とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ

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魔剣の使い手との対峙

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 幾つもの剣戟を打ち交わし、無数の火花を舞い散らせる。──強い。先ほどの二人も決して弱くはないのだが、この双剣使いはレベルが文字通りワンランク違う。早さも、重さも、正確さまで段違いだ。一刀一刀がこちらの急所を容赦なく的確に狙ってきており、対処をしくじれば大ダメージは必至だろう。

 だが、その正確さ故読みやすくもある。なので対処は十分に間に合うし、反撃する事も出来る。更に八岐の月とレガリオンの爪と刃を組み合わせた連撃をこちらからも仕掛ける。が、こちらの攻撃もことごとく防がれる。強いな、彼が相手ギルドの本命の人物なのかもしれない。

 そうして戦いを続けたが、突如彼は大きく飛びのき、そして手にしていた双剣を左右へと投げ捨てた。どういうつもりだろうか? 何らかのアーツの発動準備か? それとも何かの仕掛けを──いや、仕掛けというものはバレずにやってこそ。こうもあからさまにやったのでは意味がない。狙いは何だ? そう思いつつ自分が身構えていると、突如彼は笑い出した。

「はあっはっはっは! いいぞ、噂以上だ! 噂以上に強いな、お前さんは! そんなお前さんにこんなかりそめの戦い方で戦るのは失礼ってモノだな! 本気を出させてもらうぞ!」

 その言葉と共に一振りの日本刀が彼の手に現れた。あれは魔剣か? 大太刀とは全く異なる、正真正銘日本刀の姿をしている……鞘から抜き放たれると、刀は銀の光を周囲にうっすらと放っていた。波紋もあり、どこからどう見ても日本刀だ。

「こいつは魔剣って奴らしいが、まあどう見ても日本刀だな。だが、このひと振り以外に本当はこの世界では日本刀を目にした事はない。そして、こいつじゃなきゃ俺の本気の剣技は発揮できねえんだ。だから悪いが、使わせてもらうぜ!」

 ──分かる、彼の闘気らしきものが膨れ上がるのが。まるでそれは、寒い地域で真冬の時期に外を歩く時に感じた冷気の刃のようだ。実際に傷がつく訳ではないのだが、頬などの防寒具を身に着けていない場所に冷たい風が吹いた時、頬をうっすらと鋭利な刃物で切られるように感じた。今目の前の彼から感じる物は、まさにそれだ。

「待たせて悪かったな、続きと行こうか!」

 その言葉とともに、再び突っ込んできた彼との戦いが再開される。そして本気と言った言葉に嘘偽りはなかったようで先ほどの双剣よりもより早く、より重く、より鋭い斬撃がまるで雨が降るかのような勢いで次々と自分に対して襲い掛かってきた。反撃を差し込む余裕がない……まずは耐え、相手の動きを掴みなおす事を優先しよう。

「いいぞ、こちらが本気でやってもついてくるその力、本物だな! この世界の住人からお前さんの話は幾度となく聞いた! 外套を纏い、異様な弓を背負い、幾多もの戦いに参加し、そのこと如くを勝ち抜いてきた猛者! ゲヘナクロスの戦争では妖精国の戦士しか任せられなかった作戦に唯一参戦した男!」

 戦いながら、彼は喋り続ける。どうやら彼もまた、世界を巡り歩き続けた人物なのだろう。そしてその先々で、自分の事を結構聞いていたという事が分かる。そんな事をする人が出てくるとはあまり思っていなかったのでちょっと驚いている。

「表舞台にはあまり上がらなかったが、ありとあらゆる場所で戦い続け、ひそかに幾多もの種族を守った漢! そしてついに有翼人との戦いで明確な舞台へと上がり、その舞台で見事大金星を挙げて見せた! 俺は分かっている、あの有翼人共のトップを切り裂き、勝利をもたらしたのはお前の一太刀であった事を! あらゆる出来事を知って、俺は思った! お前と戦ってみたいと!」

 そして今、戦えていると。対峙している彼の表情は獰猛な存在が歓喜の笑みを浮かべている様にしか見えない。楽しくてしょうがない、そう言った顔だ。

「妖精も、龍人も、エルフにダークエルフ、そして魔人たちもお前のことを認めていた! 強いと言われる奴はそれなりにいるが、この世界の住人にここまで信頼されている奴を俺は他に知らん! 魔王殿にもわずかな時間ではあったが話を聞く事が叶ったが、魔王と呼ばれる存在に凄まじい信頼を受けているのは理解できた! なぜそこまでの信を集めたのか、それを知りたいのだ!」

 ますます攻撃の苛烈さが上がっていく。だが、まだまだいける。それに少しづつ目も体も慣れてきた。なので反撃を一太刀──かすった程度か? だが僅かながらダメージは与えたな。

「本気でやっているのに、反撃を受けたか……いいぞ、実にいい! 見せてくれ! あの強き龍族ですら認めるその力を見せてくれ! こちらも全力をもって応えよう!」

 本当に楽しそうだな、ならこちらももっとギアを上げていくか。彼は強いが、まだ雨龍師匠のような底知れないものは感じない。ならば、負けるわけにはいかない。雨龍師匠の事だ、もし負けたらどんな手段を使ってでもこの塔の中に乗り込んできそうな空気があるからなぁ。そうならないようにしないと……

 それからは言葉なくただひたすらに打ち合うことしばし、こちらの攻撃が向こうに通り始めた。一応念の為に、盾に仕込んであるスネークソードなどは使っていない。レガリオンのスネークソード状態も使っていない。普通に真っ向勝負をしたうえでの話だ。向こうも魔剣を使っているのに、魔剣の固有技みたいなものは一切使っていないから、こちらもまだ使うべきではないと思っている。

 そして、良あt持している彼の表情が明確に変わり始めた。喜びから困惑へ、そして焦りの表情が漏れ始めている。どうやら、彼の見積もり以上の力を自分は発揮できているようだ。やはり、幾多もの積み上げてきた訓練は今の自分をこれほどまでの相手を前にしてなお負けない力をくれたのだと改めて実感する。

「正直に認めよう、こちらの想定以上だ。認められるだけの力を持っている事は分かった──教えてくれ、今の俺と対峙した有翼人のボスはどちらが強かった?」

 申し訳ないが、有翼人のボスの方がはるかに強かったな。そう正直に告げると、彼は頷いた。

「やはりそうか……ならば、更に力をあげさせてもらうぞ!」

 その発言と同時に、魔剣の銀の輝きが彼の体全体に行き渡って輝き始める。するとどうだ、彼から感じる圧が一気に跳ね上がったではないか。どうやらあの魔剣の能力はバフ系統なのだろう、しかも強力な。でも──まだあの有翼人のボスであったロスト・ロスにははるかに及ばないな。

「行くぞ!」

 明確に今までよりも上がった速度でこちらの首を狙った一撃が飛んでくる。が、自分はそれをレガリオンによって受け止めた。申し訳ないが、バフをかけてもレガリオンの能力の一つ、相手が強ければ強いほど強化が入る特性があるせいで有効な手段とは言い難いんだよ。それに加えてここまでのやり取りでこちらの集中力も上がっている。動きが、見えている。

「こちらも、そろそろ行かせてもらう」

 ここまでの彼との戦いで自分は受け手側だった。だが、ここからは攻め手に回らせてもらう。世界のみんなが認めてくれた理由を、彼に言葉ではなく刃で知ってもらうためにも。八岐の月とレガリオンを持つ両手に気合を入れなおし、自分が前に出る。行くぞ。



*****

ちょっと短めな日が続いていますね、すみません。
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