とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ

文字の大きさ
667 / 765
連載

戦いの流れ

しおりを挟む
 ツヴァイの大剣による連撃を、バトルメイジは杖をうまく使って連続で受け流す。しかし、ツヴァイの手数がわずかに上回っているようでバトルメイジが徐々に押される。それを見ていられなかったのであろう、相手の弓使いが再び乱入しアーツをツヴァイに向かって放つ。

「《一通》!」

 自分は使えないアーツだな……確か貫通力に特化したアーツだったか? 生半可な盾など無いと同じで無力化し相手に突き刺さる使い勝手のいいアーツ、だったかな? Wiki頼りでハッキリとは覚えていないんだが。が、ツヴァイの視界は弓使いの動きも取らえることが出来ていた様でこのアーツをあっさりと回避。ホーミング性は一切ないアーツだったようで、矢は空しくツヴァイがさっきまでいた場所を過ぎ去るのみ。

「その動きは想定している!《アローネット》!」

 しかし、弓使いは退場する前にもう一つのアーツを空に向かって放ってから武舞台を退場した。アーツの名前からも分かるように、このアーツは投網と同じことを弓矢で行うものだ。空中に放たれた矢が八つに分裂し、網を展開。そのまま地面に落ちてきて相手の四肢を絡めとるというアーツだ。しかし、このアーツにて発生する網は普通の物であり──

「そらよっとってな感じだ!」

 刃物で切り付けられればあっさりと切れてしまう。無論普通のナイフとかならそれなりに耐えるぐらいの耐久はあるが、こんな場所にまで来ているプレイヤーの武器に耐えられるだけの耐久性は流石にない。あっさりと網を切り裂かれ、無残な姿で落ちてくる残骸。しかし、上に向かって攻撃をすればバトルメイジが当然動くだけの猶予を与える。

「そこ──」「乱入は貴方達のみの特権じゃないって事、忘れたかしら?」

 バトルメイジがツヴァイへ攻撃をしようと動いたそのタイミングで、ノーラが乱入した。ノーラは複数のナイフを素早くバトルメイジに向かって投擲──にしてはずいぶんと狙いが大雑把だな? ノーラらしくないと思ったのだがこれには理由がきちんとあった。

 投擲されたナイフを容易く躱したとバトルメイジが今度こそツヴァイに対して攻撃をしようとして前に一歩出たその時だ。彼の動きが突如動きが止まったのは。

「な──」「《ウオーターバインド》! ナイフと水魔法の組み合わせによっては、こういう事も出来たりするのよね」

 ノーラが投げたナイフのグリップ付近から、細い水の糸みたいなものが見えた。それがバトルメイジの体にいくつも絡まっているのが何とか見える。それだけでなく、水の糸が次々とバトルメイジの体に纏わりついていくのが見えた。ナイフを投げた時には視認性を極限まで下げていたのかもしれない。だからバトルメイジも視認できなかったのか。

「じゃ、後はよろしく!」「ありがとな!」

 ノーラが退場し、ツヴァイが動きを封じられたバトルメイジに対して大剣を振り上げながら接近する。バトルメイジ側は手早く詠唱できる魔法を次々と唱え、魔法による攻撃でツヴァイの足を止めてから拘束から逃れようと動くが、ここでツヴァイは大剣を下ろして盾にしながら強引に突っ込んで魔法を無理やり弾き飛ばしながら距離を一気に詰める。

「もらったあああ!」

 そして間合いに入ったツヴァイによる全力振りかぶりによる攻撃が拘束から抜け出せなかったバトルメイジに行われる。こういう条件になった時の大剣や両手斧の一撃は本当に強い。刃の斬撃と両手武器の重量、それに勢いまで載せられるのだから軽傷で済む事は絶対にない。ましてやクロースなんて言う布装備では抗えない。文字通りの体を真っ二つにする形でツヴァイがバトルメイジを倒した。そこからすぐさまツヴァイは交代し、レイジと交代する。

「後は頼むぜ!」「ああ、任せろ」

 勝利はしたが、ツヴァイはバトルメイジから攻撃をそれなりに貰っていた。だからこそ次の試合に向けて少しでも回復するべくレイジと交代するのは正しい判断だろう。後はレイジがダメージをできるだけ抑えて勝てばいい。相手は弓使いしか残っていないからな……レイジは盾をしっかりと構えて弓使いに対して距離を詰めていく。

