龍王転生〜転生したら魔導師ってのに出待ちされてた件について〜

波動砲

文字の大きさ
60 / 141
間章 イルイ編

その頃のイルイちゃん①

しおりを挟む
アーカーシャお元気ですか。私です。イルイです
今あなたは何をしてるんですか?なーんてね。聞かなくてもきっとあなたの事ですから、また何処かで私みたいな弱い人を助けたりしてるんですよね。


此方はというと、貴方があの血月の夜に不滅の餓鬼討伐の後、目を覚ました村のみんなに事情を説明しました。みんな最初は呆気に取られて上手く飲み込めていませんでしたが、最後には喜んで感謝していましたよ。後、村長様には泣いて謝られました


なんでも村長様の妹も私と同じかつてこの儀式の人柱に選ばれたのだそうです。きっと村長様も妹の犠牲を無駄にするわけにはいかないと、与えられた防人としての役割を心を押し殺して頑張っていたのだと思います。元々責めるつもりも資格も私には無いんですけどね


破壊された村の方も無事復興の目処が立ち何とかなりそうです。貴方に救われた心ばかりの感謝を称して、我が村の守り神として今度アーカーシャの銅像を建てる事になりそうです。完成したら是非見てもらいたいと言っていましたので、次に来た時は村のみんな総出で祝わせて頂きますね


こうして村に平穏無事な変わらぬ毎日が戻ってくると思っていたのも束の間の事でした。聖女様が治めている聖国アイトルードから先遣隊。それと一緒に憧れの魔導教会の調査隊の方々もこの村に派遣されてやって来ました


その中でも先遣隊で見るからに1番位が高そうな騎士様?とアクアマリンを思わせる綺麗に肩元で切り揃えられたショートカットの女性魔導師が村長と話をしています。正直いって羨ましいです、村長様


魔導師の方と話せないかなと思い、遠巻きに様子を窺っていると、私の意図が天に伝わったかのか、雨も降っていないというのに真っ黒な傘を差し、全身真っ黒なローブに身を包んでいる魔導師の方が私をジッと見つめていたかと思うと、徐に私の方へやってくるではありませんか。な、なんだろう……


「君が今回の儀式の人柱に選ばれた子だね。名前は……そうだ!イルイ・シュテンバード。今日までお役目ご苦労様」


「は、はい!」


フードに顔は隠れてこそいるが、声色から察するに年齢は恐らく12,13くらいだろう。つまり私と変わらない少女の様だ。あれ?でも最年少魔導師って上級魔導師の赤空花様だったよね?ということは、少女の魔導師はいないはず。つまり、えっと、頭をフル回転させるのです。イルイ


……ぴこーん!
そういえば魔導師を証明する記章があるはずだけど少女は見たところそれらしい物を身に付けている様子もない。つまり魔導師ではなく、魔導師の調査隊に随行してきた魔導学院生の可能性が極めて高いのだと当たりをつける


「顔に名前でも書いてありました?」


そんな私のとぼけた言い方に黒い少女はクスクスと笑う


「真名看破の魔法なんて使ってないよ。それに魔導師なら誰が見ても君が今回の人柱に選ばれたイルイって子だと一目でわかると思う」


「と。いうと」


えと、つまり。つまりだよ。魔導師なら一目で分かるけど魔導師以外には分からないって事だよね?
……つまり要約すると私には魔導師として光る才能があるってことで良いのかな!?
いやいやそんな都合の良い夢見過ぎだよね、はは……
きっと誰かから私の事を聞いて事前に知ってて、揶揄ってるんだ。それが1番しっくりくるけど、ちょっと嫌だな


「魔力って鍛錬した年月に比例して増大するんだよ。だから、ほら、魔力が多い魔物ほど大抵長生きしてる。人間も同じで、例えば高名で熟練の魔法使や魔女。それに僧侶や修道女とかも魔力が高い人は大抵じーさんとかばーさんだったりするんだ」


