「結婚しよう」

まひる

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第五章

4.お前が一番【5】

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「問題ない」

「だって……っ」

 私が不安そうな顔をしていたからか、先程より強くヴォルに抱き締められます。
 何も告げなくても、私の考えている事が伝わったようでした。

「魔力が枯れなければ生命力を使う事はない。ペルニギュート、メルを不安にさせるな」

「あ、僕が怖がらせた?……ったく、兄さんは彼女さん限定で過保護なんだから。メルシャさん大丈夫だよ、考えたら分かるでしょ。毎回魔力の回復に命を使っていたとしたら、魔力持ち自体が絶滅するってぇ。言ったでしょ、枯れたらって。体力と同じで、限界を迎えれば自然と力を出す事が出来なくなるの。それを無理して絞り出そうとすると、って意味だよ」

 ヴォルにキツい視線を向けられたからか、思い切り肩をすくめてペルさんが両掌を上に向けました。
 ──すみません。でも、やっと何となく原理が分かったような気がします。

「でしたら、魔法を使う事でヴォルが危険になる訳ではないのですね?」

「あぁ」

「結論はそこなんだ。ったく、メルシャさんも兄さんにぞっこんなんじゃないかぁ」

 あからさまにホッとした私に対してヴォルはフッと柔らかく笑い、ペルさんは再び大きな溜め息をついていました。──えぇっ?私、何かおかしな事を言いましたか?

「まぁ、そんな感じだから。魔法の解除は諦めてね、兄さん」

「……魔力の供給自体をってやる。どちらにせよこの睡眠魔法を継続させる事自体、ペルニギュートの身体に大きな負担が掛かる」

 お城を元通りにする事を拒絶するペルさんですが、ヴォルの心配はペルさんにもあったようです。
 でも先程の話から、自分の命を対価にしてまで放つ程の大きな魔法なので負担が掛かる事は分かりました。

「別に良いよ。そうなったら僕は、次の身体で続きをするだけだし」

「ダメだ。Perunigyuto wo karuri suru.maryoku no kyoukyuu wo katto.」

 ペルさんの言葉を聞き入れる事なく、直ぐ様魔法を唱えるヴォルです。

「あっ!?ちょ、兄さ……っ?!」

 焦ったような声を最後に、ペルさんは青色のシャボン玉に包み込まれてしまいました。途端に彼の言葉が途絶えます。
 姿はかろうじて見えますが、いつもの結界とは違うのでした。

「だ、大丈夫なんですか?」

「……恐らく。前世の記憶を持っているとは言え、ペルニギュートは俺の弟である事にかわりない。命をなげうとうとするのならば止めるだけだ」

 不安からヴォルに問えば、少し曖昧な返答が返ってきます。自分の命を代償にしているので、これで本当に魔法が解除されるのか分からないという意味なのでしょうか。

 前世が精霊をあやめた人であっても、現世でその罪が責められる筈はありませんでした。
 それに私はペルさんの事をまだ良く知りませんが、ヴォルの大切な家族は私にとっても大切な存在です。

「……でもあの、ペルさんの様子がおかしくないですか?」

 青色の結界にいるペルさんに視線を移せば、胸の辺りを押さえてうずくまっていました。
 何故か、酷く苦しそうです。勿論、音声が聞こえないので何を言っているのか分かりませんが。

「本人も言っていたが、ペルニギュートの肉体は本来魔力を持っていない。それを魔法石から供給を受けて魔法を使っていたのだ。外部から完全に隔離された今、その負担が苦痛となって身体を襲っている。……かなりの苦痛だろうがやむを得ない」

 そう淡々と告げるヴォルは、言葉とは対照的にとてもつらそうな顔をしていました。
 これで命が奪われる訳ではないと思いますが、苦しみを与えている事にヴォル自身が傷付いているのでしょう。──本当に優しい人です。
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