 弓使いだって黙ってやられるわけがない。真正面からでは盾に弾かれるため、曲射を多用してレイジの盾を乗り越えて攻撃する形で攻撃を行う。射撃を終えたらすぐさま場所を変えてまた射撃をする。なんというか、ボクシングのインファイターとアウトボクシングの選手の戦いを見ているような気持ちになるな。

(レイジが前に出ようとしたタイミングで場所を移動し、また距離をしっかりとってから射撃。かなりの足の速さだな。あれではレイジが接近戦をしたくても難しいだろう)

 弓使いの足取りは非常に軽やかだ。まるでスケートでもしているかのようにするすると武舞台を滑るかのように動き回り、自分の距離を維持してレイジに射撃攻撃を繰り返す。レイジはかなり辛そうだな、矢の直撃こそ一発も貰っていないが、攻められないのがな。かといって身軽なノーラにチェンジしたくても弓使い相手に背中を晒すのは危険すぎる。

 そんな弓使いが終始レイジのやりたい事をさせない形で進めていた戦いであったが、時間切れを迎えたため戦いは終了した。言うまでもなくAI審判は全員がブルーカラーの勝利であると判定を下した。弓使いもまあ、そうなるよなみたいな感じで素直に結果を受け入れていた。これで最初のラウンドはこちらが取った。あと一勝できれば相手ギルドに対するブルーカラーの勝利が確定する。

「では、行ってきます」「ええ、いってらっしゃい」

 カザミネの言葉にノーラが送り出す。次の面子はカザミネ、カナさん、エリザの三人だ。相手は……おおっと、全員両手武器使いなのか。両手斧、大剣、大太刀使いが出てきたな。どのプレイヤーも一発で不利な状況からの一発逆転が可能なパワーを持っている事は間違いない。先にラウンドを取られたから、このラウンドは絶対に取ると言う意思が見て取れる。

「まずは勝ってきたぜ」「ああ、お疲れさん。どうだった、手ごたえは?」

 一方でこちらに戻ってきたツヴァイの言葉を聞いて、自分は戦ってみた感じを聞いてみる事にした。

「そうだな……少し硬くなっている感じを受けた。特に最初に出てきた大太刀使いはぎこちない所があったように感じたぜ。最初の大振りにしても、モーションが見え見え過ぎたからな。この大舞台で緊張するなというのは酷なのかもしれないが──一方で三人目の弓使いはかなり動きが良かったな。アイツが最初に出てきたらどうなっていただろうと考えるな」

 なるほど、それがツヴァイの感想か。まあ最後の大会って事でどうしても緊張は付きまとうよな。でもそれは皆同じ事だし、その緊張で動けなくなるか楽しめるかの差はそれまでの経験から変わってくるモノだろう。ツヴァイ達ブルーカラーも厳しい戦いを何度も乗り越えてきているから、緊張を程よく楽しめる側だろう。

「次の勝負は、取らなきゃ負けると考えて向こうが硬くなったらカザミネたちの敵じゃないだろうな。逆にこの逆境こそが楽しい瞬間だと思える相手だったら、苦戦するかもしれないが」

 そんなツヴァイに言葉に頷きながら、次の試合を見届けよう。さて、次の相手はどんな戦い方を仕掛けてくるだろうか?
しおりを挟む
感想 4,907

あなたにおすすめの小説

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

事情があってメイドとして働いていますが、実は公爵家の令嬢です。

木山楽斗
恋愛
ラナリアが仕えるバルドリュー伯爵家では、子爵家の令嬢であるメイドが幅を利かせていた。 彼女は貴族の地位を誇示して、平民のメイドを虐げていた。その毒牙は、平民のメイドを庇ったラナリアにも及んだ。 しかし彼女は知らなかった。ラナリアは事情があって伯爵家に仕えている公爵令嬢だったのである。

さようなら、たったふたつの

あんど もあ
ファンタジー
王子に愛されてる伯爵令嬢のアリアと、その姉のミレイユ。姉妹には秘密があった……。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

ありふれた聖女のざまぁ

雨野千潤
ファンタジー
突然勇者パーティを追い出された聖女アイリス。 異世界から送られた特別な愛し子聖女の方がふさわしいとのことですが… 「…あの、もう魔王は討伐し終わったんですが」 「何を言う。王都に帰還して陛下に報告するまでが魔王討伐だ」 ※設定はゆるめです。細かいことは気にしないでください。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。