とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ

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四試合目、その二

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 お互い最初の一手を見せ合った形だが、先に動いたのはレイジ。盾を背中に吊るような形で装着した後、両手に先ほど投げた片手斧を今度は両手に持った。そして当然投擲、今度は二本の片手斧が相手に向かって襲い掛かってゆく。当然相手は回避するわけだが──なんとレイジはすかさず追加の片手斧を両手に持った。そして投擲。

 が、今度の投擲は相手を狙った投擲ではなく、相手の左右に分かれるように投げた。直後、最初に投げた二本の片手斧が地面に当たった後に相手に向かって再追尾。相手はとっさにレイジから見て右側へとステップを踏んだのだが──そこに今度は二回目に左右に投げた片手斧が襲い掛かった。

「くうっ!?」

 回避しきれないと半田医師た相手は槍を使って片手斧を迎撃、何とか弾き飛ばした。しかし、その背後からもう一本の片手斧が時間差で迫ってくる。この片手斧に対して相手は石突きではじき返そうとした。だが、流石に体勢が崩れすぎており力が十全に伝わらない。結果、石突きで片手斧を突く所まではいったが──片手斧の刃は相手の左肩付近を切り裂いた。かなりの量の血しぶきが舞う。

「うぐうっ!?」

 短い悲鳴、だがそれでも急いで態勢を整えなおしてレイジに向き直った彼女の眼には、再び片手斧を投擲しようとしているレイジの姿が見えたことだろう。最初に投擲した片手斧がレイジの手に戻ってきており、すかさずレイジは再投擲を試みようとしていたのである。そのレイジの行動を見た相手の判断は早かった。

「はあああっ!」「──ち、やはり潰しに来るか」

 レイジが投擲を終える前に気迫のこもった槍のひと突きが飛んできたのだ。投擲されると厄介と言うのであれば、投擲させなければいい。シンプルだが間違いない判断であることは間違いないし、それを即座に実行してレイジの投擲を止めた行動の早さも見事としか言いようがないだろう。

 この突きに対してレイジは片手斧の投擲を中断して突きをガード。即座に背中に吊っていた盾を装備しなおし、片手斧も投擲に使っていたものから最初に構えていたものへと変更した。とはいえ、最初の一撃を叩き込んだのは間違いなくレイジ。更に相手にとっては、距離を取れば四方八方から投擲された斧が飛んでくるというレイジの中距離攻撃の存在を知った。迂闊に距離を開けずらくなったことだろう。

(そして得意の近距離戦に持ち込む。レイジにとって先ほどの投擲攻撃は意図的に見せて相手の行動を制限するのに必要な経費とでもいった所か。おそらく過去にこういった大戦で相手に逃げ回られて得意な近距離戦に持ち込めず、負けを喫した経験があるんだろうな)

 重鎧を装備したプレイヤー全般に言える事だが、向かってくる相手に対してはその防御力を生かして防御の後に反撃することは得意だ。その一方で逃げ回りながら魔法や弓、投擲武器などを放ってくる相手にとっては辛い側面がある。いくら体を鍛えてもその鎧の重量がどうしても機動力を損なうからだ。

 だからこそ、何らかの対策をしておく必要がある。レイジの場合はその対策の一つが先ほどの特殊な動きをする投擲専門(だと思われる)片手斧なのだろう。見た目は特徴のない普通の片手斧だったのだが……アーツなのか、あの片手斧の能力なのかはちょっとわからない。さて、こんな事を考えている間に試合は動いて──いない?

 どうやら、レイジも相手も様子を完全に伺い合う形で動くに動けないのか? レイジも相手の槍の早さを知った以上、下手に投擲するわけにはいかない。投擲するためにはどうしても相応の動きをする必要がある。先ほどは槍の一撃を防いだが、次狙われたら防ぐ自身はあまりないのだろう。だから投擲に移れない。

 一方で相手は、距離を開けたら片手斧の投擲が飛んでくる。かといって迂闊に突きを放てば大盾に弾かれたりいなされたりすれば大きな隙を作る。それに加えて先ほど左肩に受けた一発が結構痛いのだろう、表情が歪んでいる。その痛みのせいで、普段のような槍を用いた攻撃が難しくなっている可能性がある。

(とはいっても、このままお見合いしているってわけにはいかないだろう。どちらかが仕掛けるしかない訳だが、さて)

 どちらかと言えば、仕掛けなければいけないのは相手の方か? レイジの投擲した片手斧による一発をもろにではないとはいえ受けて一定のダメージを被っているからな。ここで攻めて、何とかレイジにもダメージを与えないとますます辛くなるだけだろう。むろん、相手もそんな事など言われるまでもない事だろうが、レイジの構えに隙を見いだせないと言った所か。

 そのまま試合は完全に硬直してしまうかと思われたが、レイジが動いた。ゆっくりゆっくりと前に出る。相手はそんなレイジの動きに合わせるかのよう一歩一歩下がる。レイジはゆっくりとした動きではあるが、徐々に武舞台の角へと相手を動かすようにコントロールする。相手もそれに気が付いて大きく移動しようとするが、レイジはそれを許さない。