「ここの村の人はみんな生まれついて魔力が高いから実感し辛いかもしれないけど、その中でもイルイはずば抜けて高い魔力だよ」


「儀式に選ばれる子は魔力が高い子を優先して選んでるからね。魔力感知に長けてる魔導師なら一目で分かるってのはそういう事さ」


「うへへ ありがとうございます」


「私が保証する。イルイ 君、才能あるよ
多分頑張れば歴史に名を残せると思う」


疑う余地も無いくらい、めちゃくちゃベタ褒めだった。すると黒い少女は自分の掌に唾を付けると、私の胸元で拭ったから呆気に取られてしまう


「……あの、なに、してるんですか」


「見てわからない?」


分からない……この行動に一体どんな意図があるのか、私には読めない。嫌がらせが今のところは濃厚だが今の話の流れで果たしてそんな事をするだろうか。
餓鬼の時は恐怖で動けなかったが、人は理解出来ない事を目の当たりにしても脳が処理出来なくて動けなくなるという事を知りました。


「優秀な人は国の宮廷魔法使や大手の冒険者に所属する人が多いからね。だから優秀そうなの見つけたら手当たり次第ツバ付けとけって、後輩の子に教えられたんだ」


「た、多分。その人こういうつもりで言ったんじゃないんだと思います」


「物理的にやられると汚いです」


「!!?」


「そんなに驚きますか」


「驚いたよ。ごめん」


ペコリと小さな頭を下げて謝られる。きっとこの子は天然なのだ。悪気がないだけ良しとしよう


「いえ、いいんですけどね。それに褒められて悪い気はしませんから」


「しかし 歴史に名を残せる魔導師ですか」


「不服そうだね」


「……だってそれは世界一の魔導師じゃないですよね」


おずおずと口に出した世界一という言葉を聞いて、バカにするでも無く黒い少女は直ぐに軽快に鼻を鳴らした


「そうだね。少なくとも私がいるから、歴史に名を残す位じゃ良くて2番かな」


「……じゃあライバルですね」


「そうだね。ライバルだ」


黒い少女は手を差し出し、自然と私も手を握り返して握手をしていた。黒い少女が魔導院学生なら、学生ですら無い私は既に大きく遅れをとっている事になる


言い訳だけど、私はあの夜で死ぬと思っていたから、そういった準備すら満足にしてきていない。それを踏まえると、この少女どころか今まさに魔導師という夢に向かって走っている中で私だけスタートラインにすら立てていない事になる


焦燥が無いと言えば嘘になるかまだ大丈夫だ。近いうちに魔導学院の試験がある。そこに合格さえすれば、今からでも十分に追いつけるはずなのだから


「あの、筆頭。なにしてるんですか?
村での話は終わったので、次は餓鬼 鈴鹿が討伐されたとされる現場の調査に向かいたいのですが」


いつの間にか、あのアクアマリンの髪色をした綺麗な女性が横に立っていて、ヒットウと黒い少女に呼びかけているではないか。
しかしなんだろう、この口ぶりは。女性は魔導師の記章を付けている。そしてその記章は上級魔導師を現す物であり、無色ではなく、色付きの記章であることから、一般的には"パレット"と呼ばれる序列持ちの上級魔導師の筈だ


序列持ちの上級魔導師が上の判断を仰ぐ場合、その相手が更に上の序列であると考えるのが自然だ。つまり……つまり?首を傾げて頭を捻るが答えは出ない


つまり、どういうことなのだろう?


