウンが開始される。相手は大太刀使いだな。

 カウントダウンが終わり、ツヴァイが前に出るより歩一歩早い感じで相手の大太刀使いが前に出た。そして間合いの僅か外で大太刀を振るう。ツヴァイの行動を呼んで大太刀の刃を置きに来たわけだ。が、ツヴァイだってカザミネにさんざんやられた戦法だ。急停止をしてその刃を回避する。そこからさらに前に詰めると思ったのだがツヴァイの行動は違った。

(立ち止まった? 相手の妨害が飛んでくると予想したのかな?)

 大太刀を振り切った相手は動けないし、そこを突こうとツヴァイが動く事を相手が想定して妨害してくる可能性は十分ある。この読みは当たり、相手の弓使いが武舞台に乱入しツヴァイ目がけて矢を複数本放ってきた。この矢をツヴァイは大剣を盾として使い、すべてはじき返していた。

「マジか、そこまで予想していたのか」「あそこまで派手な大振りをいきなりするってのは臭かったからな。試合開始直後でいきなりバクチを打ってくるってやり方は確かにあるが、今回のPvPではそのバクチ要素を誘いにできる側面もあるしな。だから警戒してただけに過ぎないぜ」

 相手の少し驚いた表情と共に出た言葉にツヴァイは大剣を構えなおしながらそう返答を返していた。そこから僅かな沈黙の後、お互いの武器がぶつかり合う戦いが開始される。まずはファーストアタックをどちらが取れるか……大剣も大太刀も命中した箇所によっては相手即死させるだけの火力が出せる武器だ。大太刀は首を刎ねる能力も高いし。

 だからこそファーストヒットは大事だ。その一撃が流れを左右しかねないのが大物武器の魅力であり恐ろしい所だ。そんな事は使い手の方がよく分かっているだろうけどな──だからこそ、これだけファーストアタックをどちらが決めるかの剣戟をしている訳だし。だが、状況は徐々にツヴァイが押しているか?

 大太刀使いも奮戦しているが、徐々にツヴァイの振るう大剣が相手のを掠める回数が増えてきた。まだ鎧の上を軽く撫でる程度なので明確なダメージとはならないだろうが、相手の焦りは明確にさ添えている。大太刀使いの顔からは隠せない汗がしたたり落ち始めているのもその証拠だろう。

「く、そっ!」「そこだ!」

 大太刀使いがつい口にしてしまった悪態。その時一瞬隙が生まれていた。その隙を見逃すほどツヴァイは優しくない。ねじ込むかのような勢いで大剣の切っ先が大太刀使いの腹を穿った。明確なダメージ、では済まない。大量の血が大太刀使いの腹から流れ出る。

「が、ふっ!?」

 この一撃必殺があるから両手武器はおそろしい。それをまさにツヴァイは体現した。大太刀使いの目から生気が失われ、武舞台の上に倒れこむと同時に粒子になって退場させられた。まさにクリティカルヒットとはこういうものだと言わんばかりの攻撃となった。

「いいぞツヴァイ!」「やるじゃない!」

 一方でレイジとノーラはツヴァイに歓声を送る。これでまずは一人、次に相手のギルドから武舞台に上がってきたのはローブを纏い杖を持つ魔法使いの見た目のプレイヤーだった。が、見た目だけで判断は出来ない……杖術使いが欺くために魔法使いの外見をする可能性はあるからな。事実そう言う騙しのテクニックはWikiに紹介されていた。

 当然ツヴァイもそれを知っているのだろう。だからこそむやみに突っ込まずゆっくりと距離を詰めている。このままでは埒が明かないと動いたのは相手側だった、まあ当然一人やられているから評価としては非常によろしくないし、動くしかないよな。だからこそツヴァイは見に徹していたんだろうが。

 相手はツヴァイに対して一気に前に出て距離を詰めてきた。そして杖を振るう──いや、杖の先端にわずかだが電撃が集まっている。バトルメイジか! 魔法使いでありながら、一定水準まで体を鍛え杖術と魔法を併用して戦うプレイスタイルをバトルメイジとワンモアでは呼ぶ。もちろん武器と魔法を併用するので魔法に特化したプレイヤーより魔法の威力は落ちる。

 しかしその代わり魔法が効きにくい相手であっても対処できる事、杖術と魔法を併用する事によって可能となった新しい魔法などがあるため戦闘力は決して劣るものではない。魔法剣士タイプとはまた違うスタイルとなるのである。ツヴァイも気が付いたようで、杖による刺突攻撃を回避している。

(ツヴァイが今使っている大剣は魔剣じゃないからな。もしあの突き攻撃をガードしていた場合、金属製の大剣から感電する形でツヴァイ自身にも大きな電撃ダメージが入っていただろう)

 ツヴァイは良く反応したな、ここは今までの経験が役に立ったという事だろう。もちろんあらゆることを想定して待ち構えていたんだろうが。が、向こうはツヴァイを休ませる気など毛頭ないようで、複数の電撃を宙と地面に発生させてツヴァイに対して射出してきた。宙に浮いた電撃はボール状で、地面の電撃は地を這う形で次々とツヴァイに襲い掛かる。

「うおっと!? まずっ!?」

 ツヴァイはそれらの電撃をサイドステップや地面を転がるローリング、そして跳躍する事を駆使して回避し続ける。しかし流石に全てを回避する事は出来ず、数発ほどまともに貰ってしまった。そのたびにツヴァイの「いでででで!?」という声が聞こえてくる。が、ツヴァイの装いは金属性ではなく、以前に貰ったブラックドラゴンやホワイトドラゴンから貰った鱗で作られている。

 だから、金属製鎧の弱点である電撃系統の属性を喰らうとスタンしやすいというペナルティはない。が、そんな事を相手は知らないだろう。ツヴァイに現撃攻撃が命中して倒れた事を確認した相手は、魔法の詠唱に入っていた。完全にツヴァイにスタンが入り数秒は動けないと踏んだ上での行動だ。その行動は、流石にまずいぞ?

「なんちゃって、な!」

 詠唱を開始したことを確認したツヴァイが素早く起き上がって大剣を手に取り、詠唱をしている相手に対して横薙ぎの斬撃を振るう形で襲い掛かった。相手は相当慌てた様だが、それでも詠唱を破棄して杖を構え、ツヴァイの大剣の下をくぐる形で受け流して難を逃れた。

「なんでスタンしない!?」「この鎧、残念ながら金属性じゃないんだよ。見た目はそう見えるように外見をごまかしているけどな」

 電撃ダメージを明確に与えたのにスタンしなかったツヴァイに対する視線を受けて、ツヴァイがネタばらしをした。流石にドラゴンの鱗で作られたスケイルメイルとまでは教えんよな、教える義理もないし。それでも相手のバトルメイジは渋い表情を浮かべた。無理もない、金属製の鎧を着ていると考えたからこその戦略が崩れたのだから。

「それじゃ、続きと行こうか!」

 短い言葉と共に剣を構えなおしてツヴァイは相手に迫る。バトルメイジはここからどう出るかな? ツヴァイの勢いを留める事が出来ないとそのままやられる形になりそうだが、さて?
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