 相手側が武舞台の端側、レイジが内側なので、レイジの移動量は相手と少なくて済む事を利用した動きだ。相手が角から抜け出すには数歩全力で走る必要があるが、レイジは一歩踏み出して盾を構えてその進路に立つことで行動を阻害すればいい。こうしてレイジは完全に相手を武舞台の角の一つに押し込むことに成功した。

「レイジ、決めろー!」「何とか脱出を!」

 ツヴァイの声援と、ヴァルキュリアス側の声がほぼ同時に出た。その声をきっかけとしたのか、レイジが明確に前に出た。じりじりとした動きから一転、盾を構えつつ猛然と相手に迫るレイジ。そのレイジの動きを見た相手は、上を飛び越えようというのだろう。槍を地面に突き刺して跳躍する動きを見せる。

 脱出を阻止すべく、大盾を持ったレイジのシールドバッシュが襲い掛かる。が、レイジを含むほとんどの人が相手の行動に騙されてしまっていた。自分もそのうちの一人に入る。相手の狙いはレイジの上を飛んで脱出することではなく──側面に素早く回り込みながらシールドバッシュによる突撃に対し、盾の裏側に槍を突き立てて押し出し、シールドバッシュの勢いを過剰につけさせる事だったのだ。

 するとどうなるか。シールドバッシュの勢いが付きすぎて、レイジは自分の動きを止める事が出来ずに武舞台の端に突っ込んでしまう形となる。武舞台からのリングアウトはないので見えない壁にさえぎられる形となるが──当然背中は無防備になってしまう。そこに、相手の槍による一撃が加えられる。今度は、レイジの鮮血が舞った。

「ぐっ!」

 今度はレイジがダメージを受けたことによる苦悶の声を上げた。しかも相手の攻撃が一発で止まるはずもない。槍の突きによる連撃がレイジの背中を襲う。防御力の高い重鎧と言えど、背面を無防備にさらしてしまえば流石にダメージ軽減能力はかなり落ちる。しかも相当にシールドバッシュの勢いが付きすぎた状態で端に激突した影響なのか、レイジがなかなか体勢を立て直せない。

 結果として、一瞬で状況はひっくり返ってしまう事となる。大ダメージを受けたことにより、レイジからは何度も苦しそうな息が上がっている。が、相手は相手で左肩付近を抑えていた。どうやら月の連打でダメージを受けていた左肩の怪我が悪化したのかもしれない。レイジの投擲していた片手斧の能力なのか?

 しかし、状況は間違いなくレイジ側が悪い。体勢を立て直すまでにレイジが背中に貰った突きの数は二十を超える。流石にドラゴンスケイルと言えどそれだけの攻撃を受ければただで済むはずがない。むしろ普通なら力尽きているか──相手としては、レイジが苦境に立たされているとはいえ生き残っていることは想定外だったのかもしれない。

 が、決着がつくまで戦うルールである以上、双方共に苦悶の声を漏らしながらも武器を構える。やはりダメージが尋常ではないのか、レイジの動きが明確に悪くなっている。それでも大盾を片手斧をもって構える姿に、怯えとかあきらめなどの雰囲気は一切感じられない。一方で相手側からは戸惑うような感じがする。

 やはり先ほどの背中への猛攻でレイジを仕留めきれなかったからだろうか? なんであれだけめった刺しにされているのに倒れないんだ? というレイジへの恐怖心が生まれているのかもしれない。が、それでも槍を構えなおし今度こそ倒すという気持ちに切り替えたようで、こちらからも気迫を感じられるようになった。

 再び距離を詰め、今度は相手側の攻撃が先だった。レイジが弱ったことで大盾を使った防御術が劣化したと踏んだのだろう。積極的にレイジに向かって突きを繰り出してくる。レイジも槍を大盾で受けるが、ダメージは明白が……数発防御すると、明確にぐらつき苦しそうな声を上げる。それでも盾を取り落としたりはしないが。

 その様子に気を良くしたのか、相手側の槍に勢いが出てきた。手数を減らし、一撃の威力を上げることにしたようで一発一発ごとに大盾で防いでいるレイジの足元がふらついている。これではとてもじゃないが、反撃なんてできる雰囲気じゃない。レイジ、このまま押され切って終わってしまうのか? それともまだ何か手はあるのか? 自分は武舞台の上のレイジを信じて見守る事しかできない。

 そこからさらに槍を防ぎ続けたレイジだが、とうとう大盾を完全に崩されて大きくのけぞってしまった。当然相手はそのレイジの姿を確認した直後に力を込めた突きの動きに映ったのが見える。レイジに何らかの手がなければ、このまま終わってしまうぞ!



*****

気温が極端に変わりまくった影響で、体調を崩しました……
極端すぎるんですよ、27度ぐらいから一気に一桁とか……
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