「見て分からない?」


「仕事を部下に押しつけて自分だけ若くて可愛い子とおしゃべりをしていた……?」


「失礼な」


「私はただ前途有望な若者を見つけたので、すかうとしていたんだ」


「つまり、それは。仕事を部下に押しつけて自分だけ若くて可愛い子とおしゃべりをしていたということでは……?」


「……」


重苦しい沈黙が流れていた。青い女性魔導師が機械的に再度口を開いた


「何か弁明は?」


「……ねえ、イルイ」


黒い少女は意を決したように少しだけ神妙そうな声色で声を漏らした


「今まで君たちの尊い犠牲があったからこそ、今日まで餓鬼の脅威から私たちは守られていた。だからみんなを代表して、感謝を」


「……私は何もしてませんけどね」


「無視ですか?それに絶対そんな話してませんでしたよね。世界一がどうとか、ライバルがどうとかそういう俗っぽい話でしたよね?」


「……過程はどうあれ、君の起こした行動がこの千年誰にもどうにも出来なかった問題を一つ解決したんだ。それは誇って良い事なんだよ」


「良い話をしてた風に装って誤魔化そうとしても駄目ですからね?」


黒い少女はそう言うが、ただ怖くて逃げ出して、偶々問題を解決出来る力を持った存在と運良く出会っただけの私の行動に胸を張れというには、少々結果論が過ぎると思う


何しろアーカーシャに出会えなければ、本当に目も当てられない凄惨な結果になっていただろうから。あの時の餓鬼を見た時の後悔を私は生涯忘れないだろうから


「褒めないでください」


「なんで? 偉いよ イルイは」


黒い少女は私の気も知らないで頭を撫でる
だというのに、なんだろう。この妙な安心感は。この安らぎは。だって私の行動は間違っていた。正しくなかった。責められても仕方のない事だった────それなのに。

気付けばポタポタと頬を流水が伝い、視界がボヤけていた


「イルイ!?」


「あー! 筆頭ってそういうところありますよね。人の感情の機微に鈍感なのに変なことするからですよ!
今度会った時に雪姫さんの真似して若い子泣かしてたって言いつけますからね!」


「なにが。私に一体なにが足りないというんだ…?
この愛くるしい姿が悪いのか……だとしたら、こんなにも自分がエルフだという事を恨んだ日は無いよ
分かった。分かりました。雪姫みたいに美人のお姉さんみたいなれば良いんでしょ!だったこの一連の流れを500年後にもう一度やらせて貰えない?きっと雪にも負けないくらいの綺麗なお姉さんになってる筈だから」


「500年後は筆頭以外みんな死んでると思いますよ」


青い女性の冷静沈着な言葉に黒い少女は悲壮感に打ちのめされたのか、がくりと膝をつき地面を叩いていた


「あの。そういえば 名前聞いてなかったです」


「……風は見かけばっかりお姉さんになっちゃって、自己紹介も満足に出来ないんだ。そんなんでお姉さんぶるんだ。お笑いだね」


膝を崩したまま、ぷぷぷと含み笑いをする黒い少女だけど、冷静に考えると、あれ?この子から私まだ名乗られてなくない?


「確かに名乗らないのは此方の落ち度ですね。
『青』を冠する魔導師で序列7位の青風糸です。こう見えて種族は亜人の妖猫族ケットシーなので厳密に言うなら、女性ではなくて無性なの。だから誰かさんと違ってお姉さんぶったりはしないわ。よろしくね」


「わ、私は此処オラフ大森林で防人を務める一族
イルイ・シュテンバードです!こちらこそよろしくお願いします! 青風様!」


私は黒い少女の方にも視線をやる。そちらも名乗ってと目力で必死に伝える


「……そういえば私も自己紹介がまだだった
『黒』を冠する魔導師で序列1位の黒水 歪。イルイの慧眼には恐れ入ったよ。お察しの通り、私はエルフさ」


絶句したのは言わずもがな。それにエルフだなんて全然気付きもしなかった。そもそもエルフは金髪翠眼が特徴のはずだ。だけど黒水……様みたいに間違っても、黒色の髪や瞳をしているエルフの存在は見たこともなければ耳にしたこともなかった。特殊個体のダークエルフというやつだろうか?


それに筆頭魔導師ということは、魔導師に送られる最高位のはずだ。そんな相手に私は世界一なんて宣ってしまうなんて……私のばかっ!数分前の自分を叱りつけたい気分であった。恥ずかしいよ、アーカーシャ!


「そっちもまだなんじゃない!!」


胸を張っている黒水様に対して青風様の手痛いツッコミが炸裂していて、この2人仲良いなと思いました
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

勇者パーティを追放された地味な器用貧乏は、 魔王軍の女騎士とスローライフを送る

ちくわ食べます
ファンタジー
勇者パーティから「地味、英雄譚の汚点」と揶揄され追放された器用貧乏な裏方の僕。 帰る場所もなく死の森を彷徨っていたところ、偶然にも重傷を負った魔王軍四天王で最強の女騎士「黒鉄剣のリューシア」と遭遇する。 敵同士のはずなのに、なぜか彼女を放っておけなくて。治療し、世話をし、一緒に暮らすことになった僕。 これは追放された男と、敗北を重ね居場所を失った女の物語。

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

転生したら王族だった

みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。 レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……

神に同情された転生者物語

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。 すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情され、異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。 悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。

処理中です...